女勇者「強くてニューゲームっ♪」 5/16

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僧侶「ふぃー。ちょっと熱いですぅ…」

魔法使い「そうですか?これくらいがちょうど良いですよ」

女勇者「ふふ、僧侶ちゃんはいちいち言う事もやる事も子供みたいだねー。かわいいなぁ」なでなで

僧侶「勇者様はお姉ちゃんみたいですもんねぇ」ニコ

女勇者「そう?私もまだまだ子供だけどなぁ」なでなで

僧侶「私、こうして勇者様に頭撫でられるの好きですよ」ニコニコ

魔法使い「ちょっと、僧侶さん!のぼせてませんか?」

僧侶「ふぇ?」

女勇者「…ん?うわ!」

魔法使い「鼻血出てますよ…!」

僧侶「すびばせん…」

女勇者「あはは、僧侶ちゃんならなんでも許しちゃうよー」

魔法使い「ふふ、ほほえましいですね」

女勇者「だねー。魔法使いちゃん、ありがとうね」

魔法使い「はい?」

女勇者「ずいぶん元気もらっちゃったみたいだよ。僧侶ちゃんも、ありがとう」ニコ

僧侶「そんなことないですよぉ」

魔法使い「そうです、私達は仲間なんですから」ニコ

女勇者「うん!大事な仲間だね!」

女勇者「だからね、二人とも。私の事忘れないでね?」

魔法使い「え?もちろんですよ。忘れたくても忘れられません。ねぇ僧侶さん?」

僧侶「はい!」

女勇者「ふふ、ありがとう。ちょっと涼んで来ようかな。戦士くんは?」

魔法使い「戦士さんは、下の酒場に居ると思いますよ」

女勇者「そっかぁ。ちょっと行ってみるよ!ありがとうね、二人とも!」

魔法使い「はい、行ってらっしゃい」

僧侶「いってらっしゃぁい」ふりふり

【酒場】

戦士「マスター、もう一杯くれ」

マスター「あいよ。旦那酒豪だねぇ。飲み慣れてるのかい?」

戦士「いや、たまに嗜む程度だ。今日は相棒との別れの日だからな」

マスター「ほう、剣でも折れたかい?」

戦士「ああ…コイツにも世話になった。ゆっくり休ませてやりたい」

マスター「覇者の剣…。あの伝説の鉱物で作られた剣か。そいつを折っちまうとは、相当のやり手だね」

戦士「…それはわからんが…世話になった相棒だからな。別れは惜しいものだ」

女勇者(あ…剣、折れちゃったんだ…)

女勇者(…ごめんなさい、戦士くん)

女勇者「隣、良いかな?」

戦士「おお、勇者殿。どうぞ」

女勇者「剣折れちゃったんだね…。ごめんね?」

戦士「いや、勇者殿のせいではない。こいつも疲れたんだろう。まるで力尽きたように折れた」

女勇者「戦士くんが素振りしてた時に?」

戦士「うむ。勇者殿から返してもらい、俺が振りに行こうとしたらな」

戦士「持ち上げただけで、根元から折れた。…なんだか、満足げだったよ」

女勇者(本気で振っちゃったからなぁ…)

