戦士「なぁ僧侶・・・」
僧侶「なんです?」
戦士「やりのこしたことある・・・」
僧侶「やまほど」
戦士「・・・だよな」
僧侶「・・・戦士さんも、死に切れないでしょ」
戦士「うん。でもさぁ、私がこうなることを私が自分で選んだわけじゃん?」
僧侶「そうですね」
戦士「なりゆきとはいえ、やっぱ、勇者の仲間をするって」
戦士「覚悟いくらあってもたりゃしねぇよなぁ」
僧侶「うっく、グズ、ばか。あなたが泣いたら私も・・・うううあああああ」
戦士「死ぬときくらいはさ、グズ、かっこよくクールにだれかかばって死ねるかなって、おも゛ってだ」
戦士「なのによ・・・首から下まったく動かないなんてさ、情けないよな・・・ばっかみてー」
僧侶「・・・・あぁ、闇がせまってきます」
戦士「・・・・魔王・・・立派な・・・魔王になっちゃってさ・・・はは」
魔王「・・・グオオオオオオオ!!!!!!!」
ズズ・・・
ゴゴゴゴ
――――ヒュン
勇者「とまって」
魔王「ゴゴ・・・・ゴゴ」
戦士「・・・・ゆう、しゃ・・・?」
僧侶「勇者さま・・・? 勇者様!?」
勇者「ねぇ・・・・魔王さん・・・だよね?」
魔王「ゴオオオオ!!!アアアアアアアア!!」
勇者「・・・・泣いてるんだね。わかるよ」
勇者「魔王さん、優しいから・・っ!」
魔王「アアアアアアアアアア!!!」
▼ソレは巨大でいびつな腕を大きくふりかぶった
魔王「ア゛ア゛アアアアアアアアアア!!!」
ゴースト「まるで地獄がよんでるようだぜ・・・」
ゴースト「にしてもあの小娘・・・正気か、あんな化物に立ち向かうなんて俺はごめんだね」
ゴースト「けっ。馬鹿な魔王め、力に飲み込まれよった」
ゴースト「・・・・だがあれこそが、我らが永久の歴史をかけてたどりつきたかった、進化の果てなのかもしれん」
ゴースト「力だけの世界の到達点・・・ククク、おもしろくなるぞ!」
ゴースト「ひひゃははははは!! あああアアアアアあああああああああっ」
ゴースト「ガ――――――
▼巨大な腕は周囲のすべての闇の力を集め、さらに膨らんでゆく
勇者「・・・」
勇者「魔王さん・・・」
殺してくれ・・・
だれでもいい・・・私を・・・滅ぼしてくれ
そうだ、貴様でいい。私を・・・
苦しいんだ・・・
少女よ・・・貴様は・・・誰だ・・・
いや、知っている・・・?
貴様は・・・
きみは・・・・・
あなたは・・・?
勇者「勇者です!! 魔王さん! 勇者です!!」
魔王「ガガガガアアアアアアアアアアア!!」
この子は・・・運命の子
正義の象徴・・・
魔王「コロシテクレ・・・コロシテクレ・・・」
勇者「・・・・魔王さん。いま・・・助けてあげます・・・」
闇をきりひらく剣
新しい世界の樹立には・・・絶対に必要な存在・・・
魔王「コロシテクレ・・・コロシテ・・・」
勇者「はい・・・わかりました」
あなたは、こんな私の悪魔の手ですら、清めてくれるのだろうか
君が・・・かつてそうしてくれたように・・・
勇者「魔王さん!!!!!」
ヒュン――――――
▼勇者は魔王の懐へ転移し、聖なる剣で
▼魔王の巨大な心臓を貫き
▼すべての力を注ぎ、振り払った
魔王「ガッ・・・」
そうか・・・
あなたは・・・・私の・・・
どうりで・・・ふふ、おかしな気分になったものだ
魔王「私は・・・つくづく愚かだな・・・」
勇者「――」
魔王「なんにもないなどと・・・そんなこと、なかったのに・・・」
僧侶『魔王さん!』
戦士『魔王!』
小さきものたちよ・・・
勇者『魔王さぁん!!』ニコニコ
儚き少女よ・・・
女『あいかわらず、とんがっているな』
