▽勇者科教室
商人「今日から交渉術の授業を任された商人だ。よろしくなー」
商人「ワシの授業ではその名の通り交渉術や話術の訓練を行う。これは『勇者』として問題を解決するにあたって非常に重要になってくるので、心して学ぶように」
~~
商人「では今日の講義はここまで。次の授業もここだから30分後にはまた着席しておくこと」スタスタ
勇者「ぐ・・・頭が・・・」
平民生徒「あはは、なんだか苦しそうだね」
勇者「おう、平民生徒か。深く考えるのは苦手だからこういうのはちょっとな・・・」
平民生徒「そうなんだ。僕は剣術の授業よりこっちの方が向いてるからまだマシかな」
勇者「母さんにも困難にぶつかった時はうまくいく方法を模索しないといけないから勉強は大事だって言われてたんだけど、やっぱり苦手なもんは苦手だ」
平民生徒「勇者は昔から『勇者』になるための訓練をつんできたんだね」
勇者「ああ、憧れだったからな」
平民生徒「それなら苦手くらいすぐ克服できるよ。意外と根性ありそうだし」
勇者「むしろ根性しか無い気がする」
勇者「次は戦術の講義か。気合入れていこうな」
平民生徒「うん、それじゃあまた後で」
勇者「おう」
~~
勇者「んー、思ったより難しい話じゃなくて面白かったな」
平民生徒「そうだね、あの軍師さんの話し方も面白かったし、勇者はああいうの好きそうだもんね」
勇者「ああいう熱い戦いの話とか燃えるだろ」
平民生徒「そうだね」
勇者「よし、部屋に帰るかー。明日からは3つの授業が順番に繰り上がってくるんだっけ?」
平民生徒「そうだよ。だから明日はまず交渉術、次に戦術で最後に剣術だよ」
勇者「最後に剣術が一番いい気がするな」
平民生徒「最初だったりすると今日みたいにみんな疲れ果ててそうだもんね」クスクス
勇者「だな」
▽勇者の部屋
勇者「ごちそうさまでした」
平民生徒「ごちそうさまでした」
勇者「疲れてるからか知らないけど、なんかこれだけじゃ物足りねぇな」
平民生徒「うん・・・、でもこれ以外に食べるものももらえないと思うし我慢するしかないよ」
勇者「そうなんだけどなー・・・」
コト
勇者「うん?」
平民生徒「勇者、どうかした?」
勇者「いや、なんか物音がしたような・・・」
ガチャッ
勇者「おおう?平民生徒、ちょっと見てくれ」
平民生徒「何かあったの?・・・え?なんで食べ物がこんなところに」
勇者「干し肉や果物なんかが籠に入って置いてある・・・食って良いんだよな?」
平民生徒「学校からの配給ならこの小さな扉から入れてくれるだろうし、一体誰が・・・」
勇者「まぁくれるっていうんならもらおうぜ」
平民生徒「もう、食い意地が張ってるねキミは・・」
勇者「え?なもごもっご?」モムモム
平民生徒「口にものを入れたまま喋らない」
バタン
~~
~~
▽勇者科教室
勇者「訓練が始まってから一週間経ったけど、平民生徒はもう慣れたか?」
平民生徒「うーん、やっぱり剣術の方はまだ身体が追いつかないなぁ」
勇者「でも今のところ走ったり剣を振ったりばかりで基礎的なことしかしてないから、効果が出るのはまだかかりそうだ」
平民生徒「そんなすぐに鍛えられたら苦労しないもんね。毎日身体が悲鳴上げてるよ・・・」
勇者「そんなもんだって。俺も最初は鎧着たら一歩も動けなかったし」
平民生徒「今じゃ平気そうなのに」
勇者「歩くくらいならな。走ったらもうすぐ疲れちまう」
平民生徒「そういえばこの学校って呪文は習わないのかな」
勇者「そういえばそうだよな。魔法使い科のやつらに任せるから勇者は魔法いらないとかそういう感じじゃねーの?」
平民生徒「そんなこと・・・ないとも言い切れないから困っちゃうね」
勇者「だろ?しょうがないから休みの日にでも練習するしかないか・・」
平民生徒「そうだね、ゆっくり休みたい気持ちもあるけど呪文の練習もしとかないとね」
勇者「じゃあ次の休みにでも早速やってみるかー」
女生徒「ねぇ、なんの話してるの?」
勇者「うん?ああ、今度の休みに呪文の練習でもしようかってな」
平民生徒「授業ではまだ習わないみたいだから今のうちから練習したくって」
女生徒「あ、私も混ぜて欲しいな」
勇者「呪文の練習にか?」
女生徒「うん。私も授業で無いのが気になってたから」
平民生徒「お休みが潰れちゃうことになるけどいいの?」
女生徒「そんなこと言ってる余裕なんて無いからいいの」
勇者「さすが女生徒は違うな」
平民生徒「そうだね」
女生徒「なにそれ」
勇者「褒めてるんだよ」
平民生徒「そうだよ」
女生徒「まあいいわ。場所は?」
勇者「中庭でいいんじゃないか?」
平民生徒「じゃあ中庭に10時集合で」
勇者&女生徒「はーい」
~~
▽中庭
勇者「うーっす・・」
平民生徒「おはよう」
女生徒「二人共おはよう。なんで勇者はそんなに眠そうなのよ」
勇者「休みだと思って布団から出なかったからまだ目が覚めてないんだ・・・ふあー・・・はぁ」
