勇者「ここが勇者学校か」 貴族生徒「何お前?」 2/14

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14

女生徒「ええ、女生徒よ。よろしくね」

勇者「よろしくおねがいします。ところで、僕に何か用ですか?」

女生徒「朝の貴族生徒と揉めてたの見てたから、そんなにかっこつけなくてもいいわよ」

勇者「ああ、さいですか」

女生徒「剣を振りに行くんでしょ?私も付き合わせてもらおうと思って」

平民生徒「みんな遊びに行くみたいだけど行かなくていいの?」

女生徒「逆よ。『勇者』になるためにこの学校に来たのに遊びに行くなんてどうかしてるわ」ハァ

勇者「おー・・・貴族にもまともなやつはいたんだな」

平民生徒「そういう決め付けはよくないなー」

女生徒「平民生徒の言うとおりだわ。確かに何しに来たのか問い詰めたい人もいるけどね・・・」

勇者「奇遇だな、俺もだ」

平民生徒「それは僕もかな」

三人「HAHAHAHAHA!」

勇者「なんか女生徒とは気が合いそうだ。女っ気が無いから是非仲良くしてくれ」

女生徒「そういう目で見られるのは好きじゃないわ。何度も言うけど私達は『勇者』の資格を得るためにここに来たんだから、それ以外考えてる余裕なんてないでしょ」

平民生徒「それもそうだね」

勇者「資格、か・・・」

平民生徒「それじゃあ庭にでも行こう」

勇者&女生徒「おー」

▽中庭

勇者「そういえば二人共剣は持ち込みしてるのか?」

平民生徒「僕は剣を買うが余裕が無くて学校の訓練用の木剣だよ。それにまだ金属の剣で素振りを出来るほど慣れてないし」

女生徒「私もさっき借りてきた木剣だよ。勇者君は自分の剣があるんだね」

勇者「あー、親父が冒険者だったらしくて、昔使ってた鍛錬用の剣と鎧を持たされたんだ。けどまぁまだ初日だし今日は俺もこの木剣を振るぜ」

平民生徒「訓練が始まる前からバテちゃったら大変だもんね」

勇者「そうそう、のんびり行こうぜ」

勇者「いーち、にーい・・・」ブン ブン

~~

勇者「ふー、いい汗かいたな」

女生徒「まるでおじさんみたいなこと言ってる」クスクス

平民生徒「ふぅ、でも、剣を振るだけでも案外疲れるんだね・・・僕も汗だくだよ」

女生徒「うん、結構大変そうだね。これからの訓練大丈夫かな・・・」

平民生徒「頑張ればなんとでもなるって。そうだろ、勇者」

勇者「ああ、きっとそうだ。じゃあまた明日から頑張ろう」サッ

平民生徒「ん・・ほら、女生徒も手を重ねて」スッ

女生徒「うん」スッ

勇者「勇者になるぞ!」

3人「おー!」

~~

▽宿舎_勇者の部屋

勇者「部屋に来てみたらまさか同じ部屋とは・・・」

平民生徒「僕たちは不思議な縁があるみたいだね。ただ単に平民からの一般入学だからって理由かもしれないけど」

勇者「俺たちの部屋だけ離れたボロ小屋で他の連中は立派な建物だからな、そんな気もするぜ・・・。まぁ気にしても仕方ないから水浴びして飯だ飯」

平民生徒「そうだね、汗もかいたしお腹もぺこぺこだ」

~~

平民生徒「ご飯も別だったね」モグモグ

勇者「広くて綺麗な食堂に行ったら俺たちの席は無いって言われて、部屋に戻ってきたらパンとスープが置いてあったな。ドアに小さい扉がついてると思ったらそういうことかよ」ガツガツ ズズー

