勇者「魔王、お前が死んで3年か」 4/13

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13

勇者「・・・あ、看板だ。後もうちょっとだね」

少女「街ですかぁ、私あまり屋敷から出た事ないんで楽しみです」

勇者「僕も、故郷から出た事なんてないからドキドキだよ」

少女「じゃあお互い、迷子にならないようにしなければなりませんね」

勇者「はは、本当だね」

少女「わぁ、立派な街ー・・・」

少女は初めて見る街の光景に興奮した

勇者「わー・・・すごい」

田舎者の勇者も同じく

少女「勇者様、どうします?」

勇者「あ、ああ。とりあえず仲間を探さなきゃならないからさ、酒場に行こうと思う」

少女「わかりましたっ、行きましょう」

勇者「凄い人波だから、僕から離れないようにね」

少女「はい、わかりました!」

酒場前

勇者「ふう、やっとつい・・・・」

勇者が後ろを振り返ると少女の姿はなかった

勇者「え?あれ???離れないでって言ったのに?」

勇者「ど、どうしよう。ここで探しに行ったら二度と再開出来ないような気がする・・・」

少女「いけない、ちょっと違うお店に目が行って勇者様とはぐれちゃった・・・怒ってるだろうなぁ」

少女「夜だったら空飛べるのに・・・・うぅ」

急な不安感からか少女は泣きそうになる

少女は何度か通行人に話しかけたが、朝だというのに全身をローブで隠してる怪しい姿なので市民達は無視した

少女は都会に済む人々の冷たさを知った

少女「・・・」

「どうしたんだ?」

少女「?」

少女「(今、どうしたんだ?って・・・でも、私じゃないよね)」

「朝っぱらからそんな格好して、どうしたんだよ?」

声をかけた人物は少女の顔を覗き込む

少女「!あ、私ですか・・・?」

「アンタ以外にいるかよ。・・・で、どうしたんだ?そんな格好してしゃがみこんで」

少女「あの、一緒に旅をしてる方とはぐれてしまったんです!」

「なんだ、迷子か。相方は何処に向かっていったんだ?」

少女「酒場だと言ってたのですが、よろしければ酒場までの行き方を教えて頂きたいのですが」

「一人で行く気か?また迷子になるんじゃないか?」

少女「う・・・」

「はは、悪い悪い・・・俺も酒場に用があるんだ、案内してやるよ!」

少女「!あ、ありがとうございますっ」

酒場

勇者「迷子の案内所とかってありませんかね?」

店主「ま、迷子の案内所?そういうのはないなぁ・・・仲間とはぐれたのかい?」

勇者「はい・・・」

店主「大丈夫だろ、兄さんがここに来るって事は知ってるんだろ?だったら誰かに聞いて戻って来るさ」

勇者「そうでしょうか・・・」

店主「で、兄さん。それだけかい?」

勇者「え?」

店主「冷やかしはお断りだよ?」

勇者「あ・・・じゃ、じゃあ飲み物下さい」

カランカラーン

店主「おお、おかえり」

勇者「?」

「おう、今戻ったぜ。いやぁ、大変だった」

少女「・・・」オドオド

勇者「あ!少女!!」

店主「え?」

「ん?」

少女「あ、勇者様!!」

勇者「良かった、無事に会えて・・・」

「なんだ、坊主がお嬢ちゃんの連れか」

少女「この方がここまで案内して下さったんです」

勇者「あ、すみません。ありがとうございました」

「おう、女の子一人こんな街中に置いて行ったらダメだろ。ちゃんと見とけよ?」

勇者「はい、すみません」

店主「お嬢ちゃんも何か飲むかい?

