女勇者「強くてニューゲームっ♪」 13/16

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子供「!!助けて!お姉ちゃん、助けてぇ!!」

魔物「…!!勇者か…!」

女勇者「そうだよ。さぁ、その子を返してくれる?」

魔物「そうはいかん…」

僧侶「なぜ…なぜその子を攫ったんですか?!」

魔物「ふん、わかりきった事を。食べさせるためだ」

僧侶「食べさせる…?」

魔物「貴様らとて同じだろう。自らの飢えを凌ぐため、他の命を絶つことなど」

僧侶「!」

魔物「さぁ…取り返したくばかかって来い。俺を殺せば子供は取り返せるぞ」

僧侶「食べさせるって事は…まさか、自分の子供に…?」

魔物「貴様らの知るところではない。早くしなければ人間の子供の命はないぞ」

僧侶「そんな…!」

女勇者「よし、行くよ!」

僧侶「!」

女勇者「…っせい!!」

女勇者の攻撃!

魔物の腕が切り落とされた!

魔物「が…!」

女勇者「えいっ!」

ぐしゃっ

ずばっ

がこっ

ずばぁん!!

魔物「…っ……っ」

僧侶「…勇者…さま…」

女勇者「次で終わりだね!」

魔物「か…ひゅ……ひゅ…!」

僧侶「…!!」

女勇者「せいっ!!!」

ぐしゃぁぁぁ…

魔物を倒した!

女勇者「よし、と。親はこれで終わりだね」

村の子供「お、お姉ちゃん……」ビクビク

女勇者「よしよし、かわいそうにね。大丈夫だった?」

村の子供「…うん…」

女勇者「怖かったでしょ?さぁ、お姉ちゃんと一緒に帰ろう?」

村の子供「……」

女勇者「さぁ?行こう?」

村の子供「ひ…」

女勇者「?」

村の子供「びぇええん!!」

女勇者「あ…」

僧侶「大丈夫、怖くないですからね?大丈夫大丈夫…」なでなで

村の子供「ひ、ひぐ…うえぇぇぇん…」

僧侶「…お姉ちゃん達と一緒に帰りましょうね?もう怖くないからね」

村の子供「…うん……」

女勇者「ねぇ…私、怖いかな?」

魔法使い「勇者様…」

女勇者「…だって、魔物倒さないと、この子は食べられちゃったんだよ?」

魔法使い「そうですね。…勇者様は間違っておりませんよ」

女勇者「…じゃあ。どうして私が怖がられるの…?」

魔法使い「……」

女勇者「私だって…好きでこんなに強くなっちゃったわけじゃないのにね?」

魔法使い「それは…」

女勇者「えへへ…いけないいけない。また愚痴こぼしちゃったね」

女勇者「……しょうがないのに」

女勇者「皆、悪いけど少しだけ外に出ててくれる?」

戦士「む?勇者殿は戻らないのか?」

女勇者「あそこの物陰に魔物の子供が隠れてるんだ」チラッ

戦士「…勇者殿、本当に子供の方も倒すのか」

女勇者「…このまま放っておいたら、魔物の子供は村を襲うかもしれないよ?」

女勇者「しかも今度は、親を殺された恨みで人を襲うかもしれない…」

戦士「……」

女勇者「倒しとかないと…ダメだと思うんだ。戦士くんはどう思う?」

戦士「勇者殿の………」

女勇者「…私の?」

戦士「勇者殿の、好きにしてくれ」

女勇者「…!」

女勇者「わかったよ…。じゃあ戦士くん、みんなを連れて外に出ていてくれる?」

戦士「…了解した」

女勇者「……ごめんね?」

戦士「…それが、勇者殿の正義なら…何も言わん」

女勇者「……」

戦士「さぁ行こう、魔法使い、僧侶。子供をしっかり見てやってくれ」

僧侶「は、はい!」

魔法使い「わかりました。行きましょう」

子供「…うん」

トテトテ

ガチャ

バタン!!!

