勇者「俺と魔王の101日決戦」 2/14

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魔王「……汚い」

魔王「早く、消えて欲しい物だな」

神父「最近早いですね」

勇者「次は、最近遅く……してみせる」

神父「どうぞ」

勇者「……」

神父「最近、帰って来る事が早いですね。どうしました?」

勇者「真の姿を見せられた」

神父「真の姿……?」

勇者「行って来る」

神父「あっ……」

神父「まだ……聞きたい事がありましたが……」

神父「神の御加護を……」

神父「早いですね」

勇者「為す術も無い、強過ぎる」

神父「……」

勇者「……」

神父「続ける事が……近道かと」

勇者「分かってる」

魔王「来たか」

魔王「今回も、我が眷属を屠るか……勇者」

魔王「次こそは、持ち堪えて欲しい物だ」

魔王「早いな……私直々では無く、我が力に消されるとは」

魔王「まだ弱い」

魔王「……が」

魔王「最近は、身体が残って居るではないか」

神父「悔しいですか?」

勇者「勿論だ」

神父「自信が無い……ですよね?」

勇者「……」

神父「安心してください」

勇者「……?」

神父「誰も貴方を責めませんよ」

神父「貴方が背負っているのは期待では無く、重圧です」

神父「もう少し気を抜いて、次からは期待を背負ってください」

魔王「……」

魔王「早く強くなれ……」

神父「40日目ですね」

勇者「……」

神父「どうですか?」

勇者「耐えられる……」

神父「耐えられる?」

勇者「最初の攻撃で何時も、俺は命を落としている」

神父「未だ、格の差が大きいですね」

神父「……」

勇者「でも……今回は、耐えられそうなんだ」

神父「ほぉ……」

勇者「変な、おっさんだな……」

今なら見える、この……瘴気が……!

何時もなら、見えずに一瞬で、消されていた……

今なら、其の速さに付いて行けるッッ……!

勇者「うおおお!」

魔王「……!」

反応したか……面白い……流石、私が認めた男だ。

勇者「……」

魔王「……」

今になって……やっと……姿を見た……

……美しい、この女が魔王……

魔王「偉い」

勇者「……?」

魔王「よくぞ……ここ迄、耐えた」

魔王「撫でてやろう」

魔王「来い」

勇者「断る」

魔王「この私が、愛でてやろうと言うのに……つれないやつだな」

勇者「一つ聞きたい」

魔王「ここ迄耐えた褒美だ、聞いてやろう」

勇者「“お前”は、今迄何処に居た?」

魔王「今迄私は、十日前迄、貴様が闘っていた、道具に居た」

勇者「……」

魔王「アレは力を溜める道具にしか、過ぎない」

魔王「あの、巨大な腹部に居れば、私は力を迅速に溜める事が出来たが……貴様が、見事に壊したからな」

魔王「面倒だが、私直々に、世界を支配しよう」

勇者「道具であの強さか……」

魔王「当然だ。私のお気に入りだからな」

勇者「けど、世界はお前の物にならない……」

魔王「……?」

勇者「……!」

魔王「来い……格の違いを見せてやろう」

勇者「……」

魔王「どうした?臆したか?」

勇者「く……!」

勇者「……」

反撃の機会が……無いっ……!

魔王「ふん。ほら……更に行くぞ」

勇者「糞……!」

魔王「そろそろ飽きたぞ……」

勇者「……?」

魔王「さらばだ」

勇者「はあ?……疲れた!」

勇者「それに……あれだけ攻撃を堪えても、7時かよ!」

神父「ふふっ……」

神父「冷静さがありませんね……どうしました?」

勇者「嫌……魔王の攻撃を頑張って、防いで粘ったのに、帰って来るのが7時だったから……」

神父「前よりはマシでしょう?」

勇者「……ああ」

魔王「ふふふ」

魔王「奴め……今の私の姿を見たら……何と言うか?楽しみだ……」

勇者「ああ……」

勇者「何も見えないな!」

魔王「……」

魔王「的確だ」

魔王「が……」

勇者「?」

魔王「的確だが……つまらない」

魔王「貴様は、私をもっと愉しませろ……愉悦を味合わせろ」

勇者「……」

勇者「俺は、お前を楽しませる為に……此処に来た訳では無い!」

勇者「はあ!」

魔王「むっ……!」

魔王「ふふ……!」

勇者「くっ!」

魔王「ハハハ!」

糞……!反撃の隙が無い……

魔王「どうした?」

魔王「私は、脚しか使っていないぞ?」

勇者「な……!?」

魔王「……日を追う毎に強くなったな」

魔王「私は待っているぞ」

魔王「ずっと……な」

魔王「ようやく、私と渡り合える者が来た……簡単に手放してたまるものか」

魔王「我が眷族を屠った事も許してやるさ」

魔王「今は貴様に夢中だ」

魔王「と言っても……死んでるか」

勇者「……」

神父「丁度7時ですね」

勇者「何時も起きるのが早いな」

神父「神父ですので」

勇者「……」

神父「年寄りですからね」

勇者「その割には、年齢より老けて……」

神父「私は……元宦官ですからね」

勇者「……」

神父「気にしないでください」

神父「宗教上、やる事が昔は沢山あったので」

神父「今この教会を持てたのも、其のお陰です」

勇者「絶対勝つ……」

神父「……貴方ならこの世界すらも、変えられますよ」

――この男は、俺に期待を“しすぎ”ている……俺は世界を変える気は、毛頭も無い……魔王を倒す。

――それだけで十分。

勇者「行って来る」

神父「……」

「絶対勝つ」は、私に対する慰めでしょうか?やはり、彼は歪んでいますね、行動原理が普通とズレている。

それでも、信じていますが……

神父「神の加護を……」

魔王「43」

勇者「数えていたのか」

魔王「一応だが……」

勇者「随分と余裕だな」

魔王「貴様如きでは、まだ相手にならないな」

勇者「俺だって、強くなったけどな……」

魔王「良い……」

勇者「……」

魔王「来い」

魔王「指先なら、掴めるな」

勇者「くっ!」

魔王「雑魚」

勇者「54回目の朝か……」

神父「時の流れは、早いですね」

勇者「一瞬で殺されていた頃が懐かしいよ」

神父「今でも殺されるでしょう?」

勇者「そろそろ行くか」

神父「今度は勝てますか?」

勇者「まだ、勝つのは難しいな……」

神父「最近復活が遅いですから……」

神父「後少しでは?」

勇者「簡単に言わないでくれ」

魔王「おや……勇者か」

勇者「……」

勇者「名前で呼ぶか……魔王」

魔王「貴様が居ない時は、良く名前を呼んでいたぞ?」

俺も心の中では、あいつの名前を呼んでいた……な。

魔王「最近……私と対等に渡り合える様になったではないか」

勇者「世辞は結構」

魔王「可愛く無いな」

勇者「行くぞ」

魔王「来い……勇者よ」

魔王「……!」

魔王「反撃だ……!」

勇者「なっ……」

魔王「行くぞ」

勇者「糞……!」

魔王「今回も結構、耐えているな」

勇者「かはっ!」

勇者「がはっ……!」

魔王「……」

勇者「……」

神父「お帰りなさい」

勇者「……?」

神父「……言って見たかっただけですよ」

勇者「へぇ……」

神父「次は55回目の挑戦ですね」

勇者「半分以上死んだのか……」

神父「貴方なら、平気かと」

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