勇者「ここが勇者学校か」 貴族生徒「何お前?」 13/14

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貴族生徒「さっきも言ったけどもう一回言うからちゃんと聞いてるんだぞ?僕と戦士生徒Aが前を歩いて、後の二人は後ろから援護だ。分かったな?」テクテク

戦士生徒A「わかってる」

魔法使い生徒A「作戦と言えるほどのものでもないと思うんですけど、どう思いますか?」ヒソヒソ

僧侶生徒A「不安ですけど、貴族生徒さんは相手を舐めてかかってるんだと思います・・・」ヒソヒソ

魔法使いA「でも聞いた話だと勇者ってやつのパーティーメンバー全員落ちこぼれなんでしょう?なら問題ないですよ」ヒソヒソ

僧侶A「それもそうですね」ヒソヒソ

戦士生徒A「いたぞ、勇者だ」

勇者「げっ、もうこんなところまで来てたのか!」ダッ

貴族生徒「逃げた!追うぞ!」ダッ

戦士生徒A「待て、一人で突っ走るな!」ダッ

僧侶生徒A「勇者が一人で偵察に来てたみたいですね」タタッ

魔法使い生徒A「やっぱり他のメンバーはあてにならないんですよ。走るのは苦手なんですけどね」タタッ

勇者「来てる来てる。やっぱりあいつら馬鹿だわ」タッタッタ

取り巻きA「大丈夫かな貴族生徒さん」

取り巻きB「おっ、勇者を見つけたみたいだぞ」

取り巻きA「追いかけてるみたいだけど、後ろの二人がどんどん離されて・・・」

魔法使い生徒A「ああ、二人が見えなく・・・」ゼェハァ

僧侶生徒A「二人共足が早いから先に行っちゃったんですね・・・」

ダッ

僧侶生徒A「えっ?」

魔法使い生徒A「ん?」

僧侶生徒「ごめんね!」

戦士生徒「許せ」

バシッ ボカッ

僧侶生徒A「」

魔法使いA[]

軍師「魔法使い生徒A、僧侶生徒Aの両名は戦闘不能、と」

勇者「ついて来んな!火球呪文!」ボッ

戦士生徒A「ふん!」バシッ

貴族生徒「そんな呪文効くか!」

勇者「ちっ、自分で防いだわけでもないのに偉そうに・・まぁ、そろそろいいか」

取り巻きA「お、勇者が止まったぞ」

取り巻きB「もう2対4なんだけど気付いてないんだろうなー・・・」

戦士生徒A「むっ、貴族生徒、止まるんだ」ガシッ

貴族生徒「何偉そうにしてるんだ!命令するのは僕だぞ!」

戦士生徒A「逃げていたあいつが急に止まったのは何か罠があるに違いない。いや、すでに遅かったかもしれないが・・」

貴族生徒「どうせハッタリだろ」

勇者「それがもう遅かったりするんだなー。今頃後ろの二人はリタイアしてるぜ」

戦士生徒A「その可能性もあると思ったが・・・貴族生徒を一人にするわけにはいかなかったから仕方がない。それにお前を倒せば勝てるわけだし・・・な!」ダッ

勇者「魔法使い生徒!」

魔法使い生徒「応!」

バシィッ

戦士生徒A「何!?」

魔法使い生徒「どうしたどうした、力で負けたらまずいんじゃねーのかぁ?」ギリギリギリ

貴族生徒「おい!魔法使い程度に何してるんだ!」

勇者「程度って言うけど力じゃお前勝てないぜ?」

貴族生徒「そんなわけないだろ!平民出の魔法使い如きに!」

勇者「そんなことばっかり言ってるからいつまで経ってもダメなんだお前は。早く俺を倒さないと俺の仲間二人が戻ってくるぞ」

貴族生徒「この!」

勇者「これは戦術の試験なんだからこの状況になってる時点で負けてるんだよ、そのくらい分かれ」

ボカッ

貴族生徒「」

勇者「ふう、一丁上がりだな」

~~

軍師「戦術の試験を終了する。解散」

勇者「ふー、戦術の試験は見事に合格したぜ」

平民生徒「普段あんまりほめない軍師さんがすごいほめてたもんね」

勇者「あれは相手がバカだったから出来たんだけどな・・。そういう平民生徒や女生徒だって余裕で合格だっただろ」

女生徒「当然ね」

平民生徒「僕はメンバーが優秀だったから」

勇者「女生徒と違って平民生徒は謙虚だなー。っと、今日はこれで終わりだっけ?」

平民生徒「うん、らしいよ」

女生徒「あら、担任だわ。話があるみたいね」

担任「剣術の試験のことで話がある。ちゃんと聞くように」

担任「剣術の試験だが、明後日行うこととする」

ザワザワ

担任「それでだが、入学してから常に身に着けておくように言ってあった鎧はこの後部屋に戻ったらもう着用しなくて良い。そして今夜と明日一日はしっかりと身体を休ませ、明後日の試験に臨むように。それでは以上だ」

