会議室
魔王「・・・ふむ」
少女「!」
傭兵「勇者、大丈夫か?」
勇者「・・・・・・・」
少女「勇者様!?」
サキュバス「勇者!」
傭兵「おい、何をしやがった?」
魔王「落ち着け、奴はまだ心の中にいる」
少女「・・・心の中に?」
魔王「奴にしか出来ない仕事があるんだ。これからな」
サキュバス「そ、それは一体なんなのですか?」
傭兵「?(口調が・・・)」
魔王「フ・・・今に解る。お前達は黙って見ていろ」
心の空間
勇者「・・・僕の本音か」
勇者「ここで本音を言って、何人の人や魔物が理解をしてくれるだろう・・・」
勇者「・・・でも、傭兵さんが言ってくれてたように、ここまで来たらやるしかないんだ。たとえ、僕の言葉が伝わらなくても」
魔王の声「勇者よ、覚悟はいいか?」
勇者「・・・はいっ!」
勇者「・・・世界に生きる皆さんへ・・・僕は勇者です」
勇者の故郷
父「な、なんだこの声は?」
母「息子の声ですよ!!」
勇者『突然のことに皆さん、戸惑われているかと思いますが、是非聞いて見てほしいものがあります』
酒場
店主「この声は確か・・・・」
村
村娘「あの時の勇者とかいう・・・」
草原
トロール「グオ」
勇者『今から皆さんにお見せする光景は、僕が旅をして実際に見てきたものです』
世界に生きる全ての生物の頭の中に、勇者が見てきた場面が次々と再生される
街
市民「おい、これって・・・」
市民「モンスターと人が暮らしてる・・・?」
市民「嘘みたいだ・・・それに勇者と旅してる女・・・あれは吸血鬼なんだろ?」
モンスター村
人狼「フ、あいつら無事魔王の元へ行けたか・・・」
エルフ「これはおめでたい、あの少女に新たな命が・・・」
オバサン「あたしはあの子達ならやってくれると思ってたよ」
吸血鬼の館
父「な、なにぃぃぃぃ!!??」
黒服「だ、旦那様。落ち着いて下さい」
父「これが落ち着いていられるか!!愛娘に子供が出来たんだぞ!つまり・・・私はお爺ちゃんになるという事だ・・・むふははははは!!!」
黒服「お、おめでとうございます」
勇者『本来、人間と魔物は判り合えるんです。それなのに、権力を求める者達は自ら王と名乗り、世界を支配するのに生涯となる魔物に攻撃を加えているのです。今も!』
勇者『数人の権力者によって世は乱され、操られ、傷つかなくてもいい筈の人や魔物が被害に遭っているんです!』
勇者『・・・今、僕は魔王城にいます。魔王さんに協力してもらい、皆さんへ言葉と映像を送ってもらっています』
勇者『中には魔王に操られてるだけだ、と思う方もいるでしょう。しかし、僕は魔王さんと心で会話をしました。魔王さんも、その部下達も本当はこんな争いを望んでいません。出来る事なら共存の道を望んでいます』
勇者『僕達、人間は臆病者です。彼らの姿を見て警戒してしまいます。しかし、姿だけなんです。中身は僕達人間と変わりません!』
勇者『嫌う前に、逃げる前に、一度心を開いて接してみて下さい。きっと皆さんが思っているのと違う顔が見れる筈です!』
勇者『忘れないで下さい。僕らと魔王さんは共存の道を望んでいます。権力者達の言葉におドラさえr図、皆さん自身の目で一度確認してみて下さい』
勇者『・・・長くなりましたが、これが僕の本音です。共存の道は皆さんの手で作り上げなければなりません、それを忘れないで下さい』
勇者『それでは・・・世界に、平和を』
会議室
勇者「・・・・はっ」
少女「勇者様!」
傭兵「よぉ、お疲れ」
サキュバス「見直したわ」
勇者「みんな・・・ありがとう」
少女「私の身体、新しい命が宿っているんですね・・・」
勇者「うん、僕達の子供だ」
魔王「勇者、ご苦労だったな」
勇者「魔王さん」
勇者「僕の言葉は、本当の意味で世界に届いたでしょうか・・・」
魔王「フ、自信を持て。勇者・・・外を見てみろ」
勇者「え?・・・あ」
