魔人「・・・間違いでは?」 7/11

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11

魔人「・・・足を・・・」

兵士「・・・いま凄い音がっ」バッ

魔人「っ!駄目ですっ!」

兵士「・・・っ」ピタッ

兵士「・・・魔人、さん?」

魔人「・・・電気、ありがとうございました。もう大丈夫です」ズキズキ

兵士「・・・本当に?」

魔人「・・・ええ、早く戻ってください。・・・湯冷めしてしまいますよ・・・?」

兵士「・・・・・・・・・」

兵士「・・・分かりました」

兵士「あなたも、早く上がってください。お酒も入ってますし、危険です」

魔人「ええ、分かりました。ご心配どうも」

兵士「・・・では」スタスタ・・・

魔人「・・・・・・・・・」

魔人「・・・っく」ズキッ・・・

魔人「・・・なに、死ぬわけでは、無いでしょう・・・」

魔人「朝になれば、誰かが・・・」

ガラッ

魔人「―――っ」

・・・ファサッ

魔人「・・・・・・・・・」

兵士「・・・あの、あなたを辱めることになるかもしれませんが・・・」

兵士「そのタオルを、巻けば、少しは・・・。そうすれば、自分も、入れますから・・・」

魔人「・・・何故」

兵士「・・・あなたは、ご自分で思ってるほど、嘘が上手くはありません」

兵士「だから、その・・・。動けないのではないかと・・・」

魔人「・・・っ」

兵士「・・・その、巻けたら、呼んでください」

魔人「・・・重いですよ、私」

―――城・廊下

兵士「・・・・・・・・・」

魔人「・・・・・・・・・」ピチャン

兵士「・・・今も、足、痛みますか?」

魔人「・・・触らなければ、大丈夫、です・・・」

兵士「・・・そうですか」

魔人「・・・・・・・・・」

兵士「・・・・・・・・・」

魔人「・・・重くは、無いですか」

兵士「・・・いえ、そんなことは・・・」

魔人「本当のことを、言ってくれていいのですよ・・・」

兵士「ふ、普段から、もっと重いものを、運ぶ訓練をしているので、じょ、女性一人くらいなら・・・」

魔人「・・・・・・・・・」

兵士「・・・・・・・・・」

―――城・姫様の部屋

姫様「・・・んで、私のところか・・・」

兵士「・・・この時間では医務室も、町の医者もやっておりませんので・・・」

姫様「・・・んでこんな時間に風呂なんか・・・」

魔人「・・・!」

姫様「・・・まー、いいか。ねーちゃん、足出せ」

魔人「・・・は、はい」スッ

兵士「・・・っ!で、では自分は、外に待機してますのでっ」バッ

魔人「・・・っ」カァァ

姫様「・・・あー?なんだアイツ、改まって・・・。・・・頭痛ぇ・・・」

魔人「・・・お願いします」ペコリ

姫様「・・・んー、正直、酔っ払い中だし・・・、そんな期待すんなよ・・・」

魔人「・・・はい」

姫様「・・・おー、絶景かな・・・」

魔人「・・・っ、ややややめてください痛っ・・・」

姫様「あーあー、怪我人が暴れんな・・・、どれ、具合みっから」

魔人「・・・くぅ」ギュッ

姫様「・・・・・・・・・」サワッ、サワッ

魔人「・・・!・・・くぅ・・・!・・・っは」グッ・・・

姫様「・・・なんか、エロい気分に・・・。色っぺーな・・・」

魔人「・・・ちょ・・・、そんな場合では・・・っ・・・」ギュゥ・・・

姫様「・・・あー、ただの捻挫じゃねぇな・・・、骨はまぁ、大丈夫だけど・・・」

魔人「・・・ん」

姫様「・・・よし、治癒魔法かけとく。でも、魔法ってのは残念ながら万能じゃねぇ」ポワァ

魔人「・・・それは、わかります」

姫様「完全には治せねぇ、とりあえず、軽い捻挫くらいまでは、治しとくからなー・・・」ポワァ

魔人「・・・痛み、引いてきました・・・」

