勇者「パーティーの中で、俺が一番弱いんだよな……」 3/16

12345678910111213141516

戦士「親父GJ!」

魔法使い「長かったのう。出会ってから一度も変えてなかったんじゃないのか」

僧侶「そういえばそうかもしれないですね……!」

戦士「ほんっとにあいつは仲間優先だもんなー」

魔法使い「自己評価が低すぎてキモいわい」

僧侶「勇者様に何度助けられたのか分かりませんのに」

戦士「そりゃ私より剣術がうまかったら、私は用なしだし」

魔法使い「わしより魔法の知恵があったら大魔道として名を残せるぞ」

僧侶「私など、勇者様が盾になってくださらなかったら、みなさんをフォローできませんし」

戦士「おかしいよな……最前列で戦っているのに、最後まで生き残ってるのはあいつなんだ……」

魔法使い「体力が異常に高いんじゃのう。見積もり、トロルの三倍くらいはありそうじゃ」

僧侶「全滅しかけた時、私達を抱えて村まで歩いて帰ったりしたらしいですね」

戦士「そもそも武器を数十人分、荷物にして背負って、なんで戦闘ができるんだよなあ」

魔法使い「指揮能力もそれなりにあるから、そんな馬鹿なことをしてても勝てるんじゃがな」

僧侶「で、でも、ようやくそれも処分しましたし!」

戦士は思わず拍手した。

戦士「私のために、いざというとき武具を持っておかないとなんて言い張るから」

魔法使い「説得が大変じゃったのう」

戦士「とにかく卑屈なんだよな。まともな武器を持てば、そのへんの連中にも負けないはずだろうに」

僧侶「さっきも戦士さんが割り込まなければ、きっと勇者様は雑魚を蹴散らして、自分の強さに気づいてましたよ!」

魔法使い「本気で乱暴じゃのう」

僧侶「わ、私は、勇者様にご自身の力に気づいていただきたいと」

戦士「あの手合いは、そのくらいで自信を手に入れるタイプでもないだろう?」

魔法使い「親父と自分を比べておるからのう」

戦士「そりゃ、親父さんも勇者だったのかもしれないけど、あいつも確かに勇者だよ」

魔法使い「周りから比べられてきたんじゃ。いやでも気になる」

魔法使い「お前さん方もそういうのはあるじゃろ」

戦士「ん……まぁな」

僧侶「わ、私は……うう」

魔法使い「あー、おねえちゃん、飯はまだかいのう!」

マスター嫁「はいはーい。もうちょっと待っててね~」

彼らが世界を救うのには、もう少し時間がかかる。

勇者。

剣の腕は二流。魔法の力もそれほどではない。指揮能力も普通。

だが、とにかく体力が高い。そこだけ突出している。

父親と比べると確かに見劣りするが、逆に周りが動かされるようなタイプ。

時々、突拍子もない行動を取ることもあるが、本人的にはそれなりに目算がある。つもり。

戦士。

剣の腕は一流、ただし、世界一などとは言えない。

比較的、力より技の剣士であるが、はためには力自慢に見られがち。

かなり大食い。前面には複数の傷がある。

女だから、という扱いを受けたことがあり、周りを冷めた目で見ている。つもり。

魔法使い。

ジジイ。勇者SSでジジイ魔法使いが少ないので……もち、強いジジイだよ!

