女勇者「強くてニューゲームっ♪」 15/16

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ざっざっざ

【鉱山の町】

スタスタ

町人「……ひそひそ」

女勇者「?」

すたすた

町人「…あれが……」ひそひそ

女勇者「なんだろう?皆私を見てなにか言ってる…?」

すたすた

すたすた

ガチャ

女勇者「町長さん。今戻りましたよ」

町長「お、おお…。お早いお帰りですな。お体は大丈夫ですか」

女勇者「うん、なんともないよ」ニコ

女勇者「元凶も倒したし、毒も塞いできたからもう心配ないと思うよ」

町長「ありがとうございます…」

女勇者「町長さん。どうかした?町の皆も様子がおかしかったけど」

町長「…あなた様は、いったい何者なのですか?」

女勇者「へ?」

町長「毒を防ぐ装備もなしに平然と鉱山に入り、すぐさま魔物を倒して帰ってくる…」

町長「…こんな事を言うのは失礼なのですが…」

女勇者「…うん」

町長「町の者はみな、おびえております…」

女勇者「そっかぁ。うん…ごめんね、怖がらせちゃって」

町長「いえ、そんなことは…ただ、あなた様が」

女勇者「いいんだよー。えへへ、私は感謝されるために戦ってるんじゃないし」

町長「すみません…感謝はしております」

女勇者「ふふ、どーも!じゃあ私は先を急ぐよ」

町長「もう発たれるのですか?」

女勇者「うん。私がいたらみんなこわがるでしょう?」

町長「…それは……」

女勇者「じゃあ、また。元気でねー」

町長「……」

ざっざっざ

【数日後・終盤】

女勇者「いよいよ終盤だなぁ。もうすぐ終わりか…」

女勇者「あとは…あ、攻撃力だけか」

女勇者「レベルももうあがらないし、攻撃力さえ上がれば…」

女勇者「……なにか、変わるのかな?」

女勇者「皆、今頃どうしてるんだろう?」

女勇者「普通に暮らしてるのかな?」

女勇者「……私、強くなったかな…?」

【塔】

女勇者「あぁ、ここかぁ…」

女勇者「世界で一番高い塔、か。最強の剣があるんだよね」

女勇者「…別にいらないけど、一応行こうかな」

女勇者「攻撃力をあげるアイテムがあった気もするし」

ざっざっざ

女勇者「ここの魔物は強いなぁ…」

ズシャッ!

女勇者「もう倒しても意味ないから、放っておきたいけど」

ぐしゃ

女勇者「…襲ってくるから、倒すしかないよね」

ばしゅ!

女勇者「はぁ…どうしてこんなに多いんだろう。やっぱり最強の剣を取らせないため?」

魔物「キシャァァァ!!」

女勇者「もういいや。好きに攻撃すればいいよー」

女勇者「えへへ…どうせ当たっても痛くないしね」

どかっ

どかっ

ガブッ…!

女勇者「最上階か…」

ガブッ

女勇者「懐かしいなぁ、あの剣。1週目は私が装備させてもらったっけ」

女勇者「2週目からは戦士くんが装備して…」

女勇者「あれを持たないまま魔王を倒した事もあったな」

女勇者「1週目か…本当にいろいろあったな」

ボカッ!

女勇者「大怪我したり…勇者しか使えない魔法の事とか」

女勇者「えへへ…あの頃は私も弱くて…皆にいろいろ心配かけてたな」

女勇者「あの頃は、こんなことになるとは思いもしなかったのに」

女勇者「…感傷的になってもしょうがないか。早く剣を取ろう」

すっ

シャキン!

