勇者「ここが勇者学校か」 貴族生徒「何お前?」 9/14

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平民生徒「何かいる・・・?」カチャッ

勇者「魔物かもしれないな。夜中に肉なんて焼くべきじゃなかったかもしれねぇ」

女生徒「魔物・・・戦うの?」

勇者「こんな暗い中逃げても逃げられるかわからねぇし、はぐれたりしたら大変だからな。俺達なら大丈夫さ」

犬魔物「グルルルル」

平民生徒「やっぱり魔物だったね・・!」シャキン

勇者「しかも一匹じゃないみたいだな」シャッ

ガサガサ ガサガサ

女生徒「け、剣・・・」ブルブル

勇者「女生徒、怖いなら下がっててもいいぞ」

女生徒「私だって『勇者』を目指してるんだから、こんな魔物くらい・・・」

犬魔物B~F「グルルルルル」ガサガサ

勇者「魔物だしこのくらいの火じゃ怖がらないか。よし、二人共無理はするなよ。このくらいの魔物なら俺がちょちょいと片付けてやるよ」

平民生徒「勇者に頼ってばかりはいられないよ」

女生徒「勇者一人じゃ頼りないから私も手伝ってあげるわ」

犬魔物A~F「!?」ピクッ

ガサガサ

勇者「ん?まだいるのか?」

獅子魔族「グオオオオオオオオオオ!!!」

ビリビリッ

勇者「なんだあいつ、叫んだだけで衝撃が・・!」

犬魔物A~F「キャインキャイン」

勇者「犬魔物は逃げたけど悪化した気がするな・・・、だけど三人で力を合わせれば!・・・あれ?」

女生徒「勇者、あなたならきっと勝てるわ」

平民生徒「勇者、頼りにしてるから・・!」

勇者「薄情者ぉぉぉぉぉぉ!!無理!!絶対無理!!」

勇者「・・・」チラッ

獅子魔族「・・・・」

勇者「うわー、これもう死んだ、絶対死んだ」

獅子魔族「・・・・」

ズシャッ ズシャッ

勇者(うわぁ、こっち近づいてくるし!こんなところで死ぬのか俺は・・・!)

勇者(いや、ここで俺が死んだらあとの二人もすぐに殺されてしまう。まだ死ねない。どうせ死ぬにしても、せめて二人が逃げられるだけの時間を稼いでから死んでやる・・!)

