魔王「間違えた…」 8/13

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魔王「・・・でも、何も思ってなかったら、こんな計画立ててなかったと思うんだよね」

町娘「・・・ん」

魔王「失敗してるから、カッコつかないんだけどねー」

町娘「・・・そもそも、お前が魔王だってのがおかしーんだよ」

魔王「ぼ、僕だってそりゃ、そう思うけどさ・・・」ゴクゴク

町娘「ぷっ。『魔王様ー』だとよ、似合わねー」

魔王「・・・僕が、一番頭が良かったってこと」

町娘「あー?なんだそりゃ、自慢か?」

魔王「逆。・・・中途半端だ、なんでも」

町娘「・・・・・・・・・」

魔王「・・・ん」グビグビ

魔王「はぁ。・・・このままじゃいけない、と思って、僕が指揮した」

町娘「おう」

魔王「だから、みんな期待してるんだ。さっきの彼女だって、あれでも信頼はしてくれてる」

町娘「・・・・・・・・・」

魔王「・・・でも僕は、中途半端だ」

魔王「みんなの期待に、答えられてるのかなぁ・・・」

町娘「・・・ん」グビグビ

魔王「・・・・・・・・・」

町娘「・・・ぷはぁ。なーにウジウジしてんだよ、ハゲ」

魔王「ん・・・」

町娘「カッコつけよーとすんなよ。おめーはおめーだから、みんなついてきてんだろ」

魔王「でも・・・」

町娘「だーもう!シャキっとしろ、誰もカッコいいおめーなんかにつきたきゃねーよ」

町娘「いまのお前が、あいつらの『魔王様』なんだ。それでいーんだよ」

魔王「・・・・・・・・・」

町娘「・・・っかー、らしくね。やめろよ、あたしにゃ似合わねー」ヒラヒラ

魔王「・・・うん、ごめん。ありがと」

町娘「・・・・・・・・・」

魔王「・・・・・・・・・」グビグビ

町娘「・・・あたしってさ、こんなだろ」

魔王「え?」

町娘「言動は悪ぃし、たばこは吸うし、酒は飲むし・・・」

魔王「あはは、自覚してるんだ」

町娘「・・・うっせ」グビッ

魔王「・・・・・・・・・」

町娘「ぷはぁ。・・・本当なら、あたしを探しに来るはずじゃん」

魔王「・・・え?」

町娘「攫われたら、助けに来るはずじゃん。勇者でも、兵士でも、なんでも」

魔王「・・・うん」

町娘「でも、来ない。愛想つかされてんだよ、あたしは」

魔王「・・・そんなこと」

町娘「・・・うちの親、クズなんだよ。すげークズ」

町娘「家事もしねー、ガキはほったらかし。互いに浮気しあって、喧嘩しまくってる」

魔王「・・・・・・・・・」

町娘「・・・まっ、今のあたしも人のこと言えるような真面目じゃねーけどなー・・・」

町娘「・・・勇者も兵士も、依頼が来なけりゃ動かない」

町娘「そーいうこった。あたしのことなんざ、心配するやつなんか、いねーんだよ」

魔王「・・・・・・・・・」グビグビ

町娘「・・・だから」

町娘「・・・だから、おめーに心配されたとき」

町娘「ちょっと・・・、ちょびっとだけ、嬉しかった」

魔王「ぶっ!?げほ、げっほ!!」

町娘「んだよ、汚ねーな・・・。大丈夫か?」

魔王「う、ん、げほっ、器官に入っちゃったえほっ、げほげほ!」

町娘「あーあー、しゃーねーな・・・、おら」トントン

魔王「げほっ・・・、はぁ、はぁ・・・」

町娘「落ち着いたかー?」

魔王「う、うん。もう大丈夫」

町娘「・・・なんでおめーは、あたしにそーやって接してくんだ」

魔王「・・・え」

町娘「・・・・・・・・・」ピトッ

魔王「・・・!?」

町娘「・・・なんとか言えよ、へたれ」

