魔王「間違えた…」 12/13

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姫様「ただいま~、なんかすぐ許可取れた・・・って私の枕が北向いてる!!!???」

町娘「―――なんか、羽目を外したかったっていうか・・・」

勇者「・・・先に言い出したのは、コイツでした」

町娘「なっ・・・!一番ノリノリだったのはおめーだろ!?」

勇者「そ・・・、そんなこと、ねぇよ」

町娘「はいはいはーい!コイツ姫様のアルバム漁ってましたー!!」

勇者「ばっ、お前!よけーなことチクんな!」

魔王「・・・醜い・・・。ぼ、僕は止めたんですけど・・・」

町娘「あーっ、そーやって一人だけ逃げんのかてめーは!」

勇者「自分だけ助かろーったってそうはいかねーぞ!おめーもベッド動かしただろーが!」

魔王「い、言われたことやっただけじゃん!」

姫様「・・・プリンセス・ナックル・・・!!」ヒュンッ

町娘「おぐぅ!?」ドゴォ

勇者「ぐはっ」ズドムッ

魔王「えべっ!!なんでぼぐまれ・・・」ゴトン

姫様「・・・とーにーかーくー!これから父上んとこそっこーで行けるから」

町娘「・・・りょ、了解です・・・」

姫様「ったく、人が働いてる隙に・・・」

勇者「・・・んで、どこ行きゃいいんだ、いつもんとこか?」

姫様「んー?いや、そこじゃなくて一つしたの広間で良いかって言われた」

勇者「ふーん、そんなとこあんのか」

姫様「あの部屋で五人は窮屈なんじゃね?まーいーっしょ、行くよー」

勇者「窮屈ってお前・・・、あんな広ぇ部屋・・・。金持ちの感覚は分かんね・・・」

魔王「・・・いよいよ、かぁ」

町娘「・・・おう、がんばろーぜ」

町娘「あたしも、たった二晩だけどよ、おめーと一緒に居たし、少しは・・・」

町娘「・・・うん。いいとこ、言えっと思うからよ」

魔王「・・・うん。よろしく頼むよ」

魔王「がんばろう、一緒に」

―――謁見部屋

王様「・・・おう、帰ったか。お帰り」

勇者「・・・うーっす」

姫様「ただいまー」

王様「どーだった?危険な魔王だったか?」

姫様「あー・・・、そこも含めて、ちっとお願いがあるんだけど・・・」

王様「どした、改まって。・・・んで、そちらの二人は始めまして」

町娘「は、始めまして・・・」

魔王「ははは始めまして」

王様「固くなんなよ。俺も、ただの人間だからな。王だけど」

町娘「・・・やっぱこう、なんかユルいんだよな・・・」ボソッ

魔王「ま、まぁ、予想はしてたけど・・・」ボソボソ

王様「んで、この二人がなんなんだ?新しい友達?」

姫様「ま、そんなとこ」

王様「そーか。友達が多いってのは、いいことだな。どこの子らだ」

町娘「えっと・・・」

勇者「・・・そっちの娘は、アレだ。例の・・・」

王様「・・・まさか、攫われた娘か?」

町娘「・・・ん」コクン

王様「おー、そーかそーか!良かった、生きてたのか!いやー、気の毒だったな今回は」

魔王「・・・・・・・・・」

王様「へぇ、そーか。ふーん・・・。んで、そっちが・・・」

勇者「・・・こいつは・・・」

王様「・・・今回の『魔王』、ってわけか」

町娘「―――ッ!?」

勇者「っ・・・」

姫様「なっ・・・、なんで・・・!」

勇者「バカッ・・・」

姫様「あ・・・」

王様「・・・ったく、ガキ共がコソコソコソコソなにしてやがるかと思ったら・・・」

魔王「・・・・・・・・・」グッ

王様「・・・始めまして、『魔王』。あんま王を舐めんな」

王様「『王』ってのは、こうでなくちゃならなぇよなぁ」

姫様「・・・待ってください、父上、これは・・・!」

王様「どうやったかわかんねぇけど、上手く魔力を隠してるみてぇだな・・・」

王様「・・・でも、俺には無意味。国の中のことなんて、全部丸分かりだ」

王様「・・・王だからな、俺は」

町娘「・・・てめぇ・・・」ギリッ