女勇者「戦士くんは剣を愛してるんだね。剣も幸せだなぁ」

戦士「はは、相棒だからな。最後くらいはこうして杯を共にしたいんだ」

女勇者「それなのに、このドレス…剣を売ってまで買ってくれたんだね」

戦士「ああ、旅立ってすぐの頃の…。うむ」

女勇者「どうして、そんな大事なものを売ってまで?」

戦士「恥ずかしながら、俺の持論でな」

女勇者「へぇ?聞かせて欲しいなぁー」

戦士「…人に言うほどのものではない」

女勇者「えー、聞かせてよ!お願い!」

戦士「……剣を愛するのはもちろんだが、その剣で守るべき者が悲しんでは意味がない」

女勇者「……」ニコニコ

戦士「だから言いたくなかったんだ。笑って構わんぞ」

女勇者「ん?いや、やっぱり戦士くんはかっこいいなぁと思ってね」ニコ

戦士「……」

女勇者「マスター、私にもカクテルを一杯くださいなー」

戦士「大丈夫なのか?勇者殿は未成年では…」

女勇者「大丈夫だよ。ちょっとだけだしね」

戦士「まぁ宿屋の下だから大丈夫か…。もし潰れてしまってもすぐに運べる」

女勇者「えへへ、頼りになるなぁ。じゃあ潰れたらよろしくね」

戦士「出来るだけ無理はしないようにな」

マスター「はいよ、嬢ちゃん。お待ちどうさま」

女勇者「えへへ、ありがとう。お酒なんて久しぶり」

女勇者「…」くいっ

女勇者「…うん、おいしい」

戦士「マスター、俺にももう一杯」

マスター「あいよ」

戦士「…」ごくっごくっごくっ

女勇者「おお…酒豪だねぇ」

戦士「今日だけだ。次は…平和になってからだといいな」

女勇者「その時は、また一緒にお酒飲もうね」ニコ

戦士「そうだな。今日よりもっと美味い酒が飲めそうだ」

女勇者「…えへへ」

女勇者「戦士くん、今日の町のことなんだけど」

戦士「……」

女勇者「正義って、なんだろう?」

戦士「……俺も、その事を考えていた。俺たちの行動は正しかったのか……」

女勇者「……わからない。まだ、わからないよ」

戦士「仮にあそこで、あの生贄の親子を見捨てていたら、こうして酒を嗜んでいることなどできない」

女勇者「……もし、もう一回あの選択ができるなら。戦士くんなら、どうする?」

戦士「もう一度あの親子を助ける。エゴかも知れん。だが俺の正義とはそういうものだ」

女勇者「もう一回後悔するかもしれないよ?」

戦士「それでもだ。もしあれを見捨てるような選択をすれば、俺は大切なものをなくしてしまう」

女勇者「それってさ、すごいエゴだよね……それで街がひとつ滅ぶんだから」

戦士「そうだな。しかしそれが俺の正義だ。正義は数や理論で計れるものではない。情こそが俺の正義だ」

女勇者「それが正しいのかはわからないけど…そこまで言い切れるなんて、戦士くんはすごいなぁ」くいっ

戦士「…言い切らなければ、やりきれないからだ。俺は結局自分の為にこうして…」

女勇者「…自分のための正義、か」

戦士「勇者殿の正義は、自分でしっかりと持っているといい」

女勇者「私の正義は、まだわからないんだよ…」

戦士「ならば見つければ良いだけの話だ。もちろんその責任は大きいが」

女勇者「私の正義が、戦士くんとは違うものかも」

戦士「心配はいらん。勇者殿がどんな正義を見つけても、それを勇者殿が正義だと信じる限りは」

戦士「俺は必ず最後まで勇者殿についていく」

女勇者「…私が悪を正義だと信じたら?」

戦士「俺が目を覚まさせてやる」

女勇者「……」

戦士「……済まない、言い過ぎたか。忘れてくれ」ぐいっごくごく

戦士「話しすぎた。俺も飲みすぎたかも知れんな」

女勇者「あはは、私も。難しい話しちゃったね」くす

戦士「まったくだ。頭がない二人がこんな話をしても仕方ないか」

女勇者「む…私も頭ないって?」

戦士「ふっ、言葉のあやだ。悪意があるわけじゃない」

女勇者「ふふ、戦士くん」

戦士「む?」

女勇者「ありがとうね……」

戦士「こちらこそ。多くを学ばせてもらった」

女勇者「…えへへ……」

戦士「マスター。もう一杯くれ」

マスター「あいよ。旦那、お暑いねぇ。いやいや、羨ましいよ」

戦士「はは、バカを言え」

戦士「……」ごくごくごく

女勇者「くぅ……くぅ……」

戦士「……勇者殿」

女勇者「くぅ…くぅ……」

戦士「心配せずとも、こうして居ると普通の女の子だ」

戦士「マスター、そろそろ上がるよ。ご馳走様」

マスター「そうかい。お代はいただいてるよ」

戦士「……勇者殿か?」

マスター「はは、内緒だよって言われてるんでな。それは言えねぇや」

戦士「そうか。ではそれは次にとって置いてくれ。今回は俺が払おう」

マスター「そうかい。次は平和になってから…か?」

戦士「そうなるといいな。その時はまた勇者殿と仲間たちを連れてこよう」

マスター「よろしく頼むよ。期待して待ってるぜ」

戦士「ああ。勇者殿、そろそろ帰ろう。勇者殿」ゆさゆさ

女勇者「…くぅ…ママ……も……ちょっと…」

【宿屋】

戦士「軽い……」

女勇者「…くぅ…」

戦士(む…いかん、ドレスがはだけてきているな…)

