勇者「俺と魔王の101日決戦」 3/14

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神父「私の様な年寄りと違ってね」

勇者「年寄り程の年齢では無いだろ」

勇者「むしろ……中年……」

勇者「……」

神父「……」

勇者「ありがとう」

神父「無茶をし過ぎては駄目ですよ?」

勇者「?」

神父「一応……心配ですから」

勇者「分かった」

神父「頑張れよ……」

神父「……」

神父「神よ……」

私には祈る事しか出来ません。

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何時も如何なる時代も、強者は弱者を弄び、蔑み、笑う……

そんな糞にまみれた世界において。

“俺”は希望を失いつつあった……

少年「はぁ……お偉い様の相手は疲れる」

少年「宗教ってのは、疲れるな……」

少年「まぁ……売られた身分、しっかりと働くか」

少年「それに……」

少年「どうにかして……権力を……」

この国……この世界は、歪んでいる。だから俺が変える必要がある……この世界を、例え宦官になろうとも……変える。

少年「……」

……今日は何処で寝るかな?駄賃をお偉い様からもらったからな、適当な宿に泊まるか……野宿か……

少年「金は貯めなきゃな……野宿だ」

少年「よいしょっ……」

何時も大聖堂で寝泊まりしてたからな……

あそこには、もう、夜に居たく無い……野宿の方がましだな。

初めて来たけど、そこまで悪い所では無いな。

―――――――――――――――――――――

運命の出会いって、必ずある

その出会いが俺に全てを教えてくれた

そいつが俺の全てだった

きっと離れる事は無い

でも……

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少年「さて……そろそろ寝るか」

「えー!早いよ!」

少年「……は?」

「まだ早いって!」

……なんだこいつは?可愛い……違う。

貧相な姿、ここの住人に似つかわしく無い程、明るい……

少女「あっ!名乗って無かった!ごめんね!」

少女「私の名前は少女!君の名前は?」

少年「……少年」

少女「よろしくね!」

少年「所で、何の様でしょう?」

とりあえず……演技を……

少女「私ね!この街に同年代の人が居ないから、寂しかったの!仲良くなろ!?」

少女「それと……」

少女「道化は上手だけど、私の前だからって礼儀正しくする必要はないよ?」

少年「なっ……」

少女「良い?」

少年「……」

少年「分かった」

少女「よし!」

得意気だな……

少女「君、親は?」

少年「生き別れてな、身寄り無しだ」

少女「私と一緒だね!」

少年「……」

少女「ここじゃ、寝辛いと思うからウチに来なよ!」

少年「は?」

少女「良いから!」

少年「うわわわわ!おい!あぶねーぞ!待て馬鹿!」

貧民A「お!少女ちゃんじゃないか!元気にやってるか?」

貧民B「流石!俺達の希望!元気だね!」

少女「うん!じゃーね!」

少年「知り合いか?」

少女「うん!友達!」

少女「ここが私の家!どう?汚いでしょ!?」

少年「……汚いな」

少女「ささ!入って!入って!」

……少し散らかってるけど……小綺麗だな。

少女「好きな所で寝て良いよ!」

少年「……ありがとう」

少女「気にしないで!同じ人間だし!」

少年「……なあ」

少女「なーに?」

少年「どうして一緒に寝る?」

少女「……お母さんに似てるから」

少年「……何処が?」

少女「髪」

少女「ごめんね」

少年「えっ?」

少女「触れて欲しく無かったよね?」

少年「……………………うん」

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何時もこうやって

俺の心の隙間を埋めて行く

最高のお人好し

だから不幸なんだよ

頼む

俺の中に入って来ないでくれ……

―――――――――――――――――――――

少年「街の人間……」

少女「ん?」

少女「良い街でしょ!」

少女「暗い雰囲気で、朝昼は!晴れてても暗いけど、夜はとってもムードが良いよね!」

少年「違う」

少女「え?」

少年「人間だ……」

少年「どうして、あの暗い街の暗い人間が、少女の前だと明るい?」

少女「……え?」

少女「皆、常に明るいよ?」

少女「ふわー、良く寝たね!」

少年「だな」

昼まで寝ると思ったら、直ぐに起きたな。

少女「♪」

……そろそろお偉い様の相手をしないとな。

少年「ちょっと出掛けてくる」

少女「何かあるの?」

少年「用事」

少女「戻ってくる?」

……今日でさよならかと思ったけど、まだ居る必要があるのか。

……頼まれた事を受けるのも、神父の役目だな。

少年「何言ってんだ、戻るよ」

少年「……ただいまやって参りました」

「おお、話に聞いてはいたが……素晴らしい」

初対面のお偉い様か……

少年「お褒めに預かり、光栄です」

「おお……早く行こう」

…………

少年「……」

汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い

けど、大丈夫……

きっと見返す時が来る

少女「あっ!おかえりー!」

少年「あっ……ああ」

少女「思ったより早く帰って来たね!」

もう、夕方だけどな

少女「……」

少女「ねぇ」

少年「……!」

少女「お家帰ろっか?」

少年「ああ」

少女の家へと向かう最中、貧民街の街並みには人は誰も居らず、喧騒も無い、逆に貴族街の喧騒が夜の貧民街に響き渡っていた。

少年「……」

少女「……」

少年「あ……」

少女「……元気無いね?」

少女「どうしたの?」

少年「疲れる用事があってな……」

少女「疲れたら、よーく!休んだ方が良いよ?」

少年「だな」

少女「うん」

どこまでも優しくて、お人好し……

少女「もう、着くよ!」

少女「到着ー!」

少年「……」

少年「あっ……そうだ」

少女「何?」

少年「これからお世話になる見たいだしな、あげるよ」

少女「結構皺あるね……」

少年「隠してたからな」

少女「少年って、悪い男だね……」

少年「気に入らなかったか?」

少女「ううん……とても嬉しい!今度少年と一緒出掛ける時に着る!」

……そう言われると嬉しいな

でもこれさ、お偉い様から貰った金で……最低だな俺

少年「貧民街では着ないのか?」

少女「皆に悪いもん」

少年「……意外と気配り出来るんだな」

少女「えー!なにそれー?」

少女「じゃーん!」

少年「……食べて良いのか?」

少女「良いよー!朝には、パンと紅茶を置いてたんだけど少年が行っちゃったから食べちゃったー!」

少年「……朝にはパンとコーヒーじゃないのか?」

少女「朝にはパンと紅茶だよ!」

そこは、自由だな……今度から紅茶にしてみるか。

少年「いただくよ」

少女「少ないけど大丈夫?」

少年「大丈夫」

少年「……」

あれ?

何もして無いよな?どうしてこうなっている?あれ?あれ?いや、大丈夫……

少女「うーん……」

少年「……離れろ」

少女「あー!ごめんね!」

少女「少年が泣いてたから、抱きついて寝ちゃった!!」

少年「あっ……そう」

……何と言えば良いんだよ。

少女「何はともあれ……」

少年「?」

少女「今日も出掛けるの?」

少年「ああ……」

少女「そっか!」

少女「朝ごはんは食べてねー!」

少年「はいはい……」

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王「どうだ?」

占い師「間違いありません、あの遥か遠い向こう……東に世界の災厄がこの世の憎しみを持って産まれて行きます……」

王「間違い無いか?」

大臣「他の国と結果は同じですね……」

王「うむ」

王「他の国と連携して、占い師が指す方に兵を向ける」

大臣「……もし、伝説と同じ存在が居たら?」

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