平民生徒「勇者は寝起きよくないからねー」
平民生徒「とりあえずはじめよっか」
女生徒「うん。で、どうするの?誰かに習うの?」
平民生徒「どうしよっか」
勇者「決めてなかったのか・・」
女生徒「呆れた・・・。どうやって練習するのよ」
平民生徒「呪文に関する本をいくつか持ってきたからこれを参考にしてやってみようよ」
女生徒「そうね」
勇者「ちょっと顔洗ってくるわ」
~~
勇者「調子はどうだ?」
平民生徒「うーん、ある程度は分かったんだけどさっぱりかな」
女生徒「そうね・・・。誰か呪文が使える人がいればいいんだけど」
勇者「え、俺使えるけど?」
平民生徒「え?」
女生徒「ちょっと、使えるなら最初から言いなさいよ・・・」
勇者「でも簡単なのしか使えないしそれに人に教えられるほど器用じゃないんだって・・」
平民生徒「そっかー。じゃあこの本に書いてあるとみたいに瞑想でもしてみようか」
女生徒「そうしましょう」
勇者「俺も俺も」
~~
平民生徒「火球呪文!」ポフッ
平民生徒「出そうではあるんだけど・・・」
女生徒「火球呪文」ポッ
女生徒「やった!見た?出たわ!」
平民生徒「おー、早いね」
勇者「なんだかんだ言いながら二人共上達早いんだな。俺はもっと苦労したのに・・・」
平民生徒「勇者は瞑想とかも苦手そうだからね」
勇者「よくお分かりで」
女生徒「見るからに体力馬鹿だしね」
勇者「体力馬鹿とは失礼な、女生徒だって女共の中じゃ充分体力ばk 女生徒「ふん!」ゴスッ
勇者「かぺっ!?」
女生徒「こんなか弱い乙女を捕まえて、失礼しちゃうわ」
勇者「どの口が言うんだ・・・」
平民生徒「あはは、それじゃあ今日はこのくらいにしてまた練習しよう」
勇者「そうだな。あとは明日に備えてゆっくり休もう」
女生徒「うん、じゃあまた明日!」
勇者「またなー」
平民生徒「またねー」
~さらに2週間~
担任「今日は二人一組になって軽く打ち合ってもらう」
ガヤガヤ
勇者「平民生徒、組もうぜ」
平民生徒「うん、いいよ」
貴族生徒「おい勇者、僕達と遊ばないか?」ニヤニヤ
勇者「なんだお前ら、これは訓練だぞ」
貴族生徒「この僕が直々に稽古をつけてやろうって言うんだ、僕とお前じゃお遊びにしかならないさ」
勇者「ああ、さいですか」
取り巻きA「平民生徒はこっちだ」ニヤニヤ
平民生徒「勇者、どうする?」
勇者「ん、ああ、相手してやろうじゃないか」
平民生徒「おっけー」
担任「今日は初めてだから一組ずつ行うので他の組はよく見ておくこと。剣は訓練用の木剣を使うこと。クリーンヒットで一本、顔には当てないよう寸止めをするか胴や腕の鎧部分を狙うこと。それではまずは勇者と貴族生
貴族生徒「僕の華麗な剣術を見せてやるよ」
勇者「お手柔らかに」
担任「始め!」
貴族生徒「ふん!」ブンッ
勇者「おお、最初に比べて普通に動けるようになったんだな」サッ
貴族生徒「僕を誰だと思ってるんだ?屋敷では剣術も一流の戦士に習っていたこの僕が、貴様ごときに劣るわけないだろうが!」
ヒュッ カン カン
取り巻きA「さすが貴族生徒さんだ、おしてるおしてる!」
取り巻きB「平民の出はたいしたことないな!」
勇者「あんまり調子に乗ってると痛い目見るぜ?」ブンッ
貴族生徒「な、防御をはじかれ・・・!」
勇者「ふん!」シュッ ピタッ
平民生徒(防御を弾いたあとの首筋への寸止め、勇者の勝ちだ!)
貴族生徒「この!」バシッ
勇者「!?」グラッ
貴族生徒「悪い悪い、手が滑ってしまって」ニヤニヤ
担任「一本!」
勇者「なっ、どうして貴族生徒の旗が上がるんだ。ちゃんと急所に寸止めしただろ!」
担任「あのタイミングでは貴族生徒の首への攻撃が有効だ」
取り巻きB「負け惜しみは見苦しいぞ!」
勇者「・・・ちっ」
女生徒「先生、むき出しの場所への攻撃はいいんですか!?」
担任「ぎりぎりのタイミングだった上に貴族生徒はまだ慣れてないんだ、仕方が無い」
女生徒「そんな・・・!」
勇者「いい、まだ取り返せる・・」
平民生徒「首大丈夫?」
勇者「ああ、次が始まるから離れててくれ」
平民生徒「わかった、頑張ってね」
勇者「おう」
貴族生徒「惜しかったなー」ニヤニヤ
勇者「次はきっちり当ててやるからな」
担任「始め!」
勇者「先手必勝!」シュッ
貴族生徒「!?」
スパァン!
勇者(胴へのなぎ払い、決まっただろ・・!)
女生徒「やった!・・・って貴族生徒が振りかぶって・・」
平民生徒「勇者、まだ終わってない!」
貴族生徒「ひひ、残念でした!」
ゴスッ
勇者「ぐ・・!?」ガクッ
担任「一本!貴族生徒の勝ち!」
取り巻きA「やった!」
取り巻きB「さすが貴族生徒さんだ!」
平民生徒「貴族生徒!頭を思い切りたたきつけるなんてひどいじゃないか!」
貴族生徒「勢い余っちゃって止めきれなかったんだよ、悪い悪い」ニヤニヤ