少女「魔王さんなら、ママを生き返せるのかな…」 3/17

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魔王「いってぇー。すげーなこれ。

ちょっと下がっててくれ」

侍女「わかりました。

さぁ、わたくしの後ろへ」

少女「は、はい」

魔王「むむむ」……ォンォンォンオンオンォオンォオンォオンォオン

魔王「ふー……

……どりゃあッ!」

バギィィィンッ!!

魔王「っと。どうなったかしらん?」

侍女「……ここに、僅かな傷が」

魔王「マジかよ。割と真面目にやったんだけどなー。

燭台に負ける魔王ってだせー」

侍女「しかし……なぜ僅かな魔力でここまで?」

魔王「うーむ。

多分、これはその超魔女っ子プリンセスちゃんの魔力じゃなくて、

燭台そのものの魔力だな。

燭台が衝撃を受けた瞬間だけ、銀が魔力変換されて衝撃を跳ね返してる」

侍女「燭台そのもの……ですか?」

魔王「銀なんかになると、魔力だけで作るのにはぶっとんだ量が要るだろう?

すると、逆にその銀を直接魔力に変換出来たら……」

侍女「凄まじい魔力量になる、と」

魔王「その変換式自体はちょっとした魔力で書けるから、こうなったわけだわな」

侍女「……才覚、ですか」

魔王「才覚ですな。

この子が勇者じゃなくてよかったよホント」

少女「あ、あの……」

魔王「あぁ、気にしないでその調子でやっててくれたらいいよ。

私は作業に戻るから。あとよろしく」

侍女「かしこまりました」

魔王「がんばってねー」

少女「が、がんばりますっ」

……ズズゥゥゥウウン……

ドグォォオオオン……

魔王「どんどん勇者がハードモードになっていくな。ひひひ」キュキュキュー

侍女「夕食の準備が出来ました」

魔王「おう。今行くわ。

なかなか派手にやってたみたいじゃないか」

侍女「魔力運用の最適化と言いますか……常に最も高い効率と方法に拠って魔力を使うので、

本人の意思にも反して非常に強力な魔導になるのだと」

魔王「しかも、あの子自身にも相当な量の潜在魔力があるしな。

まぁとりあえず飯にしよう。腹が減ってはなんとやらだ」

侍女「はい。

……ところで、勇者の行方なのですが」

魔王「うむ」

侍女「例の魔女の所に居るようです」

魔王「うげ。マジかよ。

あいつなんでかんでも魔族より魔改造するからなぁ」

侍女「その分、時間は掛かるかと思われますが」

魔王「だな。

連中が来る前に、準備はさっさとやっちまうか」

侍女「しかるべく」

魔王「しっかし、あいつの悪ふざけで何回死にかけたかわからんぜ。

一番ろくでもないことに迷わず最大注力するから余計ろくでもない」

侍女「……」

魔王「やだなー、魔改造勇者。

あーやだやだ」

ガチャリ、

魔王「やっほー」

侍女「お待たせ致しました」ペコリ

少女「いえ、そんな……」

魔王「まぁとりあえず食おうぜ。

連日訓練訓練で疲れたろう」

少女「えっと、多分この杖とドレスのおかげで、わたしはそんなに……」

魔王「そうなの?」

侍女「一気に大量の魔力を使うような術式はまだ使っていませんし、

杖とドレスによる自動治癒も相乗的に働いているかと」

魔王「見事なチートだなぁ。まぁそれなら安心だ。

食べよう食べよう」

少女「は、はい」

ゴゴゴゴ……

勇者「ぐッ……う……がッ……」ミシミシミシミシミシ

魔女「歯ぁ食いしばれっつってんだろ。

オラ、そんなんで魔王に勝てると思ってんのか」

勇者「ぬぅうヴぅヴウ……ッ!」ミシミシミシミシミシ…ブチッ…ブツッ…

魔女「魔王の魔力はこんななまっちょろいもんじゃねぇーんだよ。

気合い入れろ気合い。両手両足ぐらいなんだ。

どーせ勝てないなら捨てちまえそんなもん」ガチャン

勇者「ヴッ……ふヴッ……ふヴぅううヴ……

ヴぅッ……うぅヴふッ……!!」ギリギリギリギリギリギリギリギリ

魔女「泣いてんじゃねぇーつーの。

人間やめろよさっさと。

でなきゃ辛いぞー」ガチャン

ガリガリガリガリガリガリガリガリ

ミシミシミシミシミシ……ミシミシミシミシミシ

ギィイイイイイイイイイイ…ブチッグチャッ

