女勇者「強くてニューゲームっ♪」 12/16

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僧侶「いえ…」

女勇者「……ごめん。本当にごめんなさい」

魔法使い「そんな、勇者様が謝ることではありません…!」

女勇者「…私、後から入るよ。二人とも、先に入っちゃって」

僧侶「…いえ、一緒に…」

女勇者「ううん。大丈夫。やっぱり私も、一人のほうが気兼ねなく入れるしさ」ニコ

女勇者「じゃあ、私は部屋に戻ってるね」ニコ

僧侶「ホントに、帰っちゃうんですかぁ…?」

女勇者「ん。ちょっと外の風に当たってくるよ」

魔法使い「……わかりました」

女勇者「それじゃ、ごゆっくり!」

トテトテ

トテトテ

バタン

僧侶「……」

魔法使い「…悪いことをしてしまいましたね」

僧侶「……はい」

トテトテ

女勇者「…しょうがないよね。こんなの見せられちゃったら、誰だって」

トテトテ

女勇者「誰だって気持ち悪いよね。私だって気持ち悪いもん」

トテトテ

ガチャ

バタン!

女勇者「……私だって、一緒にお風呂なんて入りたくないもん」

女勇者「えへへ、こんな醜い傷跡で…普通の女の子になりたいだなんて…」

女勇者「笑っちゃうよね、ホント。あはは」

女勇者「回復魔法(最大)…」

ぱぁぁ…

女勇者「もう、なんで治んないかなぁ?回復魔法(最大)!」

ぱぁぁ…

女勇者「回復魔法(最大)!!」

女勇者「…治ってよ」じわ…

女勇者「はぁ…もう良いや。もう良い。誰とも一緒にお風呂なんて入らないで過ごすよ」

女勇者「……誰を恨んでも仕方ないことだよね」

女勇者「今回の旅が無事に終わっても、また繰り返しになるのかなぁ」

女勇者「……えへへ、なんだか今日は泣き言ばっかりだ」

女勇者「だめだめ。私は勇者、しっかりしなくちゃね」

【風呂】

かぽーん…

魔法使い「ねぇ、僧侶さん」

僧侶「はい?なんですか?」

魔法使い「勇者様のあの傷…治らないんでしょうか」

僧侶「…あそこまで深い傷は、きっと完全に治らないです。…いったい何があったんでしょうね」

魔法使い「勇者様の仰ったことが本当なら、きっと過去の冒険で傷を負ったのでしょう」

僧侶「…本当なんでしょうか」

魔法使い「…どうでしょう。けれど、今日の勇者様の強さを見ると、それ以外に思いつきません」

僧侶「もしかしたら、昔にすごい修行をしたとかじゃ…?」

魔法使い「修行で、あそこまでの傷跡が残るでしょうか…?」

僧侶「…」

僧侶「もし本当の事だったとしたら…」

魔法使い「?」

僧侶「私達は、必要なんでしょうか?」

魔法使い「!それは…」

僧侶「このお風呂の件もですけど…私達が勇者様の枷になるんじゃあないですか…?」

魔法使い「そうかも知れませんね」

僧侶「……どうしたらいいんだろう?」

魔法使い「……」

僧侶「私ね?今日、勇者様の戦ってる姿を見て、ちょっと怖かったんです」

魔法使い「それは、私も…きっと戦士さんも同じですよ」

僧侶「魔物とはいえ、自分より弱いものを力でねじ伏せる…」

僧侶「それが、本当に正義の為の戦いなんでしょうか?」

魔法使い「…勇者様の信じる正義なのでしょう。私達はそれについていくしかありません」

僧侶「…ですよね。…私、どうかしちゃってるなぁ」

魔法使い「無理もありません。今日の戦いを見ては…誰だって…」

僧侶「…でも」

魔法使い「…?」

僧侶「あの傷を受け入れられなかった事は、私間違ってると思います…」

魔法使い「…そうですね」

僧侶「勇者様も、今までずっと戦ってきて、苦しい思いをしてるのに…」

魔法使い「それを見て怖がってしまう私達は、本当の意味での仲間にはなれていないのでしょうね…」

魔法使い「そろそろ、あがりましょうか。勇者様も待っているでしょうし…」

僧侶「そうですね。…勇者様に謝らなくちゃ…」

魔法使い「…私も、そうします」

ざぱぁ…

トテトテ

トテトテ

ガチャ

トテトテ

トテトテ

僧侶「勇者様、気を悪くしてるでしょうか…?」

魔法使い「…そうかもしれませんね。きちんと謝りましょう…」

トテトテ

ガチャ

魔法使い「あら?勇者様の服が落ちて…」

僧侶「ホントですね。勇者様、着替えたのかな?勇者様?」

トテトテ

女勇者「…回復魔法……回復魔法」

僧侶「ゆ、勇者様…」

女勇者「!」

魔法使い「勇者様…」

女勇者「ご、ごめん!気づかなかったよ。もうあがったんだね」

僧侶「…ごめんなさい」

女勇者「え?」

僧侶「勇者様のお気持ちを考えずに…私、自分のことばっかりで…」

僧侶「怖がることしかできなくって…勇者様の傷だって、好きで負ったわけじゃないのに…」

女勇者「ううん、いいんだよ」ニコ

僧侶「…勇者様」

女勇者「こんなの、誰だって気持ち悪いよ。回復も効かない傷なんて…」

僧侶「…」

女勇者「だから、もう良いの。怖がらせちゃってごめんね」

僧侶「そんな、勇者様は悪くありません…!」

女勇者「じゃ、お風呂入ってくるよ!じゃね」ひらひら

トテトテ

バタン…

