魔人「・・・間違いでは?」 5/11

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姫様「ん・・・、ぷはぁ。しっかし、ねーちゃんが来るとはなー」

魔人「意外でしたか?」

勇者「まー、知り合いの方が楽は楽だけどよ。なんか悪かったな」ゴクゴク

魔人「いえ・・・。特別、反対する理由もなかったので」

勇者「『向こう』はまだしも、ねーちゃんがここに住んだってなんの特もしねーだろ?」

姫様「はっはっは、割りにあわねーよなぁ。・・・相変わらず、アワアワしてんのか奴らは?」

魔人「ええ、そりゃもう。・・・みてるこちらが、イライラするくらい」

勇者「けっ、そのうち周りの奴らに殺されるんじゃねーの?ヤキモキしてよ」

姫様「あっはっは、そんときは、あいつらが悪ぃよなー」

メイド「・・・その、『あいつら』ってのは、誰のことなんスか?」

勇者「ああ、ねーちゃんと同じように、こっちからも『人間』を『村』に送ったんだが・・・」

姫様「送った、ってよりもありゃ、アイツが自分から行ったみてーなもんだったよなー」ゴクゴク

勇者「違いねぇ。俺らはちょっと、背中を押してやっただけだ」

メイド「??なんか・・・、ずいぶん、仲良しなんスねーその人と・・・」

姫様「・・・これがケッサクでよ、その『人間』、なんで『魔人の村』に行ったと思う?」

メイド「はぁ?さぁ・・・、物好きな変わり者としか・・・」

勇者「物好きな変わり者って部分はあってるかもな。なんでかってと・・・」

姫様「・・・恋、しちまったからよ。『魔人』と」

メイド「・・・ってうぇぇ!?ほほほ、ほんとうっスか!?」

姫様「あっはっは!だよなだよなー、そーなるよなぁ!」

魔人「まったく・・・、お恥ずかしいです・・・」

勇者「気にすんなよ、あのヘタレ魔王も、こっちの純情娘も、どっこいどっこいだろ」グビグビ

メイド「はぁー・・・、そんなことって、あるもんなんスね・・・」

姫様「だろ?初だよ初、世界初」

勇者「ま、会ってみりゃわかると思うけどよ。その『魔人』、びっくりするくれー『魔人』っぽくねーから」

メイド「まぁ、それは・・・。ねーさん見てれば、わかるっスけど」

魔人「なっ・・・、私はキチンとした『魔人』です!失敬な!」

姫様「キチンとした『魔人』が、メイド服だもんなー。わかんねー世の中だよ、ホント」

魔人「・・・そういえば」

勇者「あん?」

魔人「言伝というほどでもないのですが・・・。お二人に会いたがってましたよ」

姫様「んー・・・、ここ一月、ずいぶんバタバタしちまってたからなー」グビグビ

勇者「ねーちゃんが来てやっと、条約が完璧になったわけだ。これからはしょっちゅういけるだろーよ」

魔人「そうですか。良かった」ゴクゴク

メイド「そーいえば、その条約っスけど・・・」

姫様「んー?」グビグビ

メイド「・・・ねーさんって、いつでも帰れるんスか?その、『村』に」

魔人「・・・・・・・・・」

勇者「あたりめーだろ。申請で手間どっかもしれねーけど、帰れるよ」

姫様「・・・でも、まぁ。一応表向きにだか裏向きにだか、『人質』って意味はあるからな」

姫様「基本、『こっち』を家としてもらわねーといけねーけど」

メイド「ふーん、そうなんスか・・・」

メイド「・・・あっ、じゃあ、私がねーさんの『村』に行くことってのも出来んすか?」

勇者「おー、許可さえ出せば、ちゃんと行けるよ。ただし、日帰りでな」

メイド「日帰りじゃあ、いくらもいられねーっスよ・・・」ゴクゴク

勇者「その辺も、調整中だ。まずは俺らが行って、確かめてくっから」

メイド「早めに頼むっスよー・・・」

魔人「え・・・?まさかあなた、来るつもりなんですか?」

メイド「・・・?いけないっスか?行きたいっスよ、そりゃフツーに」

魔人「そう、ですか」

メイド「迷惑っスか?」

魔人「ま、まさかそんな・・・。是非いらしてください」

メイド「了解っス。しばらくかかりそーっスけどねー」

勇者「・・・ふーん?少し心配してたけど、よろしくやってるみてーだな」

魔人「ええ、まあ・・・。いろいろ、助けて貰っています」

勇者「かっ、そりゃーいい。それでこそ、だな」

姫様「ねーちゃん後で私の部屋来いよー!」

魔人「いいんですか?」

姫様「いーに決まってんだろー?『あいつら』の話もしてーしなー!」

魔人「・・・分かりました、必ず」

姫様「おう、約束・・・っておぉぅ!?」

女兵士「やーん姫様どこいってらしたんですかーさがしましたよぉー」ガシィッ

姫様「ま、た、お、ま、え、か・・・!やめろっ!抱きつくな頬擦りすんな苦しへぶっ!?」

女兵士「すーぐどっか行っちゃうんですもんー、捕まえたー」グリグリ

姫様「お前出来あがんの早すぎっ・・・!うぉぉい勇者!たしけて・・・!」

勇者「あー、カメラってコンビニで買えたよな?」

姫様「待ててめぇ買ってなに取る気だ・・・!これか!?この醜態をか!?」

女兵士「姫様姫様姫様姫様姫様姫様姫様ぁぁぁぁぁぁぁん」グリグリグリグリ

姫様「グリグリすんな、頭グリグリすんな・・・、熱い!?ま、摩擦熱で熱いっ!!??」

魔人「・・・ぷは」

兵士「・・・まったく、酔っ払いが多くて」ストン

魔人「あ・・・、昨日の」

兵士「あ、どうも。いやー昨日はすいません、連絡が行き届いてなくって」

魔人「いえ、大丈夫です」

兵士「・・・勇者さんがしっかりしてないから」

勇者「あん?今お前俺のせいにしたか?」

兵士「あんたのせいだろほぼ」

勇者「しょーがねーだろー、眠かったんだよ・・・」

兵士「ったく・・・」

女兵士「姫様・・・、むにゃむにゃ」

姫様「・・・お、おい、コイツ落ちた・・・、動けん、たしけて・・・」

勇者「・・・これ素面の本人に見せたらどーなんだろーな」

兵士「実は俺、カメラ持ってんですよ」パシャパシャパシャ!

