女勇者「勇者になんて、生まれたくなかったんだよ?」 9/12

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戦士「勇者殿。あの子は、倒さなければならなかった。わかってくれ」

女勇者「……そんな…いやだよぅ…」

僧侶「…」

女勇者「どこに…どこに居るの…?」

戦士「…あそこだ。見ないほうがいい」

女勇者「いや!!」

戦士「…勇者殿。先を急ごう」すっ

女勇者「離して!このままなんて行けないよぅ…!」

戦士「勇者殿…!」

女勇者「離してっ!!!」

戦士「…!」ぱっ

女勇者「…」たったった

魔物「 」

女勇者「…う……」

魔物「 」

女勇者「ごめんね?本当にごめんね…ごめんなさい…」

魔物「 」

女勇者「ごめんなさい…」ぽろ…

魔物「 」

女勇者「ごめんなさい!ごめんなさい!…うわぁぁぁん!!」ぽろぽろ

魔物「 」

女勇者「ああああああぁん!!うぇぇええん…」ぽろぽろ

魔法使い「……勇者様」

女勇者「えぅ…えぐ……」ぽろぽろ

魔法使い「…こうするしかなかったんです…わかってください…」

女勇者「…わか…ってる…」ぽろぽろ

魔法使い「え…?」

女勇者「だから……私も…ちゃんと…」ぽろぽろ

女勇者「私がしたことを、責任を…ちゃんともって行くの…!」

戦士「!」

女勇者「……私だけ、見ないでなんて行けない…」

女勇者「皆だけじゃなくて、私も…ちゃんと……」

女勇者「私は……勇者なんだから……」

僧侶「勇者さま…」ぽろぽろ

女勇者「…ごめんね。もう大丈夫」ぐしぐし

戦士「…もう少し休んで行こう。まだ落ち着いていないだろう」

女勇者「んーん。平気。泣いちゃってごめんなさい」

僧侶「…」ふるふる

女勇者「…うん、大丈夫。みんな、行こっ!」

戦士「…勇者殿…。うむ、そうだな。先を急ごう」

女勇者「うんっ!早く、戦いをおわらせようね!」

女勇者「もう、この子みたいな思いをする人は、いやだもん…」

魔法「…そうですね。もうこんな思いをする人を出さないためにも、急ぎましょう」

すたすた

トテトテ

女勇者「…早く、魔王を倒さなきゃ…!」

すたすた

トテトテ

魔王の側近「くっくっく。お待ちしておりましたよ」

女勇者「!」

魔王の側近「まさかあなた達があの半人半魔を倒してしまわれるとは…」

魔王の側近「あの娘には相当の実力を与えたと思っていたのですがね」

女勇者「まさか、あの子を魔物にしたのって…」

魔王の側近「いかにも。あなた達人間もなかなかに非常な生き物のようですね」

魔王の側近「それとも…やはり半魔の出来損ないには貴方達の相手は務まらなかったか…」

戦士「貴様!!」ぎり…!