姫様「・・・ほい、終了。湿布張って、一日安静。メイド館でも湿布くらいあっから」

魔人「・・・凄いですね。治癒魔法・・・」

姫様「どうってことねぇよ。さっきも言ったとおり、万能じゃねーから・・・、ふぁ・・・」

魔人「・・・痛みは引きました。ありがとうございます」

姫様「ねーちゃんも、魔法はなんか使えんだろ?」

魔人「私は、火を出すくらいしか・・・、誰かの役に立つ魔法なんて、使えませんよ」

姫様「なに言ってんだよ、火だって使いようによっちゃあ役に立つだろ」

魔人「・・・・・・・・・」

姫様「・・・ん?」

姫様「・・・さっきの風呂場で、火出せば足元照らせたんじゃねーの・・・?」

魔人「・・・あ」

姫様「・・・あー、抜けてんだなー、ねーちゃん」

魔人「・・・ご、ごめんなさい」

姫様「謝ることじゃねーよ・・・」ヒラヒラ

姫様「・・・しっかし、二人で風呂ねぇ・・・。いつの間にそんな仲良く・・・」ニヤニヤ

魔人「なっ・・・!た、たまたまです、たまたま!」

姫様「ふーん?ふんふん、へぇ?」

魔人「な、なんですかその目は・・・」

姫様「いやー?タオル一枚でおぶさってくるなんて、ねぇ?」

魔人「あれは・・・っ、仕方なく・・・!」

姫様「・・・さーて、治療費を貰おうかっ!!」ガバッ

魔人「ひっ!?な、ななにするんですか・・・!」

姫様「金が無いならぁ~、体で払えよぉ~」サワサワ

魔人「ちょ、やめ、この格好はシャレになら・・・、ひゃうっ!!!??」

バターン!

兵士「どうしましたッ!?まさか敵・・・しゅ、う・・・」

魔人「―――ッ」

兵士「・・・し、失礼、しま、したぁ・・・」バタム

魔人「・・・・・・・・・」

姫様「・・・あの、ねーちゃん・・・?」

魔人「・・・・・・・・・」

姫様「・・・こ、腰が、好きなの・・・?」

魔人「・・・・・・・・・」ブチーンッ

姫様「・・・っ!い、いま、すっごい怖い音が、聞こえた、ような・・・」

魔人「・・・姫様」クルリ

姫様「ひぃ!?つ、冷たい!!冷たすぎるぞその顔っ!!??」ガクガク

魔人「・・・あら、冷、たいん、ですかぁ・・・?」ゴゴゴゴゴ

姫様「お、落ち着くんだねーちゃん・・・、あの、足!足悪くなるか、ら・・・」

魔人「大変ですねー、冷たいなんて。暖めてあげましょう」

魔人「あなたのために、魔法を、使いましょう」パチン

姫様「待て、大丈夫!冷たくない!ベリーホット!いや汗だくで熱い熱ぅぅぅぅぃぃぃい!!??」

―――城・廊下

魔人「・・・すいません、帰りまでおぶってもらって・・・」

兵士「い、いえ、気にしないで・・・」トボトボ

魔人「・・・ふ、服まで、、借りてしまって」

兵士「い、いいんです、ただのシャツですし、姫様のじゃ、着れないでしょうから・・・」トボトボ

魔人「・・・・・・・・・」

兵士「・・・・・・・・・」トボトボ

魔人「・・・な、何故、黙るのですか・・・」

兵士「い、いえ、決してそんなことは・・・」トボトボ

魔人「・・・浴室へ行けば、私の服がありますから・・・、寄ってもらえれば・・・」

兵士「あ、じゃあその服を姫様の部屋へ持ってきたほうが、良かったですね。すみません」トボトボ

魔人「い、いえ、助かりました。その、そっちには下着も―――・・・って」

兵士「―――!」カァァ

魔人「・・・なな、なんでもありません・・・!」カァァ

兵士「そっ!そそそうですか・・・!」トボトボ

―――翌朝。メイド館・自室

チュンチュン

魔人「・・・結局、一睡も出来なかった・・・」

魔人「・・・・・・・・・」

魔人「・・・彼には、とんでもない迷惑をかけてしまいましたね・・・」

魔人「それに、あんなところを・・・」

魔人「~~っ」バッ!

