戦士「勇者殿」
女勇者「うん?」
戦士「無理はするなよ」
女勇者「うん!ありがとう。心配かけないように頑張るよ!」
僧侶「絶対誰も欠けることなく、平和を取り戻しましょうね!」
女勇者「…誰も欠ける事無く、か。そうだね」
戦士「…勇者殿?」
女勇者「戦士くん、いつか私が宿屋でした話、覚えてるかな?」
戦士「…すまない、なんだろう」
女勇者「私が平和な世界を見られなくても、その世界をよろしくねって」
戦士「ああ……」
女勇者「もし、私がいなくても……みんながいれば大丈夫だよね。きっと、ずっと平和は続くんだろうな」
戦士「弱気になるな。誰も欠けることなく、平和をとり戻そうではないか」
僧侶「そうですよ、勇者様!みんなで魔王を倒しましょうよぅ」
魔法使い「そうです。ここまで苦楽をともにしてきた仲間なんですから。皆で喜びを分かち合えるよう、頑張りましょう」
女勇者「えへへ……本当、いい仲間に恵まれたなぁ」
トテトテ
女勇者「平和な世界って、どんなだろうね?」
戦士「それは素晴らしいものだろう。争いもなければ、理不尽に傷つくものもいない」
僧侶「そうですねぇ…。きっと、世界中皆がやさしい気持ちになれるんじゃないでしょうか」
魔法使い「今までの色んな犠牲の上に立っての平和ですものね。きっとそれ以上に素晴らしい世界になりますよ」
女勇者「そうだよね。きっと、良い世界なんだろうなぁ」
女勇者「いつかの生け贄の時みたいに、誰も傷つかなくてすむような世界」
女勇者「……私も、見てみたいよ」
戦士「そうだろう。ならば、今は生き残れるように戦うしかない」
魔法使い「ええ。私たちが勇者様を必ずお守りしますからね。頑張りましょう」ニコ
女勇者「……ありがとう」
女勇者「ああ、なんだか皆に会うために今まで旅を続けてきたような気さえするよ」
女勇者「皆……私についてきてくれて、ありがとね」ニコ
戦士「勇者殿。なにか不安なことがあるのか?」
女勇者「えへへ……。ちょっと恥ずかしいけどね。皆と別れるのが怖いの」
僧侶「勇者様……」
女勇者「こんな事言うと怒られちゃうかもしれないけどね。私……」
戦士「……?」
女勇者「この戦いが終わったあと、皆と一緒に居られる気がしないんだ」
魔法使い「そんな、どうして……」
女勇者「わかっちゃうの。私には、わかっちゃうの……」
女勇者「勇者なのにこんな事言ってごめんね?ちょっとだけ、弱音吐いていい?」
戦士「構わんよ。俺たちの前でなら、いくらでも弱さを見せてくれていい」
僧侶「私、勇者様に言った事あるでしょう?弱い勇者様も見せてくださいねって」
魔法使い「勇者様…私たちのことを信頼してくださるならば、どうぞいくらでも…」
魔法使い「私たちはそれを受け入れられるくらいには、強くなったはずですよ」ニコ
女勇者「皆…!!」ぽろぽろ
女勇者「私…戦いが終わってほしくないよ…」
女勇者「世界が平和になって、皆と離れ離れになるくらいなら…」
女勇者「…う…うぐ…こんな事言ってごめんね?勇者なのに…」ぽろぽろ
女勇者「でも、私……それなら、平和なんていらないから…皆、私を置いていかないで…!!」ぽろぽろ
戦士「……勇者殿。俺たちは勇者殿を置いていったりしない。絶対にだ」
僧侶「そうですよぅ。私たちは勇者様に命を預けてここまでついてきたんですから!」
魔法使い「私たちの絆は、何があっても切れたりはしませんよ」
魔法使い「たとえ死んでも、相手が神様だろうと、私たちの絆を断ち切れはしません」
戦士「うむ。だから、安心するといい」
女勇者「……うぇええん……」ぽろぽろ
僧侶「だから、ほら。勇者さま。もう泣かないで?」
なでなで
女勇者「僧侶ちゃん……!!」
女勇者「…ふぅ。ごめんね、取り乱しちゃって。恥ずかしいなぁ」
僧侶「ふふ、良いんですよ。私だってしょっちゅう泣いちゃってますから」
女勇者「…勇者なのにね。私がこんな事言っちゃだめって、わかってるのに」
