魔王「失脚してしまった・・・今後の生活どうしよう・・・」 2/14

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魔王「仲間か・・・・」

勇者「・・・・zzz ・・・うん?」

勇者「ぅー・・・・ねーねー」

魔王「! おや、勇者様」

勇者「どうして起きてるの?」

魔王「見張り番です」

勇者「え!? 魔王さん見張り番しててくれたの!?」

魔王「私が好きでやってることですので、勇者様は引き続きお休みください」

勇者「でもー・・・」

魔王「私は大丈夫ですから」

勇者「目、覚めちゃったよ・・・・あ、そうだ、お話しよ?」

魔王「いいですよ。なんでも聞いてください、私がわかることならなんでもお教えいたします」

勇者「何歳?」

魔王「うぐ・・・ストレートな質問ですね・・・」

勇者「?」

魔王「うーんと・・・私にもし仮に娘がいたらきっと勇者様くらいの年頃でしょう、とだけ」

勇者「えー、わかんないよ」

魔王「大人には秘密が多いのです」

勇者「なんでも教えるっていったのになー」

魔王「勇者様は16歳なんですよね?」

勇者「そうだよ?」

魔王(にしてはちょっと幼いような・・・)

勇者「あーあ、早く大人になりたいなー。そしたらもっと力も強くなって魔物を蹴散らしちゃうのに」

魔王「旅の中で嫌でも成長しますよ」

勇者「魔王を早くやっつける力が欲しいんだ!」

魔王「そうですか」

勇者「あれ、魔王さんは魔王なんだよね?」

魔王「元、ですよ。やっつけないでくださいね」

勇者「ってことは強いの?」

魔王「・・・・・ふっふっふ、強いですよ。怖いですよ」

勇者「・・・・」

魔王「勇者様みたいな小さな子一口で食べちゃいますよ?」

勇者「・・・・ていっ」ベシッ

魔王「いたっ」

勇者「あー、よわいなー・・・魔王さん魔王むいてないよー」

魔王「・・・確かに、向いてなかったんですねえ」

勇者「向いてないからやめちゃったの?」

魔王「いえいえ、やめさせられたというべきでしょうか」

勇者「だって弱いもんね!」

魔王「・・・・ははは、まぁそういうことにしておきましょう」

勇者「じゃあ次の魔王は強いの?」

魔王「そうですねぇ、すくなくとも私よりは強いですよ」

勇者「絶対倒すよ! そしたらその後また魔王さんが魔王やればいいじゃん!」

魔王「おやおやそれだとまた魔王が生まれてしまいますよ」

勇者「あれ? そっか! じゃあ魔王さんも倒さなきゃ!」

魔王「さぁもうお休みなさってください」

勇者「えーもっとお話したいよ」

魔王「だめですよ明日起きられなくなります」

勇者「うー・・・」

魔王「寝る子は育つ。私の国でもそういう言葉はあります」

魔王「たくさん寝ないと魔力も体も育ちませんよ」

勇者「わかった・・・じゃあさ」ゴロン

魔王「?」

勇者「おやすみ魔王さん・・・明日こそいっぱいおしゃべりしようね・・・・zzz」

魔王「困った子だ・・・」ナデナデ

勇者「スゥーー、スゥーー・・・zzzz」

魔王(この小さな身体で、一体どれほどの宿命を背負っているのか)

魔王(いずれ重さに耐えかねて、すべて飲み込まれてしまうかもしれない)

魔王(人の世もまた、なんと愚かしい・・・)

