女勇者「魔法使いちゃん、待って。見ない方が良いかも」
魔法使い「は…?」
魔法使い「…勇者様?」
女勇者「えへへ、さ…皆起こして早く出よう?」
魔法使い「…そうですね。戦士さん、僧侶さん。起きて下さい」ぺちぺち
戦士「…むん?」むく
僧侶「ふぇ?お母さん…?」パチ
女勇者「ふふ、皆起きた?さぁ、アイテムも手に入れたし、行こうか!」ニコ
戦士「敵が持っていたアイテムか。何かの鍵になりそうだな」
僧侶「そうですね。大事に保管しましょう」
魔法使い「では、いけにえの町に戻りましょうか!」
女勇者「…うん」
【いけにえの町】
女勇者「…着いたね」
戦士「さぁ、早速あの人に報告しに行こう。喜んでくれるだろう」
魔法使い「そうですね。娘さんも助かったんですし」
僧侶「勇者様?早く行きましょう?」
女勇者「私、行かなくっても良いかなあ?」
僧侶「ふぇ?」
女勇者「えと、ちょっと疲れちゃって……えへへ、ダメだよねやっぱり…」
戦士「疲れているのならばなおさらだ、早く宿に行こう」
女勇者「はぁい…」
・
・
・
戦士「処刑された!??」
町長「はい。いけにえの件をあなたがたに漏らしたばかりか、助けを求めた罰として」
戦士「バカな!?現にこうして魔物を倒して来たではないか!」
町長「それで解決とはいかないのです。あなたがたのせいでこの町は滅ぶでしょう」
僧侶「な、なぜですかぁ…?」
町長「南の魔物を倒したところで、我々は助かりませぬ…じきに次の更に強力な魔物が来るでしょう」
町長「そして今度は我々は、いけにえの儀式を放棄し、逆らった人間として扱われる」
町長「…女はさらわれ、男達は皆殺しになるでしょう」
戦士「な…」
町長「さぁ、出ていってくだされ。あなたがたを恨んでいる町人も少なくない」
戦士「く…こんなバカな事があるか!!」
女勇者「戦士くん、行こう…ね…?」
女勇者「町長さん、申し訳ありませんでした…」ぺこり
戦士「勇者殿…!!」
女勇者「よし行こう、みんな!次の町を目指さなきゃ!」
戦士「く…!!」
町長「…」
女勇者「行くよ、戦士くん!」ぐいっ
戦士「うぉ!?」どてっ
女勇者「あ…ご、ごめん…」
戦士「いや、良い…行こう」
ガチャ
バタン
少女「お待ち下さい!」
戦士「!」
魔法使い「あら、お嬢さん…どうしましたか?」
少女「あなたがたは、勇者様ご一行ですか?」
僧侶「はい…そうですよぅ」
少女「私は、明日いけにえになる予定だった者。今日処刑された男の娘です」
女勇者「…」
少女「私が死ねば、町は生きながらえ…父も死ぬ事はありませんでした」
戦士「…!」
少女「怖くなかったと言えば、嘘になります。でも私なりに…覚悟を決めておりました」
少女「町を、皆を守るために死ぬのだと。皆、私のために泣いてくれました…」
僧侶「う、うぅ……うぇぇえん……」ぽろぽろ
少女「…でも…私は、あなたがたを憎めません。あなたがたは父の遺志を聞いてくれたのですから」
僧侶「ごめんなさい…ごめんね…」ぽろぽろ
少女「でも、でも!私は…何を憎めば良いんですか…?」
女勇者「私を憎むと良いよ」ニコ
少女「え…勇者様…?」
女勇者「私のせいで皆を狂わせてしまったんだから」
少女「でも、勇者様は父の…」
女勇者「私はあなたを助けるとどうなるか知っていた。でもあなたを助けたの」
女勇者「あなたのお父さんを殺したのは、私なの」
少女「う…うぅ…うわぁあああん!!」ぽろぽろ