僧侶「…許してくれない…ですよね」

魔法使い「……」

僧侶「仲間なのに、こんな溝ができちゃって…私のせいです…」

魔法使い「勇者様は、私達を許さないのではなく…きっと」

僧侶「え…?」

魔法使い「きっと、ご自分でも自身を怖がっているんではないでしょうか…」

僧侶「勇者様が、自分を怖がってる…?」

魔法使い「なんとなくですが…。ループも、勇者様が望んでいるわけではないのでしょう?」

僧侶「あ…」

魔法使い「ご自分がどこまで強くなるのか、どんな傷を負うのかがわからなくて…」

僧侶「そう…なのかもしれませんね」

かぽーん…

女勇者「…ふぅ。良い気持ち…」

女勇者「やっぱり私は、こうやって一人でいるのがいいや…」

女勇者「この旅が終われば、きっと皆とも別れることになるんだろうし」

女勇者「…うん。もうこの事は忘れよう。私は頑張るだけ」

女勇者「勇者なんだから。何回だって、世界を守るために頑張らなくちゃ…ね」

女勇者「よし、そろそろ出よう。明日も早いしね」

ざぱぁ…

女勇者「…この傷も、この強さだって、私が今まで世界を救ってきた証なんだから」

女勇者「誰から嫌われたって良いよ。私だけがわかっていれば良いもんね」

トテトテ

トテトテ

ガチャ…

【次の日】

戦士「今日の目的地は、北の村だったか」

女勇者「うん、そうだね!もうすぐ見えてくると思うよ」

戦士「そうか。…む、魔物のようだ」

女勇者「あ、ホントだ。よっと」

ぶしゃあああ!!!

魔物を倒した!

女勇者「それでね?そこの村では…」

戦士「……」

【北の村】

戦士「ここが、その村か…」

僧侶「なんだか、皆忙しそうに働いてますね…」

女勇者「そうなんだー。ここは土地が悪いからね、農作物が育ちにくいんだって」

女勇者「今年は特にひどいらしくて…」

魔法使い「そうなんですか。それで皆こうして働いているのですね」

女勇者「うん。近くに町やお城もないしね」

女勇者「それで、ここらへんに住む魔物が…」

村人「きゃああああ!!!」

女勇者「村の子供を攫ってっちゃうんだぁ…」

僧侶「た、大変です!追いかけないと!」

村人「あ、あの…!貴女方は勇者様ご一行ですか…?」

女勇者「うん、そうですよ!」

村人「つ、つい今しがた魔物が村にやってきて…!私の子供が攫われてしまったのです…!」

女勇者「うん、任せて!すぐに助けてくるよ」ニコ

村人「ああ…ありがとうございます…!」

戦士「よし、勇者殿。すぐに向かおう」

女勇者「そうだねっ。早く助けてあげないと!」

僧侶「お母さん、ご安心くださいね。必ず助けてきますから…!」

村人「ありがとうございます…!」

【魔物の棲み処】

女勇者「ここだね。前の洞窟よりは明るいけど、みんな気をつけてね」

僧侶「はい…」

魔法使い「あ、勇者様!前から魔物の群れが!」

戦士「む!」チャキッ

女勇者「ホントだ!結構多いね、皆気をつけて…!」

戦士「勇者殿?剣を収めてどうするつもりだ?」

女勇者「え?数が多いから魔法で片付けようと思って。いくよー」

魔物「ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ!」

女勇者「即死魔法(最大)」

どさどさどさ…

魔物の群れを倒した!

女勇者「よし、これで全部だね。…あ、魔法使いちゃん、危ない!」

魔法使い「え?」

魔物「ぐぎゃー!」

ばしゅっ

魔法使い「…う…ううぅ…!」

魔物「ぐるるる…」

女勇者「後ろにも居たんだ…気づかなかったよ。えいっ」

ぐしゃああ!!

魔物「がっ……」

魔物を倒した!

女勇者「魔法使いちゃん、だいじょうぶ?」

魔法使い「つ…!すみません、腕に傷が…」

女勇者「あ、血が出てるね。大丈夫、これくらいならすぐ治るよ」

魔法使い「回復していただけますか…?」

女勇者「うん。回復魔法(小)」

魔法使い「…治った…。すみません、ありがとうございます」

女勇者「ううん。全然いいよ。私も気づけなくてごめんね」

魔法使い「勇者様の足を引っ張ってしまいました…」

女勇者「へ?ううん、全然そんなことないってば!」

女勇者「皆が居るから、私も頑張れてるんだしさ!ね?」

魔法使い「…そうでしょうか。私は勇者様の邪魔になっているようにしか…」

女勇者「そんな事ないんだよ?ホントに。私だって、なんでも出きるわけじゃないんだから」

魔法使い「…」

女勇者「一人で旅なんて、できないんだからさ」

女勇者「ほら、先を急ごう?もうすぐ攫われた子供の部屋だよ」

戦士「…勇者殿」

女勇者「ん?」

戦士「勇者殿は、以前一人で旅をしたことがあるのか?」

女勇者「うん、一回だけね。4週目だったかな?」

女勇者「?それがどうかした?」

戦士「…いや、いい。先を急ごう」

女勇者「…?」

戦士「ここが、子供が捕らえられている場所か」

女勇者「うん、そうだね!早く助けてあげよう!」

ガチャ…

きぃぃ…

バタン!!

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