魔王「失脚してしまった・・・今後の生活どうしよう・・・」 9/14

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魔王「デーモン・・・お前はここで殺しておく! もうこの世界から消え去れ!」

デーモン「杖ももたねぇ魔導師風情が笑わせる!! ろくに魔法もつかえねぇくせによぉ!!」

魔王「・・・なら!」

ヒュン――

魔術師「ぐえ・・・・?」ズシュ…ボトリ

大目玉「お、おいお前・・・首が・・・」

魔術師「は・・・? が・・・・!? がああああああ!!!」

魔王「この杖・・・ずいぶんと安物だな・・・だがもらっておくぞ」

大目玉「す、すでで引き裂いただと!?」

魔王「事務職をなめてもらっては困るな」

魔王「ひさしぶりに力が湧いてくる・・・」ズズ…

大目玉「おおおお!! よくもおおお!!」

魔王「お前には魔力は必要ないな」

▼魔王は左手で空を払った

▼放たれた真空波が魔物たちの体を切り刻む

デーモン「ば、ばかな・・・お前がこんなに・・・・」

魔王「どうした。お前を助けてくれるやつはいないぞ」

デーモン「つかえねぇクソどもが!!」

戦士「形勢逆転だな」

勇者「・・・」

僧侶「・・・」

ボス猿「・・・」ポキポキ

魔王「・・・」ズズ

デーモン「はっ! 元魔王よ。てめぇ、爪を隠してやがったか」

魔王「私は力で全土を統一する気はない。ずっとそう掲げてきただろう? 行き過ぎた力など、不要なのだ」

デーモン「・・・ふざけやがって・・・! なめくさりやがって!!」

デーモン「うおおおお! まとめて消し炭になりやがれ!! ジゴ・・・スパーク!!!」バチバチ…

▼デーモンは地獄の雷を放った

魔王「そう、力はあらゆる手段にはなるだろう。それを否定しはしない」

魔王「・・・だが貴様らのように、それを結果にしてしまうおろか者共が世に蔓延っているから」

魔王「いつまでたっても平和にならないんだ!」

▼魔王は魔法反射障壁を繰り出した

▼反射した雷はその威力を何倍にもふくらませ、デーモンを飲み込んでゆく

デーモン「!!!!!」

デーモン「がああああ!!!」

勇者「!!」

戦士「なんつー光だよ!!」

デーモン「・・・が・・・は・・・あ」

魔王「まだ生きていたか。さすがにタフだな」

デーモン「な゛ぜ・・・きさまほどの・・・・・・力・・・・統治・・なん・・で」

魔王「・・・それが本当の私の業なのかもしれないな」

勇者「・・・魔王さん」

魔王「さぁ、とどめをさしてください勇者様」

勇者「・・・・でも」

デーモン「ぐぎぎ・・・があ・・・ゆう・・じゃ・・」

魔王「・・・悪虐非道の魔物にとどめを」

勇者「・・・・魔王さんがやっつけたんだから魔王さんがとどめをさせばいいのに」

魔王「・・・救ってあげてください」

勇者「・・・え?」

魔王「勇者の剣は、邪を払う聖剣」

魔王「あなたに殺されて、ようやく魔物たちは、清らかな魂と昇華し、天へと召されます」

勇者「そう・・・なの・・・?」

魔王「私は死んだことないからほんとうかどうかは知らないんですけどね」

勇者「・・・・・・うん」チャキ

デーモン「・・・ぐ・・ぁ」

勇者「・・・・・・ッ!!」ザクッ

デーモン「――」

勇者「・・・死んだ」

僧侶「・・・勇者様」ギュ

勇者「・・・」

魔王「お見事です。勇者様」

魔王(待たせてごめんな・・・仇はうったよ・・・君はこんなこと、望まないかもしれないけど)

魔王(いまの私には・・・こうすることしかできない・・・)

