【宿屋】
女勇者「はー、今日はいい日だったなぁ」ニコニコ
魔法使い「うふふ。戦士さん、優しいんですね」
僧侶「勇者様もよく似合ってますよ。戦士さん、あんなに喜んでくれるとうれしいですね」
戦士「まったくだ。勇者殿、本当によく似合っている」
女勇者「本当?かわいい?」
僧侶「とってもかわいいですよ。きっとモテモテでしょうねぇ」
女勇者「…えへへ、そうだったらいいなぁ。普通の街娘に生まれてたらねぇ」
戦士「…」
戦士「勇者殿。はやく戦いを終わらせよう」
女勇者「…」
戦士「きっと戦いが終われば…世界が平和になれば、勇者殿も普通の生活が出来るようになる」
戦士「戦いのない、平和な世界のために…今は頑張ろう」
女勇者「うん。そうだね。いつか…いつか、平和な世界を見てみたいな」
戦士「?」
女勇者「もし、もしもだよ?世界が平和になったとき、私がその世界にいなくても…」
女勇者「皆、その世界をしっかりよろしくね?」
僧侶「勇者様、それって…途中で死んじゃったりしたらってことですか?」
僧侶「嫌ですよぅ、そんなの嫌…絶対、みんなで世界を平和にしましょうね?」
女勇者「僧侶ちゃん…。うん、そうだね。今はとにかく頑張ろう!」ニコ
魔法使い「勇者様」
女勇者「なぁに?魔法使いちゃん」
魔法使い「勇者様はなにか抱え込まれているようですね。私たちにはどうする事もできない何か」
女勇者「え?そう見える?」
魔法使い「はい、なんとなくですが…。無理にとは言いません。それでももし、一人で抱え込むのが辛くなったら」
魔法使い「そのときは、ぜひ私たちに打ち明けてください。私たちは、仲間ですから」ニコ
女勇者「…魔法使いちゃん。ありがとう」
魔法使い「いえ。まぁ、なんとなくなんですけどね」くす
女勇者「ふふ、そっかぁ。ま、今日は寝ようか!」
戦士「そうだな。明日も早い。今日はゆっくり休もう」
僧侶「おやすみなさぁい」
女勇者「うん!おやすみー」ニコ
~♪
女勇者「ふあぁ…よく寝たー!ん?」
僧侶「すぴー…すぴー…」
女勇者「な、なんで僧侶ちゃんが私のベッドに…?」
僧侶「すぴー…すぴー…」
女勇者(それにしても可愛い寝顔だなぁ…)
女勇者(こうして見ると、ほんとにただの女の子みたい…)なでなで
僧侶「すー…う、ぅ…?」
女勇者「あ、起きちゃった」
女勇者「おはよー、僧侶ちゃん!」ニコ
僧侶「ふぇ?あ、おはようございますぅ…」ごしごし
女勇者「ふふ、まだ眠そうだね。で、どうして私のベッドにいるの?」
僧侶「え…?え?」
女勇者「まさか、寝ぼけて?」
僧侶「え?えぇ!?すすす、すみませぇんっ!」がばっ
女勇者「いいんだけどねー。どうしたの?怖い夢でも見た?」
僧侶「え…と、そういえば見た気がします…で、誰かのベッドに一緒に入らせてもらって…」
女勇者「あはは、もう!朝っぱらから僧侶ちゃんだねぇ。戦士くんのベッドだったらどうするのー?」
僧侶「あぅ…すみません」
魔法使い「おはようございます」
戦士「もう起きていたのか。おはよう」
女勇者「おはよー!二人ともはやいねー」
魔法使い「はい、私は朝は早いので…」
戦士「俺は早朝稽古があるのでな」
女勇者「うんうん、頼もしいね!今日は出発したらさくさく進めちゃおうね」
戦士「そうだな。一刻も早く魔王を倒そう」
女勇者「うん!」
【数日後・中盤】
戦士「もうずいぶん遠くにきたな…」
女勇者「そうだね。皆見違えるくらい強くなったよ!」
僧侶「次の街はどんな所なんでしょうねー?」
