国王「そなたは選ばれし勇者だと神託があったのだ」
青年「私が……勇者ですか」
国王「死にかけた我が国をどうか救ってほしい、勇者よ!!」
【 100Gてにいれた! 】
青年(……これだけで旅に出ろと?)
勇者「え、えっと……」
村長「どうかこの村を救って下され!」
僧侶「勇者様、彼らを助けてあげましょう!」
女戦士「勇者ならやるべきだぜ!」
勇者「………うん」
勇者(お城の兵士をこっちにまわせばそれで事足りるような相手なのに)
スライム娘「……」ギュッ
勇者「………」
村長「ゆ、勇者の仲間だったのですかな? 村を荒らしていた魔物とは」
僧侶「なついてしまったようなのです」
村長「……さようですか、ありがとうございました」
勇者「え?」
村長「勇者様はお急ぎの旅をしているのでしょう? 早く旅立ってはいかがか」
勇者「・・・」
関所兵士「魔物を連れているなど、貴様が勇者なわけあるか!」
関所兵士B「殺せ!!」
勇者「や、やめて! この娘は悪い魔物じゃないのに!」
スライム娘「…っ」ビクビク
ズバッ
勇者「っああ!!」ドサッ
僧侶「勇者様!」
女戦士「通行証が見えねえのかよてめぇらァァ!!」ズバッ
勇者「だ、だめだよ……同じ人なのに殺し合ったらだめだよ……」
「勇者は殺人鬼だー!!」
「この街から出て行け?!!」
「化け物も殺せ!!」
僧侶「あわわわ、逃げましょう勇者様!」
勇者「で、でも女戦士さんの解毒薬が買えない…」
女戦士「ぁ……アタシはいい、逃げよう……」
勇者(あの時、ちゃんと関所の兵士達と和解してれば………………)
騎士「国王はお前たちを切り捨てた、新たな勇者も見つかったそうだしな」
僧侶「では! 我々の支援は…」
騎士「無くなる」
騎士「話は終わりだ、ここでお前達には死んでもらう」
勇者(騎士団を相手するほどぼくらは体力が残ってない、どうしたら……!!)
スライム娘「……!!」バッ
勇者「ぇ…」
スライム娘「………!!」パクパク
『 に げ て 』
勇者「す、スラリン……っ」
女戦士「今のうちに逃げよう勇者!!」
エルフ「・・・」
勇者「……あの」
エルフ「疲れてる、休め、寝る? 食事?」
勇者「え、えっと、あの」
僧侶「この娘、エルフみたいです、私達を村か何かに案内してくれるのかも」
女戦士「そりゃーいい、休みたいな」
勇者「・・・」
勇者(何だろう、何度か見た事ある気がする)
勇者「なんで!? なんでぼくたちを騙すの!」
エルフ「私達エルフは人間の敵、それが、真実」
女戦士「勇者に助けて貰った癖に、恩を仇で返すのかよ!!」
エルフ「ケラケラケラ」
ガッ!! ガッ!!
僧侶「」ビチャッ
勇者「なんで……なんで………助けてあげたのに……」
女戦士「……」フラフラ
勇者「もう少しだよ、がんばって…」
女戦士「………もう少しってさ、何がもう少しなんだ」
勇者「村だよ! さっきの村人がくれた地図だとこの先に……」
女戦士「……勇者」
女戦士「がんばり屋だなぁ…おまえ」
勇者「女戦士まで死なせないよ、当たり前でしょ」
女戦士「・・・」
女戦士(故郷にも帰れなくて、村にも町にも受け入れて貰えないのに)
女戦士(世界を救うには人間も敵になるのに、よくがんばれるよなぁ)
ドサッ
四天王「ぐあ・・・勇者、何故それほどまでの力を有していながら人間の味方をする」
勇者「・・・しらない」
四天王「数多もの村や町を救い、世界を救う為に戦って何が楽しい!」
勇者「・・・楽しくない」
四天王「初恋のエルフに騙されても尚、人間の味方を何故する!!」
勇者「・・・ぼくが好きだったのは僧侶と女戦士さんだけだよ」
勇者「・・・もういい」
勇者「もう……いい、んだ」
魔王「……」
勇者「……来ないの?」
魔王「先程から貴様が無言なのでな」
勇者「疲れちゃった」
魔王「ほう」
魔王「何故に」
勇者「……わからないよ」
魔王「ぐぉぉお……ばかな」
勇者「……」
魔王「そなた、何故に泣いている…我を倒して嬉しいか」
勇者「……もういやだ」
魔王「…? 何がだ」
ドバン!
