魔王「……汚い」
魔王「早く、消えて欲しい物だな」
神父「最近早いですね」
勇者「次は、最近遅く……してみせる」
神父「どうぞ」
勇者「……」
神父「最近、帰って来る事が早いですね。どうしました?」
勇者「真の姿を見せられた」
神父「真の姿……?」
勇者「行って来る」
神父「あっ……」
神父「まだ……聞きたい事がありましたが……」
神父「神の御加護を……」
神父「早いですね」
勇者「為す術も無い、強過ぎる」
神父「……」
勇者「……」
神父「続ける事が……近道かと」
勇者「分かってる」
魔王「来たか」
魔王「今回も、我が眷属を屠るか……勇者」
魔王「次こそは、持ち堪えて欲しい物だ」
魔王「早いな……私直々では無く、我が力に消されるとは」
魔王「まだ弱い」
魔王「……が」
魔王「最近は、身体が残って居るではないか」
神父「悔しいですか?」
勇者「勿論だ」
神父「自信が無い……ですよね?」
勇者「……」
神父「安心してください」
勇者「……?」
神父「誰も貴方を責めませんよ」
神父「貴方が背負っているのは期待では無く、重圧です」
神父「もう少し気を抜いて、次からは期待を背負ってください」
魔王「……」
魔王「早く強くなれ……」
神父「40日目ですね」
勇者「……」
神父「どうですか?」
勇者「耐えられる……」
神父「耐えられる?」
勇者「最初の攻撃で何時も、俺は命を落としている」
神父「未だ、格の差が大きいですね」
神父「……」
勇者「でも……今回は、耐えられそうなんだ」
神父「ほぉ……」
勇者「変な、おっさんだな……」
今なら見える、この……瘴気が……!
何時もなら、見えずに一瞬で、消されていた……
今なら、其の速さに付いて行けるッッ……!
勇者「うおおお!」
魔王「……!」
反応したか……面白い……流石、私が認めた男だ。
勇者「……」
魔王「……」
今になって……やっと……姿を見た……
……美しい、この女が魔王……
魔王「偉い」
勇者「……?」
魔王「よくぞ……ここ迄、耐えた」
魔王「撫でてやろう」
魔王「来い」
勇者「断る」
魔王「この私が、愛でてやろうと言うのに……つれないやつだな」
勇者「一つ聞きたい」
魔王「ここ迄耐えた褒美だ、聞いてやろう」
勇者「“お前”は、今迄何処に居た?」
魔王「今迄私は、十日前迄、貴様が闘っていた、道具に居た」
勇者「……」
魔王「アレは力を溜める道具にしか、過ぎない」
魔王「あの、巨大な腹部に居れば、私は力を迅速に溜める事が出来たが……貴様が、見事に壊したからな」
魔王「面倒だが、私直々に、世界を支配しよう」
勇者「道具であの強さか……」
魔王「当然だ。私のお気に入りだからな」
勇者「けど、世界はお前の物にならない……」
魔王「……?」
勇者「……!」
魔王「来い……格の違いを見せてやろう」
勇者「……」
魔王「どうした?臆したか?」
勇者「く……!」
勇者「……」
反撃の機会が……無いっ……!
魔王「ふん。ほら……更に行くぞ」
勇者「糞……!」
魔王「そろそろ飽きたぞ……」
勇者「……?」
魔王「さらばだ」
勇者「はあ?……疲れた!」
勇者「それに……あれだけ攻撃を堪えても、7時かよ!」
神父「ふふっ……」
神父「冷静さがありませんね……どうしました?」
勇者「嫌……魔王の攻撃を頑張って、防いで粘ったのに、帰って来るのが7時だったから……」
神父「前よりはマシでしょう?」
勇者「……ああ」
魔王「ふふふ」
魔王「奴め……今の私の姿を見たら……何と言うか?楽しみだ……」
勇者「ああ……」
勇者「何も見えないな!」
魔王「……」
魔王「的確だ」
魔王「が……」
勇者「?」
魔王「的確だが……つまらない」
魔王「貴様は、私をもっと愉しませろ……愉悦を味合わせろ」
勇者「……」
勇者「俺は、お前を楽しませる為に……此処に来た訳では無い!」
勇者「はあ!」
魔王「むっ……!」
魔王「ふふ……!」
勇者「くっ!」
魔王「ハハハ!」
糞……!反撃の隙が無い……
魔王「どうした?」
魔王「私は、脚しか使っていないぞ?」
勇者「な……!?」
魔王「……日を追う毎に強くなったな」
魔王「私は待っているぞ」
魔王「ずっと……な」
魔王「ようやく、私と渡り合える者が来た……簡単に手放してたまるものか」
魔王「我が眷族を屠った事も許してやるさ」
魔王「今は貴様に夢中だ」
魔王「と言っても……死んでるか」
勇者「……」
神父「丁度7時ですね」
勇者「何時も起きるのが早いな」
神父「神父ですので」
勇者「……」
神父「年寄りですからね」
勇者「その割には、年齢より老けて……」
神父「私は……元宦官ですからね」
勇者「……」
神父「気にしないでください」
神父「宗教上、やる事が昔は沢山あったので」
神父「今この教会を持てたのも、其のお陰です」
勇者「絶対勝つ……」
神父「……貴方ならこの世界すらも、変えられますよ」
――この男は、俺に期待を“しすぎ”ている……俺は世界を変える気は、毛頭も無い……魔王を倒す。
――それだけで十分。
勇者「行って来る」
神父「……」
「絶対勝つ」は、私に対する慰めでしょうか?やはり、彼は歪んでいますね、行動原理が普通とズレている。
それでも、信じていますが……
神父「神の加護を……」
魔王「43」
勇者「数えていたのか」
魔王「一応だが……」
勇者「随分と余裕だな」
魔王「貴様如きでは、まだ相手にならないな」
勇者「俺だって、強くなったけどな……」
魔王「良い……」
勇者「……」
魔王「来い」
魔王「指先なら、掴めるな」
勇者「くっ!」
魔王「雑魚」
勇者「54回目の朝か……」
神父「時の流れは、早いですね」
勇者「一瞬で殺されていた頃が懐かしいよ」
神父「今でも殺されるでしょう?」
勇者「そろそろ行くか」
神父「今度は勝てますか?」
勇者「まだ、勝つのは難しいな……」
神父「最近復活が遅いですから……」
神父「後少しでは?」
勇者「簡単に言わないでくれ」
魔王「おや……勇者か」
勇者「……」
勇者「名前で呼ぶか……魔王」
魔王「貴様が居ない時は、良く名前を呼んでいたぞ?」
俺も心の中では、あいつの名前を呼んでいた……な。
魔王「最近……私と対等に渡り合える様になったではないか」
勇者「世辞は結構」
魔王「可愛く無いな」
勇者「行くぞ」
魔王「来い……勇者よ」
魔王「……!」
魔王「反撃だ……!」
勇者「なっ……」
魔王「行くぞ」
勇者「糞……!」
魔王「今回も結構、耐えているな」
勇者「かはっ!」
勇者「がはっ……!」
魔王「……」
勇者「……」
神父「お帰りなさい」
勇者「……?」
神父「……言って見たかっただけですよ」
勇者「へぇ……」
神父「次は55回目の挑戦ですね」
勇者「半分以上死んだのか……」
神父「貴方なら、平気かと」