女勇者「ああ…そうか、次の街は…」
魔法使い「?勇者様、どうなさいました?」
女勇者「え?うん、ちょっとねー」
【新しい町】
僧侶「わぁ。綺麗な町ですねぇ!」
魔法使い「本当。でも…町人達がなんだか暗いような…」
戦士「勇者殿。そういえば、ここは確か『いけにえの町』と呼ばれる所では?」
女勇者「うん、そうだよー。そんな呼ばれ方もしてるみたいだね」
戦士「しかしいけにえとは…一体なぜ?」
魔法使い「宗教の関係でしょうか?とりあえず町長さんに話を聞きに行きましょう」
僧侶「そうですね!」
女勇者「うん、そうしよー!戦士くん、先頭よろしくね」
【町長の家】
町長「おお、ではあなた方が勇者様ご一行ですか…」
女勇者「そうです!」
魔法使い「あの、町長さん。失礼ですがここは『いけにえの町』なんて呼ばれているそうですね」
女勇者「…」
魔法使い「なにか儀式があるのですか?」
町長「……わしらの問題です。余計な事はせんで下さい」
僧侶「え?」
がちゃ
バタン
戦士「なにか、重大な事のようだな…」
魔法使い「困っている事は間違いなさそうなんですけど」
僧侶「あれ?誰か私達の所に走って来ましたよ」
タッタッタ…
町人「失礼します…あなた様が勇者様ですか」
女勇者「はい、そうですよー!どうしました?」
町人「実は…ご存知かも知れませんが、この町はいけにえの町と呼ばれています」
僧侶「らしいですね。…どうしてなんですか?」
町人「…魔物に…差し出されるのです。毎年、齢16を迎える娘を一人差し出さなければ、町を襲われると」
戦士「なんだと…」
町人「そして…今年いけにえにされるのが、私の娘なんです」
僧侶「そんなの、許せません!」
町人「この町は今までそうしてもってきました。今年もそうして町は無事に済むでしょう」
町人「…しかし、私には我慢できないのです。私一人のわがままで町を危険に晒すわけにはいかないのですが」
町人「…なんとか、助けていただけないでしょうか?私の…ただ一人の家族なのです」
戦士「もちろん。引き受けましょう」
僧侶「はいっ。こんなの黙って見過ごせません!ね、勇者様?」
女勇者「…うん!」
女勇者「…」
僧侶「魔物を倒せば、いけにえもなくなるんですよね?その魔物というのはどこに居るんですか?」
町人「南の洞窟に居ます。そして…いけにえにされるのは、明日なのです」
戦士「時間の猶予はない訳だな。勇者殿、疲れているだろうがすぐに出発しよう」
女勇者「そうだね!皆、大丈夫?」
僧侶「もちろんですぅ!魔法使いさん、大丈夫ですよね?」ぐっ
魔法使い「はい。すぐに行きましょう」
町人「ありがとう…ございます……」
女勇者「お父さん」
町人「はい」
女勇者「あなたのした事は間違ってないよ」
【いけにえの町】
町長「……」
町人A「捕らえました!」
町人B「来いこの野郎!なんて事をしてくれたんだ!!」
いけにえの父「…すみません」
町人A「お前一人のわがままで!俺達の家族まで危険な目にあってるんだぞ!!」
町長「…なんという事を…」
いけにえの父「…申し訳ありません!しかし、勇者様達ならばきっと…!」
町長「仮に南の魔物を倒せたとしても、それで終わると思うのかね…」
いけにえの父「…」
町長「……処刑しなさい」
町人A「おら、来い!この疫病神!」
いけにえの父「私のした事は…間違っていない…」
【南の洞窟】
女勇者「来ちゃったね」
戦士「この扉の前に並べてある人骨は…」
魔法使い「今までのいけにえでしょうか…」