外を見ると、魔王城内の魔物と周辺にいた魔物が魔王城を取り囲んで何かを叫んでいた
魔王「少なくとも、我ら魔族は全員お前に賛同したという事だ」
勇者「そうですか・・・よかったです」
魔王「後は・・・人間次第だがな」
勇者「はい・・・」
勇者の演説(?)後、人間達の間でも変化が起こってきた
魔物に対する偏見が少しではあるが、無くなりつつあった
権力者が支配する土地は相変わらずだが、城に勤める者や城下町に住む人間達の心に影響を与えたのは間違いない
事実この演説の数年後、城で内乱が起こり次々と権力者は国を追われたのである
主を失った国は信頼出来る魔物と共に生活を始め、徐々にだが繁栄して行くのであった・・・
――数年後
女「・・・こうして人間と魔物の戦争は事実上なくなり、魔物と人間が一緒に暮らせる新しい時代が来ましたと、さ・・・おしまい」
子供「スー・・・スー・・・」
女「あら、寝ちゃったの・・・」
ガチャ
爺「ワシの可愛い孫はど~こだ~」
女「お父さん、今寝てるから静かにしてっ」
爺「おお、悪い悪い・・・いやぁ、可愛い寝顔だなぁ」
女「さて、私も寝るから。お父さん、部屋に戻って」
爺「一緒に寝ちゃ駄目かの?」
女「何言ってるの、この子がお父さんの寝返りで潰されたら大変でしょうが」
爺「そういや、パパはどうした?」
女「パパは、昔旅した人達に会いに行ってるの」
爺「お前は行かないのか?可愛い孫はワシが見てやるのに」
女「それが心配だから行かなかったの」
爺「なんじゃい、つまらん・・・」
酒場
カランカラーン
傭兵「おう!勇者、久しぶりだな!」
勇者「久しぶりです」
サキュバス「数年しかあってないのに、随分変わっちゃったね」
勇者「そ、そうですか?」
店主「ほら、いつもの」
勇者「すみません、いただきます」
傭兵「少女・・・いや、女は元気でやってるか?」
勇者「はい、今は子供の面倒見てます」
サキュバス「相変わらず仲良さそうねぇ」
勇者「はは・・・傭兵さんとサキュバスさんこそ」
傭兵「あ?コイツが勝手について来たんだよ。好きでいるワケじゃねぇ」
サキュバス「な?アンタ一人だといっつも突っ走るから助けてやってるんでしょうが!ありがたく思いなさいよ!」
勇者「ははは・・・」
エルフ娘「はい、おつまみでーす」
勇者「あ、ありがとう」
傭兵「おう、新しい子入ったんだな」
店主「ああ、可愛くて礼儀正しくて、店の人気者だよ」
サキュバス「まさか本当に人間と魔物が共存出来る世界が来るなんてねぇ」
傭兵「これも全部、お前のお陰だ。勇者」
勇者「いえいえ!皆さんの力があってこそ、出来た事です・・・皆さんがいなかったら僕はきっと、ただの勇者で終わってたと思います」
サキュバス「はぁ~、歴史を変えた偉人なんだから、もっと堂々としなさいよ」
勇者「す、すいません」
傭兵「まぁ、そこがお前のいい所なんだがな・・・それより、まだ来ないのか?」
勇者「?」
サキュバス「んー、抜け出すのに時間がかかるとか行ってたから・・・」
勇者「誰か来るんですか?」
傭兵「ああ、お忍びでな」
勇者「お忍び・・・?」
カランカラーン
エルフ娘「いらっしゃいませ~!」
「・・・」
傭兵「お、来た!おい、こっちだ!」
サキュバス「お久しぶりです」
勇者「あ・・・お忍びって・・・貴方だったんですか・・・!魔王さん!」
魔王「久しぶりだな。だが今日はお忍びだ。あまり大きい声を出すな」
エルフ娘「はい、どうぞー」
魔王「ああ」
勇者「よくお城を抜け出せましたね」
魔王「苦労したがな・・・くっくっく・・・」
傭兵「女が来てないのが残念だが・・・メンツも揃ったし、乾杯しようぜ」
サキュバス「そうだね」
魔王「うむ・・・では勇者頼む」
勇者「はい・・・では行きます」
勇者「新しい世界に・・・乾杯!」
魔王・傭兵・サキュバス「乾杯!!!」
キンッ
終わり