女勇者「……何回見てもきれいな剣だな」

女勇者「…今の私に、これを使う資格があるのかなぁ…?」

女勇者「……装備しても攻撃力変わらないし…」

女勇者「そうだ。うん。…そうしよう」

女勇者「…いつか、私と一緒に戦ってくれる仲間に出会えたら」

女勇者「そしたら、そのときは…その仲間にこの剣を使ってもらおう」

女勇者「…それまで、この剣は必要ないや」

女勇者「よし、戻ろう。種も手に入れたし…って、ここ最上階だっけ」

女勇者「うーん…。階段で降りるのも面倒だなぁ」

女勇者「いいや、飛び降りちゃおう。ちょっと痛いかも知れないけど…」

がぶっ!

魔物「ぐるるる…」

女勇者「そういうわけだから、魔物さん達、離してくれる?」

魔物「ぐぎゃー!!」

女勇者「もう…しょうがないなぁ。できれば倒したくないのに」

ぐしゃぁ!!

魔物の群れを倒した!

女勇者「よっと」ぴょん

女勇者「最後の町か…別に補給もしなくて良いし、立ち寄らなくてもいいかな」

女勇者「皆が居たら立ち寄って休憩もしたんだろうけど…」

女勇者「…私だけなら必要ないよね」

トテトテ

トテトテ

【魔王の城】

女勇者「懐かしいなぁ。この綺麗なお城も」

女勇者「…長い通路…整った造り…」

女勇者「…これの目的を教えてくれたのは、最初の戦士くんだったっけ」

女勇者「そうだ、もうすぐ…あの子が私を襲いに来るんだった」

ツカ…ツカ…

魔物「お久しぶりですね」

女勇者「うん、久しぶり」

魔物「あなたに復讐するこの日を、夢にまで見ましたよ」

魔物「父を殺され、町を滅ぼされた恨みを、今ここで晴らしましょう」

魔物「私の町を滅ぼし、今もまだのうのうと世界平和を謳い続けるあなたを」

魔物「世界中の人々が許しても…あなたが自分を許しても」

魔物「私が、許させはしません」

コツ…コツ…

女勇者「…戦うの?」

魔物「もちろんです。貴女を倒すために、私はこの姿になったのですから」

魔物「さぁ、はじめましょう」

女勇者「そうだね…」

女勇者の攻撃!

ズバァァァン!!!!

魔物「…………」

どさっ

魔物「 」

魔物を倒した。

経験値10032を獲得。

女勇者「……これが正義か…」

トテトテ

トテトテ

女勇者「もう終わらせよう…早く魔王を倒そう…」

魔王の側近「おや、お一人ですか」

女勇者「…うん。道を空けてくれる?」

魔王の側近「くっくっく。そういうわけにはいきません…」

魔王の側近「いやはや、まさか一人で来られるとは。旅立つときはお仲間も一緒だったのでは?」

女勇者「うん、まぁねー。見捨てられちゃった」

魔王の側近「ふふ、なんと非情な。絆とやらが貴女達人間の武器だったはず」

魔王の側近「貴女のお仲間は正義を捨ててしまわれましたか」

女勇者「違う!」

女勇者「…皆は、私について来れないから…」

魔王の側近「貴女をお見捨てになったと?ふふ、聞こえはいいですが、所詮逃げたのでしょう」

女勇者「……もう、黙って」

魔王の側近「くっくっく。貴女も哀れな。救ってやる人間から疎まれ、恐れられ…」

女勇者「…いいんだよ。それでも私は戦うから」

魔王の側近「ほう。何のために?」

女勇者「強くなって、あなた達を倒すために…!」ぎり

魔王の側近「強さが正義だというのですか?」

女勇者「そうだよ。悪い?」

魔王の側近「まさか。正論ですよ、あなたの仰ることは」

女勇者「…」

魔王の側近「あなたのしていることはなにひとつ間違ってはいない」

女勇者「そうだよね。これが…私の正義だよ」

魔王の側近「力で弱者をねじ伏せる…勝ったほうが正義なのですから」

女勇者「…君を倒すよ」

魔王の側近「くっくっく。それも良いでしょう。それが貴女の正義なら」

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