勇者「……」

魔女「おっつー。

次はこの鍋に浸かっとけ。

良いって言うまで出んなよ。

まぁどうせその身体じゃ無理だろうが」

勇者「……」

グツグツグツグツ…ボコォ…ボココォ……

魔女「早くしろよ」

勇者「……」ズッ…ズッ…ズッ…ズッ……

……ボチャン

ジュウゥゥウウゥウ……

魔女「そろそろ晩飯にすっかな」

ザパァア

魔女「おーおー、良い感じに茹で上がってんな。

後はこのイカす箱に入ってしばらく待ってろ。

名付けて『天使の棺』だ。ぐっすり寝れそうだろ?」

勇者「 」

魔女「多分悪夢見っぱなしになると思うが、魔王の魔術汚染に耐えるためだ。

諦めてうなされてろよ」

勇者「 」…グ…ャ…ッ

魔女「じゃねーおやすみー」

……バタン……

魔女「で、216時間寝かせた天使の棺ごと鎧に装填する、と」

ガチャン……

魔女「魔導力学と錬金工学と生体工学、それからスパイスに燃え盛る憎悪を一人前。

これでとりあえず試作機完成だ。僕ってばやっぱり天才?」

勇者『……ァ……ガ……ガガ……』ギギギギ…

魔女「お? 神経接続が悪いみてぇーだな。ん? このへんか?

どっこらしょいッ」ガキンッ

勇者『うぉああああアアああああァアああああああッ!!

はぁッ、はぁッ、はぁッ……』ギギッ

魔女「おはよう、新生・魔装勇者。

最強に格好良くて最悪に醜いな。

つまりアレだ。最高だ」

勇者『これは……』ギッギッ

魔女「魔導装甲に直接人間を接続して駆動させるってやつよ。

どっかの国の魔導師がほったらかしにしてた研究資料を拝借して来て、

僕なりに改良した100万馬力のすげー代物だ。ありがたく思えよな」

勇者『……あぁ』

魔女「で、早速だが起動実験だ。適当に飛ばすから適当に行ってこい。

その間に他のパーティーも一式揃えといてやんよ」ガチャン

勇者『うぉッ―――――』バシュゥッ

魔女「論理上、僕以外の魔導師になら400年先のやつまで楽勝出来ることになってっから。

実証よろしく」ヒラヒラ

……ガチャン、

魔女「もうちょい待ってろよー魔王。

すぐぶち殺しに行くからなー」

魔王「……なんか寒気がしたが、気にしないことにしよう」

侍女「風邪などお召しになられては大変でございます。

どうか無理はなさらぬように御自愛くださいませ」

魔王「魔王も風邪引くのかねぇ。

まぁともかく、こっちの準備は完了だな。

後はあの超魔女っ子プリンセス次第だが……」

侍女「そろそろ、実戦訓練に移っても良いころかと」

魔王「だよな。

まぁあのぶっ飛びキチガイ魔女レベルの魔導師でもなけりゃ、

傷一つ付かないとは思うが」

侍女「とは言え、いずれ決戦の時が来ます。

万全を期すべきかと存じ上げます」

魔王「うむ。

とりあえずお前に任せるわ」

侍女「かしこまりました。しかるべく」ペコリ

侍女「……なので、この魔導式を習得すれば、以降は実戦訓練に移行することと相成りました

少女「実戦……」

侍女「魔力によってあらゆるものを征服する実際的な訓練とでも申しましょうか」

少女「……」

侍女「有り体に言えば――――

――――刃向かうもの、楯突くものを全て木っ端微塵にする訓練でございます」

少女「!」ビクッ

侍女「ええ、存じ上げております。

あなた様ならば、そのような無益な殺生をされなくても、

相手を沈黙させる手段はいくらでも御用意できましょう。

……しかし、それでは駄目なのです。それではまだ足りません」

少女「足りない……?」

侍女「あなた様が、母君を蘇生させるために心に灯した『誓い』です」

少女「誓い……」

侍女「『生きる』と言うことは何者かを『殺す』と言うことでございます。

魔導はまさにこのような排他律に則って作用するものだと、

あなた様は既にお気付きになっておられるはず」

少女「……」

侍女「魔王様の命に従い、あなた様の燃え盛る誓いの炎を、確かめさせていただきます」

少女「……はい」

魔王「いい感じに茨も育って来たな。

いかにも魔王の城って感じだ」

ミキ……メキメキ……

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