魔法使い「それでいいと思いますよ」
戦士「勇者殿は、勇者である前に一人の女の子だ。俺たちにまで弱さを隠す必要はない」
女勇者「そうだね。私、女の子だったんだ…」
戦士「なんだ、忘れていたのか?」
魔法使い「こんなに美しいお顔をしていらっしゃるのに。他の女性が聞くと怒りますよ」
僧侶「ふふ、ほんとですよぅ。女の私から見たって綺麗なのに」
女勇者「…あはは、褒めすぎだよ。でも、ありがとう」
女勇者「ふぅ、なんだかすっきりしちゃったな」
魔法使い「そういうものかもしれませんよ。弱さを見せるのもまた強さですから」
女勇者「そうだね。皆の前だからこそ思いっきり泣いちゃったんだと思う」
女勇者「でも、大丈夫。やるべきことは見失わないからね!」ニコ
女勇者「魔王を倒そう。そして、世界に平和を取り戻さなくっちゃ!」ぐっ
僧侶(…あぁ、本当に強い人。この人についてきてよかったなぁ…)
戦士「む…!」
魔法使い「あ…。どうやら敵のようですね」
僧侶「そうみたいですね。敵は一人ですかぁ…」
女勇者「ああ、そうだったね、確か。あれは……」
コツ…
コツ…
コツ…
魔物「お久しぶりですね」
戦士「な!?」
僧侶「あ…あなたは……!」
魔法使い「どうしてここに…!?」
女勇者「……」
コツ…
魔物「覚えていただけたんですね。私は忘れもしなかった」
魔物「あなたたちに復讐するこの日を、夢にまで見ましたよ」
魔物「父を殺され、町を滅ぼされた恨みを、今ここで晴らしましょう」
魔物「私の町を滅ぼし、今もまだのうのうと世界平和を謳い続けるあなたたちを」
魔物「世界中の人々が許しても…あなたたちを自分を許しても」
魔物「私が、許させはしません」
コツ…コツ…
僧侶「あなたは…生け贄の町の……!!」
僧侶「戦えません……私には無理です……」
魔物「貴方たちが去ってから数日、私たちの町は魔物に襲撃を受けました」
魔物「男は嬲り殺され、女はさらわれ、見るに耐えない光景でした…」
魔物「私もあなたたちを呪いながら、死を覚悟した時…」
魔物「私にとって神にも見えるお方から、チャンスをいただいたのです」
魔物「この惨事を招いた元凶に復讐するチャンスを、いただいたのです」
ざっ
魔物「覚悟してください」
戦士「くっ…!!戦うしかないのか…!?」
魔法使い「そんな…!!勇者様!!」
女勇者「……」ぎり
女勇者「みんな、先に行ってくれる?」
戦士「なんだと!?」
僧侶「そんな…!!できません!!」
魔法使い「勇者様はほとんど戦闘に慣れていらっしゃらないのに…!!戦うなら私たちが!」
女勇者「いいの。戦士くん、酒場で言ってくれたよね、私の正義を見つけなさいって」
戦士「しかし!!」
女勇者「これが私の正義だと思う。だから、私についてきてくれるんでしょ?」
戦士「……」
女勇者「ここまで信じてついてきてくれたんだから。私を信じて!ね?」
戦士「よし。信じよう。最後まで勇者殿の正義についていく」
魔法使い「戦士さん!!」
戦士「我々が命と見立ててついてきた人の決断だ。信じよう」
僧侶「…わかりました!」
戦士「ただし、勇者殿。絶対に追いついて来てくれ。俺たちは先に行くだけだ」
女勇者「うん、必ず!ありがとう戦士くん!」
たったった…
魔物「ふふ、いいのですか?お一人で」
女勇者「良いの。これは償いでもあるからね」
魔物「説得しようというおつもりでしょうか?無駄ですよ」
女勇者「うん、知ってるよ。君は死ぬまで私に襲い掛かってくるもんね」
魔物「…そのつもりです。あのお三方をみすみす行かせたのもそう。あなたを倒すため」
女勇者「そうか。えへへ…一人で残るのは初めての試みだなぁ。…どうなるんだろう?」
魔物「何を仰っているのかわかりませんが、私の目的はひとつ」
魔物「あなたを殺します」
女勇者「…よし、来い!」きっ
魔物「ぐぅおおおおおおおおお!!!!!」
ズシャアッ!!
