傭兵「コラ、少女!!」
傭兵が下着一丁で馬車から飛び出してきた
少女「おはようございます」
勇者「どうしたんですか、パンツ一丁で?」
傭兵「お前、あの姉ちゃんになんて言ったんだ?」
少女「うっ。そ、それは・・・」
サキュバス「アタシと傭兵さんは旅先で運命的な出会い方をして婚約を誓った仲・・・」
サキュバスも馬車から出てくる
傭兵「こ、婚約?」
少女「(すみません、昨日何度もしつこく聞かれちゃってついデタラメを・・・)」
サキュバス「そんなに恥ずかしがらなくても・・・ねえ?」
勇者「あー・・・そうですね」
傭兵「勇者・・・」
少女「(まぁまぁ傭兵さん、記憶が戻るまで我慢して下さい)」
馬「ブヒヒ」
傭兵「お、お前ら人事だと思って・・・」
サキュバス「少女、私も支度手伝うわ~」
少女「は、はい。お願いします」
勇者「・・・自分の事を何も知らないで生きてくってのはとても怖いと思うんですよ・・・」
傭兵「・・・・・・・・わかったよ」
サキュバス「はい、傭兵さん。アーン・・・」
傭兵「ん」モグモグ
少女「(ノロケ全開ですね)」
勇者「(元々傭兵さんに気があったんじゃないかな)」
傭兵「・・・なに見てるんだよ」
勇者「え?いやいや、幸せそうだな~って思いまして」
少女「お似合いですよ、二人とも」
サキュバス「あら、当然よぉ・・・うふふっ」
傭兵「おいお前r
サキュバス「はいア~ン」
傭兵「むぐ」
勇者「w」
少女「w」
傭兵「モグ・・・勇者、後でみっちりしごいてやるからな」
勇者「ええ!」
少女「とんだ災難ですね。・・・ふふ」
――勇者達が竜の巣を抜けて二日が経過した
変わる事の無い風景を見ながらの移動は肉体的にも精神的にも負担がかかった
しかし、勇者一行は遂に魔王城を目視出来る位置までたどり着いた
ヒュオオオオォォ・・・・
勇者「あれが・・・魔王城か」
少女「勇者様、遂にここまで来ましたね」
傭兵「さて、魔物達は魔王との面会を許してくれるかねぇ?」
サキュバス「うう、なんか興奮してきた~・・・」
勇者「こちら側に戦闘の意思はない事を伝えるには・・・やはり、アレしかないでしょうね」
少女「アレ・・・?」
魔王城バルコニー
魔王「・・・おお、あれは」
魔王も勇者一行も確認した
魔王「まっすぐこちらに向かっているな・・・」
ザッザッザッザ・・・
少女「勇者様、本当に大丈夫でしょうか?」
勇者「大丈夫だよ。信じてもらうにはこれしか方法がない」
傭兵「まぁ、万が一があったら俺が命張って守ってやるからよ」
サキュバス「・・・(魔王城か・・・なんか・・・初めて来た感じがしない・・・前にも見たような)」
魔王城 城門
門番A「止まれ!何者だ!!」
勇者「・・・僕は勇者です!魔王に会いに来ました!!」
門番B「勇者だと!?遂に来たか!!!」
ドラゴンゾンビ「グオオオォッ!!」
少女「ま、待って下さい!私達は争いに来たのではありません!」
門番A「なにぃ?」
勇者「見ての通り、僕達は丸腰です!どうか、魔王に会わせて頂きたい!」
門番A「丸腰だと?」
門番B「騙されんな!相手は勇者だぞ!」
魔王城 謁見の間
側近「魔王様!遂に勇者が来ました!」
魔王「そうか・・・来たか」
側近「勇者共は魔王様を倒しに来たのではなく、話し合いに来たなどと言っているようです」
魔王「! 私に話か」
側近「ええ、それも丸腰で。この魔王城を前に・・・」
魔王「丸腰だと・・・そこまでの覚悟か、勇者」
魔王が立ち上がる
側近「魔王様?」
城門
傭兵「俺達は本当に戦う気はないって言ってんだよ!」
門番A「騙されるか!それ以上近寄るな!」
サキュバス「こんだけ言ってんだから、少しは聞く耳持ちなさいよ!バカ!!」
門番B「なんだと貴様ぁ!」
門番Bがサキュバスに石を投げつける
ゴッ
サキュバス「うっ!」
少女「サキュバスさん!」
傭兵「てめぇら・・・」
勇者「止めて下さい!本当に戦いに来たんじゃないんです!」
「待て、お前達」
門番A「!!!・・そ、その声は!」
門番B「ま、魔王様!!!」
勇者「!」
魔王「よく来たな、勇者。遠路遥々ご苦労だった」
勇者「(この人が・・・魔王)」
少女「(始めてみた・・・)」
傭兵「(思ってたより悪そうな顔してねぇな・・・)」
サキュバス「魔王?・・・!」
魔王「部下が乱暴な事をしてすまなかったな。さ、入ってくれ」
魔王は勇者達を城に招きいれる
魔王城通路
モンスター「グルル・・・」
勇者「・・・」
少女「・・・」
モンスター「勇者だ・・・勇者が来た・・・」ヒソヒソ
傭兵「・・・。おい、姉ちゃん大丈夫か?」
サキュバス「え・・ええ」
