勇者「やっぱ奴さん、魔力を隠してやがった」
姫様「んじゃ、結構手ごわい野郎だね」
勇者「魔力ごと、城まで隠してるって感じか。それじゃ見つからねーわけだ」
姫様「頭使う魔物ほど、厄介なもんはないなー・・・」
勇者「・・・結構苦戦すっかも。着いて来れるか?」
姫様「何言ってんの、私姫だよ。ヤツには一発ぶち込んでやらねーと」
勇者「心強い限りなこって」
姫様「・・・そういえば、あの子のことは何か言ってなかった?」
勇者「あの子?」
姫様「連れ去られた・・・」
勇者「・・・あー、それがどーもな・・・」
姫様「・・・生きてる?本当かっ!?」
勇者「嘘ついてる感じじゃねーけど、どうも嘘くせぇ」
姫様「嘘?」
勇者「魔王をたばこ買わせに行ったり、魔王に酒買いに行かせたり・・・」
姫様「・・・その娘のほうがラスボスじゃん・・・」
勇者「ふざけたこと抜かすなって、蹴り飛ばしても言うこと変えねーし」
勇者「ラチあかねーからそれっきりだけどよ。どう思う?」
姫様「どう思うったって・・・。そんなん、嘘にしか」
勇者「だよなぁ」
姫様「・・・でも、生きてるとしたら、それが一番いいな」
勇者「・・・だよなぁ」
姫様「・・・もう、結構歩いた?」
勇者「森はどんどん入り組んでく一方だけどな」
姫様「まさか、だまされたとか」
勇者「ここでだましてきたら、相当肝っ玉のあるやつらだよなー」
姫様「んな呑気な・・・、お?」
勇者「どした」
姫様「前・・・、開けてるんじゃない?」
勇者「おっ。・・・いよいよ、か」
姫様「は、早く!勇者早く!!」ダッ
勇者「てめっ、待てっての」ダッダッダ
姫様「・・・わっ、落ち・・・!?」
勇者「!危ねっ!!」ガシッ
姫様「うぉ・・・!さ、さんきゅー」
勇者「急に走んなタコッ!!」
姫様「まさか、崖になってるなんて・・・」
勇者「ったく・・・。でもま、目的地には来れたみたいだぜ」
姫様「古い洋館だなぁ」
勇者「ほっとかれた城を拠点にしてんだろ」
姫様「んじゃ、ちょっくらぶち込みに行ってくるか」
勇者「そうだな。・・・んじゃ、この崖下る道探さねぇと・・・」
姫様「必要ねぇよ」グッグッ
勇者「・・・は?お前、なにおもむろに屈伸してんの」
姫様「やっぱ伸ばしとかないとね、うん」
勇者「意味わかんねーけど」
姫様「見つけたから、叩く。そういうこと」
姫様「回り道なんかするか、上等じゃねーか」
勇者「おまっ・・・!おい!」
姫様「じゃっ、お先に」タッ
勇者「馬鹿かお前!!死ぬぞ!!」
姫様「死なねーよ、姫だもん」ニヤリ
勇者「意味わかんね・・・っておい、待て、跳ぶなタコおぉぉぉぉい!!!???」
―――魔王城
町娘「・・・ったく。暇だよな」
魔王「まぁ、やることも無いしね」
町娘「つーかお前、あたしとグダグダしてていーのかよ」
魔王「見張りのつもりなんだけど・・・。というか、人質は身近に置いておかないと」
町娘「はぁ?エロいことでもすんのか?」
魔王「しっ・・・、しないよ!」
町娘「はっ!冗談だ、てめーにはできねーよなハゲ」
魔王「そ、そんなに言うなら欲しいわけ?」
