魔王「間違えた…」 6/13

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勇者「はー?なんで柿ピーじゃねーんだよ。ピーナッツ入ってねーと意味ねーだろ」

姫様「おい、もうないのか?」

町娘「ペース早っ」

魔王「あー、彼ので最後かも

勇者「じゃあお前らの分ないじゃん」

魔王「買ってくる・・・、わけにも行かないか」

町娘「いーよ、お前買って来い」

魔王「えぇ!?また僕!?」

町娘「あ?あたしに買いに行けってか?」

魔王「そういう意味じゃなくて!僕が行ったら明らかに不審でしょ」

勇者「おっ、ついでに柿ピー買って来い。ピーナッツが重要だぞ」

姫様「チューハイじゃなくて、ビールがいいなビール!」

魔王「君たち僕のこと信用しすぎじゃない!?」

魔王「しかもビールって・・・、高いよ」

姫様「なんだよシケてんな・・・、ほら!」ピッ

町娘「うぉ・・・!万札だ・・・!」

魔王「太っ腹・・・!」

姫様「買えるだけ買って来て。飽きないように、チューハイも挟めよ」

魔王「い、いいのこんなに?」

勇者「いーよいーよ、金なんて腐るほどあんだからこいつ」ゴクゴク

姫様「金に糸目をつけないところが美しいだろう!」

魔王「えー、なんだっけ?忘れそう」

町娘「メモってけ。えーと、ビールにチューハイ、ツマミが・・・」

勇者「柿ピー。ピーナッツ入ってるやつだかんな。無かったら叩き斬るぞ」

姫様「甘味ー」

町娘「あと、たばことライター。ほれ」

魔王「ありがとう。って、結局僕が行くんだね・・・」

姫様「あー、色々飲みたくなってきた。ワインとか買えたっけ?」

魔王「あ、ワインなら少し上等なのが城にあるよ」

姫様「おー!じゃあ帰りに持って来い!」

魔王「了解。・・・じゃ、行ってくるから」

町娘「おう、走っていけ」ヒラヒラ

勇者「早くなー」ゴクゴク

魔王「とほほ・・・」トボトボ

勇者「・・・これで逃げたら、面白れーんだけど」

町娘「ないない、絶対無いな」

勇者「だよなー」

姫様「真面目そうだからなー」

町娘「・・・ただ臆病なだけじゃねーっすか?」

姫様「でも、そんなところがいーんだろ?」

町娘「なっ・・・!」

勇者「なになに、何の話」

姫様「とんでもねーのよこいつら」

町娘「ちょ、ご、誤解してる!ぜってー誤解してる!」

姫様「ごにょごにょ」

勇者「へー(笑)」

町娘「あっ!尾ひれつけたな!それは違ぇ話だかんな!」

姫様「まぁまぁ」

勇者「ずいぶんとまぁ」

町娘「そろって絡み酒か!アイツ帰ってこないと二人相手はしんどい・・・!」

勇者「この部屋、アイツの部屋だっけ?んじゃ、二人きりだったん?」

姫様「んー、やっぱ崖から飛び降りたのは失敗だったかな、って」

勇者「だから俺は止めたんだよ」

町娘「・・・っとにあることないことテキトーに喋りやがって!!」

姫様「でも壊されたくなかったっしょ?ピンクい空気」

町娘「だからありゃ・・・、ちょっと、気の迷いっていうか・・・」

勇者「ピンクい空気は否定しないのね」

町娘「てめ・・・!」

姫様「やっぱそーじゃん、けってーじゃん!美しいな!」

町娘「違う!今のは誘導尋問だ!ち、違うんだからな!?」

勇者「でも、攫われたほうと、攫ったほうだろ?」

姫様「どうかしたん」

勇者「つり橋効果とか」

町娘「え?」

勇者「極限状態のドキドキが、相手へのドキドキだと勘違いするってやつ」

勇者「ん?違ぇか。なんだろ、なんか他にもそんな話あったよな」

姫様「それも極端じゃないか?」

勇者「可能性として」

姫様「冷静なご意見だな」

