【祠】
トテトテ
女勇者「うわぁ…こんなところがあったんだぁ」
女勇者「なんだろう?さいだん?」
トテトテ
女勇者「……あのおねえちゃんが言ってた、大切なもの…って、なんだろう?」
女勇者「…」
『守るべきものを守る力…』
女勇者「なんだか…声が聞こえる…?」
女勇者「誰だろう…?」
『欲するものは…?』
女勇者「え?」
『欲するものは?』
女勇者「えっと……わかんない。ここに来いって言われたから…」
女勇者「私は…」
『…魔王を倒したいか』
女勇者「うんっ!」
『…仲間を守りたいか』
女勇者「うんっ!」
女勇者「えっとねぇ…。私は、なにより皆をまもりたいなぁ」
女勇者「…今までずっと、私が弱いせいで…迷惑かけちゃったから」
女勇者「だから、私は…強さよりも、みんなを守る力がほしい!だめ?」
『…ならば授けよう』
女勇者「ありがとう!」
『力を伴わない正義は虚しい』
女勇者「ふぇ?」
『心だけでは、誰も救えない』
女勇者「……?」
『心しておくが良い…』
『……勇者よ、力を授けよう。勇者にのみ許される、究極の魔法を』
ぱぁぁ……
女勇者「…!」
女勇者は自己犠牲回復魔法を覚えた。▼
【翌朝】
女勇者「…!」ぱち
僧侶「…すぅ……すぅ…」
女勇者「…あれ?朝…?」
女勇者「詩人のお姉ちゃん…?あれ?魔法は…?」
女勇者「……?」
女勇者「夢だったのかなぁ…」
女勇者「でも、こんなにはっきり覚えてる」
女勇者「大切なものがそこにある…?なんだっけ」
女勇者「えっと…。力がない正義は虚しいだっけ?ん…心では誰も救えない?」
女勇者「うぅん…なんだったんだろう?」
僧侶「…ん…」
女勇者「あ、僧侶ちゃん。おはよ」
僧侶「ふあぁ…勇者さま?あれ…今日は早いですねぇ…」ごしごし
女勇者「うん。なんだか目が覚めちゃった」
女勇者「えへへ、今日は私の方が早起きだったねぇ。おはよ」
僧侶「ふふ、負けちゃいましたぁ…おはようございます」ニコ
戦士「む。起きたか、二人とも」
魔法使い「おはようございます」
女勇者「うん!おはよう!戦士くんも魔法使いちゃんも早起きだねぇ」
魔法使い「ええ。もう日課のようなものですから」
戦士「俺も早朝稽古にな。もう日課だ」
女勇者「すごいなぁ。戦士くん、どんどん強くなっていくもんね」
戦士「…うむ。それも全て、今日という日のためだ」
魔法使い「いよいよですね…!」
戦士「最後に確認しておこう。装備は十分か?」
僧侶「はい。大丈夫ですぅ」
魔法使い「問題ありません。勇者さまは?」
女勇者「うんっ!大丈夫!これでいいよ!」
戦士「よし!では行こう」
女勇者「ねぇ、みんな!」
僧侶「はい?どうしましたか?」
女勇者「ぜったい、ぜったい!誰も欠けないで、帰ってこようね!」
戦士「うむ。当然だ」
女勇者「それから、みんなでまた一緒にカジノ!ね?」
魔法使い「ふふ、そうですね…そのためにも、頑張りましょう」
女勇者「うん!では、出発ぅ!」
【魔王の城】
女勇者「……」ごく…
戦士「大丈夫か?勇者殿」
女勇者「え、えへへ…ちょっとだけ怖いかな…」
戦士「心配するな。俺が居る」
女勇者「!」
戦士「僧侶も、魔法使いもだ。俺達は強くなった。もちろん勇者殿もだ」
女勇者「うん…!そうだね。しっかりしなきゃ!」
戦士「俺が必ずお守りする。安心するといい」
女勇者「ありがとう、戦士くん。私も頑張って手伝うからね!」
戦士「ああ。俺はこの日のために、強くなってきたつもりだ。任せてくれ」
女勇者「えへへ…かっこいいね、戦士くんは」
戦士「…勇者殿をお守りすると誓ったからな。しかも、自分の命を犠牲にすることなく…だろう?」
女勇者「うんっ!!」
戦士「この長く続く通路も、相手に不安感を与えるためのものだ。敵の策略にまんまとはまってやることはない」
女勇者「ふぇぇ…そんな意味があったんだぁ」
魔法使い「確かに、同じ景色が繰り返していると不安になりますね」
戦士「うむ。しかし、逆に考えてみろ。敵は我々に恐怖を感じて欲しいと思っているんだ」
魔法使い「!」
戦士「万全の状態で来られたくないと。敵の力量も我々と同等、もしくは俺達のほうが上だという証拠だ」
僧侶「そ、そうですね。ちょっとでも気休めになりますぅ…」
戦士「気は抜かないようにな。一本道は挟み撃ちされやすい」
僧侶「は、はさみうち!?」
戦士「うむ。しかし今の俺達ならば、並みの魔物に前後から襲われてもどうということはない」
僧侶「…そっかぁ。私達も、強くなってるんですもんね!」
