勇者「魔王、お前が死んで3年か」 1/13

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魔王城跡

勇者「お前が死んで3年・・・結局、平和なんて一時的なものだったよ」

勇者「強欲な王達が世界の覇権を狙って争いを始めた・・・今では多くの国民が泣いている」

勇者「まだ、お前が支配していた頃の時代の方がよかったかもしれん」

勇者「お前を倒した俺だって、伝説として残ってるだけで・・・結局戦争を止める事は出来なかった」

勇者「・・・情けない話をしちまったな」

『ふう、全くですねぇ』

勇者「!」

勇者「・・・幻聴か?」

『幻聴じゃありませんよ』

勇者「魔王!?どこに?」

『ここにはいません、私は勇者さんの心に話しかけてるんです』

勇者「心に・・・」

魔王『私が支配していた時代の方が良かったと言いましたね?』

勇者「・・・ああ、本音はな」

魔王『じゃあ、私を復活させてみませんか?』

勇者「出来るのか?」

魔王『ええ、だが貴方は仮にも勇者と呼ばれ人間共にに慕われた男性です・・・民にとっての不幸はどっちか・・・』

勇者「・・・」

魔王『ま、よく考えてからもう一度来て下さい』

勇者「・・・民にとっての不幸か」

ドドドドドドド・・・

勇者「ん?・・・この音は、馬か」

ドドドドドドド・・・

兵士「待て待てーー!!」

「もっと早く!早く!!」

馬「ヒヒーーンッ!!」

勇者「馬車が騎馬兵に追われてるのか?」

ドドドドド・・・

「!あれは?」

勇者「・・・」

「あの人・・・何処かで・・・」

勇者「俺が食い止めてやる!逃げろ!!」

「! す、すみません!」

ドドドドド・・・

勇者「止まれ!」

兵士「!」

パカパカパカパカ・・

兵士「貴様!邪魔をするな!」

兵士「死にたいか!」

勇者「何故、あの馬車を追うんだ?」

兵士「あの馬車は我々の国から逃げ出した民なのだ」

兵士「もし、他国に逃げ我々の国の状況を漏らされては一大事になりかねん。だから捕まえるのよ」

勇者「今この乱世で民が国を捨て逃げるという事は、余程の問題が国にあるんじゃないか?」

兵士「貴様、我々を愚弄するか!」

兵士「許さん!覚悟しろ!!」

勇者「お前達も生きていく為、仕方なしの行動なんだろうけどな・・・、来い」

兵士「ぐは・・・」

兵士「・・・ッ」

ドサッ ドサッ

勇者「峰打ちだ、勘弁しろよ」

勇者「(こんな混乱した世の中なのに民が国を捨てる程だ・・・やはり・・・)」

魔王城跡

勇者「魔王、聞こえるか」

魔王『来ましたか・・・心は決まったようですね』

勇者「ああ、このままでは世界は大変な事になる。まだ、お前がいた時の方マシだった」

魔王『私達が魔物を操り、奴等の行動を制御する事で世の中は安定を保ってこれたんですよ。一国の主の言葉に踊らされた結果がこれです』

勇者「・・・」

魔王『私達魔族と人間の争いの発端も一人の強欲者から始まった事なんですよ。やっぱり人間は管理する者がいなくては生きていけないという事ですねぇ』

勇者「それで・・・どうしたらいいんだ?」

魔王『まず魔界に来てもらいます。私もそこにいますので』

勇者「魔界・・・どうやって行けばいいんだ?」

魔王『謁見の間に大きな画が飾ってあったのを覚えてますか?』

勇者「ああ、確かにあったな。なんか不自然だと思ったが」

魔王『そこで今から教える呪文を唱て下さい。それが鍵となり魔界への扉が開きますので』

勇者「わかった・・・」

魔王城跡 謁見の間

勇者「これか・・・」

勇者「よし・・・ゴホンッ」

勇者「くぁwせdrftgyふじこlp」

ボウッ!!!

勇者「!ひ、引っ張られ・・・・!!」

ズオウッ!!!!

魔界

ズオウッ!!!