姫様「おい!私は撮るんじゃねぇ!こっちだこっち!メインはこっちだろぉ!?」

姫様「・・・酷い目にあった」

メイド「お疲れさまっス・・・」

姫様「ったくよぉコイツにだけは飲ませるんじゃねぇよ・・・」

兵士「遠ざけといても、いつの間にか缶持ってるんですよ・・・」

姫様「ああもう、酔うに酔えねー・・・」カシュッ

女兵士「・・・zzz」ムニャムニャ

魔人「・・・愛されているんですね」

姫様「・・・まぁな、姫だし」ゴクゴク

魔人「言い切りますか」

姫様「・・・ぷはっ。だって、事実だかんなー」

姫様「姫として生まれた私は、愛される運命なんだよ」

姫様「・・・自慢じゃねぇぞ?どーとって貰っても、けっこーだけどな」

魔人「・・・・・・・・・」

姫様「・・・・・・・・・」

姫様「・・・気持ち悪い・・・」

魔人「えぇっ!?もう!?ど、どうしていつもいつも管理して飲めないのですか!?」

姫様「後先考えないのも・・・、うぷ、これヤバい・・・」

魔人「ちょ、が、我慢してくださいよ!?だ、誰か洗面器を!」

王様「・・・・・・・・・」

先輩A「・・・・・・・・・」

先輩B「・・・・・・・・・」

先輩C「・・・・・・・・・」

魔人「全員潰れてる・・・!?なんでこう揃いも揃って酒に弱いんですか!?」

勇者「おい」

魔人「大変ですよ、勇者さん、姫様が・・・」

勇者「俺、寝るから」

魔人「畜生駄目人間がっ!!」

兵士「姫様もお酒弱いですからね・・・」

魔人「ど、どうしましょう。とりあえずトイレに・・・」

メイド「ねーさん、とりあえずそっちの腕持って・・・」

姫様「・・・うぅぅ」

魔人「もう少し我慢できますか?トイレまで・・・」

姫様「がんばる・・・」

兵士「じゃあ、俺がおぶっていきましょう」

姫様「うぃ~・・・、兵士、頼んだ・・・」

兵士「お任せくださいー・・・」タッタッタ・・・

魔人「・・・ふぅ。どこぞの不良勇者と違って、頼りになる青年ですね」

メイド「・・・か、かっこいい・・・」

魔人「・・・へ?」

メイド「やっぱ、カッコいいっスよねぇ、彼・・・。そう思わないっスか!?」

魔人「へっ、あ、まぁ、カッコいい、ですね・・・」

メイド「なんなんスかねぇ、なんか・・・、兵士の中の兵士というか・・・」

魔人「そ、そうですか・・・?」

メイド長「・・・あらあら?姫様は?」

魔人「吐き気を催したので、兵士さんに連れられてトイレに」

メイド長「あらあら。それなら心配要りませんね。では、私は部屋に戻りますので・・・」

魔人「え、は、はい。・・・この惨状、どうしましょうか・・・」

メイド長「放って置いて大丈夫ですわ。では、おやすみなさい」スタスタ

魔人「・・・メイド長、お酒強いんですか・・・?」

メイド「・・・いや、それはもう恐ろしいので、頑なに皆飲ませないだけっス・・・」

魔人「・・・そ、そうですか・・・」

メイド「・・・と、言うわけで、私も、限界、っス・・・」ガクン

魔人「あ・・・」

魔人「・・・・・・・・・」

魔人「・・・なにこのカオス・・・」

勇者「・・・ぐー、ぐがー」

王様「ごー、ごー」

女兵士「・・・zzz」スースー

メイド「・・・ぐぅ、むにゃむにゃ・・・」

魔人「・・・結局、一人酒ですか・・・」カシュッ

魔人「・・・ん」