――朝――

勇者「よし! 出発するよ!!」

戦士「・・・・」

僧侶「・・・・」

勇者「あ、あれれ。どうしたの? 次の街めざそうよ・・・」

戦士「・・・・」

僧侶「・・・・そ、そうですねあはは」

戦士「おまえ、次からは離れて寝ろ・・・・」

僧侶「わ、わかってますよぉ! 好き好んで戦士さんなんて抱いて寝るわけないじゃないですか!!」

勇者「よくわかんないけどケンカはだめだよー」

僧侶「いきましょ勇者様! 朝からすっごく気分が悪くなりました」

戦士「お前なぁ! ちょっとは悪びれる様子をみせたらどうなんだ」

僧侶「シクシク、危うく汚れてしまうところでした・・・・」

勇者「けがれる?」

戦士「いーのいーの! お前は前歩いてろ」

僧侶「私・・・御存知の通り聖職者なんですよ・・・なのにこんなのってあんまりです。うえーん」

戦士「どこが聖職者だ! 勇者には時も場所もかまわず抱きついてるくせによ!!」

僧侶「勇者様は子供ですから」ケロリ

勇者「子供じゃないよ?」

僧侶「子供です」ナデナデ

勇者「あふっ」

戦士「魔王、なんとかいってやってくれよぉ。こう、説教とか得意そうだし」

魔王「そうですねぇ・・・では僧侶さんに一言よろしいですか?」

僧侶「なんですか?」

魔王「あんまり邪な心をもっていると、回復蘇生魔法の精度が落ちますよ。というおせっかいを」

僧侶「ななっ・・・・・だ、大丈夫ですよぉ、やだなぁ魔王さんったら」

勇者「よこしま?」

魔王「勇者様はどうぞ安心して前を歩いていてください」

――――

▼まもののむれが現れた

勇者「わー! これ知ってる! スライムだ!!」

魔王「スライムですか・・・うーむ」

勇者「どうしたの?」

戦士「よっしゃー! 本日一発目いただきぃ!」

ベニョン

戦士「あれ? なんだこの手応え」

スライム「ピキー!」

魔王「スライムはその特有の体質から物理攻撃をほとんど無効化してしまうのです」

勇者「あははほんとだー! 叩いてもぷにぷに跳ね返ってくるよ」ベシベシ

僧侶「ゆ、勇者さま危ないですよっ!」

スライム達「ピキーーー!!!」シュルシュル

ニュルリ…

勇者「うわわっ! どうしよっ絡み付いてくるよ!!」

戦士「ふりほどけねぇ!! 畜生つかまった!!」

魔王「という結果を生むので、魔法攻撃がない状態で挑むのは無謀です」

僧侶「そんなこといってないで助けなきゃ!!」

スライム「ピキピキー!」

シュルシュル

僧侶「きゃあああ!! やめてください離して!!!」

勇者「あははは、なんかべたべたするー!」

戦士「わらってる場合か!!」

僧侶「やだっ、なんとかしてください戦士さん」

戦士「このやろっこのやろっ」ベシベシ

スライム「ピキキーーーー!!!」ニュルニュル

戦士「わぁあああごめんごめん!! もう叩かないから許して!!」

魔王「困りましたね・・・」

戦士「おい魔王! 魔法つかえんだろ!! なんとかしろって」

魔王「いえ、それが攻撃魔法なるものは使えなくてですね」

戦士「役にたたねぇなああ!!」

魔王「すいません・・・ですが大丈夫です」

戦士「なにがだよ!」

魔王「スライムの捕食行為は人体にほとんど害はありません」

僧侶「捕食って!? これ食べられてるんですか!! きゃあああ!!」

魔王「主に人間の体表の老廃物や、体液、少量の魔力などを餌にします」

勇者「やーーくすぐったいよぉーあははは」

戦士「でっ、どうすんだよこれ!!」

魔王「いまからですと、そうですねぇ、お昼時には終わると思いますよ」

魔王「ですから安心してください。私、なにかお昼にあわせて食べられる物を探してきます」

僧侶「ちょっ、ちょっとぉ!! 薄情じゃないですか!!」

魔王「いえいえ、私には・・・・少々刺激が強い光景ですので」

僧侶「溶かされちゃったりしないんですか!?」

ニュルニュル…