僧侶「許せない…!!!」ぐっ

魔法使い「…あの子の命を、純粋な心を弄んだ…!」

女勇者「……!」わなわな

魔王の側近「くっくっく。何を怒っているのです?貴方達がしたことは正しい」

女勇者「…」

魔王の側近「今までも何千もの魔物を殺してきたではありませんか?」

魔王の側近「それが、貴方達の言うところの『正義』なのでしょう?」

女勇者「!」

魔王の側近「さぁ、かかっておいでなさい。私が、その愚かしい正義を打ち砕いてみせましょう」

女勇者「…許せない」じわ…

戦士「勇者殿」

女勇者「許せない…!許せないよぅ…!!」ぽろぽろ

魔王の側近「はぁっはっはっは!!勇者が、怖気づいて泣くのですか?」

女勇者「…どうしよう、戦士くん…!あいつが憎いよ…!!憎い…!」ぽろぽろ

戦士「…俺もだ」

女勇者「こんな気持ちが…!!正義なの…!?だって、私ね…こんなにも、あいつを…!!」ぽろぽろ

女勇者「こんな気持ちになるのが…正義なの…!?」ぽろぽろ

戦士「勇者殿。正義とは、正しいことを正しいと信じることだ。言っただろう」

女勇者「でも…でもぉ…!!」ぎりぎり

戦士「自分の正義を疑うな。もう二度と、あの子のような思いをさせたくないんだろう」

女勇者「…!」

戦士「今は戦うしかない。心を決めろ、勇者殿」

女勇者「…うん!あいつを……倒さなくちゃ…!」

魔王の側近「くっくっく。泣き言は終わりましたか?」

戦士「外道め…!」

魔王の側近「では…はじめましょう。魔王様には、指一本触れさせません!」

魔王の側近は両手を掲げて詠唱を始めた。

悪の気が側近の両手に集まっていく!▼

僧侶「なんて邪悪な気…!!びりびりしますぅ…!」

魔法使い「いけない…!僧侶さん、みんなに防御魔法を!」

僧侶「はい!」

僧侶は目を閉じ、詠唱をはじめた。▼

僧侶「ブツブツブツブツ……!」

魔王の側近「くっくっく。遅い!」

魔王の側近は溜まった邪気を戦士たちめがけて解き放った!

魔王の側近「暗黒魔法(最大)!!」

ぶぉぉぉぉん!!!

僧侶「ひ…!」

魔法使い「巨大すぎる…!!戦士さん、全体魔法ですっ…!」

戦士「いかん!!勇者殿、俺の後ろへ!!」ぐいっ

女勇者「ひゃぁ…!」

僧侶に103のダメージ!

僧侶「あああああぁっ!」

魔法使いに89のダメージ!

魔法使い「うっ…!!」

戦士に70のダメージ!

戦士は女勇者をかばった!

戦士に81のダメージ!▼

戦士「ぐああああああ…!!」

女勇者「…!!」

魔王の側近「くっくっく。他愛もない。勇者が仲間に庇われているような様では勝負は見えましたね」

女勇者「戦士くん、大丈夫?戦士くん!」

戦士「あ、ああ…問題ない」

女勇者「…回復魔法(小)!」ぱぁぁ

戦士のHPが21回復した。▼

戦士「俺のサポートはかまわん!勇者殿はとにかく自分の身を守ってくれ」

女勇者「でも…!戦士くん、腕が…!」

戦士「大丈夫だ。まだ剣は握れる」

女勇者「…!」

戦士「僧侶!サポートを頼む!いくぞ、魔法使い!」

魔法使い「はいっ!」

僧侶「ブツブツブツ…!」

僧侶「主よ、悪しき者の纏いし衣を剥ぎ取り給え!」

僧侶「守備力低下魔法(大)!」

ひゅうん…

魔王の側近「くっ…!」

戦士「ぬぅおおおおおお!!」

戦士の攻撃!

ごしゃああああ!!

魔王の側近に212のダメージ!▼

魔法使い「火炎魔法(最大)!!冷気魔法(最大)!!」

魔王の側近「な…!?同時に…!?」

魔法使い「爆発魔法(最大)!!」

魔王の側近に256のダメージ!

