サキュバス「・・・」
少女「・・・(タオルケットくらいは掛けてあげるか・・・)」ゴソゴソ
少女「・・・(羨ましい身体だなぁ・・・)」
翌朝
傭兵「ん・・・ん・・お・・!あー・・・よく寝たぁ・・・ん?」
勇者「・・・」コクリコクリ
傭兵「勇者?なんでお前が俺の部屋に?」
勇者「ん、あ・・・おはようございます」
傭兵「おう、なんで俺の部屋にいるんだ?少女と喧嘩したのか?」
勇者「ち、違いますよ。傭兵さん昨日命狙われてたんですから」
傭兵「なに?俺がか?」
勇者「傭兵さんの命を奪おうとした者が少女の部屋にいます。行きましょう」
傭兵「お、おう」
ガチャ
少女「あ、勇者様!」
勇者「おはよう」
傭兵「おはよう、なんか昨日は大変みたいだったな」
少女「ええ・・・で、この人が傭兵さんを襲おうとしたんですけど・・・」
サキュバス「・・・?」
傭兵「おいおい、こんな美人が俺を?」
勇者「なんか大人しいね?」
少女「はい・・・それが問題なんです」
傭兵「?」
少女「どうも、昨日の私の一撃で記憶を失っちゃったみたいなんです」
勇者「き、記憶を?」
少女「はい・・・夜でしたんで私も力が沸いちゃってて・・・」
サキュバス「あ・・・あの」
勇者「ど、どうしようか?」
少女「こうなっちゃうと置いて行くわけにも行きませんよね・・・」
傭兵「姉ちゃん、大丈夫か?」
サキュバス「はい・・・あの、アタシは一体何者なのでしょう?」
傭兵「・・・姉ちゃんは俺らの仲間だよ。旅の途中で事故に遭って記憶を失っちまったんだ」
勇者「え?」
少女「!?」
サキュバス「そ、そうだったんですか?」
傭兵「ああ」
勇者「(ちょっと傭兵さん!)」
傭兵「元はと言えば俺が原因でこんな風になっちまったんだ。(・・・記憶が戻るまで一緒に連れて行ってもいいだろう?置いてく訳にも行かないって)」
少女「(でも、この女は淫魔なんですよ?そこらの魔物とは別の危険があるんです)」
サキュバス「そうか・・・仲間・・・うん、なんかそんな気が」
傭兵「大丈夫だ、俺が目を光らせとく」
少女「~・・どうしますか、勇者様?」
勇者「・・・例え魔物でも、記憶がなかったら普通の人間と変わらないし・・・何より女の子だからね。記憶が戻るまでなら・・・僕はかまわないけど」
傭兵「さすが勇者、話が分かるぜ」
少女「勇者様がそういうなら・・・従います。記憶を失わせた原因は私にもありますし・・・」
サキュバス「では、改めてヨロシク!」
傭兵「おう、俺は傭兵。こっちは勇者でこっちが少女だ」
勇者「ヨロシク」
少女「よ、よろしくお願いします」
勇者「・・・じゃあ朝食取って、次の目的地に向かいましょうか」
傭兵「おう、そうだな」
サキュバス「アタシもお腹減りました!昨日から何も食べてない感じ!」
少女「(馴染むの早すぎ・・・)」
――奇妙な仲間を加え、勇者一行は街を出た
パカパカパカパカ・・・
サキュバス「あの、記憶失う前のアタシってどんなのだったんですか?」
傭兵「ん?そうだな~・・・」
馬車内
勇者「仲良くやってるみたいだね」
少女「そうですね。テンプテーションも使えないようですし・・・危険も思ったより少なさそうです」
勇者「奇妙な縁だけど、仲間が増えるのってやっぱり嬉しいね」
少女「そうですね。ああやって見ると、人間と殆ど変わりませんもの」
勇者「昨日はバタバタして気づかなかったけど、あの街は城下町だったんだね」
少女「ええ、あそこの城には魔物の存在を良しとしてない人間が溢れているんですね・・・」
勇者「一番説得しにくいのはやっぱり人間だろうね」
少女「・・・私もそう思います」
勇者「どう説得したら、人間はわかってくれるだろう」
少女「人間は言葉で納得してくれると思いません。・・・証拠を見せるのが一番だと思います」
勇者「・・・人間と魔物が共存出来るという証拠か・・・・・」
――街を半日が経過した
パカパカパカパカ
傭兵「姉ちゃん、今どこら辺だ?」
サキュバス「えーと・・・」
サキュバスは地図を広げる
サキュバス「今、この街を出たから・・・えーと」
傭兵「ああ、もういいや。目的地が見えた」
サキュバス「う・・・。ご、ごめんなさい」
傭兵「ふふ、気にすんな、おーい、勇者!次の目的地に着いたぞ!」
竜の巣
勇者「ここが竜の巣ですか・・・」
傭兵「おう、ここを抜けたら魔王城との距離もグッと縮まる」
少女「竜の巣はその名の通りドラゴンの巣窟です。気をつけて行きましょう」
サキュバス「了解~」