町娘「じゃ、じゃあ・・・、あたしが、攫われて無意識に緊張してたときに」

町娘「アイツに優しくされたから~、ってことか?」

勇者「だって普通、ありえないんじゃねーの。否定はしないけどな」

町娘「・・・・・・・・・」

姫様「あ」

勇者「ん、あ、あぁ?た、例えばの話だ、例えば」

町娘「・・・じゃあ、例えばさぁ」

姫様「うん?」

町娘「状況は別になんでもいーんだけど・・・、その、くっついたとするじゃん」

勇者「誰と誰がが」

町娘「・・・誰かと誰かがだよ」

姫様「うんうん」

町娘「んで、そいつらがその、つり橋なんちゃらが原因でくっついたとすんじゃん」

勇者「・・・・・・・・・」

町娘「それって、嘘なんかな」

町娘「つり橋効果でくっついたやつらの間の恋心は、全部嘘っぱちなんかな」

勇者「どっちでもいーじゃねーか」

町娘「は?」

勇者「んだからよ。要するに、そいつらの『好き』は嘘かどうか、ってんだろ?」

町娘「・・・うん」

勇者「また例えばだけど、その男女のどっちかが相手を騙そうとしてるとすんだろ?」

勇者「そしたらそれは、嘘だ。『好き』なんて嘘っぱちだ。恋心なんて、ねぇよ」

姫様「遊びってやつ?」

勇者「遊びは遊びでいーんだけど・・・。んで、その、お前の例え話のやつら」

勇者「結局、どっちもだまされてるわけだろ?つり橋効果で」

町娘「うん」

勇者「じゃあ、嘘じゃねーじゃん。嘘じゃねーなら、それはちゃんと『好き』だ」

勇者「周りに何言われるかは知らねーけど、そいつらの間では、嘘じゃねーだろ」

町娘「・・・・・・・・・」

姫様「ま、君らはまた別だと思うよ」

勇者「そーそー、おめーらはつり橋効果とか考えなくていいだろ」

町娘「うん・・・、ん?」

姫様「しっかし魔王遅いねー」

勇者「どこまで買いに行ってんだ?」

町娘「お前らっつった?お前らっつったよな?」

勇者「だって今のはもう・・・、なぁ?」

姫様「もうストライクだったぞ。例え話持ってきちゃった時点で、ど真ん中直球ストライク」

町娘「いつあたしの話だっつった!しかも『ら』って誰だよ!あたしと誰だよ!?」

姫様「またまた(笑)」

町娘「なに笑ってんだ!あーもー!姫だからって敬語使ってたあたしが馬鹿だった!」

勇者「変なとこ律儀なんな」

町娘「無礼講だこのやろー!!」

姫様「おっ、いいね、臨む所だ!!」

魔王「ただいま。騒ぎ過ぎ・・・」

勇者「おせーよ」

姫様「お帰り、遅かったけど?」

町娘「まーたちんたらしたたろハゲっ!」ゲシッ

魔王「痛ぅ、パシらされてこの仕打ちだよ・・・」

姫様「まぁまぁ、彼女のは照れ隠しだからへぶっ!」

町娘「いーかげんにしろこのバカ姫が!」ゲシッ

勇者「おーおー、一国の姫を蹴るか・・・」

魔王「なんかあったの?」

勇者「仲良くなったんだろ。・・・柿ピーは?」

魔王「買ってきたよ、はい。・・・ていうかコレだけに二軒周ったんだけど」

勇者「知らねーよ、店に文句言え」

魔王「はい、ビール」

姫様「さんきゅー。あっ、ワインは?」

魔王「赤か白か聞き忘れたから、どっちも持ってきた」

姫様「気が利くねー、グラスは?」

魔王「後で取り入ってくるよ。・・・はい、ビール?」

町娘「・・・おう」

魔王「ん?顔赤くない?もう飲んでたの?」

町娘「ばっ・・・、赤くねーよ!さっさとよこせ!」

勇者「俺にもよこせ」

魔王「ほんと、ペース早いな。・・・僕もビールっと」

勇者「ま、味わうほど洒落たもんじゃねーからな」カシュ

姫様「乾杯しよーぜ!」カシュッ

魔王「あ、ごちそー様です。お釣りとレシート」

姫様「たらふく飲めよー」ヒラヒラ

町娘「・・・ん」カシュッ

