勇者に痛恨の一撃!
勇者「ぐあっ!」
戦士「バカ、下がってろ!」
魔法使い「ほい、いくぞ、極大火炎呪文」
ごおっ!
僧侶「勇者様、回復しますから!」
勇者「ご、ごめん」
戦士「このおっ!」
戦士の会心の一撃!
魔物を退治した。
戦士「ふー、さすがにここまで来ると魔物も強力だな」
魔法使い「ジジイの身には堪えるのう」
僧侶「魔法使いさんも回復しましょうか?」
魔法使い「わしは柔らかい物を触れば回復するから大丈夫じゃ」サワッ
戦士「うひゃあ!」
魔法使い「うひゃひゃ、お前さんは固かったかな」
戦士「おい、ジジイ……」
勇者「……」
僧侶「勇者様、大丈夫ですか?」
勇者「い、いや、ありがとう」
戦士「勇者、そろそろ陽も暮れる。街はまだか?」
勇者「地図通りには来ているんだが、何しろ人の通行が少ないからなぁ」
僧侶「あ、あれは、街の灯りじゃないでしょうか?」
魔法使い「おお、ようやく街かい。かわいい女の子がいるとええのう」
戦士「おい、ジジイ」
魔法使い「別にお前さん方をdisってるわけじゃないぞ? それぞれの街の、それぞれのかわいい女の子を愛でるのがいいんじゃ」
勇者「……」
僧侶「勇者様、本当に大丈夫ですか?」
勇者「……大丈夫だよ!」
戦士「勇者、さすがに街が近いんだ。もう魔物の襲撃もないんだろうから、私が持つよ」
勇者「いや、お、俺がリーダーだからな。荷物の管理は俺に任せろ」グイッ
勇者「ととっ……」ふら
戦士「バカ。半分、いや三分の、いや、六分の一くらい持つ、街についたら整理しよう」
勇者「あー、すまん」
宿屋。
勇者「ふあー、ようやく安心できるなぁ」
僧侶「王様に挨拶しなくてよろしかったのでしょうか」
戦士「こんな夕暮れに門を開けてはくれないよ」
魔法使い「そのとおりじゃ。かえって迷惑、その上、ここの国王は何かにつけて冒険者にいちゃもんをつける」
魔法使い「んで、女の冒険者にはエロいことをふっかけてるというけしからんやつじゃ」
戦・僧「……」ジーッ
魔法使い「明日の訪問も、わしと勇者で行った方がよいじゃろ」
勇者「……」
魔法使い「ということじゃ、勇者」
勇者「お、おう!? そうだなじいさん、ちょっと酒場繰り出すか!」
戦士「おい、勇者!」
勇者「あ!? いや、しまった」
魔法使い「勇者のおごりなら仕方あるまいて」ドッコイショ
勇者「誰もおごりとは言ってねぇ」
僧侶「ふ、不潔ですよ!」
勇者「酒場に行くののどこが不潔なんですかー」
戦士「ち……どうせじじいと行くってこた、買春だろ」
魔法使い「ちょっとエッチなダンスショーを見に行くだけじゃ」
戦士「同じだろうが!」
勇者「俺は酒飲みに行くだけだし」
僧侶「ついて早々、そのような振る舞い、神もお嘆きですよ!」
魔法使い「飲酒で嘆く神様はおらんよ。ほいじゃ、行こうぞ勇者」
勇者「へいへい」
僧侶「もう、お二人とも!」
勇者「飯は適当に食っとけよ!」
戦士「うるさい、バカども!」
外。
勇者「……あ」
魔法使い「どうしたんじゃ」
勇者「財布忘れちまった、取りに戻る」
魔法使い「またかい。んじゃ、わしは一人で行ってくるぞ」
勇者「わりーな、じいさん」
魔法使い「ツケにしておくから、明日支払っといてくれよ」
勇者「おい、俺もあとで行くよ」
魔法使い「まあまあ、ジジイと飲むより、別々に若いねえちゃんと飲んだ方が酒もうまいじゃろ」
勇者「ツケが嫌なんだよ! いくら飲んだかも覚えてないくせに!」
魔法使い「呪文の詠唱は忘れとらんじゃろ」
勇者「うるせえジジイ」
魔法使い「ひょひょひょ」スタタ
勇者「……」
勇者「はぁ……」
勇者「あっちも気を使ってんだろな」
勇者「まあ、俺も、一人で飲みたいし……」
勇者「はぁ……」
勇者「くそっ、もう魔王の居城も近いっていうのに」
勇者「……」
勇者「パーティーの中で、俺が一番弱いんだよな……」
勇者「剣の腕は戦士に劣るし……」
勇者「魔法使いほどの高威力の魔法も使えない」
勇者「回復役の僧侶さんの方が、腕力がある始末だ……」
勇者「あー……」
勇者「飲むか」
酒場。
マスター「いらっしゃい」
勇者「安くてうまいの」
マスター「……ちっ」
勇者「明日も来るから」
マスター「うちは女の子とかはいないよ」
勇者「へいへい」
ぎゃははは……
勇者「……の割に騒がしいな」
マスター「冒険者が増えてきたからな」
勇者「……」
マスター「勇者ってのもいるらしいな」
勇者「みたいだな」
武闘家「でよー、俺が殴ったら一発だよ!」