勇者「おー、本番は鎧無しでやるんだな」

平民生徒「身体を鍛えるために着させてたらしいからね。本番で脱がなかったらいつ脱ぐのさ」

勇者「ごもっとも。けどなんつうか寂しくなるなー」

女生徒「あら、それなら別に脱がなくてもいいんじゃないかしら?」

平民生徒「そうだね」クスクス

勇者「でも重いからやっぱり脱ぐ。さ、帰ってのんびりしようぜ」

女生徒「じゃあ明後日会いましょう」

勇者「またな」

平民生徒「またね」

~~

▽校長室

コンコン

校長「入れ」

ガチャッ バタン

担任「失礼します。お呼びですか?」

校長「うむ。明後日の剣術の試験のことなんだがね・・」

担任「ご子息のことですか、わかっています」

校長「それは何度も伝えたはずだからな、分かっている。別のことだ」

担任「別の、と言いますと?」

校長「あの勇者とかいう平民出の小僧だ。今日の戦術の試験でも貴族生徒を卑怯な手で貶めていたそうじゃないか・・・正面からでは敵わないからと姑息な・・・」

担任「そうですな」

校長「で、だ。あいつを不合格にしてくれればそれでいい。適当な理由をつければ簡単だろう?」

担任「ええ、お任せください」

校長「では下がってよい」

担任「失礼します」

ガチャッ バタン

~~

勇者「・・・んー、いつもはベッドから出たくないんだけど、いざ寝ててもいいと言われると退屈だな」

平民生徒「勇者はわがままだね」

勇者「いやなんか忙しい時とか予定がある時だけ眠くなるみたいな、そんな感じ?」

平民生徒「でも鎧を着ずに1日休んで過ごせって言われてるんだから、そうしなくちゃ」

勇者「普段なら起きてるのにベッドに横になったままの平民生徒も珍しいな。真面目というかなんというか」

平民生徒「今日は休むのが訓練だと思えばいいよ」

勇者「あー・・・そうだな。のんびり話でもしよう」

平民生徒「そうだね」

勇者「平民生徒はさ、『勇者』になりたいか?」

平民生徒「どうしたの突然。なりたいに決まってるよ。勇者だってそうでしょ?」

勇者「そうなんだけどな、うん。ここを卒業したら『勇者』になれるっていうのがなんかな」

平民生徒「違うっていうこと?」

勇者「ああ。ここを卒業してなれる『勇者』と、俺が憧れた『勇者様』はなんか違うような気がするんだ」

平民生徒「うーん・・・」

勇者「例えば貴族生徒がここを卒業するだろ?」

平民生徒「うん」

勇者「そしたらあいつも『勇者』になるわけだ」

平民生徒「そうだね」

勇者「憧れるか?」

平民生徒「・・・・黙秘するよ」

勇者「そういうことだ」

平民生徒「なるほど・・・」

勇者「だろ?」

平民生徒「でもさ」

勇者「なに?」

平民生徒「それでも『勇者』になるのが一番『勇者様』に近づけるんじゃないかな」

勇者「その『勇者』は俺がなりたかったものじゃない気がするんだよなー・・・」

平民生徒「じゃあさ」

勇者「うん?」

平民生徒「勇者のなりたい『勇者』になればいいんだよ」

勇者「なりたい『勇者』・・?」

平民生徒「うん。好きなようにやってみたらいいと思うんだ」

勇者「・・・そうか、そうだな。ありがとな平民生徒。モヤモヤが晴れたぜ」

平民生徒「そんなお礼を言われるようなことしてないよ」

勇者「俺にとっては礼を言わなきゃいけないことなんだよ。とにかく明日の試験で合格しねぇとな!」

平民生徒「うん・・・」

勇者「一気に暗くなったな」

平民生徒「勇者は心配ないだろうけど、僕は不安で仕方が無いんだよ」

勇者「大丈夫だって、心配すんな」

平民生徒「うん・・・。あ、勇者、手出して?」

勇者「ん?なんだ?」ス

ギュッ

平民生徒「こうしてれば不安も無くなるから」

勇者「お、おう・・」

平民生徒「明日は頑張ろうね」

勇者「だな」

~~

魔法使い生徒「平民生徒とのイチャラブ来るかと思った?残念、筋肉の発達した魔法使い生徒ちゃんでした!」ムキッ

~~

▽校庭

担任「全員集まったな。しっかり休んで来たか?これで合格できるかどうかが卒業できるかどうかに関わる、気を引き締めて臨むように。それではこれより剣術の卒業試験を行う!」

ガヤガヤ

担任「内容は簡単、私と打ち合いをして1本とれたら合格だ。鍛錬に耐えてきたお前たちなら出来る。自分を信じろ」

担任「では順に呼ぶので、呼ばれるまで待機しておけ」スタスタ

勇者「おおう、試験は担任と一騎打ちか・・」

女生徒「さすがの私も緊張してきたわ」

平民生徒「僕なんて緊張しっぱなしだよ」

勇者「俺は楽しみなんだけどなー、担任と打ち合いなんて初めてだろ?」

平民生徒「そうだけど・・」

補佐「次、貴族生徒」

貴族生徒「はい」

取り巻き「がんばってください!」

貴族生徒「こんな試験余裕さ。すぐ戻るからな」スタスタ

勇者「コネの塊の癖にどうしてああも偉そうなんだろうな」

女生徒「自分の実力と勘違いしてるんじゃないかしら」

平民生徒「まあまあ」

~~

補佐「次、勇者」

勇者「ついに来たか」

女生徒「あなたが不合格なら全員不合格なんだから、頑張りなさいよ」

平民生徒「がんばってね・・!」

勇者「おう、楽しんでくるぜ」テクテク

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