ズシンッ ズシンッ
勇者「!戻ってきた!!」
少女「隠れましょう!」
勇者「いや、待って・・・あれは?」
傭兵「勇者!」
先に現れたのは卵を抱いた傭兵だった
勇者「傭兵さん!サキュバスさんは?」
傭兵「俺の後ろにいるよ」
サキュバス「・・・」
勇者「よかった、無事で・・・」
ズシンッ ズシンッ
ドラゴン「・・・さっきはすまなかったな、驚かせて」
勇者「え」
少女「喋った・・・」
傭兵「ここでいいか?」
ドラゴン「ああ、頼む」
傭兵は卵を巣に戻す
少女「サキュバスさん、貴方の勝手な行いで大変な事になってたかもしれないんですよ?」
サキュバス「・・・ごめんね」
勇者「ドラゴンさんが許してくれたから良かったですけど、もうこんな勝手なマネはしないで下さいね」
サキュバス「うん・・・ごめん」
傭兵「まぁまぁ、俺からも説教しといたからそこらへんで許してくれ」
ドラゴン「卵も無事戻ってきたし、私ももう気にしてはいない」
勇者「そうですか・・・本当にすみませんでした」ペコ
ドラゴン「正直、卵を返されるとは思わなかった。君が立ち止まった時は仕掛けてくるかと思ったよ」
傭兵「ああ、以前の俺ならやってたかもしれないけどな・・・今の俺は違う」
少女「とにかくお互い無事でなによりです。ね、勇者様?」
勇者「うん、そうだね」
ドラゴン「・・・勇者?君がか・・・?」
勇者「はい、僕が勇者です」
ドラゴン「・・・我々竜の巣に住まう者達は、勇者一行をここで始末するのが任務になっているのだ」
傭兵「!」
少女「え・・・」
ドラゴン「ここは魔王城への入り口と言ってもいい場所だからな・・・」
勇者「ドラゴンさん、確かに僕達は魔王城を目指してはいますが、それは魔王を倒す為じゃないんです」
ドラゴン「魔王様を倒すのが目的ではない?ならば一体?」
少女「人間と魔物が共存して暮らす事の出来る世界を実現させる為に、話し合いに行くのです」
ドラゴン「人間と魔物の共存だと?なにを馬鹿な・・・」
サキュバス「・・・?(そんな誓いしたっけ?思い出せない・・・)」
勇者「信じられないでしょうけど、僕達は本気なんです」
ドラゴン「(冗談を言うようなタイプには見えない・・・それにこの目・・・)勇者よ、ちょっと私の前まで来てくれ」
勇者「?」
少女「何をする気ですか?」
ドラゴン「大丈夫だ、いきなり襲い掛かったりはしない。少し君の心を覗かせてほしいだけだ」
勇者「心を・・・。わかりました」
少女「私も一緒に。共存の世界を望む気持ちは勇者様と一緒です!」
ドラゴン「君は・・・バンパイアか。いいだろう、二人とも前に」
サキュバス「・・・あ、あのアタシも行った方が?」
傭兵「いいから、二人に任せとけ」
ドラゴン「では、行くぞ」
勇者「はい」
少女「いつでもどうぞ」
勇者と少女は手を繋ぐ
ドラゴン「・・・はっ!!!」
ドラゴンが叫ぶと、二人とドラゴンは光の球体に包まれた
傭兵「!」
サキュバス「あ、あれはヤバいんじゃないんですか?」
傭兵「・・・大丈夫だ、信じて待っているんだ」
心の空間
勇者「・・・ここは?」
少女「私達の・・・心の中でしょうか?」
辺りを見回すと今まで見てきた場面や景色が陽炎のように浮かんでいる
勇者「ドラゴンさんは・・・?」
少女「いませんね・・・」
「見させて貰ったよ」
勇者「!」
ドラゴンの声が何処からか聞こえる
ドラゴン「君達が共存の世界を望んでいるのは本当のようだ」
少女「よかったですね、勇者様!」
勇者「うん、良かった。信じてもらえて・・・」
ドラゴン「既にモンスターと人間が共に暮らしている村まであるとは驚いた」
少女「私達は、あの人達を見て核心したんです。共存の道は不可能ではないという事を」
ドラゴン「ああ・・・これは確かな証拠だ。・・・それに君にも魂が・・・」
少女「?」
ドラゴン「いや、これは内緒にしておこうか・・・いずれ解る事だ」
勇者「ドラゴンさんも本当はこんな不毛な争いを望んでないんですね?・・・なんとなくですが、そんな感じがします」
ドラゴン「ああ、本音を言うと私も疲れていた所だ」
少女「良かった、ここにも仲間がいて・・・」
ドラゴン「君達の気持ちは十分わかった。この洞窟を通る事を許可しよう」
傭兵「大丈夫だ、必ず戻って来る」
二人と一頭を包んだ光が次第に弱まっていく
サキュバス「あ・・・!傭兵さん」
傭兵「ああ、だから言っただろ」
シュウウウゥゥゥ・・・・
ドラゴン「・・・」
勇者「・・・」
少女「・・・」
ドラゴン「・・・君達の心、確かに見せて貰った。さぁ、先に進むがいい」
傭兵「ああ、ありがとよ」
サキュバス「良かったぁ」
勇者「・・・ん」
少女「んっ・・・」
二人とも意識を取り戻す
