女勇者「強くてニューゲームっ♪」 11/16

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戦士「そうか…勇者殿がそれでいいのならば構わんが…」

僧侶「…勇者様」

女勇者「うん?どうしたの僧侶ちゃん」

僧侶「その…もしかして勇者様は、戦いがお好きでないんでしょうか…」

女勇者「へ?どーして?」

僧侶「装備も最低限のものですし、なにより…」

女勇者「?」

僧侶「勇者様が、この戦いを望んでおられないような気がして…」

魔法使い「…そうですね。私もそう感じておりました。どこか、旅立ちを嫌がっているような…」

戦士「勇者殿…戦いは嫌いか?」

女勇者「……好きじゃ、ないかな…」

戦士「……その顔を見ればわかるな。勇者殿、戦闘は俺達に任せてくれ」

女勇者「え?」

戦士「勇者とは言え、戦いを避けたがる女の子に無理やり戦わせるわけにはいかない」

女勇者「えへへ…ありがとう。でも、私も戦うよ」

戦士「…無理はするな」

女勇者「うん。でも私は勇者だからね。私だけワガママで戦わないなんて、許されないでしょ?」

戦士「それはワガママではない。勇者殿は、望んで勇者に生まれたわけではないのだから」

女勇者「そうだね。それでも、私には勇者に生まれた責任があるから」ニコ

戦士「……勇者殿」

女勇者「だから、私も戦うよ。一緒に頑張ろうね!」

僧侶「……勇者様は、強いんですね」

女勇者「あはは、そんなことないよー。平和を取り戻したいのは私も一緒だし」

戦士「よし、では出発しようか」

僧侶「はい!」

魔法使い「参りましょう」

女勇者「あ!ちょっと待って!」

魔法使い「?勇者様、どうなされましたか?」

女勇者「えっとね、…皆に、話しておかなきゃならないことがあるんだぁ」

僧侶「?」

女勇者「えへへ…怖がらないで聞いてくれる?」

女勇者「実はねぇ……?私は、もうこの旅を5回終えてるの」

戦士「?」

女勇者「なんて言ったら良いのかな?もうね、魔王を倒したこともあるんだ」

魔法使い「勇者様…何を仰っているのですか?しっかりしてください」

女勇者「本当なんだよ?えっとねぇ、私、魔王を倒して、また旅立ちの日に戻ってを」

女勇者「もう5回繰り返してるの。今回で6回目の旅立ちなんだー」

戦士「…その話が本当だとして、記憶を持ったまま繰り返しているのか」

女勇者「うん。記憶だけじゃないよ?強さだって魔法だって、お金だってほら…」じゃら

戦士「…」

戦士「……」

女勇者「混乱させるような事言ってごめんね?」

僧侶「……」

女勇者「ただ、みんなには言っておきたかったから…」

魔法使い「……」

女勇者「……だから…」

女勇者「えっと、えっとね…だからもう、私…レベルも80近くあるんだ」

女勇者「……ごめんなさい。こんな事言われても、わけわかんないよね」

戦士「…いや、すまない。…その、少し混乱していただけだ」

僧侶「そそ、そうですよね。勇者様は勇者様ですよぅ。ね、魔法使いさん?」

魔法使い「…はい」

女勇者「…ありがとう。ごめんね、旅立つ前にこんな事言って。さ、行こうか」

戦士「うむ。我々も、足手まといにならぬよう精一杯ついていこう」

女勇者「……うん!」ニコ

【城の外】

戦士「それでは先頭は勇者殿に任せて、俺達はサポートしよう」

僧侶「はい!勇者様、回復はお任せくださいね」

魔法使い「私などの魔法がお役に立つとは思いませんが…精一杯助力いたします」

女勇者「そうだね。みんなで力を合わせて戦っていこう!」

僧侶「はい!」

魔法使い「…あ!さっそく魔物があらわれましたね」

魔物「ぐるる…!」

魔物があらわれた!