姫様「ほい、かんぱーい!」

勇者「乾杯」

魔王「カンパーイ」

町娘「かんぱーい」

姫様「んぐっんぐっんぐっ・・・ぷはぁー!やっぱうめーな!」

勇者「そういや酒なんて久しぶりだな」ゴクゴク

町娘「あー、連日二日酔いかよ・・・」

魔王「あ、あんまり飲み過ぎないようにしないとまた・・・」

町娘「また?」

魔王「な、なんでもない」

勇者「つーか・・・、お前、話すことあんの忘れんなよ?」

魔王「あー、うん。それは大丈夫」

勇者「こうしといてなんだけどよ、まだ完全に許したわけじゃねーんだ」

勇者「・・・まぁ、許す許さないの話じゃねーけど、内容によっては叩き斬るからな」

魔王「うん・・・、肝に銘じておくよ」

姫様「勇者てめー、酒が不味くなんだろー」グリグリ

勇者「くすぐってーよ。・・・ん、まぁなんだ、とにかく飲もーぜ」

町娘「飲んでて平気なのか?魔王のこと斬るんだろ?」

勇者「はっ、酔っ払っても剣くらい振れるっての。勇者だからな」

町娘「へー、そいつは楽しみだな」

魔王「ちょ・・・!僕を斬ること前提で話が進んでる・・・!」

勇者「んで・・・、何だっけ?ああそう、理由理由」

魔王「とんでもなくおざなりになってきたな」

姫様「えっと、私を攫って交渉しようとしたんだよな?」グビグビ

魔王「・・・うん、そう」

姫様「交渉って、父上にだよな?なんだ、金か?」

魔王「ち、違うよ。お金なんかじゃない」

勇者「そもそも交渉ってのが、なぁ。人間臭ぇぞ」

姫様「もっと魔王らしく、ずがーんとばごーんと下品に解決できなかったのか?」

魔王「そんなことしたって、勝ち目無いでしょ」

勇者「へぇ、やっぱ相当知恵あんだな。上から目線で申し訳ねーけどよ」

姫様「そうだなー、戦ってたら苦戦してたかも」パクパク

町娘「・・・こいつに苦戦?どーいうこと?」グビグビ

勇者「あー、こっちとしては、単純に突っ込んでこられたほうが、倒しやすいんだ」

姫様「そもそも魔物ってのはな、凶暴なだけで、その思考回路は単純なんだ」

町娘「へぇ」

勇者「喋れる位の知恵を持った魔物。・・・『魔人』、ってとこか」

勇者「こっちの魔物対策としてはぶん殴って黙らせるだけだが、魔人はそこを掻い潜ってく」

町娘「掻い潜る?」

勇者「作戦を立ててくんだよ。わざわざ『待ち』の状態作ったり、人攫ったり」

姫様「そうすると、単純に殴って終わんないからさ。面倒なん」グビグビ

町娘「それじゃ、コイツが『魔物にしては頭いい』、ってことなのか?」

魔王「その評価はずいぶんだなぁ」ゴクゴク

勇者「まぁ、そーいうこった。人間様はどーしても上から目線でしか評価できねーけどよ」

勇者「コイツは、相当頭がよくできてる。ドンパチやらねーあたりがな」

姫様「んじゃ、いい加減交渉の内容だけど」

魔王「ああ、うん」

勇者「もともと戦いが好かねーんだろーけど、そんなやつらが人攫いだ」

勇者「結構な理由なんか」

魔王「ん、どうだろ。僕にもそのあたりはよくわかんないんだけど」

町娘「・・・・・・・・・」ゴクゴク

魔王「・・・そうだなぁ。ここから北に歩いたところに、小さな村があるんだ」

姫様「村?そんなもんあんの?」

魔王「あるんだよ。意図的に隠してあるんだけど」

勇者「お前、それって・・・」

魔王「うん、そう」

魔王「その村には、魔物―――君らが言う、魔人しか住んでない」

姫様「なっ、聞いてないぞ?魔人が、村を作るなんて・・・」

魔王「僕らが始めてなのかな?村ってほどでもないんだけど・・・」

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