騎士「突撃だ!! 今ならば勇者も魔王も弱っている!!」ドドドド
魔王「!?」
勇者「・・・」
騎士「」ドサッ
勇者「・・・」
魔王「ハァ…ハァ…」
勇者「…………」
勇者「これであとは魔王が死んだら……何か変わるかな」
魔王「ハァ…ハァ……さぁな」
魔王「……勇者」
勇者「なに」
魔王「・・・そなたの目、何故に死んでいるのだ」
勇者「・・・」
魔王「ハァ…ハァ、我の生もあとわずかか」
魔王「教えよ勇者、何故……そなたの目は死んでいるのだ」
勇者「魔王を倒したら見える必要ないから」
魔王「何故……回復させない、魔法は使えただろう」
勇者「傷を塞ぐ必要ないから」
魔王「死にたいのか」
勇者「……生きるだけのがんばれる気力がないから」
勇者「生きる気力がないから」
勇者「戦う体力がないから」
勇者「がんばれる……力が無いから」
勇者「もうやだよ、いやなんだ」
勇者「勇者なのに、いい大人なのに弱音を吐いたら怒られるしだらしないって言われる」
勇者「ぼくはがんばって皆を助けたよ」
勇者「でも御礼が欲しいのに、嫌な顔してお金渡されるんだ」
勇者「泊めてって頼むと僧侶の体を欲しがってくるんだ」
勇者「怪我した魔物を助けても怒られる、口答えすると犯罪者になる」
勇者「がんばってもがんばっても、僧侶は死んだ、女戦士も死んだ」
勇者「みんな、ぼくが頑張れるようにって、一人で寂しくないようにって派遣された只の一般人だよ」
勇者「でも僧侶は少しでも役に立ちたくて魔法を覚えてくれた」
勇者「女戦士も本当は普通の女の子だったのにぼくが勇気出るように勇ましくいてくれたよ」
勇者「……でも、どれだけがんばっても無駄になるんだ」
勇者「泣いても誰も優しくしてはくれなかった」
勇者「沢山優しくして、助けて、笑っても、がんばっても……」
勇者「………………」
魔王「……勇者、そなた」
勇者「魔王、ぼくは勇者になる前からこうなんだよ」
勇者「お母さんに褒めて貰いたくて書記官の勉強をしてもね」
勇者「好きな女の子に振り向いてほしくて体を鍛えてもね」
勇者「一杯一杯……努力してもね………」ポロポロ
勇者「……報われない、優しさのない世界なんだよ」にこっ
魔王「…………」
魔王「…………勇者よ、我が死んだ時この城は崩れる」
魔王「その際に我が座っていた玉座の隠し階段が開く」
勇者「・・・」
魔王「そなたの願いを叶える秘宝、くれてやる」
魔王「その代わり、約束せよ」
勇者「なにを・・・?」
魔王「その願いを無駄にせぬように、そなたのやり方で『がんばる』のだ」
魔王「…………ぐ、ゴフッ」
魔王「さぁ、そなたの願いを聞かせてくれ」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
勇者「……」フラフラ
勇者(隠し階段……)フラフラ
勇者(罠、かな)
勇者(もういいや……このまま城に潰されても)
フラフラ・・・
勇者(・・・)
勇者「え?」
勇者「これが……魔王の言ってた秘宝?」
勇者「………」
『さぁ、そなたの願いを聞かせてくれ』
勇者(……)フラフラ
勇者「お願いです……私の願いを叶えて下さい……」
勇者「・・・・・・」
勇者「もうがんばりたくない」
「……起きて」
勇者「…」
「起きなさい」
勇者「……ぅ、う」
母親「起きなさいな! 今日は大切な試験日でしょ!」
勇者「!!」がばっ
勇者「なっ……お、お母さん?」
母親「早く行かないと復習する時間もなくなるよ!」
勇者「…………」
勇者(……これは、夢?)
勇者「お母さん……今日ってなんの試験日?」
母親「はぁ!? あんた、馬鹿な事言うんじゃないよ!!」バシンッ
勇者「痛ッ」
母親「今日は『第二次書記官試験』の日でしょうに!」
勇者「…」
勇者(書記官の……試験、日…?)
勇者(・・・)
「今日は城で書記官試験があるらしいな」
「ほら坊主! 屋台を出すから手伝え!」
「うへぇ・・・」
「はい、いらっしゃいいらっしゃい!!」
勇者(どういう事だろう……)
勇者(これじゃ、まるで過去の世界に来たみたいだ)
勇者(……仮に、ここが過去の世界だとしても)
勇者(ぼくは)
勇者「ぼくは・・・どうしてここに?」
勇者(思い出せない、確かぼくは魔王を倒して…それから、それから)
『・・・願いを叶えて下さい』
『もうがんばりたくない』
勇者(!!)
勇者(……ぼくは 何か に願いを告げた)
勇者(これは僕の願い? 過去に戻る事が?)
ドンッ
勇者「っと」
女「す、すいません! お怪我は?」
勇者「平気だよ」
女「そうですか、では私はこれで!」
勇者「うん、試験がんばってね」
女「はい!」タッタッ
勇者「・・・」