勇者「サキュバスさん、貴方は記憶を失って間もないですから無茶しないでくださいよ?」
傭兵「それもそうだな、俺の後ろに歩け」
サキュバス「はーい」
少女「(・・・こう言うのも変ですけど、あの二人お似合いですね)」
勇者「(うん、僕もそう思ってた)」
傭兵「おい、なにボーッとしてるんだ?先進もうぜ?」
勇者「あ、はい!」
勇者一行は順調に洞窟の奥へと進んで行く
暫くすると、ひときわ大きい空間に出た
傭兵「ここだけ随分広いな」
少女「勇者様、これ・・・!」
勇者「!」
少女は巨大な足跡を見つけた
この巣にいるドラゴンに間違いないだろう
サキュバス「あ・・・あれなんだろ」
タッタッタッタ・・・
サキュバス「こっちこっち!見てくださいコレ!!」
勇者「!」
少女「!」
傭兵「!」
嫌な予感が的中した
サキュバス「コレコレ!すっごい大きい!!」
サキュバスが竜の玉子を抱いている
勇者「ちょ・・・サ、サキュバスさん!」
・・・シン
傭兵「早くその玉子を戻せ!親が戻ってきたら殺されるぞ!」
ズシン
少女「・・・お、遅かったみたいです」
傭兵「勇者!俺は姉ちゃん連れて逃げる!お前は少女と逃げろ!!」
勇者「わ、わかりました!!少女!!」
少女「はい!」
ドラゴン「グオオオオオオオオーーーーー!!!!!!!!!」
傭兵「おい!!つったってんな!!!」
サキュバス「あ!は、はい!!!」
傭兵がサキュバスを一喝する
傭兵「こっちだ!来い!」
サキュバス「はい!!」
ドラゴン「グオオオオオオ!!!!」
怒りに燃えるドラゴンは傭兵・サキュバス組を追っていく
ドドドドドドドドドド!!!!
ドラゴン「グオオオオオ!!!」
サキュバス「いやーーっ!なんでこっち追ってくるのーー!!」
傭兵「お前が玉子持ってるからだろうが!!」
サキュバス「じゃ、じゃあ捨てます!!」
傭兵「バカ!捨てたら本当に殺されるぞ!!!」
サキュバス「じゃあどうしたらいいんですかぁーー!?」
傭兵「どうするって・・・とりあえず逃げれる所まで逃げる!!」
ドドドドドド・・・・
勇者「どうしよう、ドラゴン傭兵さん達を追いかけて行っちゃった!」
少女「サキュバスさんが玉子を持ったまま逃げちゃいましたからね・・・」
勇者「あのままじゃいずれ追いつかれちゃう。なんとかしなきゃ!」
少女「悪いのは玉子を取ったサキュバスさんです。彼女がドラゴンに謝って玉子を返せばあるいは・・・」
勇者「でも、あの怒りようで話を聞いてくれるか・・・と、とりあえず二人を追いかけよう!」
少女「はいっ!」
――その頃
ドラゴン「グオオオオオ!!!」
サキュバス「きゃーーーっ!!」
傭兵「くそ!(こうなったらコイツを倒すしか・・・いや、玉子を奪って逃げたのは俺達だ。自分達が助かる為にコイツを殺す事は出来ない!そんな事をしたら、奴等と同じだ!)」
傭兵は足を止めた
傭兵「姉ちゃん!止まれ!!」
サキュバス「え!?でも・・・」
傭兵「あのドラゴンはきっと洞窟を抜けても追いかけて来るだろ!!玉子を返して許してもらう他ない1」
サキュバス「で、でもあんなに怒って・・・食べられちゃいますよ!」
傭兵「俺達が始めた事だ!!!」
サキュバス「!」
ドラゴン「グオオオオオッ!!」
ズシンッ ズシンッ
ドラゴンが二人に追いついた
ドラゴン「グォルルル・・・」
傭兵「・・さあ姉ちゃん、ドラゴンに卵をかえせ。謝るんだ」
サキュバス「・・・・」
傭兵「早く!」
サキュバスは、はい!!」
サキュバスは小走りでドラゴンの目の前に出る
ドラゴン「グオオ」
サキュバス「・・・」ゴクリ
サキュバス「か、勝手に玉子を奪って逃げてしまい・・・ごめんなさい!玉子はお返しします・・・!」
サキュバスが玉子をドラゴンに差し出した
ドラゴン「・・・・・」
フッ
傭兵「!」
先程まで血走っていた眼をしていたドラゴンだったが、怒りが静まったのか元に戻っていった
そして次の瞬間
ドラゴン「・・・いや、私の方こそつい血が上って怖がらせてしまった。怪我はないか?」
サキュバス「!しゃ・・・」
傭兵「喋った・・・」
ドラゴン「すまないが、その玉子を私の巣まで持って行ってくれないか?」
サキュバス「え?あ・・・」
ドラゴン「私は運べないのでな」
傭兵「よ、よし、俺が運ぼう」
サキュバス「す、すみません」
竜の巣 中央
勇者「ドラゴンの足跡は向こうへ続いてる」
少女「じゃあ傭兵さん達もこの奥に・・・」
勇者「でも、変だ」
少女「はい・・・急に静かになりました・・・まさか」
勇者「・・・」