女勇者「くぅ…」こて

戦士「…!!」

戦士「この大きな傷は……間違いなく斬られた跡だ…」

女勇者「……うん…?」

戦士「……守るべき者、か。出来るならば戦わせたくないものだ」

戦士「早く戦いを終わらせなければな、勇者殿」

女勇者「……や…」

戦士「ん?」

女勇者「いやだ…よぅ……くぅ…」

戦士「寝言か…」

魔法使い「あ、お帰りなさい、戦士さん」

僧侶「勇者様、寝てるんですねぇ。ふふ、かわいい」

戦士「うむ。少し酒を飲んでいたのでな。ベッドに寝かせてやってくれるか」

僧侶「はぁい。勇者様、ベッドで寝ましょうね」

女勇者「う……うぇぇん……」

僧侶「勇者様?」

女勇者「もういやだ…いやだよぉ……!」

僧侶「勇者様、どうなさいましたか?泣かないで…」

戦士「なにか夢を見ているようでな。先ほどから寝言を繰り返しているのだ」

女勇者「……もう………もぅ……くぅ……くぅ」

【数ヵ月後・終盤】

女勇者「いよいよ最終決戦も近いねー!」

僧侶「そうですねぇ。長かったなぁ」

魔法使い「いよいよですね。もうすぐ世界に平和を取り戻すことができるんですね…」

戦士「そうだな。もうすぐ俺たちが望んだ世界が実現する」

女勇者「うん!そしたら皆で祝杯あげようね!」

僧侶「えへへ、楽しみだなぁ。きっと楽しいでしょうね」ニコニコ

魔法使い「本当に、今思えば色々ありましたからね」

戦士「うむ。今の俺たちが協力すれば魔王も必ず倒せるだろう」

魔法使い「私たちも強くなりましたもんね。頑張りましょう、勇者様」

女勇者「うん。頑張って、平和な世界にしよう!」

魔法使い「ここが魔王城への最後の街ですね」

戦士「ここで最終の調達になるのだな。何度も聞くが、勇者殿」

女勇者「はい、なぁに?」

戦士「本当に、その装備でいいのか?」

女勇者「うん!もう随分古くなっちゃったけどねー」

魔法使い「そうですね。勇者様がそれが良いというならば、それで行きましょう」

僧侶「はい!勇者様、すごく似合ってますもんね」

女勇者「えへへ…ありがとう」

女勇者「皆、装備のチェックは良い?」

戦士「うむ。問題ない」

僧侶「大丈夫ですぅ!」

魔法使い「はい。道具もすべて問題ありません」

僧侶「いよいよ出発ですね…緊張しますけど、感慨深いですぅ」

戦士「さぁ行こう、勇者殿。平和は目の前だ」

女勇者「……うんっ!」

【魔王の城】

僧侶「ふぇぇ…すっごい大きいですぅ…」

魔法使い「ここに、巨悪の根源…魔王が居るのですね」

戦士「最後の城だ、敵はかなり手強いはず。心してかかろう」

女勇者「うん、そうだね!僧侶ちゃん、魔法使いちゃん、MPは出来るだけ温存してね」

僧侶「はぁい、わかりましたぁ!」

魔法使い「了解です」

女勇者「よし、じゃあ行こうか!」

ギィ……

僧侶「うわぁ…長い通路ですね…」

戦士「思っていたよりも綺麗な作りだな。もっとまがまがしいものかと」

女勇者「長い通路は同じ景色がずーっと繰り返すから、相手に不安感を与えるんだよ」

魔法使い「なるほど、そんな目的があったのですか…」

女勇者「そしてもう一つ。長い通路は、挟み撃ちがしやすいんだね」

僧侶「は、挟み撃ち!?」キョロキョロ

女勇者「ふふ、心配しなくても大丈夫。今の強さなら前後からの攻撃だけなら問題ないよ」

トテトテ

トテトテ

女勇者「怖がらなくても大丈夫だよ、僧侶ちゃん。こんな心強い仲間がいるんだから」

戦士「うむ。なにかあっても俺が守ろう。僧侶たちがしっかりサポートしてくれ」

魔法使い「私も、できる限り力になります。勇者様、皆でかならず魔王を倒しましょうね」ぐっ

女勇者「ほら、この仲間がいるんだから。負けるはずないよ、僧侶ちゃん」ニコ

僧侶「勇者様…そうですよね。ありがとうございます。私も精一杯がんばりますね!」

女勇者「えへへ。私も頑張らなくっちゃね」

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