――また夜――
勇者「わー! やっと街についたよ!」
戦士「はぁーやっとかよ・・・」
僧侶「朝のアレがなければもっと早く着いていたのに・・・」
魔王「なかなか広そうな街ですね」
戦士「とりあえず酒場さがそうぜ」
僧侶「えー、飲むんですか?」
戦士「いやいや、私の街もそうだけどこういうとこはだいたい酒場が案内所も兼ねてんだよ」
魔王「なるほど・・・」
僧侶「じゃあ行きましょうか」
勇者「おなか空いたなー。酒場でなにかおいしいもの食べれるかな?」
僧侶「そうですねぇ、私はその前にお風呂に入りたいのですが」
勇者「えー先にたべたいよー!」
僧侶「わかりました。そうしましょうねー」
―街の酒場―
店員「へいらっしゃい。4人?」
戦士「おう。どうする? ほんとにたべてく?」
店員「うちのグリル肉はうまいよ。他の街からもわざわざ食べに来る客がいるくらいだ」
勇者「食べたい食べたい食べたい食べたい!」
戦士「いくら?」
店員「飲み物をつけて一人前68Gだよ」
戦士「高いな」
勇者「食べたい食べたい食べたい食べたい!」
僧侶「お金あんまりないですよ? 今晩の宿代もいるし・・・」
勇者「えーー!!」
魔王「しかたないです先に宿を探しましょうか」
勇者「うわーーーん!! お腹すいたっていってるのにー!」
戦士「貧乏旅なんだから我慢しろって。お前それでも勇者か・・・って私ら勇者だけど割引だめ?」
店員「ムリですね」
僧侶「いきましょうか。良い匂いでますますお腹すきますし」
店員「たべてってよぉ! ほんとおいしいから」
戦士「あーわかったわかった。また来るって(そのうち)」
魔王「お尋ねしたいのですが、この辺に手頃な宿はありますか?」
店員「そうだなぁ、大通りにはたくさんあるぜ」
魔王「ありがとうございます。では行きましょう勇者様」
店員「絶対きてね!」
勇者「ぶー」
僧侶「あはは、むくれてる勇者様可愛いですっ」ナデナデ
勇者「たべたかったのにぃ・・・はぁ、しかたないか・・・さよならグリル肉」
魔王「・・・」
・・・
―宿屋―
主人「いまから宿泊かい?」
魔王「えぇ、大人3人と子供1人です」
勇者「子供じゃないって!!!」
主人「じゃあ・・・小部屋二つでいいかい?」
魔王「え? あぁ、そうですね」
戦士「金かかるじゃん一部屋でいいだろ」
魔王「ですが・・・さすがに私と一緒は・・・」
戦士「いいんじゃねーの別に」
勇者「そうだよ! 魔王さん一緒に寝ようよ!」
僧侶「なっ!! それは絶対絶対だめです! 勇者様は私と一緒に寝るんですからー!!」
戦士「こいつに誤って抱きつかれたくないから別部屋ってのはありだな・・・」
主人「・・・どっちなんだい」
魔王「・・・すいません一部屋でお願いします」
―部屋―
勇者「ぼっすーん! わぁー! 久々のベッドだ!!」
戦士「きたねーからそのまま乗るなって」
勇者「ふかふかー・・・・・かな?」
僧侶「微妙ですね・・・まぁしかたないですこの値段ですから」
勇者「よし! 早速着替えてごはんたーべよ!」ヌギヌギ
魔王「・・・では私外にいますので」
勇者「えー?」ヌギヌギ
戦士「悪いな・・・やっぱ無理してでも二部屋したほうがよかったカナ」
魔王「いえいえ。どうぞごゆっくりお着替えください。終わったら声かけてください」
僧侶「はい。なるべく急ぎます」
ガチャン
勇者「魔王さんどうしたの?」
戦士「おめーはもうちょっと女らしく振る舞いな」ペシペシ
勇者「いたいっいたいよ!」
僧侶「ププ、戦士さんが言うことですかそれ」
戦士「・・・毎回これじゃ魔王が不憫だ」
僧侶「それはそうですけど。私はそんなに気にしてませんよ?」
戦士「あっそ」
僧侶「戦士さんって意外と気をつかう人なんですね」
戦士「お前たちと違ってまともな神経してるから」
僧侶「女の子ですね」
戦士「うるせー!」
勇者「早く着替えようよ。魔王さん待ってるよ!!」
戦士「・・・うい」
・・・
魔王「さて、みなさん可憐な姿にお着替えおわったことですし」
戦士「それ皮肉か? なぁ?」
勇者「えへへ。服が軽いとなんだか気分も軽くなってくるね」
僧侶「おしりは軽くなっちゃいけませんよ? うふふ」ツンツン
勇者「?」
魔王「ゴホン、ではお食事にしましょうか」
戦士「時間が悪かったなぁ。宿の食堂もうしまってるみたいだぞ」
魔王「そうですか、では外で食べましょう。屋台があったような気がします」