戦士「もうずいぶん歩いたが、敵の動きはないな…」
僧侶「そろそろかも知れませんね。準備しておかなきゃ…」
女勇者「…」トテトテ
魔法使い「…勇者様、どうかしましたか?先ほどから静かですが…」
女勇者「なんだろう…?怒ってる」
戦士「?」
女勇者「すごく悲しい気持ちで、私を怒ってる…」
魔法使い「…なにか、見えるんですか?」
女勇者「んーん。そうじゃなくって…誰だろう?会ったことあるひとだよ」
僧侶「……?」
コツ…
コツ…
コツ…
戦士「…!気をつけろ。前から来るぞ!」
魔物「お久しぶりですね」
コツ…
コツ…
戦士「な!?」
僧侶「あ…あなたは……!」
魔法使い「どうしてここに…!?」
女勇者「え?え?…?」
魔物「覚えていただけたんですね。私は忘れもしなかった」
魔物「あなたたちに復讐するこの日を、夢にまで見ましたよ」
魔物「父を殺され、町を滅ぼされた恨みを、今ここで晴らしましょう」
魔物「私の町を滅ぼし、今もまだのうのうと世界平和を謳い続けるあなたたちを」
魔物「世界中の人々が許しても…あなたたちを自分を許しても」
魔物「私が、許させはしません」
女勇者「あの時の…女の子?いけにえの…?」
魔物「そう。あなたが魔物の手から救い出してくれた、いけにえですよ」
魔物「貴方たちが去ってから数日、私たちの町は魔物に襲撃を受けました」
女勇者「違うんだよ?あのね?私は、ただ…」じわ…
魔物「黙ってください。見苦しい言い逃れなど、聞きたいわけではありません」
女勇者「私はただ……いけにえが…死んじゃうのが嫌だったんだよぅ…」ぽろぽろ
魔物「その…幼い、身勝手な正義のせいで…!!!」
魔物「男は殺され!!女は嬲られ!!!それはもう、見るに耐えない光景でした…!!」
魔物「私もあなたたちを呪いながら、死を覚悟した時…」
魔物「私にとって神にも見えるお方から、チャンスをいただいたのです…」
魔物「この惨事を招いた元凶に復讐するチャンスを、いただいたのです…!!」
女勇者「…う…ひぅ…ご、ごめんなさい…!!ごめんなさい…!!」ぽろぽろ
女勇者「ごめんなさい…ごめんなさいぃぃ…!!」ぽろぽろ
魔物「あなたが泣いて悔やんだところで…父も、皆も、戻っては来ない…」
魔物「覚悟してください…!」
戦士「いかん!勇者殿!!!俺の後ろに下がっていろ!!」ぐいっ
女勇者「きゃぁ…っ!?」
戦士「魔法使い、僧侶!止むを得ない!行くしかない!」
女勇者「待って!戦士くん、まってよぅ!!」
魔物「ぐおぉぉおおおおおおお!!!!!」
戦士「うおおおおおぉおおお!!!!!」
ガキィン!!!
僧侶「勇者様…我慢して…!」
戦士「ぬりゃああああ!!」
戦士の攻撃!
ズシャアア!!!
魔物に192のダメージ!▼
戦士「…勇者殿には、指一本触れさせんっ!!」
魔物「ぐぅ…!!…ぐがぁぁ!!!」
魔物は大きく息を吸い込み、火炎を吐き出した!
ぶぉぉぉぉぉ!!!
戦士「くっ…!」
戦士は29のダメージ!
魔法使いは86のダメージ!
僧侶は97のダメージ!
戦士は女勇者をかばった!
戦士は21のダメージ!▼
魔法使い「冷気魔法(最大)!!」びゅおおおお!
僧侶「全体回復魔法(中)!」ぱぁぁぁ
戦士「ぬりゃあああ!!!」ばしゅ!!
女勇者「あぁ…うわぁ……!」
魔物「………ぁ……」
戦士「…はぁ…はぁ…。もう動けんようだな…。僧侶…」
僧侶「は、はい!」
戦士「…勇者殿に見せたくない…」
僧侶「…」こく
女勇者「いやだ…いやだよぅ…!」
女勇者「ねぇ、人を殺すの?私たち、世界の平和を取り戻すんだよ?なんで…」
僧侶「…ごめんなさい…!睡眠魔法(最大)…」
女勇者「…人を殺すの……?やめて…あげて……」
女勇者「………」
女勇者は眠ってしまった。▼
戦士「……すまない」
魔物「パパぁ……パパぁ…!」
僧侶「うっ……うぅ…」ぽろぽろ
魔法使い「……」
魔物「ぐ……ぐがぁぁ!!」ばしっ!
戦士に4のダメージ!▼
戦士「…許しては……くれないのか」
魔物「許さない……!!!絶対に許さない…!!」
戦士「……」
戦士は剣を魔物に振り下ろした。
魔物「ぎ…あ……ぁ」
魔物「……ぱ……ぱぁ」
魔物を倒した。
10032の経験値を獲得。
戦士のレベルが上がった!
魔法使いのレベルが上がった!
僧侶のレベルが上がった!▼
女勇者「…ん」ぱち
戦士「…起きたか、勇者殿」
女勇者「……!」がばっ
女勇者「…あの子は…?ねぇ、あの子は…?」