女勇者「えへへ、この魔物、必ず最初に出会うんだよー」

僧侶「そうなんですかぁ…。勇者様、お気をつけて…!」

女勇者「ありがとー!えいっ」

ぐしゃあっっ!!!

魔物をたおした!

僧侶「………ひ………」

僧侶「…あ……あ」

魔法使い「そんな…なんの変哲もない攻撃で……」

戦士「…魔物が……爆ぜた…?」

女勇者「うわぁ…返り血浴びちゃったよー……気持ち悪いなぁ」ふきふき

戦士「……」

女勇者「よし!さぁ、先を急ごうか」ニコ

戦士「う、うむ。最初の目的地は北の洞窟だったな」

僧侶「…そ、そうですねぇ。近くの村が被害を受けてるって言ってましたね」

女勇者「えへへ、被害って言ってもそんなにたいしたもんじゃないよ」

魔法使い「え?そうなんですか?」

女勇者「うん!時々農作物を荒らされるだけらしいしね」

戦士「だけ、か」

女勇者「さぁ、入り口も見えてきたね。行こうか」

僧侶「は、はい…」ビクビク

女勇者「さぁ、出発ー!」

ざっざっざっ

魔法使い「かなり薄暗いですね。勇者様、足元にお気をつけくださいね」

女勇者「ありがと。でもだいたい覚えてるから大丈夫だよ」ニコ

戦士「そうか、もう6回目か…」

女勇者「うん。みんな、私の後ろについてきてねー」

僧侶「…は、はぃぃ」

女勇者「?どうかした、僧侶ちゃん」

僧侶「あ、あの…勇者様ぁ…お願いがあるんですけど」

女勇者「なんだろ?」

僧侶「えと、私の…ワガママなんですけど、その…最後列は…怖いですぅ」

女勇者「!」

僧侶「ご、ごめんなさい!こんなワガママ言っちゃって…」

女勇者「あはは、良いよいーよ。じゃあ私の後ろに来てくれる?」

僧侶「ご、ごめんなさい…」オロオロ

女勇者「戦士くん、最後列お願いしていいかな?」

戦士「うむ。引き受けよう」

女勇者「ありがと。頼りになるねっ。後ろからの襲撃は任せるよー」

戦士「了解した」

女勇者「よーし、もうそろそろ最奥部だね。みんな、戦闘の準備しておいてね」

戦士「なに?もう最奥部なのか?」

女勇者「うん!迷わなければ案外短い洞窟だからね」ニコ

戦士「……」

戦士(俺達は……必要なのか…?)

女勇者「はい、とーちゃく!皆、準備はいーい?」

僧侶「だ、大丈夫ですぅ」びくびく

魔法使い「はい。今までほとんどMPを使う機会もなかったので」

戦士「……」

女勇者「戦士くん?だいじょうぶ?」

戦士「う、うむ。では行こう」

女勇者「そだね!さっさと済ませちゃおう」ニコ

ギィ……

バタン!!

魔物「なんだ貴様らは?」

女勇者「君を退治しにきたよ。近くの村の人が困ってるからね!」

魔物「ふん、人間ごときが私を倒せるとでも?」

女勇者「残念だけど、普通の人間じゃないんだよー」ニコニコ

魔物「……ふん。どう違うのか見せてもらおう」

女勇者「え?君、そんなに弱かったっけ?」

魔物「は?」

ずるっ…

どしゃぁぁ……

女勇者「あーあ…真っ二つになっちゃったね」

戦士「な…?い、いつ斬ったんだ…?」

僧侶「ぅ…!」

魔物を倒した!