戦士「結局、滅ぼしあうしかないのかな」

魔王「そんなことはありませんよ」

戦士「でも・・・村は焼けて、人は死んで、魔王たちも・・・」

魔王「そんなことはありません。そのためにあなたたちや、私がいるんですから」

ボス猿「ウキュウ・・・」

魔王「そうですよ。私や彼らのように、手を取り合うことができる魔物もいる」

魔王「魔物には、変化の可能性が十分にあるのです。ただ彼らはしらない、あえて力を振るわない意味を」

勇者「・・・いこう。魔王を倒しに」

勇者「魔王を倒して、魔王さんが魔王になろうよ」

勇者「そうしたら・・・大丈夫なんだよね? こんな哀しい思いしなくていいんだよね!?」

魔王「そう願っています」

僧侶「一息ついたら、行きましょうか」

戦士「そうだな。いくらなんでも消耗しすぎた」

ボス猿「ウキュウ!」

勇者「あっ! ありがとー猿さんたち! 助かったよ!」

ボス猿「ウッキュウ!」

勇者「え? なぁに?」

魔王「いつでも帰りを待ってる、と言ってます」

勇者「・・・帰り? うん! 絶対みんなでこの国に帰ってくるよ!」

勇者「約束!」

ボス猿「キャウ! ウキャウウウ!!」

勇者「手がおっきくてゆびきりできないなぁー、えへへ」

――港町――

魔王「ようやくつきましたね。こちらには被害がでてないようでなによりです」

戦士「ふぉーーー! 久しぶりの街だー!」

僧侶「お風呂はいりたいです♪」

勇者「わー! お魚がいっぱいならんでるよー! おっきいよー! みてみて!」

魔王「買いませんよ」

勇者「買ってなんていってないよー!」

僧侶「勇者様は食べ物に目が無いですからね」

戦士「とりあえず酒買おうぜ」

僧侶「だめです! 一泊したら船にのるんですから。また酔っ払ったら大変でしょ」

戦士「お前がな」

魔王「ひさびさの休息ですし、すき放題羽をのばすのもいいでしょう」

勇者「やったぁ!」

魔王「ただし勇者様はお勉強がついてますけどね」

勇者「え~~~!? もう嫌だよー」

魔王「あらかじめ魔王を倒したあとのことを視野にいれておかないとダメなんです」

勇者「小言ばっかり・・・」

魔王「がんばって集中してお勉強できたらそこのアンチョビのサンドイッチを買ってあげましょう」

勇者「えっ!? ほんと!?」

戦士「イワシで勇者を釣る・・・」

僧侶「勇者様すぐつられちゃって可愛いですね」

勇者「さっそく宿にむかおう!」

魔王「安宿探しからですね」

戦士「街について最初にすることがそれって・・・・しみったれた旅だなぁ・・・」

僧侶「どうしてこんなにお金ないんでしょうね?」

戦士「さぁ・・・・貧乏神でもついてんじゃねーの・・・」

―宿―

店主「一部屋か二部屋か・・・」

店主「どっちなんだい!!!」ムキッ

魔王「・・・この予算で二部屋いけますか?」

店主「どっちなんだい!!」

戦士「足りないか。じゃあ一部屋で」

勇者「あのー」

店主「なんだい!」

勇者「以前会いませんでしたか」

店主「うちの兄弟はみんないろんな街で宿屋をやってるよ!!」

戦士「へぇ」

僧侶「どうでもいいですよ上の階いきましょ」

勇者「早くお風呂にはいりたーい!」

戦士「お、やっすい割には部屋風呂ついてんじゃん」

僧侶「あ、いいですねぇ。ここから海もみえますよ!」

勇者「はいりたーい!」

魔王「では私は船着場で明日の乗船手続きをしてきます。どうかごゆるりと」

勇者「・・・」ギュ

魔王「?」

勇者「えへー」

魔王「・・・・・いやいやいやいや、さすがにそれは無理ですよ。ダメです」

戦士「魔王さーん、勇者様のご指名だぞー」

僧侶「む・・・勇者様、私が体ならあらってあげますから!!」

勇者「じゃあ僧侶と三人ではいろー! この間の続き!」

魔王「!!」

戦士「しらねぇぞー・・・お と う さ ん」

魔王「グゥ・・・ほんとやることたくさんありますので、すいませんすいません」ペコペコ

勇者「にげた・・・」

僧侶「いくじなしですねぇ」

戦士「いじめんなよ」

勇者「いじめてないよ! 魔王さんすっごく喜んでたよ!」

戦士「お前が言うとそれはちょっと危ない表現だなー・・・」

勇者「?」

僧侶「罰ゲームでも考えときましょうか」

勇者「罰ゲーム! やりたいやりたい!」

僧侶「魔王さんに、です」

戦士「やっとけやっとけ。酒と昼飯かってくる」

勇者「はーい!」

僧侶「私葡萄酒で」

戦士「お前にはやんねー」

僧侶「もうっ!」

・・・・

魔王「ただいま戻りました。無事乗船許可がおりました」

魔王「・・・おや」

勇者「・・・」グデー

僧侶「おい勇者様ァ! もっとガーンと向かってこいよ、私の胸に飛び込んでこいよ」ユッサユッサ

勇者「あ゛~~~きもちわるいよー」

魔王「なんなんですかこれは・・・昼間っから・・・まったく」

戦士「あははは! でたー! 説教だー!」

魔王「戦士さんまで・・・」

戦士「お前も飲め飲めー! あ、それとも私と一緒にあそこでのむ?」

魔王「あそこ?」

戦士「 お ふ ろ ♪」

魔王「・・・・お水いれてきますね・・・」

戦士「あんだよー! 寂しい独り身をなぐさめてやってんのによー!」

魔王「余計なお世話ですし、あなたたちなんて私からしたら小娘ですよ」

戦士「その小娘に・・・あはははは! あはははは!!」

魔王「何がおかしいんですか」

戦士「プッ、真っ赤になってんのだーれだ!」

魔王「なってませんよ。ほら、これ飲んでください。あなた以前、酔うまでは飲まないって言ってたのに」

戦士「だーーーってぇ、忘れたいこといっぱいあるしぃ」

魔王(この人はこうやって鬱憤晴らしをしているのか・・・?)

戦士「ほれ、美女の酒だぞ。のまんかい」

僧侶「そうだぞー飲めー! 大人として失礼だぞー!!」

魔王「質の悪い酔っぱらいの処理をするのも大人の勤めです」

勇者「うえー・・・」

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