女勇者「さぁ、行こうみんな」すっ
僧侶「ゆ、勇者様っ!!でも!」
女勇者「えへへ、良いんだよー、もう慣れっこだから!行こ!」
少女「うわぁぁん!パパぁ!パパーー!!」
【次の街・宿屋】
女勇者「ふぅ。今日は疲れたねぇ」
戦士「うむ…」
魔法使い「…」
僧侶「えぐ……ひっく…」
女勇者「僧侶ちゃん、もう泣かないで。私まで悲しくなっちゃうよー」
僧侶「ゆ…しゃ、さまは…なんで平気なんですかぁ…!」
女勇者「…平気じゃないよ。でも、私は…」
僧侶「…うえぇん…」
女勇者「えへ…私は、勇者だからねー!」
戦士「!」
魔法使い「あ…」
僧侶「…!」
女勇者「私が泣いちゃったら、ダメでしょ?」ニコ
女勇者「あはは、ちょっとカッコつけすぎかな…?」
僧侶「……ごめんなさい」
女勇者「さってと!そろそろお風呂入って寝よう!寝ちゃえばきっと気持ちも晴れるよー」
僧侶「そうですね。しっかりしなくちゃ…」ぐい
魔法使い「勇者様、一緒に入りましょうか?お背中流しますよ」
女勇者「んー、私ちょっと汗かいてからにするよ。先に入っちゃって!」
魔法使い「そうですか?じゃあ…」
女勇者「うん!素振りでもしてくるよ。戦士くん、剣貸してくれる?」
戦士「ああ、構わんが…」
女勇者「じゃねー、行ってきます」ふりふり
ガチャ
バタン…
僧侶「勇者様、大丈夫でしょうか…?」
魔法使い「一人風呂を好むのはいつもの事ですけど…今日はなにか思い詰めていましたね」
戦士「いや、それよりも…」
僧侶「なんですか?」
戦士「勇者殿が、剣を握るのは初めてだな」
魔法使い「あ。そういえば、武器は持たれた事がありませんね」
僧侶「装備はいっつも皮のドレスだけですもんね…」
【街の外】
女勇者「えへへ、剣なんて久しぶりに握るなぁ…」
女勇者「戦士くんの覇者の剣借りて来ちゃった」
女勇者「よっと」
ブォォォォオン!!!
女勇者「おー…あはは、軽いなぁ。確か1周目は重くて振れなかったのになぁ」
女勇者「私も強くなったんだな。1周目の仲間達は元気にしてるかなー?」
女勇者「あ、柄に血が染み付いてる。ふふ、戦士君もがんばってるんだね」
女勇者「戦士くんは男前だし、優しいし…日に日にかっこよくなっていくなぁ」
女勇者「僧侶ちゃんは可愛すぎるし、ちゃんと回復魔法も(大)まで使えるし」
女勇者「魔法使いちゃんはいつもサポートしてくれるし、強力な全体魔法も使えるし」
女勇者「私だけが、成長しない…」
女勇者「えい、究極の一撃~」
ズバシャアアアア!!!
女勇者「全体回復魔法~(最大)」
ぱぁぁぁ…
女勇者「そらに向かって…極大破壊魔法~」
キュウウン…ズガァァァン!!
女勇者「あ…雲なくなっちゃった」
女勇者「強くなれば何か変わるかと思ってがむしゃらに強くなった事もあった」
女勇者「仲間に打ち明けた事もあった、一人で旅した事もあった…」
女勇者「魔物との共生共存を目指した事もあったのになぁ…」
女勇者「自爆魔法でも死ねない身体になっちゃったけど、心はまだまだ子供だなぁ」
女勇者「もうわかんないよ…何が正義なのかも見失いそう」
女勇者「あはは、今日の町は何回やってもダメだなぁ。毎回泣いちゃう」ぐい
女勇者「もう、やめちゃいたい…かも」
女勇者「いけないいけない、私は勇者なんだから」ぶんぶん
女勇者「心の回復魔法もあればいいのになー」
女勇者「素振りして気分転換しようかー!」
ブシャア!!ブシャア!!