魔王「・・・今回は」

王様「あん?」

魔王「今回は、あなたにお願いがあって来ました」

姫様「魔王っ・・・」

勇者「・・・・・・・・・」

魔王「まず・・・、未遂とはいえ、あなたの娘さんの誘拐を企てていたことを、謝ります」

王様「・・・バーカ、結局『俺の国民』に手ぇ出してんだ、そっちも謝れ」

町娘「・・・っ」

魔王「・・・それも、謝ります。すみませんでした」スッ

王様「・・・ほぅ、なかなか殊勝なやつじゃねーか」

王様「んで?お願いってのは?金か、女か」

町娘「・・・違うっ!こいつは、そんな奴じゃ・・・!」

勇者「黙ってろ、お前が喋るところじゃねー」

王様「・・・そこで、被害者が憤るなんてなぁ。どーたらし込んだんだか、魔人が」

王様の一人称が「わし」から「俺」になっちゃったけど気にしないでね・・・!

町娘「・・・くっ」ギュウッ

勇者「・・・相手の動揺さそうのなんか、よくあることだ。我慢しとけ」ボソッ

町娘「分かってっけど・・・、そんなのって・・・!」

姫様「父上・・・」

魔王「・・・たらし込んだなんて、とんでもありません」

魔王「彼女には・・・、彼女達には、話を聞いてもらっただけです」

王様「へぇ、『どこまでが本当の話』を?」

魔王「・・・っ。・・・すべて、本当の、話です」

王様「・・・なるほど。んじゃ、その話ってのが、魔王様直々にしに来たお願いってか?」

魔王「その通りです」

王様「んー、なるほどなるほど。分かった、聞こうじゃねーか」

町娘「・・・魔王・・・」

魔王「・・・大丈夫」

魔王「・・・この国から、少し進んだところに、『村』があります」

王様「ふーん?初耳だな」

魔王「とある理由で、存在を知らせることが出来なかったのです」

王様「理由?大層な理由なのか」

魔王「・・・その村に住む住人は、すべて、『魔人』なのです」

王様「・・・!魔人が、村を作った・・・?」

魔王「・・・ええ。僕・・・私は、そこの代表として、この場に来ました」

王様「魔人が村・・・。魔人ってのは、どいつもこいつもテメェのことしか考えないやつだが」

魔王「確かにそうですが・・・、でも、私を始めとした住人達は、少し違います」

王様「違う、ね」

魔王「はい。少しずつではありますが・・・」

魔王「・・・皆、他人を思いやる感情が、芽生えて来ているのです」

王様「・・・ほぅ、魔人が、ねぇ・・・」

姫様「・・・ち、父上!」

王様「・・・んだよ」

姫様「私と勇者は、こいつや、他の魔人を見てきました!」

姫様「そいつらは、えーっと・・・、上手く、言えないけど・・・」

姫様「・・・私達と変わらない、フツーの、気のいい奴らでした!」

王様「・・・勇者、おめーの意見も、一緒か」

勇者「・・・ああ」

勇者「俺は今まで、そりゃもう阿呆みてーに、魔人も魔物も斬ってきた」

王様「・・・・・・・・・」

勇者「・・・そんな俺が言うんだ」

勇者「どんくらいこいつらが、『悪』じゃねーかってことぐらい、分かるだろ?」

勇者「自称、策士様よ」

王様「・・・っけ、相変わらず、口の減らねぇ奴だなぁ・・・」

王様「・・・んで、そっちの、被害者」

町娘「・・・!お、おう」

王様「お前は、一番長くコイツら魔人と一緒にいたわけだが・・・」

町娘「・・・・・・・・・」

王様「・・・どうだった、恨みはねーか。ひでーことされて、殺したくはなんなかったか?」

町娘「・・・あたしは・・・」

町娘「・・・あたしは、こんな悪ぃ育ちだから・・・、敬語なんて使えねぇし・・・」

町娘「・・・言うこと全部が、信じて貰えるなんて、思わねぇけどよぉ・・・」

勇者「・・・・・・・・・」

姫様「・・・お前・・・」

魔王「・・・・・・・・・」

町娘「でも・・・、でも、こいつらは・・・」

町娘「・・・こいつらは、良い奴らなんだよぉ・・・」ポロポロ

―――あ、僕も一本もらって良い?