獅子魔族「坊主、危ないところだったな」

勇者「・・・へ?」

獅子魔族「夜になると犬共が活発になるから気をつけた方が良いぞ」ポンポン

勇者「もしかして、言葉が分かる・・・のか?」

獅子魔族「ワシは魔物ではなく魔族だからのう」

勇者「じゃあ、さっきのは俺達を助けてくれたのか・・・。ありがとう、勘違いしてすまなかった」

獅子魔族「なぁに、平和になったとは言えこの姿、怖がられるのには慣れておるわ」

タッタッタッ

平民生徒「勇者、大丈夫?危ないところありがとうございました」

女生徒「ありがとうございました」

勇者「お前らがあんなやつだとは思わなかったぜ」

女生徒「助かったんだから良しとしましょう」

勇者「それ普通俺の台詞だからな?」

獅子魔族「はっはっは。お主らはこんな時間にどうしてこんなところにおるのだ?」

勇者「修行に来たんだけど中々良さそうな場所が無くて、仕方ないから野宿しようとしてたんだ」

獅子魔族「なるほどのう。それならワシの家に来ないか?夜のこの森は坊主らにはまだ危険だ」

勇者「おー、いいのか?」

獅子魔族「誰も彼もすぐに逃げて行きおるから話相手が欲しかったところだ、遠慮はしなくていい」

勇者「どうする?」

平民生徒「お邪魔させてもらった方がいいと思うな。このままここで寝るのは怖いよ」

女生徒「そうね、魔物と戦闘するのはなるべく避けたいわ・・・」

勇者「よし、じゃあ決まりだな。俺は勇者、お世話になるぜ」

平民生徒「平民生徒です、よろしくおねがいします」ペコリ

女生徒「私は女生徒と申します。お世話になります」ペコリ

獅子魔族「ワシは獅子魔族だ。堅苦しいのは好きじゃないから普段通りでかまわんぞ。ではしっかりついてこい?」ノッシノッシ

勇者「獅子っぽいけど2足歩行するんだな」

獅子魔族「本気で走る時は4足だが普段は2足だのう。大体の魔族は2足だぞ?」

勇者「んー?さっきも思ったんだけど魔族と魔物の違いってなんだっけ?」

平民生徒「え?勇者知らないの?」

女生徒「え、違うの?」

平民生徒「女生徒まで・・・」

獅子魔族「知能が低く動物のように本能で生きてるさっきの犬魔物のようなのが魔物で、知能が高いワシらのような存在を魔族と呼ぶのだ」

平民生徒「魔王が倒されて魔族は大人しくなったんだけど、魔物はもともと魔王の命令で動いてるわけじゃなかったらしくて、今でも人を襲ったりするんだ」

獅子魔族「魔物はワシらにとっても邪魔になることもあるからのう。人間が野生の動物に襲われるのと同じことだ」

勇者「魔物と魔族がごっちゃになってみんな敵だと思ってたのか。話せば分かったんだろう?」

平民生徒「うん。獅子魔族さんみたいな魔族は多いらしいよ」

獅子魔族「しかし、寂しいことに未だに魔物と同じに思われてることも多い」

勇者「そうなのか?」

平民生徒「うん。さっき僕達も新しい魔物が出たって驚いてたでしょ?あんな風に勘違いして逃げたり、攻撃したりしてもめることがよくあるらしいんだ。数的に人間が判断するから魔族の人達が一方的に悪くされちゃった

勇者「なんか嫌な感じだな」

獅子魔族「その内分かってくれるだろうさ。さぁ、着いたぞ」

勇者「おお、普通に木で出来た家だ。正直洞窟とかほら穴とか、そんなの想像してた」

平民生徒「そういうこと言ったら失礼だよ」

勇者「おっと、これは失礼」

獅子魔族「そういうのが好みではあるが、人間から見たらこっちの方が親しみやすいと思うてのう」

勇者「あ、やっぱりそっちの方が良いんだ」

獅子魔族「さぁ、遠慮なくあがってくれ」

三人「お邪魔しまーす」

獅子魔族「空き部屋は5つほどあるから好きに使ってくれてかまわん」

勇者「あんたどれだけお客さんが来るのを想定してたんだ」

獅子魔族「備えがあれば憂いは無いというからのう」

平民生徒「それでお客さんが来たことは・・・」

獅子魔族「坊主らが初めてだ」

三人「!!」ブワッ

勇者「精一杯くつろがせてもらうぜ・・!」

獅子魔族「変な奴らだのう・・。それで、しばらく泊まっていかないか?」

勇者「良いのか?2週間程修行しようと思ってたからそれいくらいいさせてもらえるとかなり助かるんだけど」

獅子魔族「もちろん大歓迎だ。何せ初めてのお客様だからのう!」ウキウキ

勇者(すげー楽しそうだ・・。超強面の癖にどんだけもてなし好きなんだよこのおっさん・・・でもま、良い人みたいだな)

獅子魔族「湯を沸かしてあるから浴びてくるといい。汗だくだろう?」

勇者「おう、じゃあありがたく」スタスタ

獅子魔族「お嬢ちゃん達も行くといい。広く作ってあるから問題は無いぞ」

女生徒「あ、はい・・・・達?」

獅子魔族「ん?雌かと思ったんだが勘違いだったか?」

平民生徒「いえ、いつも男の子に間違われるので・・・」アタフタ

獅子魔族「そうかそうか、可愛いお嬢ちゃんなのに周りの者共は見る目が無いのう、はっはっは」ポンポン

平民生徒「あ、ありがとうございます//」

女生徒「じゃあ行きましょう」

平民生徒「うん」

テクテク

獅子魔族「・・・まるで孫でも出来たようだ。さぁ、腹も空かせておるだろうし料理もしなければのう」ウキウキ

~~

勇者「いや、しっかり男女別れてるってどうよ。どれだけもてなす気でこの家作ったんだよ獅子魔族さん・・・」

勇者「まぁ、魔物と対峙しただけで嫌な汗かきまくったし疲れたからゆっくり堪能しよう」

~~

勇者「ふー、さっぱりした。あ、獅子魔族さん」

獅子魔族「もうあがったのか。もう少しで食事の支度が出来るから少し待っておれ」

勇者「お、おう。これでも結構のんびりしてたつもりだったんだけど・・・そういや用意してあったこの服は着ても良かったのか?」

獅子魔族「もちろん、お客様用に置いてある物だ、遠慮なく使うと良い」

勇者「いたれりつくせりってやつだなほんと・・。鎧は重いしその辺に置いとこう」

勇者「俺も長く入ってたつもりだったけどやっぱり女は長いもんなのか・・?」

獅子魔族「身だしなみに気を遣うものではないのか?」

勇者「普通はそうなんだけど、あいつらはなんていうか普通と違うからな」

獅子魔族「ほう、どう違うんだ?」

勇者「話すと長いんだけどな」

~~

勇者「っていうわけなんだよ」

獅子魔族「ほう、人間と魔族間のトラブルを解決する『勇者』になるための学校とは・・・。主らのような人間がその『勇者』になるのならワシら魔族も平和に暮らせるようになるかもしれんのう」

