町娘「ちょ・・・!部下さん!なんか出てる!すっげー黒い、なんか出てる!!」
勇者「そ、そんな顔に合わないぜハニー・・・!」
姫様「お、怒った顔もたいそう美しいが、ででで出来れば笑っていただきたいなぁと!!」
魔王「待って落ち着いて!その顔はヤバいよギリギリ映せないよ!!」
部下「再三注意しましたよね・・・?何度目ですか・・・?」
部下「・・・魔王さまぁぁぁぁぁ!!!!」
魔王「ひ、ひいぃぃぃぃ!!何故僕!?一番関係ない!!」
部下「元はといえば、あなたがしっかりしてくださらないからぁぁぁぁ!!!」
魔王「だってこのことに関係な熱ぅぅぅぅぅううう!!!」
町娘(た、助かった)
勇者「助かった」
姫様「・・・水欲しいな」
魔王「・・・・・・・・・」
町娘「・・・わ、悪かったよ。んなスネんなって」
魔王「・・・みんなして僕を売ったんだ」
町娘「そ、そんなこと無ぇって!」
勇者「・・・つーか、めちゃくちゃ頭痛ぇんだけど」
町娘「一番最初に寝たくせに・・・」
部下「・・・では、朝食・・・、案の定昼過ぎだけどもこの馬鹿ども・・・」
姫様「あ、先にお水貰え・・・、うぶ、まだ気持ち悪いかも」
部下「トイレに参りましょう。着いてきてください」
姫様「・・・か、かたじけない・・・」
バタン
勇者「・・・ったく、しょうがねぇやつだな」
魔王「僕らは食堂に行こうか、せっかく用意してくたし」
町娘「・・・おい」
勇者「んー?」
町娘「その・・・、聞いたんだけどよ。こ、婚約のこと」
勇者「あー?んなこと喋っちまったのか、あいつ」
町娘「・・・やっぱ、隠してたんか?」
勇者「隠すようなことじゃねーけどよ。あんま、知られたくねーことだよな」
魔王「・・・何の話?」
町娘「それって・・・、好きじゃねーからか?やっぱ」
勇者「・・・はぁ?」
町娘「だって・・・、隠してたろ」
町娘「アイツは・・・、姫様は、お前のこと、好きだっつってたけど・・・」
魔王「・・・?」
勇者「けっ、いらねー心配してんじゃねーよ」
町娘「だって・・・」
勇者「・・・んな心配しなくたって、俺の方がゾッコンだっての」
町娘「・・・は?」
勇者「婚約だなんだ言うと、そーいう目でしか見られなくなんだろ」
勇者「・・・俺らはぱっと見、『そう』は見えねーからな」
勇者「そーすっと、今度は非難されるじゃねーか。そーいうの、アイツは傷つく」
町娘「・・・じゃあ、お前って・・・」
勇者「へっ、よけーな気ぃ回さなくたって、俺らはちゃんとなってんだよ」ヒラヒラ
勇者「・・・おめーは、自分のこと気にしてりゃいーんだ」ボソッ
町娘「なっ・・・!てめっ・・・!」
勇者「一本取った気になってんじゃねーよターコ。おら、飯行くぞ、腹減った」
魔王「ね、ねぇ。何の話?婚約がどーとか・・・」
勇者「・・・教えてやんねーよ」
魔王「えー?秘密にすること?」
勇者「・・・さくばんは、おたのしみでしたね」ボソッ
魔王「あっ・・・!」
勇者「かっかっか、あそこまでさせて、ありゃあねーわなー」
魔王「!だ、だって・・・!君らが居たし・・・!」
勇者「結構結構、言い訳にしか聞こえねーんだぜ?え?」
魔王「・・・ど、どうすれば良かったのかなぁ」
勇者「あん?んなもん、こー、押し倒してだな・・・」
町娘「あっ、てめぇ!なんの話してやがる!」
勇者「大人の話だ純情っ娘が!」ダッ
町娘「んだとこの不良勇者!蹴り飛ばすぞ!待てや・・・!」ダッ
魔王「・・・とりあえず、食堂、その階段下りてまっすぐだからー・・・」
勇者「―――想像を絶する・・・」
町娘「・・・だよな、やっぱそうだよな・・・」
姫様「・・・私、またリバースしそうになったんだけど・・・」
魔王「おかしいなぁ、なんでだろ。ご馳走なのにな・・・」
勇者「食材的には普通なんだろ?変な虫とか葉っぱとか入れてないんだろ?」