町娘「は・・・」
魔王「散々馬鹿にして!なんならしてやってもいいけど!僕魔王だし!」
町娘「・・・・・・・・・」
魔王「・・・なーんて、冗談冗談」
町娘「えっ・・・」
魔王「・・・え?」
町娘「・・・あ、あぁ~、冗談な、冗談」
魔王「ん?え?そ、それって?」
町娘「なっ、なんでもねーよ」
魔王「そ、そう」
町娘「でも、ず、ずっと居るから、てっきり、そういう、なぁ」
魔王「・・・・・・・・・」
町娘「いや、うん、なぁ。なんか、そういう、間違いが・・・」
魔王「ま、間違い・・・?」
町娘「な、なんでもねーよ・・・」
魔王「ま、間違っちゃったり?みたいな・・・?」
町娘「・・・さ、酒抜けてねーのかな?あはは」
魔王「そ、そうかもしんない、心なしか、なんか、ふわふわした・・・」
町娘「えー、えー・・・。なんか、ち、ちけーけど・・・」
魔王「考えてみれば、僕、魔王だし・・・」
町娘「ま、魔王らしくねーけどなぁ」
魔王「・・・もっと、魔王らしくしたほうがいいのかな」
町娘「そ、それってどういう」
魔王「え?ん、いや、その・・・」
町娘「ま、間違ってるぞー」
魔王「そ、そのほうが魔王らしい?」
町娘「ら、・・・らし、い」
魔王「・・・!」
魔王「それって、どういう・・・」
町娘「・・・か、顔赤いぞ、まおう」
魔王「き、君こそ真っ赤だけど・・・」
町娘「き、気のせーだろ、気のせー」
魔王「ぼ、僕も気のせいなの、かなぁ」
町娘「ん、んん、ど、どーだろ、しんねー・・・」
魔王「・・・勘違い、しちゃっても、い、いいのでしょうか」
町娘「・・・ばっ、お、おめー、そんなの・・・」
魔王「・・・・・・・・・」
町娘「・・・か、勝手にしろや・・・。しったこっちゃ、ねー・・・」
魔王「それって・・・」
町娘「・・・~~ッ」
魔王「じゃ、じゃあ、ま、魔王らしく・・・」
町娘「ま、魔王らしく・・・?」
魔王「魔王らしく・・・」
魔王「君を―――」
姫様「―――プリンセス・キィィィィィック!!!!」
ドンガラガッシャーン!
町娘「ひゃっ・・・」
魔王「ふべっ・・・!」
ゴロゴロゴロゴロズガシャーン!!!
姫様「・・・ふっ!転がって着地の衝撃を和らげたけど華麗すぎて美しい!」
姫様「んで、ここどこの部屋?」
姫様「上から攻めてったほうが効果的だと思うんだよね、どうよこの姫戦法」
町娘「・・・?」
姫様「ってかなんか踏んだような・・・」
魔王「―――」
姫様「あり?大丈夫?もしかして踏んだ?わーお、ごめんね」
姫様「・・・ん?んん?なんだろうねこのピンクい空気」
姫様「思いっきり突っ込んできたけど、んん~?なんか、憎悪を感じるぞ?」
姫様「なんか知んないけどごめん、許して!美しいから!」
町娘「あ・・・?姫・・・さま?」
姫様「ん?なんで人間がこんなとこに・・・」
町娘「・・・えーっと、いろいろ・・・」
姫様「あっ・・・!も、ももももしかして、攫われた子!?」
町娘「は、はぁ。そんなとこだけど、って」
姫様「良かったぁ!生きてたぁ!!!」ダキッ!!
