女勇者『ごめんね…?』
女勇者『最後まで、迷惑かけちゃって…』
女勇者『…えへへ、こんな事言ったら怒られちゃうかな』
女勇者『あのね…本当はね?』
女勇者『勇者になんて、生まれたくなかったんだよ?』
女勇者『本当は……戦いたくなかったし…』
女勇者『綺麗な服を着てみたりも…したかったなぁ……』
女勇者『……でも』
女勇者『戦士くん…僧侶ちゃん…魔法使いちゃん…』
女勇者『みんなに会えて…みんなが一緒に居てくれたからねぇ…』
女勇者『私、勇者に生まれてよかったなって…思えるなぁ…』
女勇者『戦士くんの正義を教えてくれて…』
女勇者『…ずっと、守ってくれて……』
女勇者『えへへ…。やっと、私が守る番だねぇ』
女勇者『……』
女勇者『ねぇ、戦士くんが起きたら……伝えてね……』
・
・
・
魔法使い「今まで、ありがとう」
戦士「…………」
戦士「…勇者殿。俺は…守れなかったんだ」
女勇者「 」
戦士「…大切なものを守り抜けずに……何が正義か……」
女勇者「 」
戦士「……母上。…勇者殿を、一度だけ抱かせてはもらえないだろうか」
勇者の母「はい…。抱いてやって下さい」
戦士「…」すっ
女勇者「 」ぶらん…
戦士「…なんと小さい……なんと冷たい身体だ……」
戦士「勇者殿。済まなかった」
ぎゅ…
戦士「守ってやれなくて…済まなかった……!」
ぎゅ…
戦士「……」
僧侶「戦士さん。違うでしょ…?」
戦士「……ああ。……勇者殿」
女勇者「 」ぶらん…
戦士「今まで、ありがとう」
勇者の母「戦士様。僧侶様。魔法使い様」
戦士「…」
勇者の母「本当に…ありがとうございました」
僧侶「お母さん……」
勇者の母「あなた達に会わなければ…この子は、世界を救えなかったでしょう」
魔法使い「…」
勇者の母「…私からも、お礼申し上げます。ありがとうございました…」
戦士「…勇者殿を、お守りできませんでした。申し訳ありません」
勇者の母「…いいえ。最後に一つ、わがままを聞いていただけませんか?」
【町外れの丘】
勇者の母「ここが良いですね…」
戦士「…良い場所だ」
僧侶「本当。綺麗……」
魔法使い「これが、私達の望んだ世界……」
戦士「…勇者殿にも見せてやりたかった。母上、ここで良いですか?」
勇者の母「はい。ここで眠らせてあげて下さい…」
・
・
・
戦士「もしも生まれ変わるなら…今度は、幸せに生きて欲しい」
僧侶「…そうですね。今度は、普通の女の子として…」
魔法使い「…勇者様はきっと、もう一度勇者に生まれたいと思いますよ」
勇者の母「はい。だって…こんなに素晴らしいお仲間と一緒に居られたんですから…」
戦士「…そうだな。その時はどうか、勇者殿にも…この景色を見てもらいたい…」
僧侶「…………………」すっ
戦士「?…どうした、僧侶」
僧侶「……勇者様の為に、お祈りを」
魔法使い「お祈り…ですか?」
僧侶「…はい」
僧侶は女勇者の墓の前に膝をつき、
目を閉じて祈りはじめた。▼
僧侶『主よ…。私の声をお聞き下さい』
僧侶『…どうか、勇者様の魂をお救い下さい』
僧侶『勇敢で、憐れな勇者様をお救い下さい…』
僧侶『どうか、彼女が本当の正義を見つけられるよう…』
僧侶『勇者様を、お救い下さい』
勇者の母「…皆さん、本当にありがとうございました」
僧侶「…」ぺこ
魔法使い「…これから、どうするおつもりですか?」
僧侶「私は…教会に戻ります。迷える人々と…そして、勇者様のために」
魔法使い「…そうですか。私も故郷に戻ります。平和になった世界を、一緒に過ごそうかと」
僧侶「戦士さんは…?」
戦士「俺は…旅に出る」
僧侶「え…また旅に?」
戦士「うむ。正義とは何かを…見つけたい」
魔法使い「正義…」
戦士「力が足りなかったせいで、俺の正義は貫けなかった」
戦士「結局、思いだけでは守る事は出来なかった」
戦士「…だから俺は、正義を見つけたい。今度は、剣を置いて」
魔法使い「剣を置くんですか…?」
戦士「…俺には、もう必要ない。二度と握る事はないだろう」
僧侶「…剣が要らない世界になった事も、戦士さんや勇者様の正義があったからですよ」
戦士「…」
戦士「それでは…僧侶、魔法使い」
戦士「ここで、パーティーを解散しよう」
僧侶「はい。それでは…。皆さん、元気で…」
魔法使い「失礼します。また、いつか…。今度は、戦いではない場所で」
勇者の母「…皆様、本当にありがとうございました…」
・
・
・
・
・
戦士「皆、行ってしまったな」
戦士「…勇者殿。これでもう我々は、再び会う事はないだろう」
戦士「俺も、勇者殿や仲間達と旅が出来てよかった」
戦士「…ありがとう」
すた…
すた…
『ありがとう』
戦士「…?」
すた…
すた…
ポロン…
剣が眠る墓の前で
吟遊詩人は謡い伝える
始まりと終わりを知りながら
戦い続けた少女の物語を
朝と昼が繰り返すように
戦い続けた少女の物語を
大きな疵とドレスを身に纏い
戦い続けた少女の物語を
少女が最後に得たものは
深紅の剣
桜色の愛
藍色の理
無色の正義
吟遊詩人は謡い伝える
この詩を綴ったのは一人の少女…
=====================================
【SCENARIO】 ○○ ○○
【WRITER】 ○○ ○○
【CHARACTER DESIGN】 nanashi
【SPECIAL THANKS】 VIPPER
【PRESENTED BY】 ◆r3yksmPHg2
=====================================
ニア強くてニューゲーム
保存して終わる
保存しないで終わる