女勇者に1のダメージ!
魔物「……!?」
女勇者「守備力低下魔法(最大)」
ひゅううん……
魔物「じ、自分の守備力を下げた…!?」
女勇者「守備力低下魔法(最大)、守備力低下魔法(最大)、守備力低下魔法(最大)!」
魔物「何を考えていらっしゃるのです?気でも違えましたか?」
女勇者「痛みを伴わない償いなんてないでしょ?」
女勇者「これでいいんだよ。大丈夫、私は死なないから」
魔物「…馬鹿にするのもいい加減に…してください!!」
魔物「グゥオオオオオオオ!!!!!」
ザシュッ!ドカッ!!!
女勇者に20のダメージ!
女勇者「守備力低下魔法(最大)」
女勇者に68のダメージ!
女勇者「痛い……えへへ、こんなの久しぶりだな」
グサァ!!
痛恨の一撃!女勇者に291のダメージ!
女勇者「きゃう…!!!」
魔物「はぁ、はぁ…ぐがぁぁあああ!!!」
ザシュ!!
女勇者に103のダメージ!
女勇者「ぐ…あ……」
グサァ!!
痛恨の一撃!女勇者に320のダメージ!
魔物「どうして……どうして……」
グサァ!!
痛恨の一撃!女勇者に314のダメージ!
魔物「反撃しないんですか…!!!」
魔物「はぁ……はぁ……」
女勇者「…復讐は……?終わり……?」
魔物「ぐがぁぁ!!!」
ザシュ…!!
女勇者「あがぁ……」
魔物「う……う、ぅ……」
女勇者「………私、死ねないから…これくらいでしか償いはできないけど」
魔物「うぇ……え…」ぽろぽろ
女勇者「あなたが受けた苦しみを、少しでも私にが和らげることができるのなら…」
魔物「私がやっていることは…復讐は……結局、同じことなんですか…?」
魔物「そうやって、自己満足の正義を…もう見せびらかさないで…」ぽろぽろ
女勇者「……ご……め、なさ……」
魔物「もう……もう、終わりにしましょう。空しいだけです…」
女勇者「……もう一突きで…私は、死…ぬと思うよ…?」
魔物「そしてまた復讐を呼び、悲しむ人が増えるだけ……」
女勇者「……そ、…か」
魔物「パパも、そんな事望んでないよね…」
女勇者「……」
魔物「勇者様、お仲間の所へ。もう…終わりましょう。ごめんなさい…」ぽろぽろ
魔物「回復魔法(大)」
ぱぁぁぁ
女勇者のHPが500回復した
女勇者「…い、いの…?」
魔物「私も許されざる過ちを犯しました。もう…私も…」
魔物「この姿になったからには、もう人としては生きられません。私を…殺していってください」
女勇者「だめ…!その姿でも、きっと…!」
魔物「いいのです…。過ちは過ち。罪は償わないといけない。そうでしょう?」
女勇者「…生きて償おうよ」
魔物「あなた様は、魔王様を倒して平和な世界を手に入れるのでしょう?」
女勇者「…うん」
魔物「でしたら、元より私は魔王様が死ねば滅びる運命…」
女勇者「!!」
魔物「それならば、せめて…あなたの手で、眠りにつかせてほしいのです」
女勇者「……私は」
魔物「お願いです…。もう、父のもとへ…」
女勇者「……わかったよ」
魔物「…ありがとうございます」ニコ
魔物「…パパ。パパ」
女勇者「……」
魔物「パパ、ごめんね?みんなごめんね?」
女勇者「睡眠魔法(最大)…」
魔物「パパ、もうす……あえ…パ………」
魔物「ぱぱぁ……」
女勇者「……」
魔物を倒した。
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