町娘「ひっ!な、なにすんっ・・・!」
姫様「なんもされてない!?怪我は無い!?あっ、手錠とかされて・・・」ギュウッ
町娘「だ、大丈夫、です」
姫様「良かった生きてた・・・、死んでなかった・・・」ギュウゥゥ
姫様「気が気じゃなかったんだ!ほんっっとうにすまなかった!」
町娘「い、いえ・・・。一人でここまできたんすか?」
姫様「いや、勇者とね。私の変わりに攫われたとか、私が動かないと話になんないじゃん」
町娘「はぁ・・・」
姫様「あなたを攫ってった魔王とやらにも一発ぶち込まないと・・・と、」
姫様「あーそーだ!そいつだよそいつ!顔、分かるか!?連れてって!ぶち込むから!!」
町娘「いや、ぶち込むっていうか・・・」
町娘「もう、済んでるっていうか・・・」
姫様「へ?」
町娘「・・・・・・・・・」
魔王「―――」
姫様「・・・え?もしかして、コレ?」
姫様「マジかよ・・・、私、流石の命中率・・・」
町娘「っていうか、どこから・・・」
姫様「そこの崖。・・・おい、起きんしゃい」ゲシッ
魔王「えうっ!・・・な、なにが起こって・・・」
姫様「よう、魔王」
魔王「げぇ!?姫!?」
姫様「直々に来てやったよ?え?お礼の一言でもいただきたいところなんだけど?」
魔王「ど、どういうこと・・・?」
町娘「さぁ・・・、あたしもさっぱりわかんねー・・・」
姫様「市民を巻き込んだのも許さねぇし、私のパレード中にコソコソしたのも許さねぇし・・・」
姫様「・・・この美しい私と、一市民を間違えるなんて許さねぇぞ小悪党ッ!!」
町娘「うぇ!?ほとんど自分のことじゃねーか!?」
魔王「まさかその執念であの崖から飛び降りたの!?」
姫様「・・・ま、私もこの子は美しいと思うから、なかなか見所はあるんだろうけど」
町娘「ほ、褒められたのか今」
姫様「それにしても!殺すなら私を殺せよっ!!」
姫様「関係ねぇ女勘違いで殺そうとしてんじゃねぇよっ!!」
魔王「え!べ、別に殺そうとした訳じゃ・・・」
姫様「問答無用だ!美しいものをないがしろにするんじゃねぇ!!」ヒュッ
魔王「ちょ、話聞いて―――!」
姫様「プリンセス・パンチッ!!」ドゴン!
魔王「おぐぁっ!?」
ズガシャーン!!
姫様「・・・決まった、確実に今のは美しかった・・・」
町娘「本当に人の話を聞かない人だな・・・」
姫様「よっしゃ!この意気で城ぶっ潰して帰るかー!」
町娘「ちょ、ちょっと待ってよ姫様」
姫様「あん?あ、あんたもこいつにぶち込んどく?」
町娘「いや、もう結構ぶち込んだし・・・。じゃなくて」
町娘「確かにあたしは攫われたけど、こいつ、そんなに悪いやつじゃなくて・・・」
姫様「は?」
町娘「なんつーか、うん、たぶん、誤解してっから・・・」
姫様「誤解?」
町娘「だって、人質のあたしがほぼ無傷でこんな部屋に居るとかおかしいっしょ」
姫様「・・・襲われかけてたとか・・・」
町娘「うっ・・・!ち、違う、アレはその・・・。とにかく!違うんだって!」
姫様「・・・んじゃ、手錠だけされててほぼ自由だったってこと?」
町娘「そーいうこと・・・。人質間違い云々は知らねーけど」
町娘「とにかく、姫様が怒ってくれたみたいにあたしのこと殺そーとしたわけじゃないから」
姫様「うぇー。じゃあ悪いことしたかな・・・」
姫様「・・・いや、姫を攫うのミスるようなやつだし、いっか」
町娘「いっか、って・・・」
魔王「・・・誤解は、解けたのかな・・・」
姫様「おーう。なんか、彼女のこと殺そうとしなかったって?」
姫様「なかなか見所のあるやつだなぁ、殴って悪かったよ」
魔王「天井に関しても謝罪が欲しいけど・・・」
姫様「あ、手錠」
町娘「ん?」
姫様「えいや」ベキッ
町娘「・・・・・・・・・」
魔王「・・・・・・・・・」