魔王「ありません。毒性の強いバブルスライムだとかなり危なかったですね」

戦士「で、でもさっ!! いま他の敵に襲われたらやばいだろ!!?」

魔王「スライムの捕食中に手を出す魔物なんていませんよ。そこまでおろかじゃありません」

ニュルニュル

勇者「ひゃうっ・・・うぅ・・・あはは、なんかへんなかんじー」

魔王「・・・で、では失礼します。必ずもどってきますのでごゆるりと・・・」

戦士「おいこら! なにがごゆるりとだ! このやろ、このやろ!」ベシベシ

スライム「・・・」ムラッ

魔王「あ、捕食中に危害を加えようとすると怒ってますますひどく・・・って遅かったですね」

スライム「ピキーーーー!! ピキーーー!!」

ニュルニュルヌルヌル

戦士「わぁあああごめんなさいごめんなさいいいい!!」

僧侶「戦士さんの馬鹿ああああ!!!」

――昼頃――

魔王「ただいまもどりました。いやー川辺で良い魚が手に入りましたよ」

戦士「・・・ハァ、ハァ」

僧侶「うぅ・・・・ハァ」

勇者「・・・・んぅー・・・・」グッタリ

魔王「なかなか手ひどい目にあったようで」

戦士「ちくしょー・・・・・体べったべただ・・・・」

僧侶「許しませんあのスライム・・・・・聖職者である私をこんな恥ずかしい目に・・・・」

勇者「うぅー・・・・」

魔王「・・・」

魔王「しかしいままで以上にみなさんお肌がつやつやしていますよ」

僧侶「え?」

魔王「魔界ではスライムの捕食の習性を利用した美容がいま流行りなんです」

僧侶「ほんとですか!?」キラキラ

魔王「嘘です」

ベシッ

魔王「アイタッ・・・結構元気残ってますね」

勇者「うぅーー」

魔王「勇者様。お怪我はございませんね?」

勇者「うううう!!!」

魔王「?」

戦士「あーあー・・・怒ってる怒ってる・・・」

魔王「これがスライムという生物です。単純がゆえに危険でしょう?」

勇者「・・・最初はたのしかったのにやっぱり楽しくなかったよ!!」

魔王「そ、そうですか・・・そこは私が知る由ではありませんのでどうとも・・・・」

勇者「剣がつよくてもだめだなんて・・・」

戦士「私もしかして永遠にスライムに勝てない?」

魔王「そうですねぇ。せめて火が使えれば追い払うことはできるのですが」

僧侶「旅の商人はスライムからの護身をかねて魔法の杖などを持ち歩くそうです・・・忘れてました」

魔王「どうもいつも魔物が迷惑かけてます」

戦士「いえいえこちらこそー・・・ってお前さぁ!! 魔王なんだろ! 命令してなんとかしろよ!」

魔王「『元』です」

勇者「火の魔法をおぼえたらスライムをぶっころそう!」

僧侶「だめですよそんな下品な言葉つかっちゃ。戦士さんみたいになっちゃいますよ」

戦士「うるせーなー」

魔王「敵として立ちはだかる以上は倒すのもやむを得ないですね」

魔王「私としてはこころ苦しいものですがそれも割り切りましょう」

戦士「当然だ。魔物も味方したらいの一番にぶっ倒すからな」

魔王「はい」

勇者「うぅー・・・むかむかするなーーー」

僧侶「まぁまぁ、次に会うときまでに魔法おぼえましょ?」

勇者「うん・・・」

僧侶「お昼にしましょうか。魔王さんの採ってきてくれたお魚いただきましょう」

勇者「そうだね! いつまでも怒っててもしかたないよね!」

戦士「そうそう。切替が大事だ」

勇者「それにちょっと体も軽くなったし! とっても気持ちよかったし! よかったよね!!」

魔王「・・・」

戦士「・・・こ、こらぁあー!!」

勇者「??」

僧侶「聞かなかったことにしてあげてください///」

魔王「はい・・・」

勇者「え? 気持ちよかったよね!?」

僧侶「もうっ! 勇者様!!///」ペシペシ

勇者「お腹すいたね!」

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