魔王「な、なんのことかなぁ・・・」

町娘「・・・あたしじゃなくても」

魔王「・・・え?」

町娘「・・・あたしじゃなくても、おんなじようにしたか」

魔王「・・・ど、どーだろ」

町娘「・・・・・・・・・」

魔王「・・・・・・・・・」ダラダラ

町娘「・・・知ってるよ、そんなの。かっこつけんな」

魔王「で、でも」

町娘「今更こんなこというの、自分でも虫が良すぎると思うよ」

町娘「でもよ・・・、お前は、あたしと居てくれただろ・・・?」

魔王「・・・・・・・・・」

町娘「散々蹴って、パシりにしてさ、悪かったよ、でもよ・・・」

魔王「え・・・」

町娘「・・・ほんと、嬉しかったんだ。ありがとな」

魔王「・・・・・・・・・」

町娘「・・・・・・・・・」

町娘「・・・なんか、言えよ」

魔王「・・・な、なんか、って?」

町娘「そりゃ・・・、・・・なんかだよ、なんか」

魔王「ん、ん~・・・」

町娘「・・・はぁ、お前ってほんと、そーだよな」

魔王「・・・え」

町娘「・・・もう、寝る」

魔王「ど、どこで・・・。ベッドは勇者と姫様が占領しちゃってるし・・・」

町娘「あ?おめーがいんだろ」

魔王「は・・・」

ゴロン

魔王「いっ・・・!?」

町娘「・・・おー、いいじゃん、膝枕」

魔王「こ、この体制だと、僕はずっと座ってなきゃならないんじゃ・・・」

町娘「・・・ずっと座ってろー、ハーゲ・・・」

魔王「え・・・、そんな・・・」

町娘「・・・あー、初めてだな、こういうの・・・」

魔王「・・・ちょ、本当に寝る・・・」

町娘「・・・zzz」スースー

魔王「寝ちゃったし・・・」

姫様「むにゃむにゃ、もう食べられないよ痛っ」ビシッ

魔王「!?」

勇者「・・・・・・・・・」

姫様「・・・・・・・・・」

魔王「・・・振り向けねぇ・・・!畜生終わった・・・!僕終わった・・・!」

町娘「・・・zzz」スースー

―――朝

魔王「・・・んぐ、・・・ん」カクッ、カクッ

町娘「・・・んー・・・」

魔王「・・・・・・・・・」カクッ、カクッ

町娘「・・・あー、コイツ、律儀に寝なかったんか・・・」

魔王「・・・ぐー」カクンッ

町娘「・・・つーか、あたしのせいか。ごめん」

魔王「・・・・・・・・・」カクンッ

町娘「・・・寝ていいよ」

魔王「・・・zzz」グー

町娘「ちょ、待て、倒れ―――」

ドシーン

魔王「・・・zzz」グーグー

町娘「・・・動けね・・・」

町娘「・・・・・・・・・」

魔王「・・・zzz」グースー

町娘「あー・・・、ったく・・・」

町娘「・・・でもま、いーか」ポンポン

姫様「・・・さくばんは おたのしみでしたね」ムクリ

町娘「!?」

姫様「―――ってお楽しみ真っ最中じゃん!?なにこれすげぇ!だいたーん!!!」

町娘「ちょ・・・!まてお前、これ、違・・・!」

姫様「おい勇者おいおい勇者おい!起きてみ起きてみ!?カメラ買って来いよひとっ走り!」

町娘「止めろっ!!」

勇者「・・・んー・・・あー、うっせーな・・・、頭に響・・・ぐー」

姫様「あー、こいつ朝弱いんだった。んだよー、損してるぜー」

町娘「だから・・・、これはその、違うんだっつのぉ・・・」

姫様「ふーん・・・、へー・・・」

町娘「・・・よからぬこと考えてんだろ」

姫様「んー?いいじゃん、密着できて。いいっしょ?」

町娘「ばっ・・・!エロい言い方すんな!!」

姫様「照れんなよ、いーじゃねーか」

町娘「~~~くぅっ!!」

姫様「なんだかなぁ、こう見せつけられっと、逆にイライラしてくるな・・・」