僧侶「ぅ、う…」

女勇者「僧侶ちゃん?どうしたの…?」

僧侶「うえぇ…!!!」びしゃびしゃびしゃ…

女勇者「…そ、僧侶ちゃん…」

魔法使い「……大丈夫ですよ、僧侶さん。さぁ、戻りましょう…」

戦士「そうだな。勇者殿、これで返り血を拭くと良い。そのままでは気持ち悪いだろう」

女勇者「え?あ、うん…ありがとう」

戦士「……さぁ、行くぞ二人とも」

女勇者「…」ふきふき

女勇者「…」ふきふき

【宿屋】

女勇者「……血が、取れないなぁ」

僧侶「…」

魔法使い「…」

女勇者「…もう。どうして魔物の血ってこんなに取れにくいんだろう」

女勇者「…ねぇ?」

魔法使い「そ!そうですね」

僧侶「…魔法使いさん。大丈夫、もう介抱は結構です…楽になりました」

魔法使い「…そうですか?」

女勇者「僧侶ちゃん、ごめんね…?許してね?」

僧侶「いえ…私こそ、すみません…」

魔法使い「僧侶さん、お風呂に行きましょうか。少しは気分も楽になりますよ」

僧侶「…そうですねぇ。そうしましょう」

女勇者「あ、お風呂私も行きたいなぁ。良い?」

僧侶「はい。もちろんですよぅ。皆で行きましょう」ニコ

魔法使い(僧侶さん…)

女勇者「よし、じゃあ早速いこっ!」

魔法使い「大丈夫ですか、僧侶さん…?」

僧侶「へ?なにがですかぁ?」

魔法使い「勇者様のこと、怖がっていたのに…」

僧侶「…うん。大丈夫です。だって…」

魔法使い「だって?」

僧侶「勇者様は、悪くないじゃないですか」ニコ

魔法使い「!」

僧侶「さっきのは私が未熟だから、気分悪くなっちゃっただけで…」

僧侶「それに…勇者様だって、望んで強くなりすぎた訳じゃないんですから」

魔法使い「…そうですね。僧侶さんの言うとおりです」

女勇者「二人ともー、早く行こうよぅ!」

魔法使い「あ、はい!お待たせしました」

【脱衣所】

僧侶「ねぇ、勇者様」

女勇者「うん?なぁに?僧侶ちゃん」

僧侶「その…さっきはごめんなさい。私、勇者様の気持ちも全然考えずに…」

女勇者「えへへ…ううん、もういいの。誰だってあんなの見たら気持ち悪いもんね」

僧侶「…勇者様」

女勇者「この辺の魔物だと、手加減も難しいんだぁ。後半になると全力で切れるんだけどね」

僧侶「…勇者様。ループは、辛くないんですか…?」

女勇者「うん…辛いよ。すごく辛い」

魔法使い「投げ出したい…と、思わないんですか?」

女勇者「えへへ、実は何回も思っちゃった。だけど…」

僧侶「…」

女勇者「私は、勇者に生まれたから」

僧侶「勇者様…」

女勇者「私がやらないと、困る人がたくさん居るもんね」

女勇者「自分を犠牲に、なんてカッコいいものじゃないけどさ」ニコ

女勇者「だけど、私しか居ないんだから私がやらなきゃ」

魔法使い「…辛いですね」

女勇者「うん。だけど平気。みんな居るもん。戦士くんも、僧侶ちゃんも、魔法使いちゃんも」

女勇者「…普通の女の子になりたいって、思わなくはないんだけどね」

ヌギ…

ぬぎ…

ぱさっ…

魔法使い「う…」

僧侶「ゆ、勇者様…その身体…」

女勇者「ああ、これはねぇ。えへへ、何回も冒険してたらこんなんなっちゃった」

僧侶「そ、その胸から太ももにかけてのおっきい傷は…斬られたんですか?」

女勇者「そう。たしか3週目の時だったかな」

魔法使い「火傷や凍傷…切傷や擦過傷…なにがあればそんな身体に…」

女勇者「…うん。色々あったから」

女勇者「やっぱり、気持ち悪いよね」

僧侶「…………うわぁ……」

魔法使い「…………」

女勇者「……ごめん、変なもの見せちゃったね」

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