僧侶「勇者様ぁ~」トテトテ
女勇者「!」ビクッ
女勇者「僧侶ちゃん?どうかしたー?」
僧侶「えっと…えへへ」
女勇者「?」
僧侶「あの、失礼かも知れませんけど…勇者様が悩んでるのを、私…ほっとけなくて」
女勇者「悩んでる…のかなぁ?えへへ、顔に出ちゃってたか」
僧侶「あの、私がなんとなく思ってただけで、そういう訳じゃ…」
女勇者「ううん、良いんだよ!ありがと僧侶ちゃん」ニコ
僧侶「ね、勇者様。もしよかったらお風呂、一緒に入りませんか?」
女勇者「え…」
僧侶「今まで一緒に入った事なかったし、ゆっくり勇者様とお話したかったから…」
女勇者「お、お風呂は…あのー…」
僧侶「ダメですか…?」
女勇者「う、わかった。……入ろうか」ニコ
僧侶「はい!じゃあさっそく行きましょう!」すっ
女勇者「あ、手は…」
ぎゅ
僧侶「!」
女勇者「……ごめんね、こんな手で」
僧侶「ちょっとびっくりしちゃいました…」
女勇者「やっぱり、気持ち悪いよね?ごめん、隠しとくつもりだったんだけど」
僧侶「勇者様、そんな事ありませんよぅ」ニコ
女勇者「え?」
僧侶「ちょっとボロボロだけど、優しい、女の子らしい手じゃないですか」
女勇者「…えへへ、ありがとう。そんなの言われた事ないよ」ニコ
【宿屋・風呂】
魔法使い「お帰りなさい、勇者様」
勇者「ただいま!」
魔法使い「失礼だったらすみません。待たせていただきました」
勇者「ううん、そんな事ないよ。ありがとう」
魔法使い「ふふ、じゃあ入りましょうか」
女勇者「…初めてだねー、一緒にお風呂入るの!」
僧侶「そうですね。なんだか緊張しちゃうなぁ」
魔法使い「僧侶さんはスタイル良いですから…私はお二人が羨ましいですよ」
女勇者「本当、僧侶ちゃんは反則だもんなぁ」くす
女勇者(覚悟を決めるしかないよね…)
する…する…
ぱさっ
僧侶「…!」
魔法使い「…」ごくり
僧侶(胸元から太ももにかけて、すごいおっきい傷痕が…)
魔法使い(右肩と腹部の皮膚が…あれは火傷の痕でしょうか…)
僧侶(体中に小さな切り傷がいっぱい…)
女勇者「えへへ、ごめん。気持ち悪い……?」
僧侶「傷くらいで、私の勇者様への尊敬は変わりません」
魔法使い「その傷に救われた人がたくさん居るんですね。決して恥じるものではありませんよ」ニコ
女勇者「……この傷に、救われた人達…か。これを見て、気持ち悪いと思わないの?」
魔法使い「ふふ。そんな事で揺らぐ程、私達がここまで勇者についてきた気持ちは弱くありません」
女勇者「魔法使いちゃん…」
魔法使い「はい、なんですか?」
女勇者「…泣かそうとしてるでしょ?」
魔法使い「ふふ、ちょっとだけ」ニコ
僧侶「泣くの我慢しないで下さいね、勇者様。たまには私達に、弱い勇者様を見せて下さい」
女勇者「…」ぽろ
女勇者「!」ぐいっ
女勇者「もう!さっさとお風呂入ろう!素振りしてたから汗臭いんだからー!」だっ
魔法使い「あ、勇者様…そんなに走ると滑って危ないですよ」
つるっ
女勇者「きゃっ!?」
ゴツン!!
僧侶「ひゃあ!勇者様、頭打っちゃいましたよ!?大丈夫ですかぁ!?」
女勇者「えへへ…大丈夫、大丈夫。恥ずかしいけどね…」ちろ
かぽーん…
女勇者「はぁ…生き返るねー」