エロいが、別にキャラ作りではなく、かなり女好き。

年食ってからエロを許容されるようになったので、自覚的にエロを挟み込もうとする。

若いうちから冒険はしていたので、それなりに知識はある。つもりではない。

僧侶。

うざい系妹系キャラ。

僧侶なのに、かなり重たい武器を好んで持つ。結果、勇者よりもダメージソースに。

回復は普通にできる程度。自分の都合の良いように神を持ちだしてくるためか。

あまり人の話を聞かない系だが、思いやりはある。つもり。

――戦士の場合。

戦士「なんでだ!? 私が何したっていうんだ」

仲間「なんでも何も、お前は金かかりすぎなんだよ」

戦士「ど、どういうことだよ」

仲間「そりゃ、確かに腕は立つが、武器も防具も最新のものを欲しがるし、食う量だって人一倍だ。正直、冒険なんかやってられん」

戦士「それは……だったら、もっといい仕事を受ければいいじゃないか! こないだの竜の巣退治とか!」

仲間「ふざけんな! あれで全滅しかかったの、覚えてないのか!」

仲間「お前はちょっと強いかもしれんがな、他の連中はついていけねぇんだよ」

仲間「パーティーを危険に導くようなやつはいらねぇよ」

戦士「お、おい! 本気で、置いて行く気か!?」

仲間「ああ。金は食う、仕事は危険なものを受けたがる、リーダーの指示には従わない、そんなやつはもうお断りだ」

戦士「な……」

戦士「わ、わかった。これからは、ちゃんと節制するから!」

仲間「もういいよ……あ、こいつの、パーティー名簿から抹消しといて」

店主「一度消したら、あんたのとこには戻せないよ?」

仲間「構わない」

戦士「おい!?」

店主「ほいほいっと」スミヌリ

戦士「お、おい。なあ、嘘だろ。装備も外されて……」

元仲間「もっと楽に儲かりそうな仕事がほしいなー」

店主「女商人さんとかどうです? 行商のついでに冒険についていってもいいと」

元仲間「かわいい?」

店主「そりゃもう」

戦士「ちょっと……待ってくれ……」

………

店主「冒険者名簿の再登録は受け付けるよ」

戦士「……」

店主「まあ、そう気を落とすなよ。最近は魔王の復活なんて噂もあるし、力自慢なら困らない世の中だ」

戦士「気の合う連中だと思ってたんだ」

店主「そりゃ気の毒に」

戦士「金勘定は苦手だから、任せっぱなしだったのは悪かったけど……」

店主「……」

戦士「前に立って戦ってりゃ、武器も防具もすぐに壊れるんだろうが! 死ぬ気で戦ってるなら、腹が減るのもしょうがないだろう!」

店主「……」

戦士「ちくしょう! あいつら!」

店主「……で、再登録する?」

戦士「……いや、もう」

ばたん。

勇者「すみません、新しい仲間を……」

店主「おやー、お客さんは初めてですか」

戦士(ん、こいつは……?)

勇者「はあ、まあ」

店主「お、勇者のところの坊主じゃないか」

勇者「俺もそろそろ冒険に出ていけって」

店主「覇気がねぇなぁ。そんなんじゃやられちまうぞ」

勇者「いいんだよ。俺は親父みたいに強くはないし」

店主「……。で、どんな仲間をご希望ですか?」

勇者「まあ、なんだ、とりあえず腕が立つ人を三人くらい」

店主「戦士や魔法使い、僧侶なんかがオススメですよ」

勇者「全員いる?」

店主「うーん、今は戦士が一人ねぇ……」チラ

戦士「……」

勇者「あんたは戦士?」

戦士「そうだけど、たった今登録を消されたばかりでね。しばらく冒険はしたくない」

勇者「……でも、腕は立つんだろ」

戦士「そりゃ、腕に自信もないのに、冒険をやりたがるやつはいないよ」

勇者「俺は、剣の才能がなくても冒険しないといけないんだ……」

戦士「はぁ? バカじゃないの」

勇者「しょうがないんだよ。勇者だから」

戦士「やりたいことやったらいいんだよ、そんなの」

勇者「勇者になるようにしか育てられてないからなぁ……才能がなくても、しょうがない」

勇者「でも、あんたは強いんだろ」

戦士「いや、そうだけどさ……」

戦士「私は金食い虫だぞ。武器も防具も、前列で戦う以上、買い替えも要求するし、食事だっていっぱい食べる」

勇者「そんなの、当然だろう。むしろ、俺の冒険はあまり稼ぎにならないかもしれないけど、いいかい?」

戦士「まあ、そりゃ、別に金稼ぎしたいわけじゃないしな」

勇者「で、どのくらい強いんだ?」

店主「竜の巣でドラゴン退治してたくらいだ」

勇者「おお~……」

戦士「いや、あのな」

勇者「あんたが良ければ、ぜひ仲間になってくれ」

戦士「いや、でもな」

勇者「頼むよ。俺は、一人じゃ何もできないんだ」

戦士「……まあ、少しくらいなら」

――戦士が仲間にくわわった!

