魔王「間違えた…」 2/13

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―――魔王城

町娘「・・・あー、なんというか・・・。お前らって、信じらんねぇ・・・」

魔王「えー?ちゃんと注意したでしょ?」

町娘「味じゃねぇんだよ・・・、いや味もあるけど・・・」

町娘「あんなものを、旨そうに喰うお前らに気持ち悪ぃよ・・・」

魔王「せっかくご馳走用意してんのに!」

町娘「・・・あ、でもあのスープは喰えたな、何とか」

魔王「ああ、昨日の残りのカレー?」

町娘「カレー!?お前、アレ、カレーだったのか!?」

魔王「え?違った?」

町娘「ちげぇよ、全然ちげぇよ・・・、なんで冷たいんだよ・・・、カレー舐めんな・・・」

魔王「・・・うーん、やっぱここはしんどいね」

町娘「煙、もっくもくじゃねーか。よくここに居られたもんだ」

魔王「一応、ファブリーズ持って来たけど」

町娘「あー、意味ねーよ意味ねー。ニオイだけじゃねーんだ」

魔王「うーん・・・」

町娘「・・・おい」

魔王「なに?」

町娘「お前、まさかここに寝ろとか言うんじゃねーだろーな」

魔王「・・・自分でたばこ吸ったくせに、このふてぶてしさは痛ッ!!」

町娘「てめーも吸っただろーが!同罪だ!」

魔王「そりゃ吸ったけど・・・!一本だけじゃん!」

町娘「知るかバーカ!五十歩百歩だ!」

魔王「くっ・・・!なんか小賢しく理詰めしてきてるけど・・・!?」

町娘「どーすんだよ、おい。脱走すんぞ」

魔王「それだと君が死ぬんだって・・・。うーん・・・」

部下「・・・ちなみに、他に開きはありませんよ」

町娘「あん?こんなにでっけーのにか?」

部下「元々、古い城に身をおいているだけです」

部下「空き部屋はあれど、そこはネズミとクモの部屋ですよ」

町娘「はぁ?んじゃ、どーすんだよ。廊下に寝ろってか」

魔王「流石にそれは・・・」

町娘「おめーはどこに寝んだよ」

魔王「僕?僕は一応、色々指示を出してるからほとんど居ないけど・・・」

魔王「部屋はあるよ、夜はそこで寝てる」

町娘「よし、そこで寝るわ」

魔王「えぇぇぇーーー!?何言ってんの!?」

町娘「勘違いすんな、ちゃんと考えてるっての」

魔王「何を・・・」

町娘「おめーは、空き部屋で寝ろ」

魔王「とんでもない考えてた!」

町娘「はぁ?んじゃお前、どーすりゃいーんだよ」

町娘「こんな煙モクモクのところよぉ、居られるわけねーだろ?」

魔王「そりゃそうだけどさぁ・・・」

町娘「決まりだっつーの。てめーの部屋貸せや。そこで待機してりゃいーんだろ」

魔王「ちょ・・・!夜はどうすんの?」

町娘「知るかんなもん」

町娘「ま、おめーが理性保ってられるってんなら、おんなじ部屋で寝てやってもいーよ」

魔王「年頃の女の子がそういうこと言わないでって!」

町娘「んだよかわいー反応だなぁ、おい」

魔王「・・・はぁ」

町娘「んじゃ、さっさと案内しろや」

―――魔王部屋

町娘「はーん。でけーベッドだな」

魔王「まぁ一応、魔王だからね」

町娘「意味わかんねー、偉ぇとベッドがデカくなんのかよ?」

魔王「そういうわけじゃないけど。身の回りに上等なもの置かないと、下がうるさいんだ」

町娘「はっ。てめー、貧乏性くせーもんな」

魔王「ただ勿体無いって思うだけだよ・・・」

町娘「けっ、威厳もへったくれもねーなハゲ」

町娘「部下共に同情するわ」

魔王「手厳しいな」

町娘「さぁて、夜はどうすっかね」トントン

魔王「あ、禁煙だから」

町娘「はぁ?」

魔王「僕も吸うけど、たばこの煙のニオイがつくのは嫌なんだ」

町娘「ファブリーズしろ」

魔王「そういう問題じゃないって!」

町娘「知らねーよ・・・、早くほら、火」

魔王「ふふふ。僕が火を出さなければ、君はたばこを吸えないだろう?」

町娘「ちっ、ハゲが。つーかフツーにライターくらい常備してるっての」シュボッ

魔王「あっ!火持ってたくせに僕につけさせてたのかよ!って吸うなってば!!」

町娘「あー・・・、うめー・・・」プカー

町娘「あー・・・」スパー

