エピローグ
―――酒場
技師「マスター、とりあえず三人分飲み物頼むよ」
マスター「いつものでよろしいですか?」
副官「ああ、私は構わない」
薬師「食べ物は後で頼みますね」
マスター「かしこまりました」
技師「もうあのドタバタの日から一年か・・・・・・」
薬師「なんだか、いろんな事があっと言う間に過ぎていきますね・・・・・・」
副官「それだけ、国民の心が強かったという事なのだろうな」
技師「お城勤めはどうっすか? 正式な司令の秘書官になったんですよね」
副官「元々あの方は一人で何でもこなされてしまうからな。 仕事を取られないように立ち回る毎日さ」
技師「まぁ、司令がって言うより、上の人たちみんな有能すぎるんだよな。 王様はもちろん、姫様だってそうだし」
副官「ああ、そういえば・・・・・・」
副官「司令と姫様の元に手紙が届くようなんだ。 一月に一、二通ほど」
技師「手紙っすか?」
副官「随分と親しい人からのようでね。 最近の姫様は笑顔が増えたし、司令もどこか穏やかな調子なんだ」
技師「へぇ~。 一体誰からの手紙なんすか?」
副官「詳しくは教えていただけないんだが、ただ、友人とだけしか・・・・・・」
技師「友人、ね~」
副官「どうやら、その友人が城に来訪する日取りが決まったようでね。 私も、今からどんな方なのか興味が尽きないよ」
技師「なんかおもしろそうっすね。 俺もどんな人なのか見てみたいな」
副官「ああ、長く滞在するみたいだから、この店にも足を運んでもらえるかもしれないぞ。 それと、司令から技師と薬師の空いてる日取りを聞いておいてくれとも言われたな」
薬師「空いてる日取り、ですか・・・・・・?」
技師「どうしてまた?」
副官「私も詳しくは聞いていないんだ」
薬師「別にかまいませんよ。 というより、私の場合は自由業ですから、いつでも空いてるみたいなものです」
技師「俺もスケジュールを確認したら伝えますよ」
副官「ありがとう」
副官「しかし、薬師は自由業とは言っても、最近は忙しいんじゃないか?」
薬師「え、どうしてですか?」
副官「城内に足を運ぶ回数も増えいるようだし、加えて、薬師の評価が凄く上がっていると聞いたが・・・・・・」
薬師「えぇ!? そ、そんなことないと、思いますけど・・・・・・」
技師「そんなことあるだろ。 しょっちゅう城からお呼びが掛かってるじゃねえか」
薬師「それは、まぁ・・・・・・」
副官「治癒魔法を研究している部署や医療部から随分と声が掛かっているのだろう?」
薬師「は、はい。 私の薬学の知識を、色々な分野に役立てて頂けるとの事で・・・・・・有難いことです」
薬師「私もお城の書庫を閲覧する許可を頂けたので、勉強させてもらってますし、とてもお世話になってます」
技師「勉強ね~。 俺もまた遠出してインスピレーション刺激してこようかな~」
副官「技師には魔法投射装置を量産してほしいんだがな・・・・・・」
技師「いやいや、あれはもう作る気はありませんよ。 あの兵器はちょっと強力すぎる。 俺の身には余るものでした。 というより、人の身には余る代物っす」
三人のいるテーブルに、店の入口からそよ風が流れ込んだ。
技師「それに、俺達にはそんなモノ、もう必要ないっすよ」
副官「・・・・・・そうだな。 技師の言う通りだ」
薬師「ええ、そうですよ」
マスター「技師さん、次は何にしますか?」
技師「あ~っと、そうだな・・・・・・。 俺はあいつが来てからにするよ。 もうそろそろのはずだし」
薬師「兄さん相変わらずお酒弱いものね~」
技師「毎日毎日仕事漬けだと回るのも早いんだよっ」
薬師「サボってる日だってあんまり変わらないじゃない」
技師「マスター、あいつも直ぐに酔っぱらうように、強めの酒を使ってくれ」
今日も晴天の青空に白銀の竜が舞う。 まるで、王国を守護するかのように風に乗り、大空を飛び続ける。
薬師「もう、結局最後は私が面倒見るんですからね」
優しい風は平和を取り戻した町を、幸せな人々の笑顔の間を吹き抜ける。
マスター「そこだけは、いつまでたっても変わらない光景ですね」
時に強く意思を示し、時に優しく背中を押してくれる目に見えない力は、いつまでも王国を、人々を守り続ける。
技師「ほら、噂をすれば、なんとやらだ」
白銀の竜を使役する騎士。
マスター「いらっしゃいませ」
銀騎士の称号を持つ英雄がいる限り。
FIN