戦士「……」

僧侶「戦士さん…勇者様だって、好きでやってるんじゃないんです。わかってあげて…」

戦士「わかっている。勇者殿が間違っていないことはわかっているんだ」

僧侶「…勇者様はもう、5回も同じことを繰り返しているのですから…」

戦士「…そうだな。もう慣れてしまっているのかもしれない」

魔物『ぐがぁぁぁ!!!!』

ばしゅっ

魔物『が…う………っ』

どさっ

戦士「……」

戦士「我々は……」

魔法使い「…?」

戦士「本当にこの旅に必要なのだろうか」

魔法使い「戦士さん、そんなこと…」

戦士「俺は正直、勇者殿の正義についていく自信がない」

僧侶「…」

戦士「強さなどもってのほかだ。俺たちは勇者殿の足手まといにしかならない」

僧侶「そうですけど…でも、私たちももっと強くなれば…」

戦士「……俺はこれ以上、耐えられそうもない」

僧侶「……」

ガチャ…

女勇者「お待たせぇ…ごめんね」

戦士「終わったのか」

女勇者「うん。…かわいそうだけど、仕方ないよね」

戦士「……そうだな。さぁ戻ろう」

女勇者「うん!」

戦士「それから勇者殿、村に戻ったら話がある」

女勇者「へ?なんだろう?」

戦士「とても重要な話だ。帰ったら話そう」

女勇者「…うん?わかった…」

ざっざっざ

【北の村】

村の子供「ままぁ!」

村人「あぁ…私のかわいい坊や…!!」

村の子供「ママぁ~~!!!」

女勇者「うんうん。よかったね。さぁ戦士くん、大事な話をしに行こうか」

戦士「うむ。とりあえず宿に戻ろうか」

女勇者「そうだね。立ち話もなんだし、疲れたしね」

戦士「そうだな」

【宿屋】

女勇者「…で…お話ってなに?」

戦士「…勇者殿。単刀直入に言う」

女勇者「うん…」

戦士「ここで、パーティーを解散しよう」

女勇者「…!」

戦士「…どうだろうか」

女勇者「…どうして?」じわ…

戦士「…すまない。俺たちが未熟なせいだ」

女勇者「そんなことないよ?」

戦士「先ほどの皆と話し合ったのだが…」

僧侶「…」

戦士「俺たちはもう、勇者殿についていくことができない」

女勇者「……どうして……」ぽろぽろ

戦士「勘違いしないでほしい…。勇者殿が間違っているのではないんだ」

女勇者「…う……」ぽろぽろ

戦士「俺たちが心も強さも未熟であるがゆえに、勇者殿の正義についていけないのだ…」

女勇者「そんな事ないよ……そんなことないのに…」ぽろぽろ

戦士「…勇者殿は間違ってはいない。勇者殿の強さも正義も、間違ってなどいない」

戦士「さっきの魔物にしてもそうだ。割り切らねばならぬのだろう」

戦士「…勇者殿の言ったとおり、仕方ないのだ」

女勇者「じゃあ…!」

戦士「俺たちは勇者殿のように強くない。もちろん、精神力も然り」

戦士「…俺たちでは、勇者殿の枷にしかならん…」

女勇者「いやだ…!!やだよぅ…!!」ぽろぽろ

女勇者「見捨てないで……!一緒に来てよ…!!」ぽろぽろ

戦士「すまない…」

女勇者「皆が…みんないないと、わたし…ま、魔王なんて…倒せないよぅ…」

戦士「勇者殿は、一人で旅をしたこともあるのだろう…?」

女勇者「…!」ぽろぽろ

女勇者「でも…でも、みんないないと……」

女勇者「またひとり…?ねぇ、わた、し、また…ひとりでいくの…?僧侶ちゃん…?」ぽ

ろぽろ

僧侶「…ごめんなさい」

女勇者「まほうつかいちゃん…も…?」

魔法使い「申し訳ございません…」

女勇者「…うぅ…うぐ…」

女勇者「うあぁぁあああん!!」ぽろぽろ

戦士「それでは…ここでお別れだ」

女勇者「皆…おねが…わたし…わたしを、おいていかないで…」

戦士「勇者殿」

女勇者「ひぐ……え、えぇん…」

戦士「仲間として最後にひとつだけ。勇者殿は間違っていない」

女勇者「…え…」

僧侶「そうですよぅ。勇者様の強さは、きっと世界を救うために必要」

僧侶「勇者様の強さは正義です。間違ってなんかいません…」

女勇者「強さ…正義…」

魔法使い「勇者様は、ご自分の信じる正義を貫いてください」

魔法使い「そして…勇者様の正義についていけない私たちをお許しください…」

戦士「…行こう」

女勇者「…行っちゃうの?本当に行っちゃうの…?」

戦士「…すまん」

僧侶「…ごめんなさい」

トテトテ

女勇者「……う…ぐ…」ぽろぽろ

魔法使い「……失礼します」

トテトテ

トテトテ

女勇者「…戦士くん…待って…」

戦士「勇者殿…勇者殿は自分の強さをしっかり持っていてくれればいい」

女勇者「…待って」

戦士「では、失礼する」

女勇者「待って」

ガチャ

バタン!!

女勇者「……」

女勇者「……いけない。泣いてちゃだめだね」ぐしぐし

女勇者「私は勇者なんだから。こんなところでメソメソしてちゃダメなんだ」

すっ

女勇者「強くなろう」

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