魔王「うう、やっぱりこんな子攫うんじゃなかったよ・・・」

町娘「まぁまぁ、吸えよ」

魔王「ありがとう」スッ

町娘「ん」シュボッ

魔王「お、悪いね・・・」

町娘「結局吸ってんじゃねーかよ」

魔王「もう、一本も二本も一緒だって」スパー

町娘「へんなとこで思い切りいーよなー」スパー

町娘「あー、結局寝るのどーすっかな」

魔王「ん?いいよ、好きに寝ちゃって」

町娘「は?おめーどーすんだよ」

魔王「寝るよ?」

町娘「どこで」

魔王「ここで」

町娘「あたしは?」

魔王「ん?寝るんじゃないの?」プカー

町娘「どこで」

魔王「ここで?」

町娘「・・・・・・・・・」スパー

魔王「?」

町娘「・・・ばっ、て、てめーわけわかんねーこと言ってんじゃねーぞハゲがッ!!

魔王「痛ったぁッ!?痛い痛い多い!蹴り多い!あぅ!」ゲシゲシゲシッ!!!

町娘「少しは考えやがれっ!」

魔王「な、なにを・・・」

町娘「いっ、いろいろだよハゲっ!!!」

魔王「えー、もう、ワケわかんない怖・・・」

町娘「とーにーかーくーこらぁっ!もうアレだ、寝ねぇっ!!」

魔王「え!?マズくない!?」

町娘「酒もってこいや!」

魔王「しかも呑むの!?」

町娘「素面でやってられっか!買って来い!ひとっ走り!!」

魔王「もうなんだんだよ、もう。痛い、分かった買ってくるから!」

町娘「つまみにチータラも買ってこいや!!」

魔王「地味に出費がかさむな・・・」トボトボ

魔王「ただいま、・・・やっぱたばこ臭うなぁ・・・」

町娘「遅ぇっ!」ビュン!

魔王「へぶっ!」ビターン!

町娘「なぁにちんたらしてんだよ!」

魔王「この部屋唯一の枕を投げるなんて・・・」

町娘「で、買ってきたのかよ?」

魔王「ビール高いからチューハイだけど。あ、あとツマミ適当に」

町娘「あぁ、いーよチューハイくらいで。チータラは?」

魔王「言われたとおり、ちゃんと入ってるよ」

町娘「おっ、よしよし。よこせハゲ」

町娘「んー、やっぱチータラだよな」モグモグ

魔王「適当に食べて」

町娘「んじゃ、乾杯といくか」

魔王「まさかこんなことになるなんてなぁ・・・」

町娘「元はといえばテメーらのミスのせいだろ」

魔王「まぁそうだけど。・・・まさか、人質と呑むとは」

町娘「煮えきらねーなぁ。ほら、カンパーイ!」

魔王「か、かんぱーい」カツン

町娘「んぐっ」

魔王「・・・・・・・・・」ゴクゴク

町娘「・・・っはー、うめー」

魔王「言ってくれればワインとかもあったけど」

町娘「あぁん?んな洒落たもんあんのか」

魔王「僕はどっちかといえば、そーいうほうが好きなんだよね。カッコいいし」

町娘「はっ!カッコよさで酒なんて飲んでんじゃねーよハゲ」グビッ

魔王「っていうかもともとそんな飲まないし」

町娘「あたしは、酒の味なんてよくわからねーからなぁ」

町娘「旨い不味いもわかんねーのに、高ぇのなんか飲んでらんねーよ」

町娘「安酒でじゅーぶん楽しめるっての」

魔王「・・・そういうもんかなぁ」

町娘「まっ、チーカマもあるし」ヒョイパク

魔王「・・・そういえば、どっか怪我とかしてない?」

町娘「あん?なんだ今更」

魔王「いや・・・。間違いとはいえ、手荒なことしちゃったし」

町娘「あー・・・、パレードに通りかかったらいきなり眠らされたしな」

町娘「気づいたらここだ、わかんねーよ」

魔王「そう」グビッ

町娘「あー、でも起きてすぐ壁とか蹴っ飛ばしてたからなー」

魔王「何でそんな無茶を・・・。見せてみて」

町娘「なっ・・・」

ヒョイッ

魔王「んー、やっぱ怪我してるよね。小さいけど、消毒しなきゃなー」

町娘「なっ・・・、な、な」

魔王「ん?膝の裏の・・・、運んでくるとき、木で切ったやつかなへぶぅッ!?」

町娘「い、いいいいきなり足持ち上げんなハゲッ!!」

魔王「・・・あ、あごはいはいっへ・・・」

町娘「このやろーてめーっ!何なれなれしく触ってきやがったっ!?」

魔王「いや、傷の具合がげふっ!」

町娘「変態かクソハゲ!こんだけ動けばへーきだっつのボケッ!!」ゲシッ!ゲシッ!