町娘「・・・コイツと吸ったたばこは旨かったし・・・」

―――ほら、カンパーイ!

     か、かんぱーい

     カツン

町娘「コイツと飲んだ酒は、旨かったよ・・・!」

―――せっかくご馳走用意してんのに!

町娘「・・・飯は不味ぃし、カレーはなぜか冷てぇけど・・・」

―――こ、この体制だと、僕はずっと座ってなきゃならないんじゃ・・・

町娘「・・・コイツの膝枕は・・・、とんでもなく、あったかかったよ・・・!」ポロポロ

魔王「・・・・・・・・・」

町娘「一緒じゃねぇか・・・。あたしらと、なんも変わらねぇよ・・・」

町娘「・・・だから、だからそれを・・・」

町娘「・・・まるで、ツマむみてーに、扱うの、やめてくれよ・・・」グスッ

町娘「コイツらは・・・、コイツは、ヘタレでな・・・」

町娘「肝心なことなんもいわねーで、ウジウジしてる奴だよ・・・」グスッ

町娘「・・・でも、それだけなんだよ・・・」

町娘「あたしと、一緒なんだよ・・・」ポロポロ

町娘「・・・あたしは、そんな、コイツが―――」

―――君が居れば、がんばれるから

町娘「・・・大っ好きなんだよぉぉぉぉぉ・・・!!」

姫様「・・・っ」

勇者「・・・へっ」

魔王「・・・!!」

王様「・・・・・・・・・」

町娘「・・・認めてやって、くれよ、えぐっ、一緒なんだ、こいつらは・・・」ヒック

魔王「・・・お、落ち着いて、ね?な、泣かなくて大丈夫だから・・・」

町娘「・・・元はといえば、うぅ、てめーが、しっかり、しねー、から・・・」グスッ

魔王「え、あ、うん!そ、そうだね、ご、ごめん、本当、ごめん・・・」

町娘「謝んなばかぁぁぁ!魔王だろぉぉぉぉ・・・」グスグス

魔王「ご、ごめ・・・、あっ!違っ、うん、泣き止んで!ね?鼻かんで・・・」オロオロ

姫様「・・・あー、父上、女の子泣ーかした」

勇者「いーけないんだー、いけないんだー」

王様「・・・お、俺のせいか、これは・・・」

町娘「・・・っ!~~っ!!」バシンッ

魔王「えっと、痛っ!ど、どうすれば・・・、えっと!それで、痛、交渉というのはですね・・・!」

王様「・・・あー、なんか、いいよ、うん、もう。そっち介抱したれ」

魔王「えっ・・・」

王様「・・・腹の探りあいしてた俺がバカみてー・・・、あー、勇者、おめー酒買って来いよ」

勇者「あぁ・・・?んで俺が買ってこねーといけねーんだよ」

姫様「とりあえず父上、謝れよ」

王様「おめー、緊張が解けた瞬間強気になりやがって・・・」

魔王「な、なにがどーなって・・・」

王様「おい、娘さん」

町娘「えうっ・・・?」グスン

王様「なんか、すいませんでした」

魔王「頭下げたーっ!?な、なにしてんですか!?」

王様「あ?だって俺が泣かせちゃったし・・・」

王様「意地悪、しすぎちゃったな」

町娘「・・・?いじわりゅ・・・?」グスッ

王様「俺ぁ天邪鬼だからよ、コイツらがなんかしてこねーか、そこに兵集めてよぉ」

王様「んで、さっさとボロ出すように、おちょくってたんだが・・・」

町娘「・・・・・・・・・」

魔王「・・・・・・・・・」

王様「ところがどっこい、そうじゃなかった」

王様「村が出来たって?魔人が?そりゃ、すげーことだよ」

王様「まだ半信半疑だし、いろいろまだわけわかんねーけどな・・・」

王様「・・・とりあえず、さっきのは早とちりだ」

町娘「・・・・・・・・・」

王様「・・・誰もが許す、必殺のキング・謝罪・・・」

王様「・・・ごめんなちゃい☆」

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