勇者「俺と魔王の101日決戦」 7/14

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神父「ええ、構いませんよ」

息子の頼みだ。

勇者「助かる」

神父「……」

勇者「……」

神父「……」

何と声を掛ければ……

勇者「相手にもされていない……」

神父「ひとまず、落ち着きましょう」

「おはよう勇者」

「おはよう魔王」

「起きるのが遅いぞ……まったく」

「いつも起こしてくれて助かるよ」

「ふんっ……」

「そう怒るなって、朝食は?」

「私は料理が分からない……」

「また紅茶とパンか……」

「嫌か?」ウルウル

「なっ……!泣くなって!美味しいから食べるよ!飽きない!」

「よし、食べるぞ」シレッ

「おっ……おう……」

「私の事は好きか?」モグモグ

「何を今更……」モグモグ

「なら、良い」モグモグ

「?」モグモグ

「良し」ゴクッ

「ん?」ゴクッ

「でっ……デデデデ……」

「で?」

「でっ……デデデ……デエトしないか?」

「」

「おい、固まるな」

「魔王から言われるなんて……」

「動揺し過ぎだな」

「ここが城下町か……」

「城下町は初めてだったな」

「うむ……外に出るのは、初めてだ……」

「誰もお前の事は分からないのに……」

「王には、私が死んだと報告をしたんだったな……」

「ああ……それしか無い」

「すまない……」

「どうして?」

「勇者の恩人を騙すような真似をして……」

「騙したのは俺だ」ナデナデ

「……ん」

「何処から行くか?」

「何処に行けば良いのか……分からない」

「お前……良くデートに誘ったな……」

「なっ!貴様が寂しそうだから誘っただけだ!」

「はいはい、取り敢えず買い物でもするか?」

「……?」キョトン

「買い物も分からないのか……」

「?」

「仕方ないな……行こう」

「うむ」

「先ずは、服かな」

「服……」

「ああ、そうだ」

「買い物とやらに行く前に……」

「?」

「目の前で起こっている犯罪に貴様は何も思わないのか?」

「……」

「貴様は勇者だろう?」

「ああ……」

「犯罪ぐらいも止められないのか?」

「俺と魔王以外全員を?」

勇者「扉を通った瞬間、気付いたら……」

神父「気付いたら?」

勇者「ここに居る……」

神父「それ程迄に格の差があると言う事でしょうね……」

勇者「また、更に強くなったんだよ……」

神父「勝てる見込みは?」

勇者「……」

勇者「魔物が居なくなった……」

神父「強くなる事も出来ませんね……」

勇者「でも……何回か消されれば、消される事も無くなるかも……」

神父「荒療治ですね……」

勇者「それしか無い……」

勇者「……」

勇者「……」

勇者「王の命令で、旅に出て……」

最初は何も分からないから、適当に行ったり。

困っている町を“なんとなく”助けて、原因の魔物を倒して、色々な情報を聞いて……

先に進んで、たまに、洞窟を超えると、新たな地方に辿り着いて……

勇者「そこを統一する王に謁見したり……」

色々な事を解決して、進んだら……あの自然の奥の孤児院に辿り着いた。

勇者「魔王に、近いのに……襲われない孤児院……」

勇者「皆無邪気な笑顔、大人も居ないのに、子供だけで暮らしている……」

勇者「自然と共生している……」

耄碌したら、そこに住むか……

勇者「……」

勇者「………………らしく無い!」

勇者「俺は魔王を倒すっッ!」

勇者「こんな所で、変な事呟いてどうするんだ!?」

神父「……お帰りなさい」

勇者「72回目も、一瞬で消されたよ……」

神父「貴方が魔王に挑戦して、73日目の5時」

神父「無理はなさらずに」

吹っ切れた様だな……

勇者「分かってる……」

に訂正

勇者「……」

神父「……一度休んだらどうですか?」

勇者「嫌……大丈夫……」

神父「……」

勇者「早く、闘える様にならないと」

神父「そうですか……」

神父「休みたくなったら、何時でも言ってください」

勇者「分かった」

勇者「……?」

勇者「……」

「勇者!居るか!?」

勇者「はあ……」

神父「王……ですね」

勇者「何で、こんな時に……」

神父「貴方が心配だから……でしょうか?」

勇者「無いと思う……」

王「入るぞ」

神父「……」

王「兵達は、外に待たせてある」

神父「それは……助かります」

王「良い」

神父「はっ……」

勇者「王、次は74回目の討伐でございます」……」

王「そうか……」

王「それよりも……」

勇者「……」

神父「……」

王「ほら、出て来なさい」

「勇者様?!」

勇者「ぐわ!」

王「はっはっはっ!」

王「元気が良いな!」

勇者「いたた……」

姫「私は、姫と申します!たった今!お父様の許可を頂き先程迄我慢していた感情を勇者様に全力で!開放させて頂きました!!」

神父「……」

王に子息が居ただと?

子供一人居無い筈……

王「危険故に今迄隠していたが、勇者には教えておきたくてな」

王「40の頃の子だ、可愛くて仕方が無い」

神父「……」

そういう事か……

勇者「?」

王「勇者は我が息子同然」

神父「……」

やっぱり……

に訂正

姫「私は、ずっと昔から勇者様に憧れていました!」

姫「お城で訓練をする勇者様をずっと見ていました!」

王「これ、焦るな」

勇者「はぁ……」

王「丁度、勇者と姫は同い年だ」

王「どうだ?」

王「結婚しないか?」

神父「……」

俺の息子に貴様の様な屑の血を受け継ぐ子供と結婚しろだと?

誰の子だ?

誰を陵辱して、孕ませた子供だ?

間違い無く、王女の娘では無い!

第一に似ていない、王女からこの様な可憐な少女が産まれる筈が無いだろう……

貴様も王女も、茶髪……金髪が産まれる筈が無い!

勇者「……」

神父「お言葉ですが……どなた様との娘様でしょうか?」

王「王女からは子供は産まれなかった……」

王「仕方が無いから、愛人を囲ってな……」

王「側室と言う奴だ」

神父「……」

絶対陵辱だ……そうに決まっているぞ……屑が。

王「……」

道端の女を犯したら、子供が産まれてしまった……

最初は母娘両方殺そうとしたが……

娘の方が、中々愛おしい……

仕方が無いから母だけを殺した……それに。

後継も居ないから、義理の息子を王にしようと画策していたら……

偶然の勇者……

結ばせぬ理由が無い。

勇者「……」

勇者「魔王を討伐するまでは、待って貰います」

王「……」

神父「……」

王「そうか、仕方が無いな……」

神父「……」

流石、我が息子……涙が溢れそうだ……成長したな。

姫「はい……」

憧れの勇者様が……

勇者「……」

正直、どうでも良い……

勇者「……」

今度こそは耐える……!

魔王「ん?」

魔王「ああ……来てたのか……」

魔王「早く闘える様になれ……」

魔王「続けていれば、貴様も私の力に耐える事が出来ると……」

魔王「確信しているぞ勇者」

神父「ごふっ……!」

神父「がはっ!ごほっ!ごほっ!」

神父「がはっ!がはっ!」

神父「ハー……ハー……!」

神父「ごぷ……!」

神父「がはぁ……!」

神父「ふー……ふー……」

元より長くない命だとは悟ってはいたが……些か早過ぎる死期が来たな……

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