魔王「痛い痛い!なんで僕が蹴られなきゃいけないんだよ!?」

町娘「はぁ・・・!はぁ・・・!」

魔王「な、なんだかわかんないけどごめん・・・」

町娘「・・・み、みたのか」ボソッ

魔王「へ?」

町娘「その・・・、ぱ、ぱ・・・」

魔王「なにがなんだって?」

町娘「・・・なんでもねーよエロハゲッ!」スパーン

魔王「いてっ!なんなんだよもー!なにを見たって!?」

町娘「うるせーうるせーっ!飲むんだよこらっ!」グビグビ

魔王「あっ、一気飲みはやめときなって!」

町娘「・・・あー、ったくよぉ、とんだ災難だよ」

魔王「・・・他、どっか痛むとかないよね?」

町娘「ねぇよ。つーか怪我の心配するくらいならコレ!この手錠とれや」

魔王「流石にそれは・・・、建前だけどさぁ。一応、人質なわけだし・・・」

町娘「けっ、今更手ぇ広げられたくらいで、逃げよーなんて思わないっての・・・」

魔王「手、痛む?」

町娘「そこまでじゃねーけど、やっぱがちゃがちゃ擦れるしな」

魔王「どれどれ」

ヒョイ

町娘「・・・てめっ」

魔王「あー、ほんとだ。赤くなっちゃってるね」

町娘「・・・おめー、それ天然でやってんのか?」

魔王「え?なんかしたかな」

町娘「・・・ちっ」

魔王「やっぱり手錠ってのはよくないよね」

町娘「・・・知るか」

魔王「でも縄だともっと痛いし・・・」

町娘「・・・・・・・・・」

魔王「・・・やっぱ、うん。今更だけど、謝っとくよ。ごめんね」

町娘「・・・き、急になんだよ」

魔王「いや・・・、こんなことに巻き込んでさ」

町娘「・・・んっとに、ナヨナヨしたやつだなー、お前」

魔王「はは・・・、言い返せない」

町娘「・・・手、いつまで握ってるつもりだよ」

魔王「え?あ、ごめん。・・・あとで、薬持ってくるからね」

町娘「・・・・・・・・・」

魔王「・・・あれ?なんか顔赤くない?」

町娘「ばっ・・・!そ、そんなことねーよ!」

魔王「やっぱり一気飲みはよくないって」

町娘「・・・っ!ううううるせーよばーか!」ゲシッ

魔王「いっ、すぐ蹴るのはよくないと思うな!」

町娘「うっせー!飲ませろや!」

町娘「お、切れた」

魔王「ゆっくり飲みなよ」

町娘「辛気臭ぇやつがいるから、酔うに酔えねーんだよ」カシュッ

魔王「あーそーですか」

町娘「おら、お前もぐいっと行けよ、ぐいっと」

魔王「えー、ゆっくり楽しみたいじゃん」

町娘「いーからいーから!」

魔王「・・・酔ってるよね?」

町娘「酔ってねーよ!いーから飲めや!」

魔王「ちょ、うぐっ!?」グビグビ

・・・・・二時間後

町娘「おいこら魔王!飲んでるか!?飲んでるかぁ!?」

魔王「飲んでる飲んでる~!ひっく、うぇーい!!」

町娘「さっすが魔王!底なしだな!」

魔王「まだまだ飲めるぜ!酒もってこーい!!」

町娘「居酒屋じゃねーんだから!酔っ払ってんのかぁ!?ひっく!」

魔王「酔っ払うかって~!お!飲んでないんじゃない!?」

町娘「おめーより飲んでるよハーゲ!あっはっはっはっは!!」

部下「・・・五月蝿いと思ったら・・・。なにこのカオス」

魔王「おっ!いいところに!」

町娘「おらおら、飲めよ飲めよ!!」

部下「えー!?チューハイでこんなに出来上がってんのこの二人!?」

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