僧侶「いいですね」
勇者「わーい!」
魔王「の前に」
勇者「?」
魔王「先に女性陣はお風呂に入られたほうがよろしいかと」
僧侶「・・・」クンクン
僧侶「そ、そうですね・・・・」
戦士「ご飯はちょっとの間おあずけな」
勇者「!!」ガーン
魔王「私のほうがだいぶあがるのは早いでしょうから、浮いた時間に何か適当に買っておきますよ」
魔王「上がった後、部屋でたべましょう」
僧侶「いいんですか!? ありがとうございます」
戦士「じゃあお言葉に甘えて。そうさせてもらおっかな」
勇者「おいしいもの買ってきてね!」
魔王「はい」
僧侶「それじゃ♪ 勇者様いきましょ♪」
戦士「風呂ずっと入りたかったんだよ」
勇者「スライムにやられちゃってべたべたのねとねとになったもんね」
僧侶「いやんっ勇者様」
・・・
カポーン
魔王(静かだ・・・実にいい)
魔王(人の生み出した文化の中で、私はもっとも風呂というものが気に入っている)
魔王(命の洗濯とはよくいったものだな)
魔王(悔しいものだ。魔界にも大浴場を建設しようと、工事に着手した矢先にこのザマ)
魔王(完成していれば一体どれほどの民が喜んだものか)
魔王(まぁしかたあるまい。私に力と人望が足りなかった、それだけのこと)
魔王「ふぅー・・・」
魔王「先に酒でも買っておけば良かったか・・・」
・・・
カポーン
勇者「ねーねー僧侶ー」
僧侶「はい?」
勇者「自分で洗えるから・・・・」
僧侶「勇者様のお体の管理は私のつとめ」
勇者「やだ」
戦士「あはは拒否されてるぞ」
僧侶「こうやってじっくり見ないと小さな傷を見逃してしまうかもしれません」
勇者「ないよー・・・」
僧侶「ほらありました。背中に擦り傷」
勇者「えー?」
戦士「さっき勢いよく鎧脱いだときについたんじゃねーの」
僧侶「ね?」
勇者「そんなちっちゃな傷放っておけばなおるから!」
僧侶「ホイミ」
ペロリ…
勇者「ひゃああ・・・っ!! も、もー!!」
僧侶「これすごく効くでしょ?」
勇者「スライムを思い出すからやめてよ」
僧侶「む・・・失礼な物言いですね・・・」
僧侶「えいお仕置きです」ペロッ
勇者「うわああ、やめてやめて! ねちょねちょは嫌いだから!!」
僧侶「私なんてどうせスライムですよーだ」ピトッ
ヌリヌリ
勇者「うあー、助けてください助けてください」
戦士「泣かなくても大丈夫だ。このスライムは殴ったら死ぬ」
勇者「はぁ・・・はぁ・・・やっと解放された」
僧侶「んー、やっぱお風呂っていいですねー」
戦士「あぁそうだな。だけどお前がいると気が休まらねーよ」
僧侶「私戦士さんには何もしませんのでご安心を」
戦士「魔王には?」
僧侶「しませんよぉ。歳上趣味じゃありませんし。コブ付きにも興味ありません」
戦士「コブ付き・・・か?」
僧侶「あれくらいの歳だと普通そうじゃないんですか? 所帯染みてますし」
勇者「コブ付きってなに?」
僧侶「子供がいるってことですよ」
勇者「へー、魔王さんに?」
僧侶「そうです」
勇者「いないって言ってたよ! でも大人には秘密がおおいんだって!」
僧侶「へぇ。だとしてもなんら変わりませんけどね」
勇者「魔王さんは大人だなー」
僧侶「勇者様はお子様ですよね。可愛いですよー」ナデナデ
勇者「大人っていいなー・・・えへへ」
僧侶「・・・・え?」
戦士「は!(まさか・・・・)」
勇者「大人っていいよねー・・・」
僧侶「・・・・ほ、ほーら大人ですよ! みてみてここに大人がいますよー」
勇者「・・・うるさいなぁ」ペシン
僧侶「ひゃうっ、そんなとこぶっちゃヤです」
戦士「私も勇者くらいの歳のころは大人の人に憧れてたよ」
勇者「そうなの?」
戦士「自分に足りないものを持ってるじゃん? 渋さとか静かさとか、もちろん強さも」
戦士「だから本能的に求めてしまうっていうか・・・うんうん」
勇者「だよね! 早く大人になりたいよね!!」
戦士「ん?(あ、そっちか・・・)」
僧侶「大人になりたいだなんて勇者様、自分が子供だって言ってるようなものですよ?」
勇者「あ!」
僧侶「うふふ」
勇者「お、大人なんてよくないなー! 大人なんてどうでもいい! 子供になりたい!!」
僧侶「勇者様は大人でも子供でもきっと勇者様のままですよ」ギュ
勇者「またくっつくー、暑いから離してよ」
僧侶「ここも早く大人になるといいですね」
ペトペト
勇者「あ゛ーーーやめてよーー!!」