魔王「う、うん、たぶん。そういうの嫌かと思って言ってあるし」
姫様「・・・それだったら確実にお茶の間大パニックだったぞ・・・」
町娘「なぁ、食生活見直せ・・・?ありゃまずいよ、二重の意味で・・・」
魔王「え、う、うん・・・。ん?そこまで言われる筋合いなくない?」
勇者「・・・あのスープはまだいけたけどな」
姫様「私、そればっかり飲んでた」
魔王「ああ、カレー?やっぱカレーが一番ウケいいね」
勇者「カレー!?お前、アレカレーだったのか!?」
姫様「嘘だろ!?大概にしろよ!!」
魔王「え、えー?違うの?僕らにとってはアレがカレーなんだけど・・・」
勇者「おい、カレー舐めんなよ、おい」
姫様「カレーに謝れ!なんで冷たいんだっつの!」
魔王「え、あ、ごめんなさい」
町娘「あー、お前、やっぱ本物のカレー食ったほうがいいよ」
魔王「でも、作り方わかんないし・・・」
姫様「・・・作ってやりゃあいいじゃん」
町娘「なっ・・・」
勇者「おー、作ったれ作ったれ」
町娘「な・・・、なんでそうなんだよ!」
姫様「いーじゃん、作ってやんなよ」
町娘「誰がっ・・・!」
魔王「え?作ってくれないの?」
町娘「~~ッ!!」
勇者「お、固まった」
姫様「葛藤してる葛藤してる」
魔王「なんだ・・・、君たちの言うカレーも、食べて見たかったんだけどな・・・」
町娘「・・・とで」
魔王「え?」
町娘「・・・後で、な」ボソッ
魔王「やった、楽しみにしてるよ」
姫様「・・・なぁ、私も作ってやろうか、後で」
勇者「お前、チョコ入れすぎっから嫌だ。自分で作ったほうが旨い」
姫様「・・・さぁて、コレからどーしよっか」
町娘「うーん・・・」
勇者「・・・とりあえず、状況の整理だな」
魔王「え?帰るんじゃないの?」
町娘「は?」
魔王「あ、いや・・・、このまま、帰るのかなぁ、って」
魔王「三人で帰ってくれれば、それでいいし。僕のことは、喋っても喋んなくても」
魔王「・・・できれば、殺しちゃったことにしてもらったほうが、楽だけど」
勇者「・・・村はどうすんだよ」
魔王「・・・なんとかするよ。おんなじ作戦を、別の国に仕掛けてもいいんだし」
町娘「ばっ・・・、じゃあ、あたしらは後味悪ぃまま帰れってのか!?」
魔王「いや、だって・・・、村のことは、君たちには関係ないことだからさ」
町娘「てめ・・・」
姫様「・・・水臭いこと言ってんじゃねーよ、バーカ」
魔王「は・・・?」
姫様「今更カンケーねーもなにも、ねーよ。どーにかしよう」
勇者「・・・んじゃ、まずは状況の整理だな。椅子テキトーに持ってこれるか?」
魔王「な、なんでそんな・・・」
勇者「・・・魔人が死んでんだろ?そりゃ、俺もどっちかって言えば殺す方だけどよ・・・」
勇者「・・・でも、無抵抗なやつを殺すようなことがあっちゃなんねー」
勇者「そこに、魔人も人間もねーよ。文句なんか言わせねーよタコ」
魔王「・・・・・・・・・」
町娘「どーせ、おめーまたミスるだろ?いつまでたっても成功しねーよ」
町娘「あたしに出来ることなんて、ねーかも知んねーけどさ、やっぱ」
町娘「ここまで巻き込まれたら、さ。最後まで。居させてくれよ。な?」
魔王「・・・みんな」
部下「・・・椅子の用意とのことでしたが」
勇者「ん、ああ、悪ぃな。俺らで入れっからそこ置いといて」
魔王「ご苦労様。ごめんね、雑用ばっかり押し付けて」
部下「いえ、それはいいんですが・・・」
部下「・・・・・・・・・」
魔王「・・・?どうかしたかい?」
部下「・・・私は、やはり、反対です。人間と強力するなど・・・」
部下「・・・信頼するに足るとは、思えません。何故、そんなことを・・・」
姫様「・・・かったいこというなよ、ねーちゃん!!」ダキッ
部下「ひぁっ・・・!?」