戦士(男)「またその話かよ、どうせ鉄の爪を持ってましたってオチだろ?」
武闘家「うるせーよ」
どはははは……
勇者(うぜぇ……)
商人「それにしても、最近、勇者とやらが各地で武功を立てているようですな」
男戦士「あれだろ? 王家の冠を取り返したり」
武闘家「媚がうまいだけの雑魚だな、きっと!」
勇者「……」
商人「なんでも、父親も勇者で、各地の魔物を退治していたとか」
男戦士「ほれみろ、七光りだ」
武闘家「血筋って得だよな~、俺なんかど田舎だから、兵士の試験もダメでよう」
男戦士「それはお前が馬鹿だからだろ!」
武闘家「うるせーよ」
商人「まあまあ、お二人とも、パーティーにはかかせない仲間なんですし」
男戦士「お前はお世辞がうまいよな」
武闘家「うるせーよ」
男戦士「お前には言ってねぇよ」
だはははは……
勇者「……」
勇者「おやじ、お勘定」
マスター「もうかい」
勇者「ああ。昼もやってる?」
マスター「一応な」
勇者「明日、仲間と昼飯でも食いに来る」
マスター「……ま、いいだろ」
勇者「客商売なんだから、愛想よくしたら?」
マスター「一本頼んでから言ってくれ」
勇者「へいへい」
きぃ。
勇者「……」
勇者「……はぁ」
翌日。
国王「よくぞ、来た! 勇者よ!」
勇者「はい」
国王「お前の噂は聞いておる。お前の父親とも、わしは面識があるぞ」
勇者「それはどうも」
国王「……父親に比べると、ちと頼りないように見えるな」
勇者「仲間がいますんで」
魔法使い「うひひ、そういうことじゃよ、国王」
国王「う、お前は」
魔法使い「あまり無体なことをするでないぞぉ」
国王「わ、わかった。わかったから」
勇者「……あのう」
国王「う、うむ! この国は魔王の居城も近い。が、その分、兵の練度もなかなかのものだ」
国王「もしよければ、武器を整えたり、あるいは兵たちと手合わせをしていくがよい!」
国王「城の宝物は勝手に持って行くでないぞ」
勇者「はあ。どうも」
城内。
勇者「……知り合いか?」
魔法使い「若い頃も冒険しとったからな、わし」
勇者「年食っても冒険して、よくやるよ」
魔法使い「村で女の子と遊んでいたら、蓄えが尽きちまってのう」
勇者「……」
戦士「お。挨拶は終わったのか」
勇者「セクハラはされなかったよ」
僧侶「あ、当たり前です!」
戦士「それで、なんか無茶ぶりはあったのか?」
勇者「いいや、武器でも買ってけ、兵士と手合わせでもしていけってさ」
戦士「ほほう」
勇者「……手合わせなんかしないからな」
戦士「ちょっと待て。なんでそうなる」
勇者「俺達の力は魔物を退治することに使われるべきで」
戦士「バカ! ここらで勇者のパーティーの名前をだな」
僧侶「そうですよ、勇者様! お忍びのように行動していては、人々に勇気を与えられません!」
僧侶「私たちの力を、時々で発揮せねば!」
魔法使い「ま、わしも不賛成じゃな。力自慢の娘っ子どもはともかく」
僧侶「高名な女性の魔法学者様もいらっしゃいますけど……」
魔法使い「魔法比べってのもできるんかいのう」
勇者「おい、ジジイ……」
勇者「と、とにかく、ダメだ」
戦士「……お前な」
勇者「お、お前一人でってわけにもいかないだろ」
魔法使い「勇者ちゃんはびびりなんじゃ」
僧侶「勇者様、勇気を出して!」
勇者「……俺の親父は、人間と他流試合をしている時に手加減しすぎて大怪我を……」
戦士「その嘘は前に聞いた」
勇者「そ、そうだったか?」
戦士「じゃあ、手合わせは私とジジイで行ってくるから。装備の整理をしにいってこい」
勇者「う、お」
魔法使い「僧侶ちゃんも行っておいで」
僧侶「お二人の活躍が見たいのですがー」
勇者「……」
僧侶「まあ、溜め込んだ装備品を換金する必要はありますね!!」
勇者「そ、そうだよな」
僧侶「それでは、勇者様、一度宿屋で荷物を受け取りましょう!」
勇者「ああ……お前ら! あまり無茶するなよ!」
戦士「わかってるよ」
魔法使い「うひゃひゃ」
タッタッタッ。
戦士「……やれやれ」
魔法使い「面倒なやつじゃのう」
武器屋。
武器屋「ふーむ。傷はあるが、なかなかいい素材だ」
勇者「だろ? 他所のやつらは、定価だ何だでケチつけてくるからよぉ」
武器屋「潰しても元が取れるな」
勇者「だろだろ? どうだ、他にも貴重なのはあるぜ! エルフが魔法でつくったやつとか」
武器屋「そういうのは俺のとこでは扱いづらいが……ま、知り合いの行商に流すこともできるしな」
勇者「!」