勇者「ああ、俺達がそういう世界を作って見せるさ」

平民生徒「あ、勇者はもうあがってたんだ」

女生徒「こんな森の中でお湯に浸かれるなんて思ってもみなかったわ・・」

勇者「お、二人共あがったのか。なんか鎧もつけてないし寝巻きだしですごい新鮮だ」

平民生徒「こういうの久しぶりに着たけどやっぱり僕なんかじゃ似合わないよ・・・」チラッ

女生徒「そんなに気にしなくてもいいじゃない。それに、私達は『勇者』になるのが一番よ」

平民生徒「うん、そうだね」

獅子魔族「ワシも応援しておるぞ」

女生徒「ありがとうございます」

平民生徒「そっか、『勇者』になれば獅子魔族さんみたいな怖がられてる人達の助けにもなれるんだね・・!」

勇者「おう、そんな話を丁度してたところなんだ。そんな世界を俺達が作る、ってな」

女生徒「あら、勇者にはちょっと難しいんじゃないかしら?」

勇者「なにをー!?」

ワイワイ ガヤガヤ

~~

勇者「んん・・もう朝か、なんか頭がガンガンする・・・」フラフラ

獅子魔族「起きたか、おはよう」

勇者「おはよう・・。昨日なんかあったっけ、頭痛ぇ・・」

獅子魔族「ワシが飲んでおった酒を主らにも振舞ったら、気に入ってどんどん飲んでおったじゃないか。覚えてないのか?」

勇者「ああ、酒か。どうりで頭が痛いわけだ」ズキズキ

勇者「あの二人も飲んだのか?」

獅子魔族「ほれ、あの通りだ」チラッ

平民生徒「」

女生徒「」

勇者「二人共床で力尽きてるな」

獅子魔族「あれだけ飲めば当然だのう。たくさん騒いでおったぞ」

勇者「女生徒はともかくとしてハイテンションな平民生徒とかちょっとどんなのか気になるな・・・どうして忘れてしまってるんだ俺ってやつは」

獅子魔族「はっはっは、とりあえずワシの作ったスープでも飲んでおけ」

勇者「嗅いだことない匂いだけどなんだこれ・・。えらく濁ってるな」

獅子魔族「酒の肴にしようと思って豆の塩漬けを置いておいたら腐ってしまったんだが、片付けるのも面倒でさらに置いておいたらよく分からん物になったんだ。舐めてみたらこれが意外といけてのう・・・。色々研究する

勇者「よく分からん物ってそれ、ただの豆が腐った物じゃ・・?」

獅子魔族「まずは飲んでみろ、文句はそれから聞こう」

勇者「うーん・・・、まぁ母さんの料理に比べたらマシな気がしてくるな・・」ズズズ

獅子魔族「どうだ?」

勇者「なんだこれ、普通にうまいぞ・・・!」

獅子魔族「そうだろうそうだろう」

勇者「野菜とかにもあってるし・・・このなんとも言えない塩味がたまらないな」ズズー

獅子魔族「しかもそのスープは二日酔いにも効くようだから、後で二人にも飲ませてやるといい」

勇者「ん、どこかに出掛けるのか?」

獅子魔族「いつもは来客に備えて蓄えがあるんだが今日はたまたま少なくなっていたところでのう、食料や燃料を調達しておかないといけないんだ」

勇者「俺達も手伝おうか?」

獅子魔族「なに、余計な心配はせずに客人はもてなされておけば良い。では行ってくるが家の物は好きに使ってくれ」ノッシノッシ

勇者「なんか悪い気もするけどお言葉に甘えて俺達は修行頑張るか」

勇者「それにしてもこれうまいな・・・」ズズー

平民生徒「う・・ううん・・?」

勇者「お、平民生徒、おはよう」

平民生徒「おはよう勇者・・・すごく頭が痛いんだけど何か知ってる?」

勇者「昨日みんな酒飲んで騒いでたんだとさ。ちなみに俺も記憶が綺麗さっぱり無い」

平民生徒「そうなんだ、僕も全然覚えてないや・・」

勇者「ほら、獅子魔族さんが作ったスープがあるぞ。こんなの初めて食べたけどかなり美味かったぞ」

平民生徒「ありがとう。確かに変わった匂いだね・・・」ズズ

平民生徒「・・うん、すごく美味しいね。なんだか落ち着くよ」

勇者「だよな。獅子魔族さんの人の良さが伝わってくるみたいだ」

平民生徒「あはは、確かにそんな感じだね」

勇者「ああいう人のためにも、立派な『勇者』になりたいな」

平民生徒「確かにまだ人を襲ったりする魔族もいるみたいだけど、ほとんどの魔族は平和的に生きていくことを望んでるらしいよ。だから勇者様は魔王を討った後、世界を旅して人間と魔族の揉め事を解決して周ってたんだ

勇者「そうだったな。それで一人では限界を感じて『勇者』の学校を作るように当時の王に迫って、去年やっと完成したわけだ」

平民生徒「すっごく憧れた勇者様に自分がなれるなんて・・楽しみだね」

勇者「でも、今の学校は勇者様が望んでた物なのかとか思ったりしちまうんだよな」

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