初会合。

戦士「よろしく」

魔法使い「ほいほい」

僧侶「よろしくおねがいします! 僧侶です!」

勇者「よろしく」

勇者「じゃあ、とりあえず冒険の計画なんだけど……」

戦士(計画……?)

勇者「一応、俺らは王家公認の冒険者ってことになってる」

勇者「んだから、各国の王様の支援を取り付けて、まあ、ついでにその国の問題も解決してやれば、橋渡しにもなる」

僧侶「そ、それは外交特使というやつですか!?」

魔法使い「はした金でそこまでやらされてものう」

勇者「……俺が勇者の家系だから、うちの王様も期待してんだろう」

戦士「……」

戦士「よし、勇者。その代わりに、死ぬほどふっかけてやれ」

勇者「ふっかける?」

戦士「ああ。例えば、姫様と結婚させろとか」

僧侶「せ、政略結婚!?」

魔法使い「うひゃひゃひゃ、そりゃきっと泡吹くぞい!」

勇者「そんなもん、通るわけないだろ」

戦士「だからいいんだよ。で、じゃあ、それなりに金額の大きい報酬をよこせ、こっちは命かけてるんだってやる」

勇者「……そういうことか」

僧侶「そんな、女性の心をもてあそぶようなことを!!」

戦士「だったら、王位継承権をよこせとかでもいい。とにかく、最初にふっかけて、後でそこそこの金額で落としこむ。その手で行こう」

勇者「よし、分かった。確かに命がけだ、こっちも交渉力が必要だよな」

戦士「うん。足元見られちゃおしまいだ」

勇者「……ありがとう、戦士」

戦士「ん」

盗賊のアジト。

戦士「はあっ! はあっ! くそ、すばしっこい連中だ!」

勇者「戦士! 俺が追い込むから、息を整えておけ!」ダダダ

戦士「すまない!」

魔法使い「わしもー、ゆっくりいくわー」

僧侶「勇者様! こちらですー!」

勇者「おう! いま行く!」

戦士(くっそ! 鎧が重い)

戦士「……はぁー、はぁー」

戦士(勇者、半分くらい荷物背負ってるのに……)

魔法使い「ほれ、防具破壊呪文の準備でもしておくから」

戦士「ああ、分かった」

勇者「戦士ー! そっち行ったぞ!」

戦士「!」

魔法使い「ほれ、柔くなーれ」 ミニョニョ

盗賊A「うわっ、なんだ!?」

戦士「敵だよ!」ぶん

戦士は大きく息を吸い込んで、斧を振り下ろした!

盗賊Aに大きなダメージ!

盗賊A「」

戦士「当たれば逃げられないだろ」

盗賊B「くそぅ、このメスゴリラがっ!」ヒュバッ

戦士「ちっ」

勇者「戦士!」

盗賊Bの攻撃! 勇者は戦士をかばった!

戦士「バカ、勇者!」

戦士の攻撃! 盗賊Bをやっつけた!

勇者「てて、軽く斬られたか……」

戦士「バカ! なんで割り込んできた!」

勇者「いや、戦士が……」

戦士「あの程度なら受けきれる。私を信用してないのか!」

勇者「でも、攻撃が崩されると思ったからな……」

僧侶「勇者様ー! お怪我は……ありますぅー!」

勇者「あ、ああ。このくらいは大丈夫だよ」

僧侶「ダメですもう、無茶ばっかりして!」

勇者「俺を信用してないのか」

僧侶「勇者様は斬られすぎです!」

戦士「ホントだよ、バカ」ゴン

勇者「いてぇ」

魔法使い「冠は回収したぞい」

勇者「おー、ありがとう」

僧侶「もう、動かないでください!」

戦士「……まったく」

戦士(そういや、あの時、割り込んできたってことは、一瞬のうちに近づいてきたってことか?)

勇者「親分もぶちのめしたか」

親分「み、見逃してくれぇ……」

12345678910111213141516