戦士「ふぅ…。ん?勇者殿はまだ寝ておられるのか」
僧侶「はい。一回起きたんですけど、眠いって」
戦士「そうか。昨日は疲れただろうしな」
僧侶「はい。戦士さんは、どこ行ってたんですかぁ?」
戦士「俺か?俺は稽古だ」
僧侶「ふぇ?!き、昨日の晩からですか?」
戦士「うむ」
僧侶「ひぇぇ…す、すごいですね」
僧侶「大丈夫なんですか?あまり無理しないで下さいよぅ…」
戦士「ああ。今日は一日この町に滞在するしな。大丈夫だ」
僧侶「でも…。ほら、怪我してるじゃないですか」すっ
僧侶「回復魔法(大)」
ぱぁぁぁ
戦士「…済まない」
僧侶「戦士さん、あまり自分を責めないで。勇者様が怪我をされたのは、戦士さんのせいじゃないですよ?」
戦士「うむ。…しかしまぁ、面白い情報も聞けたしな」
僧侶「面白い?」
戦士「ああ。たまには息抜きも必要だろう」
戦士「この町は夜になると、カジノが開く」
僧侶「カジノ…って、なんですか?」
戦士「大衆向けの賭場だ。なかには強力な武器などの景品もあるらしい」
僧侶「へぇ、面白そうですね。勇者様の傷も癒えたし、夜になったら行きたいなぁ」
戦士「子供のうちから賭博など覚えて欲しくはないが、たまの息抜きだ。これくらい許されるだろう」
僧侶「ふふ、そうですね」クス
【夕方】
女勇者「うーん…できないよぅ」
魔法使い「だめですよ。詠唱は魔法の初歩の初歩なんですから」
女勇者「だってぇ…魔法使いちゃん達はえいしょー?してないよ?」
魔法使い「私達も頑張って修行しましたからね。ほら、勇者様。もう一回」
女勇者「えーっと…ブツブツブツ」
ガチャ
魔法使い「あ、戦士さんに僧侶さん。お帰りなさい。どちらへ行かれてたんですか?」
戦士「うん?ちょっと下見にな」
魔法使い「下見?」
戦士「ああ。たまには息抜きも必要だろう。勇者殿、稽古はそのへんにして、遊びに行こうか」
女勇者「え?あそび!?」
トテトテ
女勇者「ねぇ、どこ行くの?お買い物?」
戦士「いや…勇者殿は買い物が良かったか?」
女勇者「んーん。どこでも良いの。ずっと遊びに行ってないから嬉しいなぁ」
戦士「そうか…息抜きも必要だからな」
女勇者「えへへ。戦士くん、なにして遊ぼうか?」
女勇者「ボール遊びにしようかな?それとも鬼ごっこ?」
女勇者「ままごとも良いかなぁ。家族ごっこ」ニコニコ
戦士「ままごと…は遠慮しておこう」
女勇者「えー…私がお母さんで、僧侶ちゃんは子供で」
戦士「着いたぞ。ここだ」
女勇者「ここ?うわぁ…ピカピカしてるね。おっきぃ建物…」
【カジノ】
女勇者「うっわ!すごい!人もいっぱい!」
戦士「はじめてだろう。俺も遊ぶのははじめてだ」
女勇者「私も。見るのもはじめて!」
戦士「今までためたお金で余裕もあることだしな。ほら、これで遊んでくるといい」
女勇者「わぁ、500Gも?!すごいねぇー…あ、あれは僧侶ちゃん?」
戦士「ああ、僧侶も先に遊んでいる。勝てば強い武器ももらえるようだから、頑張ってな」
女勇者「はぁい!僧侶ちゃーん」トテトテ
戦士「たまには、こういうのも悪くないだろう。俺も遊ぶか」
女勇者「僧侶ちゃん、どう?楽しい?」
僧侶「……うぅぅ……どうして2のダブルアップでAが出るんですかぁ…ひどい…」
女勇者「ねぇ、僧侶ちゃんはなにしてるの?」
僧侶「ふぇ?!あ、ああ、勇者さま。いらっしゃったんですね」
女勇者「うん!今日は遊ぶんだって!これはなに?」
僧侶「これはポーカーと言って、配られたカードで役を作るんですよ。勇者さまもやりますか?」
女勇者「うん!教えておしえて!」
僧侶「ふふ、わかりました。ベットはどうします?」
女勇者「これ!」
僧侶「あ、500G。まだメダル買ってないんですね。じゃあ私のメダル10枚あげますから、これで勝負です」
女勇者「うん!」
さっさっさっさっさ
女勇者「わぁ。見てみて、僧侶ちゃん。ぜんぶ一緒!」
僧侶「本当。フラッシュですね。ふふ、さすがに運がいいですぅ。ダブルアップしますか?」
女勇者「だぶる?何?」
僧侶「次のカードが、配られたカードより強いか弱いかを予想するんですよ」
女勇者「へぇ…。当てたらどうなるの?」
僧侶「もらえるメダルが倍に倍になっていくんです」
女勇者「すっごいね!やるやる!」
僧侶「はい。じゃあ、ダブルアップお願いします」ニコ
さっ
女勇者「J。見て、Jだって」
僧侶「Jは11っていう意味ですよ。ちなみにQは12、Kは13です」
僧侶「次のカードはどう思いますか?」
女勇者「Kだと思う!」
僧侶「へ?そうじゃなくって、上か下か…」
さっ
女勇者「ほら、Kだよ!」
僧侶「わぁ…お見事ですぅ…。もう一回?」
女勇者「やるやる!次はKより上か下かってことだよね?」
僧侶「はい」ニコ
女勇者「上!」
僧侶「…え」
さっ