勇者「うはっ!!・・・はぁ」

勇者「ここが・・・魔界か。不気味な場所だ」

勇者「魔王、魔界についたが・・・」

勇者「・・・魔王?」

勇者「・・・・・・・・反応がない。仕方ない、先に進んでみるか・・・」

魔峡谷

勇者「しかし、気味悪い場所だ・・・」

「随分と失礼な事を言ってくれますね」

勇者「!?お前は確か・・・」

ワイバーン「お久しぶりですね。魔王様の使いの者です」

勇者「出迎えに来てくれたのか」

ワイバーン「左様で・・・さぁ、乗ってください。魔王様がお待ちしています」

勇者「ああ」

ワイバーン「まさか貴方が魔王様の復活を望むとは思いもしませんでしたよ」

勇者「俺もだ。まさか、魔王復活する為に魔界に来るなんぞ想像もしなかった」

勇者「・・というか、魔王は復活しようと思えば復活出来るのか?」

ワイバーン「ええ、それには条件がありますがね」

勇者「条件?なんだそれは」

ワイバーン「それは魔王様が直々に教えて下さるでしょう」

魔王城

勇者「・・魔界にも魔王の城があるのか」

ワイバーン「ええ、こちらが本拠地ですがね。貴方の世界の魔王城は支部みたいなものです」

ワイバーン「さ、着きました。ここからは歩きで行って下さい」

勇者「ああ」

ワイバーン「魔王様は謁見の間でお待ちしています」

モンスター「グルル・・・」

モンスター「勇者だ・・・」ヒソヒソ

勇者「・・・」

ガーディアン「勇者殿、お待ちしてました。魔王様はこちらでお待ちです」

勇者「ああ」

ガーディアン「くれぐれも失礼のないように・・・」

ギイイィィ・・・

魔王「あ、勇者さん」

勇者「こうやって再び会うとあの時を思い出すな」

魔王「戦ってみますか?ここで私は殺せませんけどね」

勇者「・・・冗談はさておき、どうやってお前を復活させるんだ?」

魔王「簡単です、勇者さんの身体を私に捧げて下さい」

勇者「なに?」

魔王「今の私は向こうの世界で存在する為の身体がないんですよ。勇者さんに滅ぼされてしまいましたからね」

勇者「乗り移るって事か?」

魔王「乗り移るっていうか~合体ですかね」

勇者「が、合体だと?・・・戻れるのか?」

魔王「いいえ、戻れません」

勇者「・・・」

魔王「勇者さん、世界を救いたかったんじゃないんですか?」

勇者「・・・・・いいだろう、世界の為だ。俺の身体、使うがいい」

魔王「おおぅ」

勇者「俺はもう伝説だけの存在だ」

魔王「ふふ、任せて下さい。また安定した世の中を実現してみせますよっ」

魔王「じゃあさっそく合体の準備に取り掛かりましょう」

勇者「どうやって合体するんだ?」

魔王「まず服を脱ぎます」

勇者「・・・・・・・・・服?」

魔王「装備したままでも合体は出来ますけど、そのまま一体化しちゃうんで」

勇者「なるほどな・・・」

スルル・・・

パサッ

勇者「そう言えば・・・」

魔王「はい?」

勇者「俺が倒した向こうの身体・・・あれはお前なのか?」

魔王「あ~・・・これホントは内緒なんですけど・・・まぁ合体するからいいか」

魔王「あれ、前の勇者なんですよ」

勇者「なに?・・本当か?」

魔王「はい、勇者さんが生まれるず~っと昔ですけどね。今と同じような事が起こって世界が混乱してたんですよ」

魔王「それを憂いた前の勇者が前の魔王と合体したんです。それが今の私なんですよ」

勇者「合体後は別の魔王になるのか?」

魔王「はい、そうです。お互いの記憶は残されますけど。・・・歴史はこうやって繰り返していくんですよ」

勇者「救えないな・・・人間って」

魔王「ええ、本当ですよね」

魔王「新しい魔王はいずれ新しい勇者に敗れる運命ですけど、その間まで世界に生きる人や魔物に安定した暮らしを送らせる事が本当の仕事なんです。世界支配ってのは建て前ですね、一応魔族ですから」

勇者「俺達はどれぐらいの間、安定した世を保てるのか・・・」

魔王「やってみなきゃわかりませんよ、勇者さん」

勇者「そうだな・・・」

魔王「頑張りましょう」

勇者「ああ」

魔王「・・じゃ、合体しましょうか」

勇者「ああ、権力者共達の慌てふためく顔が想像出来るな」

魔王「魔物と人間が協力し、暮らしあえる世界が一番いいんですけどね」

勇者「ああ・・・だが人間はそこまで心も広くない。魔物だってそうだろう」

魔王「ふう・・・。ですよね、私達は私達の出来る事だけを」

勇者「そうだな」

ゴゴゴゴゴゴゴ・・・・!!

ガーディアンA「!」

ガーディアンB「この揺れは・・・!」

ガーディアンA「ああ、遂に目覚められるぞ!我らの魔王様が!!」

現世 魔王城跡

兵士A「本当にここに入ったのか?」

兵士B「ああ、近くの冒険者から聞いた」

兵士A「しっかし、こんなボロい城に何の用だ?」

兵士B「さぁな・・・まさか魔王復活を企てて怪しい儀式をしてるとか」

兵士A「お前、怖い事言うなよ」

兵士B「ビビってんのか?」

兵士A「だ、誰が!」

ォォォォォ・・・・・・

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