少女「魔王さんなら、ママを生き返せるのかな…」 13/17

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妖精「!」ツンツン

侍女「これは……この研究室の乗った移動地形ですね」

妖精「ーっ! ーっ!」パタパタパタッ

魔女「この移動地形の進路か?」

妖精「ッ!」ズビシッ

少女「わたし?」

妖精「!」コクコク

魔女「どう言う暗号だこりゃ」

術師「……難解」

室長「ちょっと我々にはわからないね」

特使「うむ……」

侍女「どうでしょうか?」

少女「……やってみましょう。

室長さん、この移動地形のより詳細な地図と、

地脈の流れや魔力的な性質をまとめた書類などがあったら見せてもらえますか?」

室長「なにやら勝算があるようだね」

魔女「よくわからんが、えらいことをやらかしそうな気配がするぞ」

術師「……わくわく」

少女「……」ペラ…ペラ…

侍女「……」

特使「工作隊が結界突破の準備を始め出しだぞ」

室長「まだ目標の座標に到達するまでしばらく時間が掛かる。

このままでは間に合わないな」

少女「……大丈夫です。

必ず間に合わせて見せますので、術式起動の用意をしてください」バサッ

特使「……わかった。

室長、行きましょう」

室長「あぁ、任せたぞ」

……バタン。

魔女「で、どーするつもりだ?

例の透明化で魔力すっからかんなんだろ?」

少女「いえ、術式演算能力の回復にはまだ少し時間がいりますが、

単純な魔力ならまだまだ残ってます。

今回必要なのは、この魔力だけですから」

術師「魔王の後継者……本領発揮」

魔女「底無しの化け物だな」

少女「では、少し行ってきますね」

侍女「わたくしもお供いたします」

妖精「!」フリフリ

ザッ、

少女「この地点ですね」

侍女「間違いございません」

少女「では、中のことは彼らに任せましょう。

……行きます」パリッ……

侍女「いつでもどうぞ」パキッ……

――――ドゴォォォォォオオオオオオッ!!

魔女「うおぉっ!」グラッ

術師「地震……?」グラグラ

魔女「あいつら外で何やってんだ?!」

術師「とんでもない魔力……津波のような魔力の流れ……を感じる」

妖精「!」パタパタ

特使「室長、地形の移動速度が……!」

室長「うむ。術式起動用意ッ!」

ゴゴゴゴゴ……

特使「全員無事か?」

術師「……なんとか」

魔女「いってぇー……頭打ったぞ畜生」

室長「転移はなんとか成功した。

強力な魔力爆発の余波で、目標からは少しだけずれてしまったがな」

特使「まさか地脈に魔力を流し込んで、強引に移動速度を上げるとは……」

室長「一個体の持つ魔力量の常識を鼻で笑うような凄まじい力業だ」

魔女「やっぱり無茶苦茶やりやがって……」

術師「さすが……コレの弟子……」

特使「それで、その魔王代理はどこに?」

侍女「ここです」

少女「……すぅ……すぅ……」

魔女「のんきな奴だなぁオイ。戦争中だぞー」

術師「魔力を全力で放出し切った……から、無意識の……安全装置が発動した」

室長「ともあれ、ここまで来ればまだしばらく妖精界の連中も手を出せまい。

寝かせてあげよう」

特使「研究室の寝室を貸そう。こっちだ」

侍女「ありがとうございます」ペコリ

少女「……すぅ……んん……すぅ……すぅ……」

皇帝「さて、これからどうしたものか……」

侍女「四帝国同盟に、反王妃側の妖精族を加えれば、かなりの抑止力になるかと」

室長「暫定的にでも人間界に領土を認めてもらえればありがたいねぇ」

魔女「まぁこんだけ差し迫った状況があれば大概なんとかなるだろ」

侍女「冥王にも支援を要請してみましょう」

術師「それで向こう……と互角以上の交渉ができる」

特使「よし、ならばできるだけ早く体勢を立て直して――――」

……ゴゴゴゴゴ……

魔女「……なにやら不吉な予感がするんだが」

侍女「これは……強大な魔力の急速な接近を感じます」

室長「まさかこちらが体勢を整える前に、一発ぶち込んじまおうって腹か?」

特使「……間違いない、戦略魔導砲だ!