僧侶「…ジョーカー…すごい」
・
・
・
女勇者「見てみて、こんなにいっぱい!!何枚だろうこれ?」
僧侶「1600枚…ですね」
女勇者「ねぇ、すごい?これすごい?」
僧侶「ふぇぇ……すごすぎですぅ…!!」
女勇者「はい、あげる!」
僧侶「え?えぇぇ!?」
女勇者「これ、僧侶ちゃんのだもんね。私も自分のメダル買ってくるー」
トテトテ
僧侶「あ、あはは…」
女勇者「すいませーん。これでメダルくださいなー」
バニーガール「あら。こんなところに来たらダメでしょうお嬢ちゃん」
女勇者「えー。いいもん。戦士くんたちと遊びにきたんだよ?」
バニーガール「保護者の方と一緒なのね。はい、交換しましょう」
女勇者「これでおねがいしまーす」
バニーガール「500Gで、25枚ね。はいどうぞ」
女勇者「ありがとー!えへへ、今日は遊ぶんだよ!」
バニーガール「ふふ、いいわね。がんばって」
女勇者「うん!さっきも当てたから頑張る!」
バニーガール「お嬢ちゃんに、運命の女神様が微笑みますように」ちゅっ
女勇者「なぁにそれ?投げキス?」
バニーガール「おまじないよ。ここではね、運命の女神様に嫌われちゃうと大変なの」
女勇者「ふぅん。ありがとー!」
トテトテ
トテトテ
戦士「……」
女勇者「戦士くん、どうしたの?」
戦士「俺は…自分の未熟さを猛烈に反省していたところだ」
女勇者「…どうしたの?そんな顔しないで?」
戦士「勝負事は何においても、引き際が大切だということを…なぜ失念したんだ…!」
戦士「これしきの勝負に勝てなくて、何が戦士か…!」
女勇者「そんなに落ち込まなくても大丈夫だよぉ。遊びなんでしょ?」
戦士「む?そうなのだが…」
女勇者「戦士くん、戦士くん」
戦士「うむ?」
女勇者「戦士くんに、運命の女神さまが微笑みますように」ちゅっ
戦士「……」
女勇者「おまじないなんだってー。知ってる?」
戦士「…勇者殿、恩に着る。もう一度立ち上がろう」
女勇者「えへへ、がんばって!」
すたすたすた
戦士「すまないが、もう1勝負。レートはさっきの倍だ」
女勇者「おー!頑張って戦士くん!」
女勇者「んん…いっぱいあって迷うなぁ。どれが楽しいんだろう」きょろきょろ
トテトテ
女勇者「あれ?なんだろうあの人だかり」
トテトテ
ざわざわ
がやがや
魔法使い「…スロットも面白いですね」
ガチャン!
ぐるるるるるる
ばしっ!ばしっ!ばしっ!
ギャラリー「おおおお!」
魔法使い「また揃いました…。これで元手の100倍はいったでしょうか」
じゃらじゃらじゃらじゃらじゃら
魔法使い「すみません。メダルの入れ物をもうひとつ持ってきていただけますか?」
女勇者「うわぁ…すごいなぁ、魔法使いちゃん。戦士くんに見せてあげたい」
・
・
・
女勇者「あー、遊んだねぇ。面白かったぁー…」
戦士「うむ。俺も良い息抜きになった」
僧侶「えー?戦士さん、すっからかんだったじゃないですかぁ」
戦士「……かたじけない」
魔法使い「勇者様はすごかったですね。運がいいのでしょうか」
僧侶「ううん。たぶん、そうじゃないと思います」
戦士「?」
僧侶「勇者様は、純粋にゲームを楽しんでましたから。私達みたいに、欲がないんですよ」
僧侶「ね。戦士さん?」ニコ
戦士「…う、うむ」
女勇者「見て、これ。景品でもらったの!」
戦士「これは…?」
女勇者「えっとねぇ、戦士くん用の剣でしょ?僧侶ちゃん用の盾、魔法使いちゃん用の帽子!」
僧侶「わぁ…これ、私達にくれるんですかぁ?」
魔法使い「…!」
戦士「この剣は…たしか20000枚で交換のものでは?」
女勇者「うん!戦士くんしか使えないから、あげる!」
戦士「勇者殿、自分用のものはなにかもらったのか?」
女勇者「え?あ…。えへへ、忘れちゃった」
女勇者「でもいいの。私、持っててもほとんど使えないから」
魔法使い「…」
女勇者「本当は、武器も好きじゃないしね。…えへへ、勇者がこんな事言っちゃ怒られちゃうかなぁ」
戦士「…すまない。ありがたく使わせてもらう。勇者殿」
女勇者「うんっ!」
戦士「さぁ、帰ろう。明日からは切り替えてまた頑張らねばな」
女勇者「そうだね!ね、戦士くん」
戦士「うむ?」
女勇者「今日は遊びにつれてきてくれてありがと!楽しかったぁ」ニコニコ
戦士「ああ。また、いつか遊びに来よう」
女勇者「えへへ、いつも遊んでばっかりじゃダメだけどねぇ」
僧侶「そうですね。じゃあ、こうしましょう。次は、世界が平和になってから」
女勇者「平和になってから?」
僧侶「はい。そしたら皆で、今度はゆっくり遊びましょうよ。ね?」
女勇者「そうだね!楽しみだなぁ。戦士くんも、そのときは勝てたらいいね!」
戦士「…うむ。次こそはかならず」
【物語終盤】
戦士「ぬりゃあああ!!!」
ばしゅっ!!
魔物を倒した。▼
女勇者「…」