姫様「お、お・・・?これはなかなか・・・、ふむ。ふむふむふむ」モミモミ
部下「な、なにして、ちょ、やめ、あ、やめなさ・・・!」
勇者「・・・姫、お戯れが過ぎます」ヒョイ
姫様「なんだお前改まって・・・」
部下「ま、魔王様・・・」
魔王「な、なにかな・・・」
部下「・・・燃やしても・・・、構いませんか・・・」
魔王「何を!?ちょ、ちょっと待って、落ち着いて!」
部下「ご、ごほん。・・・とにかく」
部下「なんのメリットも無いあなた達が、協力してくれるなど・・・」
姫様「なに言ってんだ、メリットなら、十分あるだろ」
部下「・・・なんですか?」
姫様「ねーちゃんが死なねーって、保障が出来んだろーが」
姫様「私らはそれで、十分だっつの。得だっつーの」
部下「・・・・・・・・・」
勇者「・・・勇者なんて職業、命救ってなんぼなんだよ」
勇者「怪しむのはごもっともだけどよ。ま、そんなわけだ。勝手にやらせてもらうぜ」
部下「・・・そう、ですか」
町娘「・・・これから作戦練り直すんだけど、部下さんもどーだ?」
部下「私は・・・、まだ、他の仕事がありますので」
町娘「そーかい」
部下「・・・それに、まだ完全に、信じたわけではありませんから・・・」
勇者「へいへい」
部下「では、魔王様。・・・決まりましたら、ご連絡ください」
魔王「うん、必ず」
部下「・・・では」
バタン
勇者「・・・あったまかてーなぁ、魔人ってのはどいつも」
魔王「仕方ないよ。・・・他人を救うなんて、魔人の中じゃありえないことだったからさ」
姫様「・・・なかなかの揉み応えだったぞ、あのねーちゃん」
町娘「もう、絶対あんなことするなよ。次は炭にされるぞ」
勇者「・・・んじゃ、会議っと」
姫様「おー、こーやってテーブル囲むと、それっぽいな」
町娘「・・・で、結局どうすんだよ?何をクリアすればいーんだ?」
勇者「第一に、魔王の目的の達成だろ?なんだっけ?」
魔王「『村を、国として認めてもらう』」
町娘「結構な内容だなぁ」
魔王「別に、国じゃなくてもいいんだよ。安全が保障されれば」
勇者「その、安全ってのは・・・」
魔王「うん。・・・村が不用意に襲われないようにしてほしい」
魔王「守ってくれ、って訳じゃない。不可侵の条約を認めて欲しいんだ」
勇者「その前にまず、村の存在を明かさなきゃなんねーのか・・・。けっ、綱渡りだな」
姫様「そのための保健が、私のはずだった。その保健もおじゃん」
町娘「・・・ったく、どーすんだよ・・・」
勇者「・・・第二に、俺ら三人が安全に国に帰らないといけねー」
町娘「このままノコノコ帰ったら、村は救うことにはなんねーな」
姫様「かといって私を交渉の保健にするために置いていくと・・・」
勇者「俺達二人は詰問。最悪、拷問」
魔王「それは・・・、駄目だ」
勇者「わーってるっての。姫無しで俺が帰ったら、俺はゲロっちまうからなー」
町娘「・・・おめーが黙っててくれれば、丸く収まんじゃねーか・・・」
勇者「はっ、これだから女ってのは甘ぇんだよ」
町娘「なっ・・・!女だってことはカンケーねぇだろ!?」
勇者「おめーは良くても、おめーの周りは嫌なんだよ。言わせんなターコ」
魔王「・・・・・・・・・」
町娘「う・・・」
勇者「そーいうわけで、この二つを上手くクリアしなきゃなんねー」
勇者「・・・ま、交渉が成功するかは別問題だ。まずは、そこに漕ぎ着かねーと」
町娘「ちなみに、なんだけどさ。丸腰で交渉に行くってのは、駄目なのか?」
勇者「駄目だろうな。その場で撃ち殺されるのがオチだ」
町娘「・・・!」
勇者「それだけ、魔人差別ってのはデカい。『村作ったから認めてくれ』なんて、嘘臭ぇ」
勇者「・・・俺らだって半信半疑なくらいだ。お偉い方は、迷わず撃たせるだろーな」
町娘「・・・・・・・・・」