ドラゴン「お前達の望む世界が実現する事を祈っているぞ」
勇者「はい、ありがとうございます」
少女「必ず実現してみせます」
傭兵「色々バタバタさせてすまなかったな」
サキュバス「本当にすいませんでしたっ」
ドラゴン「なに、お前達も無事でな。魔王城はもう少しだ・・・」
勇者「じゃあ、行きます。ドラゴンさんもお元気で」
少女「またお会いしましょう」
ドラゴン「ああ、楽しみにしているぞ・・・」
ドラゴン「人間と魔物の共存か・・・そんな夢物語のような話、魔王様はどう受け取るのか・・・」
竜の巣 出口
勇者「ここを抜けたら後は・・・ん?」
少女「?どうかしたんですか?」
馬「ヒヒン」
サキュバス「あれ、アンタ確か入り口で待ってたんじゃ」
馬「ブルルッ」
傭兵「こまけぇこたぁいいんだよ。さ、急ごうぜ!」
勇者「そうですね、いよいよです。行きましょう!」
少女「はい!」
勇者一行は竜の巣を抜け、まっすぐ魔王城へと向かった
夜
馬「ブルル」
傭兵「今日はこれ以上進むのは無理だな、ここらでキャンプにしよう」
勇者「そうですね。少女、サキュバスさん、今日はここでキャンプを取るんで準備を」
少女「わかりましたー」
サキュバス「了解~」
パチパチパチ・・・
勇者「・・・」
少女「ここら辺は本当に何もないんですね」
傭兵「まぁ、魔王城への通り道だからな」
サキュバス「殺風景もいい所ねぇ・・・」
勇者「・・・」
少女「勇者様?どうかしたんですか?」
傭兵「なんだ、何か悩みか?」
サキュバス「あの時、なにかあったの?」
勇者「いえ・・ただ、ちょっと不安になってきまして」
傭兵「魔王との話し合いがか?」
勇者「はい・・もし、鼻っから話し合いが通用しない相手だったら・・・て考えたら」
サキュバス「戦わなきゃいけないよね」
少女「サキュバスさん」
サキュバス「だって、そうなったら戦うしかないでしょ?それとも黙ってなぶられるって言うの?」
傭兵「まぁ平和を望んでいる魔物に沢山会ってきたが・・・魔王もそれを望んでるかどうかはわからんよな」
少女「そんな、私のお父様は真の世界平和を願っているのは魔王様だって・・・」
サキュバス「魔王の望む真の世界平和って・・・結局世界支配なんじゃないの?」
勇者「もし、戦いになったら僕は魔王に勝てるんでしょうか・・・旅してる間にも襲ってくるモンスターと戦って経験は積みましたけど・・・」
傭兵「まぁ、今更そんな事悩むだけ無駄だ、勇者。」
勇者「え?」
傭兵「ここまで来たら、もうお前の信じている事をやるしかないんだからな」
少女「傭兵さん・・・」
サキュバス「さすが傭兵さんっ」
傭兵「魔王城まで到着するのにまだ数日かかる、その間だが俺が稽古つけてやるよ。こい」
勇者「あ・・・はいっ!」
少女「傭兵さんに会えてよかったです・・・」
サキュバス「ねえ、少女!・・・私って傭兵さんとどういう関係だったの?」
少女「え?」ドキッ
サキュバス「折角だから教えてよ、私な~んにも思い出せないからさぁ」
少女「え・・えーとーー・・・」
勇者「傭兵さん、ありがとうございます。傭兵さんがいなかったら僕はここまで来れませんでした」
傭兵「おいおい、まだ礼を言うんじゃねぇよ」
勇者「え?」
傭兵「お前の目標を達成した時が、俺の仕事の終わる時だ」
傭兵「仕事はちゃんと完了してから、礼を言ってくれ。・・・な」
勇者「は・・・はいっ!」
傭兵「よし、じゃあ早速稽古始めんぞ!剣を持て!」
勇者「はい!宜しくお願いします!」
魔王城
側近「魔王様、勇者達が竜の巣を抜け、こちらへ向かっているとの情報が入りました!」
魔王「ほう、すぐそこにいるのか・・・ドラゴンを倒すとは中々やるな」
側近「そ、それが・・・勇者一行はドラゴンを倒さず竜の巣を通ったらしいのです」
魔王「繁殖時期で凶暴化しているドラゴンを倒さずにか?」
側近「はい、全く訳がわかりません」
魔王「・・そうか、わかった。下がれ」
側近「はっ」
魔王「勇者・・・早くお前に会いたくなったぞ。ふふふ・・・」
翌朝 馬車内
傭兵「・・・んお・・朝か・・・いつの間に寝て・・・」
サキュバス「・・・おはようございます」
何故か傭兵の横にサキュバスがいた
しかも素っ裸で
傭兵「うお!?な、なんだ?・・・って俺も裸じゃねぇか!」
サキュバス「そんなに恥ずかしがらないで下さいよ・・私達、恋人同士でしょ?」
傭兵「こ、恋人同士!?」
勇者「よく寝たぁ~・・・」
勇者がキャンプから出てくる
少女は既に起きており、朝食の準備に取り掛かっていた
少女「あ、おはようございます。昨日はお疲れ様でした」
勇者「おはよう、やっぱ傭兵さんはプロだよ。武器の扱い方が上手くて・・・」