女『好きだよ。愛してるかも』
君は・・・笑うだろうか・・・
笑ってくれたら・・・いいな
▼ソレの滅びの咆哮は、大気を震わせ
▼世界中に、ひとつの歴史の終わりと始まりを告げた
戦士「魔王・・・」
僧侶「見てください・・・魔の国に・・・光が」
戦士「あぁ、見えてるよ。見えてるさ」
戦士「あいつがずっとほしくてほしくてたまらなかった・・・輝きだよ」
僧侶「勇者様は・・・?」
勇者「・・・・」
勇者「ありがとう。魔王さん・・・おかあさん」
勇者「僧侶、戦士・・・お、おっ・・・ぉ、お父さん!!お父さん!!!お父さん!!!!!」
勇者「おとうさん!! おとうさん!!! おとうさん!!!!」
勇者「私! 勇者です!! 勇者です!! 魔王娘の・・・・勇者です!!!!」
勇者「いま・・・私たちの・・・冒険は終わり」
勇者「世界を創る・・・ほんとうの・・・たたかいが・・・」
勇者「はじまり・・・ましたっ!!」
勇者「みていて、ください・・・っ」
勇者「魔王さん・・・ッ!」
勇者「うわあああああああああああああ!!!!」
▼その日、ようやく世界は誕生した
▼勇者はそれを守り、育て、次へと紡いでいく運命を
▼その小さな体で、背負うことになった
――――数ヶ月後
ポンッ ポンッ
勇者「あれ? ここ印鑑もれてるよー! もー!」
オーク「す、すいませんへへ」
勇者「はい! またもってきてねー!」
僧侶「勇者様、まもなく東の王とのご会食の時間ですよ」
勇者「あれ、もう?」
僧侶「ほら、はやくきがえないと」
勇者「わかってるよー。いつまでも子供扱いしないでよ!」
僧侶「はいはい、お酒のめるようになってからいいましょうねー」ナデナデ
勇者「うーー! この国では16歳からのめるようにします!」
戦士「あはは、独裁だ」
勇者「冗談だよぉ・・・えへへ」
僧侶「窓の外をごらんください」
勇者「んー?」ヌギヌギ
僧侶「・・・すこしづつですが、この国は綺麗になっていってます」
勇者「そうだねー」
僧侶「勇者様が、邪悪を全て祓ってくれたおかげですよ」
勇者「・・・・うん」
僧侶「お父上も、喜んでいることでしょう・・・ううん、魔王さんって呼んだほうがいいですよね」
勇者「ちゃんと魔王さんの仕事全部ひきつげるかなぁ・・・」
僧侶「大丈夫ですよ!」
戦士「あぁ、私らもいる!」
僧侶「それに、魔王さんの娘さんなんですから」
勇者「うん!」ニコッ
僧侶「・・・・・・・きゃんっ、可愛いっ勇者様!」ムニッ
勇者「ぎゃうううーー王様になにをするかー!!」
僧侶「あははっ! いつまでもぷにっぷにでいてくださいねー」
勇者「やだ! ぜっっったい大人になる! 魔王さんみたいになる!」
戦士「ムリムリ!」
勇者「なるもん!」
戦士「あんな所帯染みたのになりたいのか?」
勇者「かっこいいもん!」
僧侶「じゃあまずは家庭をもたないとですねー」
勇者「家族ならいるよ!」ギュ
僧侶「あら?」
勇者「えへへ」ギュ
戦士「お?」
勇者「ね?」ニコニコ
僧侶「・・・・えぇ。お姉ちゃんですよー」ナデナデ
戦士「・・・・じゃあ私は・・・お、お母さん!?」
僧侶「ついに認めましたね」
勇者「魔王さん!」
▼勇者は空へむかって呼びかける
勇者「家族って・・・いいね!」
勇者「しってるでしょ! とってもあったかいんだよ!」
勇者「だからね、魔王さん!!」
▼勇者は空へむかって呼びかける
勇者「ありがとう!! わたしたちはここにいるよ!!」
▼いつか、魔王のあたたかい魂が、迷わず帰るべき場所へ辿りつけるように
勇者「魔王さん!! ずっとずっと!!」
勇者「大好きだよ!!」
▼END