僧侶「…」ぐす
魔法使い「僧侶さん、泣いてもしかたないです。今は魔物を倒す事に専念しましょう?ね?」
僧侶「…この子たち、16歳だったんですよぅ…?怖かったでしょ…?」ぽろぽろ
僧侶「せめて…この子たちのために祈らせてくれませんか?」
僧侶「お願いします…勇者様…!」
女勇者「うん…。祈ってあげて。僧侶ちゃんは優しいね」ニコ
僧侶「…お待たせしました。行きましょう」すっ
女勇者「うん。戦士くん、行こっ!」
戦士「うむ。この忌まわしい因果を断ち切ろう」
魔法使い「行きましょう、勇者様」
ガチャ…
きぃ…
魔物「いけにえか?」
僧侶「違います。あなたを倒しに来ました…!」きっ
魔物「ほう、では勇者か。そのくだらん正義感のために町がひとつ滅ぶ…実に愉快だな」
僧侶「私達があなたを倒します…!そうすればあの町も!」
魔物「浅はかな…こんな愚かな者に未来を委ねざるを得ない人間も不憫だな」
魔物「良いだろう、かかってこい!」
魔物「ふはは、その程度か!よくもそれで挑んできたものだ!」
バキィッ
僧侶「あぅッ…!!」
戦士「僧侶!!」
僧侶「もう…もうMPが……」
魔物「弱すぎる。よくここまで来れたな」
魔物「勇者が最後列で怯えているだけのパーティーに、俺が倒せる訳がない!」
魔物「もう諦めろ。お前達を殺した後、逆らったあの町も皆殺しにしてやる」
女勇者「……」
女勇者「みんな、ごめん…。睡眠魔法(最大)」
ぱぁっ…
戦士「くっ……」トロン
魔法使い「…」
僧侶「……」くた…
魔物「くく、諦めたか?仲間を眠らせるとは」
女勇者「…お願い。あの町を許してあげて」
魔物「ふははは!命乞いか、勇者!心配するな、死ぬお前には関係のない事だ!」
女勇者「…」
魔物「ふん、失望で声も出ないか。つまらん。自分の無力を嘆いて死ね!」
魔物「ぐぉぉおお!!」バキィッ
女勇者は1のダメージを受けた
魔物「か、顔で平然と受け止めた…?」
女勇者「…お願い。あの町を見逃してあげて」
魔物「なんだと!?俺の全力の攻撃が…?当たらない?当たってるのか?」
バキィッ バキッ バキィッ
1のダメージ ミス ミス
女勇者「許してあげるから」
魔物「バカな!?こんな小娘が…」
女勇者「今までの事は許してあげるから」
魔物「愚かな奴だ、お前がこうしてちっぽけな正義感など携えて乗り込んでくるからこんな事になった」
魔物「いつも通りにいけにえの小娘を一人差し出すだけで、あの町の人間が生きながらえたのに」
魔物「お前が殺したんだ、あの町の人間を!くははははは!!」
女勇者「…そうかもね」ニコ
魔物「な…」
女勇者「少ない人間が犠牲になって、より多くの人間が助かるなら…それも正義なのかなぁ?」
女勇者「わかんないよ、私には。10回目になってもまだわかんない」
女勇者「えへへ、私…バカだからなぁ」
女勇者「じゃあどうすればよかったかな?いけにえの子を見殺しにすればよかったの?」
魔物「ふん、気でも違えたか」
女勇者「わかんない。でも、どうせあの町は滅ぶなら」
女勇者「とりあえずお前は倒すよ」ニコ
魔物「笑わせるな。ドレスなど纏った小娘に
ぐしゃ!!!
魔法使い「…う…?私、また…眠らされてたの…?」
女勇者「!」くるっ
魔法使い「ひっ!?」ビクッ
女勇者「あ…魔法使いちゃん、起きた?大丈夫?」ニコ
魔法使い「あ、ゆ…勇者様…?敵は…?」
女勇者「倒したよ。えへへ、危なかったけど、なんとか…」
魔法使い「敵はどこに…?」