魔人「・・・ぷはぁ。まったく、下戸が集まって、なにが酒盛りですか・・・」

魔人「・・・・・・・・・」ゴクゴク

魔人「・・・ふぅ。・・・酔えないというのも、損なものです・・・」

兵士「・・・あ、あれ?みんな寝ちゃったんですか?」

魔人「・・・あ、違っ、あぅ、コレはその・・・!」

兵士「あー大丈夫大丈夫、分かりますよ。全然飲んだ気になれないでしょ?」

兵士「俺も、いっつも余るんですよ。酔えないのって、損ですよね」ストン

魔人「・・・・・・・・・」

魔人「・・・あ、姫様は・・・」

兵士「姫様なら、少し戻した後寝てしまったので、部屋に送っておきました」

兵士「こっちに戻ってくるよりも、お部屋のほうが近かったので」カシュッ

魔人「そうですか、ご苦労様です」

兵士「いえいえ。・・・あ、かんぱーい」

魔人「え、は、はい。か、乾杯」

カツン

兵士「・・・・・・・・・」ゴクゴク

魔人「・・・・・・・・・」チビチビ

兵士「・・・ふはぁ。やっぱり、誰かと飲むってのは、いいもんですねー」

魔人「・・・まったくです。いつもいつも、一人酒しか出来なくて・・・」

兵士「あはは、お酒強そーですもんね。・・・いやーでも助かった。こんな綺麗な人にお相手してもらえて」

魔人「おっ、お相手だなんてそんな・・・、滅相もないです・・・」

兵士「こちらに住むことになったんでしたよね?」

魔人「ええ。・・・まったく何から何まで、お世話になりっぱなしで・・・」

兵士「いえいえ。それに、メイドさんとして働かれるなら、むしろお世話になるのはこちらのほうです」グビグビ

魔人「はぁ・・・、そう言っていただけると・・・」

兵士「確か、条約で住むんですから、無理に働く必要は無いはずでしょう?」

魔人「・・・王様達にも言われましたが、流石に肩身が狭いので・・・」ゴクゴク

兵士「そんな、気にしなくていいのに」

魔人「・・・ぷは。気にしますよ、流石に。それに、暇を持て余す性分なんです」

魔人「家事は元々好きですから、こちらとしても都合がいいんですよ」

兵士「はぁ、そうですか。・・・真面目なんですねぇ」

魔人「・・・この城の人たちが、不真面目すぎるんだと思いますが」

兵士「あはは、言い返せませんね、それ」

魔人「・・・・・・・・・」ゴクゴク

兵士「・・・ん」グビグビ

兵士「・・・どうですか、ここでの生活は」

魔人「・・・まだ、二日しか経っていませんから、なんともいえませんが・・・」

魔人「思っていた以上に、楽しいです」

兵士「・・・それは良かった」

魔人「・・・正直、ここまで受け入れてもらえるとは、思っていなかったのです」

兵士「え・・・」

魔人「私は、『魔人』です。そしてあなた方は、『人間』です。私は・・・」

魔人「・・・少なくとも私は、あなた方を『人間』と括れる程度には、区別していました」

魔人「文化は違うし、感情も違う。別々の種族なのだから、と、思っていました」

兵士「・・・過去形、ということは?」

魔人「・・・んっ」グビッ

魔人「・・・ふは。よく、分からないのです」

兵士「・・・・・・・・・」

魔人「あなた達はそれくらい、素直に私を受け入れてくれているので・・・」

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