町娘「・・・お、お前こそ、勇者と一緒にね、ね、ねちゃ、寝ちゃったりして・・・?」

町娘「あ、あたしよりヤベーんじゃねーの?はは、は、やらしー・・・」

姫様「ん?ああ、あたしらはいーんだよ。婚約者だし」

町娘「・・・・・・・・・」

姫様「・・・ん?あれ?言ってなかったっけ?」

町娘「聞いてねーよ!なんだそれ!?婚約者!?」

姫様「んだよ子供じゃあるめーし。婚約くらいで四の五の抜かすなってー」ヒラヒラ

町娘「だってお前、そんなの・・・。あたしと、たいして歳かわんねーのに・・・」

姫様「普通だって、フツー。結婚もできりゃ子供も産めるよん?」

町娘「・・・だっから、おめー、なんでそーあけすけなんだよ・・・!」

姫様「あら、純情ちゃんにはまだ早かったかしらねー」

町娘「・・・お前とはもう、口聞かねー・・・」

姫様「あり?すねちゃった?」

町娘「・・・・・・・・・」

姫様「・・・うらやましいんだよ、私も勇者も」

町娘「・・・は?」

姫様「お互い認めてるからって、婚約だよ、婚約。一目ぼれとか、運命的な出会いとか・・・」

姫様「そーじゃなくて、婚約。決められたんだ、決めたんじゃ無くてね」

町娘「・・・・・・・・・」

姫様「もちろん、私はコイツのこと、結構気に入ってるし・・・」クイッ

姫様「外政の道具として、金に飢えた豚みてーな野郎と結婚させられるよか、マシだよ」

町娘「・・・・・・・・・」

姫様「・・・でもさ、時々、考えちゃう」

姫様「一目ぼれするくらいの人が現れたらなー、とか」

姫様「もしも、恋ができたらなー、とか・・・」

町娘「・・・・・・・・・」

姫様「・・・たぶん、コイツもそうだ」

姫様「だからお前達は、私らの理想の関係ってこった」

姫様「照れんなよ、胸張れ。じゃないと、私らの立つ瀬がねーよ」

町娘「・・・・・・・・・」

町娘「・・・後悔、してんのか?」

姫様「・・・まさか」

姫様「私にゃ勿体ねーくらい、男前なやつだよ」

姫様「きっかけはどーあれ、たぶん、お互いにちゃんと好きあえる」

町娘「・・・そっか」

姫様「・・・おとなげねーところあるけどなー」

町娘「お前がほっとけねーんだろ」

姫様「え?なになに?フォローしてくれんの?」

町娘「・・・だーもー、うっせ!そーゆーとこがお前にゃ無駄なんだよ!」

姫様「・・・・・・・・・」

町娘「・・・ん?どうした?」

姫様「・・・うっぷ、また気持ち悪い・・・」

町娘「はぁ!?ちょっ、ま・・・」

町娘「・・・あっ!あたし動けねぇ!お、おい!勇者!!」

勇者「・・・zzz」グースカ

姫様「・・・おぅふ」

町娘「が、我慢しろ、我慢!できるか!?」

姫様「むりぽ」

町娘「おい!おい勇者!起きろ!おめーの女がやべーぞ!!」

勇者「・・・zzz」グースカピー

姫様「おろろろろろろろ」

町娘「おい!勇者おい!起きろおいこらぁぁぁぁぁぁあああ!!?」

部下「―――言いたいことは」

町娘「いや、なんていうかその、あたしに非はないな、みたいな」

勇者「起こされたと思ったら大惨事だったんで出来ればずっと寝ていたかったです」

姫様「いやー。昨日で出し切ったと思って油断してました。まだ出るんだなぁ、と思いました」

魔王「幸せな夢を見ていた気がするんだけど・・・、ってなんで僕も正座させられてるの?」

部下「・・・ったく揃いもそろってどいつもこいつも・・・!!」ゴゴゴゴゴ

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