平民生徒「よっぽど毛嫌いされてるみたいだね・・・。まぁこの学校に入れただけでも有り難いのかもしれないけどさ」

勇者「なんかおかしい気もするけどな。勇者を育成する場所でこんな露骨なことやってどうすんだと思うぜ俺は・・・」ゴクゴクゴク・・・ゲフッ

平民勇者「それでもやっぱり立場は違うから仕方ないのかもしれない。さすがに成績なんかの評価は立場関係なくするだろうし」

勇者「だといいんだけどなー・・・ちょっと嫌な予感しかしない」

平民生徒「それでも勇者になれるだけの成績をおさめればいいんだよ。まだ訓練もはじまってないんだし、ね?」

勇者「まーそれもそうだな。じゃあとっとと寝ちまおう」

平民生徒「うん、おやすみ」

勇者「おやすみ」

~~

平民生徒「勇者、朝だよ。早く起きないと朝ごはん食べる時間無くなっちゃうよ」

勇者「・・・うん?ああ、もう朝か・・・おはよう」モゾモゾ

平民生徒「結構前から起こそうとしてたんだけど、朝弱いのかな?」

勇者「うん、まあ普通かな・・・。ただ寝起きには俺を呼ぶ布団の声を聞く力が目覚めるんだ・・・いただきます。あぐ」モムモム

平民生徒「よい・・・しょ、っと。鎧ってこれで大丈夫かな?」

勇者「ああ、ちゃんと着れてると思うぜ。それもここのか?」

平民生徒「そうだよ。学校に入るだけで一杯一杯で・・・」

勇者「なるほどー。家は何やってるんだ?」

平民生徒「普通の農家なんだけど近頃出来があまり良くないんだ」

勇者「それで『勇者』になって稼ぎたいと」

平民生徒「それもあるんだけど、でもやっぱり勇者になりたいのは憧れたからなんだ」

勇者「憧れた?・・・ごちそうさまでした」ゲフッ

平民生徒「うん。まだ小さい頃に読んだ勇者の冒険譚が忘れられないんだ。僕もこんな冒険がしてみたい、こんな風に旅がしたい、って。それで少しでも近づける気がして、『勇者』を目指そうと思ったんだ」