少女「あ・・・じゃあトマトジュースを」

勇者「(トマトジュース・・・)」

「俺もくれ。酒だ酒」

店主「おう」

少女「本当にありがとうございました。えー・・・と」

傭兵「お?ああ、俺の名前は傭兵ってんだ」

少女「傭兵さん、ありがとうございました」

傭兵「なーに・・・」

勇者「傭兵をやられてるんですか?」

傭兵「ああ、さっきも仕事から戻ったばっかだ」

店主「はいよ、お待ち」ゴトゴトゴト

勇者「あの、契約金とかってだいたいいくらぐらいなんでしょう?」

傭兵「なんだ?坊主、傭兵探してんのか?」

勇者「はい、僕達魔王を倒す為に旅をしてまして・・・」

傭兵「魔王を?お前がか?はっはっは!」

少女「ちょ、ちょっと!笑わないで下さいよ!この方勇者様なんですから!」

店主「勇者?今噂になってる?」

勇者「はい・・・信じられませんよね」

傭兵「ここん所、魔物も凶暴化してるからなぁ・・・」

店主「ここは酒場件、傭兵所だが・・・どいつもこいつも半端な覚悟でやってるような奴だからな・・・」

傭兵「魔王討伐なんて仕事、引き受けても途中で逃げ出すだろうぜ」

勇者「そうですか・・・」

少女「勇者様、落ち込まないで下さい・・・」

傭兵「・・・」グビグビ

店主「・・・お前、ついて行ってやったらどうだ?」

傭兵「なに?俺か?」

店主「ああ、この傭兵達の中じゃお前が一番優秀だしな」

少女「傭兵さん、強そうですよね」

傭兵「(ガキの護衛なんてやってられるかよ。魔王の話だって嘘だろ)」

店主「(だが、これも何かの縁かもしれんぞ)」

勇者「傭兵さんが来てくれると、とても頼もしいです」

傭兵「・・・坊主、自惚れる訳じゃないが俺はかなり強い」

勇者「はい」

傭兵「くぐって来た戦場の数もここの傭兵共とは比べられない・・・つまりだな」

少女「お金の事ですか?」

傭兵「そうだ、俺の契約金は子供が到底払える額じゃないって事だ」

勇者「う・・・」

少女「勇者様、お金の事なら心配しないで下さい」

勇者「え?」

傭兵「なに?」

少女は懐から財布を取り出した

中には沢山のお金が

少女「これ、私の今の全財産なんですけど・・・これで如何でしょうか?」

傭兵「・・・・・」

勇者「ちょっと・・・」

少女「いいんです、勇者様のお役に立てれば」

店主「・・・ここまでされて断るってのもな?」

傭兵「・・・・・・・わかったよ、契約してやる」

少女「やった!勇者様、オッケーですって!」

勇者「うん、ありがとう。君のお陰だよ」

少女「ふふ、喜んで貰えてよかったです」

傭兵「金は今、受け取らん」

少女「え?いいんですか?」

傭兵「受け取る時は仕事を終えた時だ」

勇者「じゃあ、魔王を倒すまで着いてきてくれるって事ですか?」

傭兵「・・・ああ」

少女「よかった!よろしくお願いしますね!!」

勇者「お願いします!!」

傭兵「あ、ああ(なんか調子狂うぜ)」

店主「はは、こうやって見ると親子だな」

傭兵「とりあえず、今日は宿屋で身体を休めろ。出発は明日にしよう」

勇者「はい、ではまた明日の朝ここに来ますね」

傭兵「おう」

店主「ゆっくりな」

少女「はい、おやすみなさいー」

カランカラーン

少女「勇者様、よかったですね!」

勇者「うん、頼りになりそうな人でよかった。君のお陰だよ、本当にありがとう」

少女「いいんですよ!・・・さっきもいいましたけど、私は貴方のお役に立てればそれで・・・」

勇者「う・・・うん///ありがとう」

少女「今日はゆっくり身体を休めましょうね!」

宿屋

勇者「さて、寝るかー・・・ん?」

少女「・・・」

勇者「どうしたの?窓見て」

少女「いえ、夜になったんで元気も戻りましたから・・・街を見て回りたいなぁ・・なんて」

勇者「付き合おうか?」

少女「いえいえ!勇者様は休んでいて下さい!・・・でも、ちょっと散歩行ってきていいですか?」

勇者「うん・・・でも、迷子にならない?」

少女「大丈夫です!」

どろんっ

勇者「!」

蝙蝠「空から見て行きますから!」

勇者「そっか、気をつけてね」

蝙蝠「はーい、行ってきます!」

パサパサパサパサ・・・

勇者「吸血鬼も大変だなぁ・・・」

数分後

パサパサパサ・・・

勇者「(ん・・・?戻ってきたのか、早いな)」

どろんっ

「勇者くん」

野太い声が聞こえた

勇者「うわ?あ・・・貴方は」

父「娘は、散歩に行ったようだね。・・・心配でつい来てしまったのだ」

勇者「多分、もうちょっとで戻って来ると思いますが・・・」

父「いや、私もすぐ帰る」

父「娘は一途な吸血鬼だ。母親に似てな」

勇者「はい・・・」

父「あの子を悲しませる様な真似は絶対にしないと約束してくれ」

勇者「は、はい!もちろん・・・」

父「それだけだ、君に言いたかったのは・・・では、私は屋敷に戻る」

勇者「はい、お気をつけて・・・」」

父「娘を宜しく頼んだぞ。では」

どろんっ

パサパサパサパサ・・・

勇者「・・・余程心配だったんだな。ふふ」

翌朝

勇者「ん・・・・んー・・・」ゴソゴソ

勇者「朝か・・・」

勇者が何気なしに横を向くと

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13