距離500!」

魔女「てめぇーコラッ、しばらくは大丈夫だっつっただろオイ!」

室長「いやはや……弱ったね。

どうやらいよいよ王妃の逆鱗に触れたようだ」

術師「結界は間に合わない……絶体絶命」

魔女「たッはー、なんてこったい!」

特使「距離150! これはもう……ッ」

魔女「こうなったら僕だけでも門で逃げる!」

術師「ずるい……連れてって」ガシッ

魔女「離せこのバカッ! お前は地獄行きたがってただろうがッ!」グイッグイッ

術師「やーだー……」グググッ

魔女「えぇい、ひっつくな気持ち悪い!

人間諦めが肝心なんだよッ!」

特使「距離50……室長」

室長「あぁ……どうやらここまでのようだな」

皇帝「これで終わりか……」

妖精「……」

侍女「魔王様……」

少女「……魔王……さん……」

「寝る子は育つってなぁ。

っつーかもう私よりかなり強くなってんじゃね?」ナデナデ

少女「……ん……」

ヒュゥゥゥ……ゥゥゥウウウウッ

ズドンッ!!

魔女「今度はなんだ!?」

術師「……あれは、水晶……?」

特使「な、なんと巨大な……」

室長「空から降って来たぞ!」

侍女「……炎獄の水晶!

あれならどんな巨大な魔力でも吸収できます!」

魔女「炎獄だぁッ?

っつーことは――――」

――――カッ!!

――――この後、人間界四帝国と妖精界共存派、更には冥界を加えた、

魔導史上初の異世界間大同盟が結ばれた。

妖精界純潔派は程なく降伏し、王権そのものは共存派の皇帝が握ることとなった。

皇帝はすぐさま魔王城のすぐそばに共存派、人工妖精、ホムンクルスなどが暮らす都市を建設し、

それぞれの立場や今後について対話して行く姿勢を示した。

また、四帝国の数多くの魔導師達も妖精界の魔導技術を求めて魔王城のそばに移住して来たため、

魔王城下は本当に全世界最大の魔導都市となったのだった。

ちなみに、出現位置のズレた王立第二研究室は見事に魔女の工房を踏み潰していた。

しかし、愛しの人(?)との思わぬ再会に狂喜乱舞し、

早速嬉々として殺し合いに興じる魔女は特に気に留める様子も無かったので、

術師の提案からその地区はそのまま人間界初の総合魔導研究室兼魔導教育機関にしてしまった。

人間や妖精だけでなく、魔族や竜族の留学生も徐々に増加してゆき、

ここもやはり全世界最大の施設となる。

……そんな様々なゴタゴタを経て、少女はまた少し、成長したのだった。

と言うわけでまさかの第三部終わり。

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室長「やはり君の受け持つ講義はずば抜けて評判がいいね。

いやはや、感服するばかりだよ」

少女「はぁ。ありがとうございます。

ですが、未だに自分が人にものを教えるなんて……

わたしもまだ学ぶことだらけなのに」

室長「もし君に教授が勤まらないなら、この研究室の職員は全員クビだよ。

……所で、そんな君に一つ依頼があるのだが……」

少女「依頼、ですか?

わたしにできることなら受けますが」

室長「ふむ。

では、北の帝国の、極北限界領域に行ってもらいたい。

そこに君を待つ、ある人物がいる」

少女「その人物と言うのは……?」

室長「例の協定によって破棄されたかの国の極秘研究施設の一つから、

男の子が一人救出された。

しかし色々と事情があって、ここで引き取るのが一番だろうと言うことになったのだよ」

少女「男の子……ですか」

室長「生体兵器として幾度となく改造手術を施された、

魔族と竜族の混血児だ」

少女「……」

室長「ここ以外には引き取り手がない。

更に言えば、おそらく彼とまともに対話できる者は君ぐらいしかおらんだろう。

実験途中、しかもまだ幼く未熟だった時点での彼でさえ、

既に各国では『極北限界領域の魔竜』として、

その脅威がまことしやかに囁かれていたほどだ。

私の耳にも何度か入って来ていた」

少女「……わかりました。

すぐに北の帝国に向かいます」

室長「くれぐれも気をつけてくれたまえ。

魔族と竜族の混血についてはどこを探してもほとんど資料が無い。

それほど稀なケースなのだ。一体どんな魔力を秘めているか、想像もつかない。

そんな子が軍事火力として研究、調整されていたとなると……」

少女「充分に注意して行きますのでどうかご心配無く。

必ずその子を連れて帰って来ます」

室長「頼んだぞ……」

少女「はい。

では、失礼します」

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