勇者「俺と魔王の101日決戦」 8/14

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息子の戦いを見届ける迄は、死ぬ訳には行かない……

神父「少女……」

神父「薬等……宛にもならない」

“薬草と言われる物”をすり潰しただけ……この国の医学基準は、他国よりも遥かに劣る……

本当。

糞に塗れた世界だ……

勇者「……」

神父「お帰りなさい」

勇者「……」

神父「おや……」

勇者「……」

神父「想像以上に相手が強い様ですね……」

勇者「ああ……」

神父「勇者……貴方の戦う理由は?」

勇者「……」

神父「見つからないのですか?」

俺……嫌、少女と同じ空虚な人間……か。

行動に理由は無い、なんとなくの人間。

掴み所の無い人間……母親似だな……

神父「なら……」

勇者「……?」

神父「貴方の戦う理由を、魔王を倒すまでに教えて下さい」

勇者「戦う……理由……」

戦う理由……勿論……魔王を倒す為。

ああ……結局は魔王を倒す理由か……

どうしてだ?

空っぽな人間は俺だけ……

魔王は空っぽでは無かった。

しっかりと中身があった……感情が……理由もしっかりと。

世界征服した後……あいつは世界を滅ぼすと思う……きっと。

聞いてはいないけど……

そんな気がする。

俺は理由が無い……ならば、見つければ良い。

勇者「ーー分かった」

神父「……そうですか」

神父「待っていますよ」

勇者「ああ」

75回目……瞬殺

76回目……瞬殺

77回目……瞬殺

78回目……瞬殺

魔王「79回目……秒殺」

魔王「信じられない成長の早さ」

魔王「まさか。79回目で数秒耐える様になるとは」

魔王「思ってもいなかった」

勇者「……」

魔王「勇者、待っていたぞ」

勇者「ぐっ……」

魔王「……そこ迄の域には達してはいないか」

勇者「……何故俺は、今迄一瞬で死んでいた?」

魔王「無論」

魔王「私が強過ぎるからだ」

勇者「は?」

勇者「なんの種も仕掛けも無いのか?」

魔王「うむ。瘴気も使っていない」

魔王「純粋な私の魔の力だ」

勇者「只の“力”だけで?」

魔王「そうだが……何か問題でもあるのか?」

勇者「お前……今迄のは何だったんだよ……」

魔王「今迄加減をされたと思い、怒っているのか?」

勇者「……」

魔王「加減等していない」

魔王「私も真の力に気付いたのは、殻が壊れた頃からだ」

勇者「最初の……」

魔王「過去の記憶が蘇ってな……」

魔王「出来るだけ泣きたくは無かった」

それに……それでは、勇者が強くなる事が無い。

勇者「涙……」

黒い涙……

魔王「私自体は悲しい等、思ってはいないが……」

魔王「身体は正直だ」

魔王「涙が止まらない」

勇者「魔王……」

魔王「ーーさて」

魔王「そろそろ死ぬか?」

勇者「……!」

魔王「……」

勇者「!」

魔王「……所詮こんなものか」

神父「お帰りなさい」

勇者「ただいま」

神父「……!」

勇者「……?」

神父「いえ……なんでもありませんよ」

ただいまと言われるとは……存外嬉しいな。

神父「朝食は?」

勇者「食べる」

勇者「……」

神父「もう少しゆっくり頂きましょう……」

勇者「……ん」

勇者「……」

神父「どうしましたか?」

勇者「食べないのか?」

神父「今はまだ、空腹では無いので……」

勇者「そうか……」

神父「食器はそのままで大丈夫ですよ、後で片付けるので」

勇者「行ってくる」

神父「行ってらっしゃい……」

魔王「待っていたぞ」

勇者「お前と出会って、81日か……」

魔王「感慨深いな」

勇者「そうか?」

魔王「どうだろうな」

勇者「せっかく……が……」

魔王「なんだ?」

勇者「……嫌、何でも無い」

魔王「そんな悲しそうな顔をするな……」

魔王「私が……寂しい」

勇者「ん?」

勇者「……行くぞ」

魔王「はあ……」

魔王「もっと話したい……」

勇者「お前、俺に切られた時の傷は何時も次の日になったら消えるが、どうなっているんだ?」

魔王「一日でも経ったら癒えるぞ」

勇者「今もそうなのか?」

魔王「勿論」

魔王「最も、貴様が私に傷を付ける事は無いがな」

勇者「それはまだ分からないだろ?」

魔王「っつ……!」

勇者「?」

勇者「どうした?」

魔王「気にするな」

勇者「……」

勇者「行くぞ」

魔王「ふんっ……」

勇者「お前強過ぎだよな」

魔王「当然だ、私を誰だと思っている?」

勇者「魔王……」

勇者「女……」

魔王「女は余計だ」

勇者「どうしてだ?」

魔王「……」

意識してしまうからだ……

勇者「?」

魔王「さあ」

魔王「早く始めよう……」

勇者「……っ!」

魔王「ふん……!」

勇者「……凍結はズルいぞ」

魔王「なんだ。気付いたのか」

勇者「正直気付いた頃には、向こうに居たよ」

魔王「向こう?」

勇者「ああ……知らないんだったな」

勇者「協会の事だ」

魔王「神の加護と言う物か」

勇者「多分。な」

魔王「そんな物を信じて居たって、意味が無いと思うが……」

勇者「それは同感だな」

魔王「気が合うな」

勇者「始めよう」

勇者「?」

勇者「……」

魔王「そう、緊張をするな」

魔王「暖かいな」

勇者「冷たいな……」

魔王「私の音が聞こえるか?」

勇者「聞こえる……」

魔王「貴様の音も聞こえているぞ」

勇者「そうか……」

勇者「…………!」

勇者「糞!」

魔王「むっ……」

勇者「はあー……」

勇者「昨日どうやって俺を殺した?」

魔王「強くなったな……」

勇者「……」

魔王「瘴気が貴様の心臓を潰しただけだ」

勇者「結局お前自体は手を下していないのか……」

魔王「案ずるな。今から私が手を下す」

姫「はあ……」

姫「退屈……」

姫「お父様は私を部屋から出してはくれないし……」

姫「どうぞ……」

“あの女”か……

王女「あら、姫……居たのね」

姫「はい、“お母様”」

王女「姫にとってもピッタリなドレスを作らせたの、どうかしら?」

姫「……」

臭い……

王女「使用人が掃除に使った雑巾を仕立人に縫わせてみたの」

王女「最初は嫌な顔をしたけど、難なくこなしてくれたわ……」

姫「……」

姫「はい!有り難う御座います……」

姫「お母様のお心遣い、大変嬉しく思います」

王女「ささ!早く着てみて?」

姫「……」

嫌だ……

王女「は・や・く」

王女「気に入らなかったのかしら?」

王女「……」

無駄に綺麗な身体ね……腹立たしい……

姫「……」

王女「……」

王女「ふふふ……」

王女「あはは……!」

姫「……」

王女「あーっはっはっはっ!」

王女「うふふっ!」

王女「きゃーっはっはっはっ!」

姫「似合っていますでしょうか?」

王女「ええ……とても似合っているわ……ぷっ」

王女「ぷ……っ……とっ……ても……」

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