勇者「俺と魔王の101日決戦」 11/14

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勇者「っ……!」

勇者「大分……増えているな……っ!」

魔王「ああ……当然だ」

勇者「……!」

魔王「さぁ……更に行くぞ」

勇者「うおお!」

魔王「ぐう……!」

……左腕に衝撃を受けてしまったな。

魔王「昨日と同じ事をしても……貴様は、対応をしてしまうだろうな……」

勇者「無理だろ」

魔王「ふふっ……謙遜をするな謙遜を」

勇者「嫌……無理だろ……」

魔王「……」

この会話の間も、機会を伺っているな。

一瞬で勝負を決めてみるか……

魔王「勇者」

勇者「ん?」

魔王「正面からいくぞ」

勇者「正面から……?」

勇者「……」

不味い……何かが来る?

勇者「ーー凄いな」

魔王「隙が多い事は、余り……行いたくは無かった」

魔王「が……貴様の為だ。今回は直ぐに死ね」

勇者「……!」

魔王「行くぞ……!」

魔王「全てを速さに回しただけ……其の分隙も多い」

魔王「ーーどれだけの速さか分からないがな」

魔王「何に、恐怖をしたか分からないが……」

魔王「流石の警戒力だ」

次には……通用しないだろう……

魔王「おお……速いな」

勇者「……」

9時ぐらいか?時刻を確認していないから分からないけど……大分強くなったんだな。俺……

勇者「……昨日はどうやって?」

魔王「全ての力を速さに変えただけだ」

勇者「なるほど……そういう闘い方も出来るんだな」

魔王「私はな……」

魔王「どうだ?恐いか?」

勇者「嫌……あれが最高の速さと分かれば、これからは、闘いやすい」

魔王「ーーその言葉は。後二回闘った時の言葉だと思うが……」

既に通用しない事は、私でも分かる……勇者が精神的に強くなったと言う事か。

魔王「……」

勇者「次は……なんだ?」

魔王「魔導で一斉に攻撃しようと思ったから、させてもらう」

勇者「冗談だろ?」

魔王「さぁ、行くぞ」

勇者「ははは……無理だろ……」

勇者「うおおおおおお!」

魔王「……死んだか」

魔王「くっ!」

勇者「くぅ……!」

勇者「うおお!」

魔王「はあああ!」

魔王「これで……!」

魔王「……!」

魔王「くうぅ……っ……」

魔王「やるではないか」

魔王「勇者」

魔王「ふふふ……」

魔王「昨日の貴様には驚かされたぞ」

勇者「ああ……驚かす様な事をした記憶が無い」

勇者「それに……お前の手刀は、相当の業物以上だな」

魔王「我が手刀は、如何なる剣にも“負ける事”は無い」

勇者「凄い……な!」

魔王「残念だな」

勇者「糞っ……!」

魔王は両手で斬れるが……俺は……一つ。

けど……俺の方が斬る事を心得ている。

ーー僅かに。

勇者「ぐふっ!」

魔王「……細かい傷は付いたが、大きな傷が付く事は無かったな」

魔王「それにしても貴様の防具は弱いな、まあ……其の軽い防具が一番私に対抗出来るが……」

魔王「貴様には常に驚かされる」

魔王「気付いたら、私を超えているかも知れない」

魔王「今回は、手数の勝利。次にはその手数も……」

通用しない。

魔王「……死んだか」

姫「……」

私は勇者様が好き……だけど……“ついでに”勇者様を利用しようとしていた。

私が必要の無い者にならないためへの……

けれど!自分で何も変えられない女を勇者様が好きになる筈が無い……

私が国を変える……

大丈夫……父上と王女が亡くなれば……私が国を……

きっと……皆は分かってくれる。

神父「11時ですか……驚くべき進歩ですね」

勇者「そうか?」

神父「ええ、全く持って驚くべき進歩ですね」

勇者「そうか……それは、自信が付くな」

神父「朝食等はいかがでしょうか?」

勇者「ああ、いただくよ」

神父「では、紅茶とパンを」

勇者「毎回それだな……」

神父「朝には紅茶とパンですよ」

勇者「いただくよ」

勇者「さて、96回目の闘い……始めよう」

魔王「気が早いな」

もう少し、会話でもしたいが……仕方が無い。

魔王「良いぞ。来い」

勇者「……!」

魔王「……」

勇者「はあ!」

魔王「……!」

力を開放してからは、全てが上回っていたのだが……

ここ迄来たか……勇者。

勇者「はああ!」

魔王「……」

勇者「……!」

これでは周りが見えないな……

勇者「はああっ!」

魔王「……っ!」

勇者「……っ!!」

指先で止めるのかよ!?やはり、桁違いだ!

勇者「ぐっ!」

魔王「はぁ……」

魔王「流石に危険だったぞ……」

神父「……朝食にしますか?」

何時もより、明るい……な。

勇者「嫌。遠慮しておくよ」

神父「そうですか……」

勇者「ああ……97回目。行ってくる」

神父「いってらっしゃい」

勇者「……鼻血出てる」

神父「……おや?気付いてませんでした……教えてくれて助かります」

勇者「大丈夫か?」

神父「心配無用ですよ」

そろそろ……だな……

魔王「……」

魔王「貴様は、私の間に唐突に現れたり、扉を介してやって来たりで、大変だな」

勇者「気分だからな」

魔王「……気分?」

魔王「ふふふ……ハハハハッ!」

魔王「ぷっ……久しぶりに大きく笑わせてくれたな……その、抜けた所が最高だ」

勇者「……侮辱された気分だ」

魔王「ふふふっ……気にするな」

魔王「ーー来い」

魔王「爆ぜるぞ」

勇者「?」

魔王「……」

魔王「私の涙は止みそうに無いな」

魔王「跡も残らないとは、可哀想に」

神父「今日は、早いですね」

勇者「油断してた」

神父「それはいけませんね、意識をしっかり持たないと」

勇者「分かってる」

神父「もう行きますか?」

勇者「そうだなー。行くか」

神父「はい、行ってらっしゃい」

神父「貴方は、勝てますよ」

勇者「……」

勇者「ありがとう、行ってくるよ」

神父「勇者……」

魔王「来たか」

勇者「当然だ」

傷は全て元通りか……右腕も……

魔王「まだ闘うか?」

勇者「今更言われてもな」

勇者「俺は闘うよ」

魔王「そうか……」

勇者「……?」

俺の覚悟は知っているのに……何を今更……?

魔王「不思議な顔をするな、反応に困る」

勇者「……」

魔王「だんまりか……」

勇者「悪いか?…………っ!!」

勇者「かはっっ……!」

魔王「すまないな、貴様の為だ」

これで……全ての攻撃手段を教えた……

ここまで知れば、対等に渡り合ってくれるだろう……

勇者「昨日はやってくれたな……」

魔王「差も無くなって来た……貴様の死を稼ぐ為だ、そう怒るな」

勇者「怒って無い」

魔王「本当か……?」

勇者「……ああ」

落ち込んだ様に言われると……心に来るな……

勇者「……」

魔王「勇者?」

勇者「気にしないでくれ」

魔王「?」

魔王「……」

何を気にしなければ良い……?

まさかっ!?

昨日の仕返しを……!?

魔王「……」

勇者「……」

魔王「……」

本来なら反応していた筈だが……ここまでとはな……

悲しくなる。

魔王「何故殺さない?」

勇者「分からない」

魔王「……」

魔王「……」

そうか……明日私は……

…………

ーー短い闘いだった。

ーー101日目。

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