魔王の側近「ぐぁぁ…!!」ふらっ…

戦士「よし!たたみ掛けろぉ!!!」

魔王の側近を倒した。▼

戦士「はぁ……!はぁ……!」

女勇者「大丈夫…?ねぇ、だいじょうぶ?」

戦士「うむ…。勇者殿は、怪我はないか…?」

女勇者「私は平気だよぅ。でも、戦士くんも僧侶ちゃんも、怪我が…」

僧侶「えへへ、私は平気ですぅ。これくらい慣れっこですから」

女勇者「でも…痛いでしょ?血がいっぱい…」

僧侶「これくらいの傷なら、治りますから…。勇者様、腕にお怪我が…」

女勇者「え?これくらい平気だよ。ちょっと火傷しちゃっただけだから」

僧侶「いけませんよ。すぐに治療しないと。腕を出してください」すっ

女勇者「だめ…。先に戦士くんと、僧侶ちゃんの怪我を…」

僧侶「良いんですよ。勇者様をお守りするのが最優先ですから」ニコ

女勇者「でも…」

僧侶「回復魔法(中)」ぱぁぁ

女勇者「…どうして、最初に私の回復なの?」

僧侶「私たちは、勇者様を無事にお守りすること誓いましたからね」

女勇者「私、なんにも役に立ててないのに…。なんで…?」

戦士「勇者殿。それは気にすることではない」

女勇者「戦士くん…?」

戦士「勇者殿は、俺たちと違って望んで戦っているわけではない」

女勇者「…戦士くん達は、好きで戦ってるの?」

戦士「そうではない。俺達は、逃げたければ逃げられるのだ」

女勇者「…」

戦士「勇者殿は、そうではない。いわば正義を強制された人」

戦士「その年にして、戦うことを義務付けられた人。勇者であるがゆえに」

女勇者「私だって、義務だから戦ってるわけじゃないもん…」

戦士「それでもだ。俺達は、そんな勇者殿をお守りするためにここまで貴女についてきた」

魔法使い「勇者様がもし勇者として生まれなければ、ここい居ることはなかったでしょう?」

女勇者「…それは」

魔法使い「もしもの話をしても仕方がないですが…」

魔法使い「普通にお母様のもとで、毎日を平穏に送れたかもしれない…普通の少女として」

女勇者「…普通の女の子として…」

魔法使い「いつか言っていたでしょう?普通の女の子だったらなぁ…って」

女勇者「…うん。でも、もしそうだったら、こうしてみんなと一緒に居られなかったもん…」

魔法使い「そうですね。でも、こうして私達は出会えた」

魔法使い「勇者様が私達を仲間だと思ってくれるのであれば…」

女勇者「うん!もちろんだよ。戦士くんも、僧侶ちゃんも、魔法使いちゃんも…みんなやさしい仲間!」

魔法使い「ふふ、ありがとうございます。ですから、私達は…」

魔法使い「せめて、この旅が終わってからは、普通の女の子として生きてもらいたい」

魔法使い「だからこそ、私達は貴女をお守りするのです」

女勇者「…魔法使いちゃん」

僧侶「えへへ…だから、勇者さまは心配しなくても良いんですよ」

女勇者「そう…なのかなぁ」

僧侶「そうですよぅ。だって、私達は勇者さまをお守りするために集まったんですから」ニコ

戦士「うむ。そして、俺達はそのために強くなった」

戦士「魔王と戦えるほどに。それはきっと…」

戦士「魔王を倒すためよりも、勇者殿を守るためだ」

女勇者「私を守るために…強くなったの?」

戦士「そうだ。わかってくれるな?」

女勇者「うん。わかった!…みんな、本当にありがとうね…」

女勇者「弱い私なんかに、ここまでついてきてくれて」

僧侶「…」ニコ

女勇者「でもね?私にも、正義はちゃんとあるんだよ?」

魔法使い「もちろんです。私達今までずっと、勇者様の成長を見てきたのですから」

女勇者「えへへ。だから、一個だけお願い聞いてくれる?」

戦士「なんだ?言ってみなさい」

女勇者「私も、みんなを守りたいの」

戦士「…」

女勇者「あのね?私ね…みんな大好きだから…」

女勇者「みんなが私を守りたいって思ってくれるのと同じくらい、私もみんなを守りたい!」

僧侶「…勇者様」

女勇者「弱い私だけど…きっと、なにか役に立てることがあるから。だから…」

女勇者「私も、自分の正義をがんばってつらぬきたいなぁ」

魔法使い「…」

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