魔人「・・・死んでしまいたい・・・、このまま死んでしまいたい・・・」バタバタ

メイド「・・・おはよ~っス。あ、やっぱりここにいたっすか。ふあぁ」

魔人「・・・お、おはよう」

メイド「雑魚寝したままメイド長に起こされて、皆で片付けしてきたっス・・・」

メイド「・・・姫様が居なかったのが納得いかねーっスよねぇ。後で、王様にチクろ」

魔人「・・・今は、あの方のお名前はださないでください・・・」

メイド「・・・?なんか、あったんスか?」

メイド「・・・あれぇ?この湿布、どーしたんスかぁ?」

魔人「あ・・・、昨日あなたが落ちた後、ちょっと」

メイド「えぇ?大丈夫なんスか?どんくらい・・・」

魔人「軽いそうです。一日湿布貼っておけば大丈夫だと」

魔人「・・・丁度、休みで良かった。いきなりお仕事を休むわけにも行きませんからね」

メイド「大したこと無くて、よかったっスねぇ。どこで転んだんスか?」

魔人「・・・い、いろいろです。本当に、色々ありまして・・・」バタバタ

メイド「ふーん?まぁ、深くは聞かないっスが・・・。・・・ばふぅ。ベッドはいーっスねぇ~」ボスン

メイド「あー・・・、もう一眠り、するっスかねぇ・・・」

魔人「それなら、私は出ますよ。ごゆっくり」

メイド「えー?いーっスよ気ぃ使わなくて・・・。あっ、そうそう、ねーさんねーさん!」ギシ

魔人「なんです?」

メイド「あの、昨日、私が寝た後なんスけど・・・」

メイド「兵士さんと、一緒に居たっスよね?」

魔人「ぶふぅ!」

メイド「ど、どーしたんスか?」

魔人「・・・いえ、なんでも・・・」ゴシゴシ

メイド「はぁ・・・。で、どーなんスか?居たっスよね?」

魔人「え、ええ、まぁ・・・。ザル同士、お酒を頂きました」

メイド「いーなぁ、ねーさん。お酒強くて。私、すーぐ眠くなっちゃうんスよねぇ・・・」

魔人「・・・そ、そんな良くも、ありませんよ」

メイド「はぁ、やっぱり、兵士さんお酒超強いんだな・・・」

魔人「・・・ええ、彼は、強かったですね。かなり」

メイド「・・・まっ、出来ねーこと言ってても仕方ねーっス!本題はここからなんスけど・・・」

メイド「・・・彼、私のことなんか言ってなかったっスか!?」

魔人「え・・・、なにをですか?」

メイド「なんでもいーんスよぉ。ただ、私のこと、なにか話さなかったかって・・・」

魔人「・・・い、言ってなかったと思いますが・・・」

メイド「・・・ちぇっ、なぁんだ。まだまだアピールが足りないっスかねぇ・・・」

魔人「・・・あ、アピール、ですか?」

メイド「ええ。・・・ねーさん、誰にも言っちゃ、駄目っスよ・・・?」

魔人「なにを・・・?」

メイド「これから言うことをっスよぉ。耳、貸してっス」チョイチョイ

魔人「・・・?ええ・・・」

メイド「・・・いーっスか。絶対、ぜーったい内緒っすからね?」

魔人「・・・ええ、分かりました」

メイド「・・・私、彼のことが、好きなんスよ」ボソッ

魔人「―――っ」

―――その瞬間。

     私のお腹の中に、

     とてつもなく重くて冷たい氷の塊が、

     ズドンと落ちた。

―――一瞬で蘇る、昨夜の記憶。

     彼と話したことの、一音一句が、

     まるで録音したテープレコーダーのように再生し、流れる。

メイド「・・・だから昨日は、惜しいことしたなーって」

魔人「・・・す、き?」

メイド「あぁー、私もねーさん見たく、お酒が強ければなぁ・・・」

魔人「・・・かれの、ことが・・・」

メイド「・・・そうそう、で、なんの話しました?昨日!」

魔人「・・・っ」

メイド「彼のこと、実はよく知らなくて・・・、話す機会もなかなか無いっスから・・・」

メイド「・・・何でもいいんス!助けると思って!この通り!!」

魔人「私は・・・」

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11