勇者「いい話じゃないか」

平民生徒「なんか照れるなぁ」

勇者「立派なもんだって、胸を張れよ」

平民生徒「あはは、ありがとう。勇者はどうして『勇者』になろうと思ったんだ?」

勇者「俺も平民生徒と似たようなもんさ。やっぱりかっこいいからな」

平民生徒「だね」

勇者「っていうか鎧を着て行くのは今日からなのか」

平民生徒「そういう風に説明があったと思うんだけど・・・。昨日も鎧着てたの勇者だけだったでしょ?」

勇者「うわ、なんかすごい張り切ってるみたいで恥ずかしい!母さんめ・・・!」

平民生徒「あはは、でもこれからは皆常に鎧の着用が義務付けられてるから1日くらい早くたって問題ないよ」

勇者「それもそうだ。俺も鎧着ちゃわないとなー」ガシャガシャ

平民生徒「訓練用らしいんだけど鎧って結構重たいんだね・・」

勇者「初めて着るのか?」

平民生徒「今まで旅とか冒険に全く縁が無かったからね」

勇者「そういえばそうだった。慣れるまでは結構大変かもしれない」

平民生徒「でも鎧を着たまま普通に生活できないと勇者なんてなれないんだろうね」

勇者「だろうなー」

平民生徒「なら慣れるしかないよね・・!」

勇者「おお、さすがだな平民生徒!今頃文句しか言ってないだろう貴族生徒のやつも見習うべきだな」

平民生徒「そんなの分からないじゃないか」

勇者「お優しいことで」

平民生徒「誰に対しても平等に接するのも大事なことだと僕は思ってるからね」

勇者「平民生徒が優等生な訳は納得した」

平民生徒「??」

勇者「あー、いや、なんでもない。じゃあ準備も出来たし行くか」

平民生徒「うん。集合は校庭だったね」

▽校庭

生徒A「おい、お前の鎧かっこいいな」

生徒D「これからのために新品を買ってもらったからな!」

ワイワイ ガヤガヤ

取り巻きA「貴族生徒さんの鎧めちゃくちゃいいっすね!」

貴族生徒「そうだろう?なんせ王都1の職人に特注で作らせた最高級の鎧だからな!」ドヤァ

取り巻きB「輝きが違いますもんね!」

貴族生徒「それに引き換え・・・」チラッ

取り巻きA「勇者の方は昨日からすでに汚いのは知ってたけど、もう一人の平民は学校からの備品だってさwww」

取り巻きB「兵士のお下がりかww傷だらけだしやっぱり汚いなwww」

貴族生徒「平民に鎧を新しく買えなんて酷なこと言うんじゃないよお前ら。それによく似合ってるじゃないか!」

取り巻き「HAHAHAHAHAHA」

女生徒「・・・・」ムカムカ

勇者「ふあー・・・あいつらは楽しそうでなんかうらやましくなってくるぜ」

平民生徒「笑われてるのに余裕なんだね、勇者は」

勇者「あれはああいう鳴き声の虫かなんかだと思えばいいのさ」

平民「はは、それは面白いね」

勇者「だろ?」

生徒G「あ、先生が来たぞ!」

担任「よーし、全員揃ってるな。午前の訓練は剣術だが、まずは諸君らの体力がどれほどのものか見せてもらいたい」

ザワザワ

担任「よってまずはこの校庭の外周を走ってもらう」

エー ケンジュツナノニ? サイアクー マジカヨ

担任「剣を振るのはもちろん旅をするのに体力は必要不可欠なものだ、それを鍛えるのに自分の限界を知るのは悪くない。制限は設けないから良しというまで走ること。では行け!」

ドタドタドタドタ

平民生徒「ま、まさかこれを着たまま走らされるなんて」ガシャガシャ

勇者「言ってることはもっともだったけどな」ガシャンガシャン

女生徒「そうね、今はとにかく頑張って走りましょう」ガシャンガシャン

~~

貴族生徒「ひぃ、ひぃ・・・くそっ、マラソンなんて聞いて、ない・・・!」ガシャンガシャン

担任「大分ばてて来たな・・・・よし、そこまでだ!」

モウダメダ シヌ・・・ カラダガウゴカナイ

勇者「ぜはー、ぜはー、こんだけ走らされるときっついなー・・・」

平民生徒「はぁ、はぁ、鎧が重くて、しばらく立てそうに、ないよ・・・」

女生徒「はぁ、ふぅ、二人共座り込んじゃって、情けないわね・・・」

勇者「ぜはー、そういう女生徒も、へたれてるじゃねーか・・・」

女生徒「わ、私はくつろいでるだけだから・・・!」

平民生徒「はぁ、はぁ・・」

平民生徒(二人ともよくあんなに喋る元気があるなぁ・・・)

貴族生徒&取り巻き「」ピクピク

担任(ふむ・・・今のところ見込みがありそうなのは少ししかいないな。少し前まで屋敷で気ままにくらしていた貴族層の者達ばかりでは仕方が無いと言えば仕方が無いが・・・果たしてこんなことで大丈夫なんだろうか)

担任「集まれ、集合だ」

勇者「あんまり休ませてもくれないみたいだな・・・ほら、行くぞ」

平民生徒「ま、待って、今行く・・・」ハァハァ

担任「ではこれから剣術の訓練に入る。剣の持込をした者は?」

担任「・・・・女生徒全員と平民生徒以外は全員か」

担任(女子に剣を持たせることを親が賛成的ではないようだが仕方が無いとは言え・・・、鎧と言い貴族の男子は逆に見栄っ張りばかりだな・・・)

担任「よし、では持ち込みをしたものは最初から最後までその剣で訓練を行ってもらう。木剣のものはなるべく早い内に自分の剣を用意するように。まずは素振り100本、上から下へまっすぐ振り下ろせ。始め!」

~~

担任「よし、合計300本の素振り完了。次回からはこれをしてから訓練開始とするからそのつもりで。では午後は教室で講義だ。解散」

生徒「」

貴族生徒「う、腕が・・・上がらない・・・・!」プルプル

勇者「あのおっさん軽い準備運動のノリだったけどこれは大丈夫なのか・・・」プルプル

平民生徒「僕はスプーンが持てるかどうかも怪しいよ・・・」プルプル

女生徒「これくらいじゃないと、この学校に来た甲斐が無いじゃない」プルプル

勇者「おい、手震えてるぞ」

平民生徒「強がってるみたいだね」

女生徒「他の子達と一緒にしないで欲しいわ」

勇者「まぁ確かに他の貴族のやつらよりマシだけどな。男子共なんてかっこつけて新品の剣持ってきたせいで大変なことになってたし」

平民生徒「とりあえずご飯食べに部屋に戻ろうか・・・」

勇者「ああ、そうだな・・・」

女生徒「えっ、食堂で食べないの?」

勇者「んん?なんか俺達は部屋に飯が運ばれてくるからそれで済ませなきゃいけないみたいだ」

女生徒「えっ、そうなの?」

平民生徒「なんでかは知らないけどね」

勇者「そういうわけだからまた後でな」スタスタ

平民生徒「また後で」テクテク

女生徒「あ、うん、またね」

勇者「あー・・・腕が痛ぇ・・・」

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14