サキュバスは先程の投石と魔王を見た時の衝撃から記憶を取り戻しつつあった
魔王「お前達の噂は聞いている。中々珍しい旅をしてきたみたいだな」
勇者「はい、まぁ・・・」
会議室
魔王「適当に掛けてくれ」
勇者「はい」
少女「失礼します」
傭兵「(モンスターにも会議室なんて用意してんだな・・・)」
サキュバス「(そうだ・・・思い出した、私はあの時街で・・・)」
少女「サキュバスさん、大丈夫ですか?」
サキュバス「え・・ええ、大丈夫よ。ありがとう」
魔王「さて、側近から聞いたが私に話があるそうだな?」
勇者「はい」
魔王「聞かせてくれるか」
勇者「・・・僕は仲間達と旅をしていく内に、魔物と人が互いに支えあって生きていけるという可能性に気づきました」
魔王「ほう、魔物と人間の共存か」
勇者「夢物語のような話ですが、実際にそれを実現している人達もいました」
魔王「・・・本当か?」
勇者「はい、その村には人間と魔物の戦争を嫌う者達が集まっていました。ヒトと魔物の差別もなく、皆協力しながら幸せそうに仲良く生活していました」
魔王「フム・・・にわかには信じがたいな」
勇者「信じられなければ、僕の心を見て下さい。竜の巣にいたドラゴンさんも同じ事をして僕達を信じてくれました」
魔王「フ、魔物に「さん」づけか・・・とことん変わった勇者だな、お前は」
魔王は勇者の頭に手をやる
傭兵「おい、何をする気だ?」
魔王「警戒しないでくれ、彼の心を読むだけだ」
少女「・・・傭兵さん、大丈夫ですよ」
傭兵「・・・」
魔王「では、行くぞ」
勇者「はい」
魔王「・・・はっ!」
心の空間
勇者「・・・」
「ふむ、確かに・・・これは凄いな」
「本当ですねぇ。私達の時代から既に実現していたのですね」
勇者「!?」
確かに声が二つ聞こえた
元勇者「確かに、見させてもらったぞ」
元魔王「こんな世界が実現したら、本当に素晴らしいですよね」
そこにいたのは合体前の勇者と魔王であった
勇者「これは・・・?」
元勇者「俺達が一つになったのが、今の魔王だ」
元魔王「初めまして、前の魔王です」
勇者「どういう事なんですか?」
・・・・・
勇者「・・・時代はそうやって繰り返されていたのですか」
元勇者「ああ、だがこれから新たな歴史が誕生する可能性が出来た訳だ」
元魔王「私達、魔族も本音では戦争なんて望んでないんですよ。外見はああですけど」
元勇者「人間と魔物の戦争の引き金は一人の権力に溺れた人間の仕業だった」
勇者「やはり、人間が発端だったんですか・・・」
元魔王「その権力者達が絶えない限り、魔物と人間の共存は有り得ないでしょうね」
元勇者「かといって、いきなり魔物と仲良くしましょうと言って仲良く出来る程人間も強くない」
勇者「・・・」
元魔王「ん~・・・地道に活動しても、権力者が軍隊を動かせばすぐ滅茶苦茶にされますからねぇ・・・」
勇者「・・・なんとかして、この世界に生きる人達にこの光景を見せる事が出来たらいいのですが・・・」
元勇者「・・・!」
元魔王「あ・・・!」
勇者「?」
元勇者「出来るぞ、勇者。世界の皆にこの光景を見せる事が」
勇者「ほ、本当ですか?」
元魔王「ええ、なんでこんな簡単な事に気づかなかったのか・・・今の魔王が復活した時やったようにすればよかったんですよ」
勇者「???」
元勇者「今の魔王が誕生してすぐに俺達は世界中の人間の頭にテレパシーのようなモノを送ったんだ。お前は生まれてないから知らないだろうが」
元魔王「わっはっは、魔王再臨~・・・ってね」
勇者「・・・じゃあ」
元勇者「ああ、そのテレパシーを使えばこの世界に生きる者達全員に共存が可能な事を伝えられるという訳だ」
元魔王「いやぁ、ずっと城にいると駄目ですねぇ。考える事も面倒になってしまいますよ」
元勇者「今の世界でも共存は望んでなくとも、戦争に疲れた魔物は人間も多いはずだ。これがきっかけになれば・・・面白い事になるかもしれん」
勇者「早速やりましょう!」
元魔王「ええ、ついでに彼女の事もテレパシーで流しましょう」
勇者「彼女?」
元勇者「ああ・・・お前の彼女の身体にな、別の新しい魂が宿っているんだ。その意味がわかるか?」
勇者「え・・・ホントですか?」
元魔王「これもまた人間と魔族が共存出来るという証拠になります。可愛い顔してやりますねぇ」ツンツン
勇者「・・僕と少女に・・・子供が・・・」
元勇者「喜ぶのは後だ、早速やるぞ!」
元魔王「私達は全生物の頭脳にリンクさせる準備をしますので、貴方はここで待ってて下さい」
勇者「ここで待ってる・・・?」
元勇者「リンクの準備が整ったら、お前の本音をここで叫べ。全生物に聞かせてやれ、お前の本音を」