少女「魔王さんなら、ママを生き返せるのかな…」 5/17

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ドッガァァァアアアァアン!!

魔王「全くあいつらはいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつも

狙いすましたように無粋なタイミングで来やがって」

少女「どうします?」

魔王「とりあえず様子を見に行くか。

防御呪文と結界呪文、張っときなよ」

少女「はい」ポォ…

魔女『魔王ー! 来てやったぞー!

さっさと出迎えやがれー!』キィィィン

魔王「うっせーなバーカバーカ。

今行くっての」

魔王「近所迷惑だろうが馬鹿やろうこの野郎」

少女「……」

魔女『やっと来たか!』キィィィン

勇者『……』

魔王「だー、うっせぇーよバカ。

消せ。それ消せ。今すぐ消せ」

魔女「バカはてめぇだこの馬鹿野郎!」カチッ

魔王「なんだとこの腐れ魔女」

魔女「お前また蘇生術式使おうとしてるだろ!

勇者に聞いたぞ!」

魔王「だったらなんだってんだよ」

魔女「……そのガキの母親を蘇生させるのか?」

魔王「あぁ」

魔女「それでそのドレス……かぁあああ!

お前本ッッッ当に馬鹿だなー!

この大馬鹿魔王ーッ!!」

魔王「何回も何回も何回も何回も馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿言うんじゃねぇーよ。

それも大声で。傷付くだろうが」

魔女「反省しないやつは間違い無く馬鹿だっつってんだろーが!

前回僕があれだけ言ったのにまーだおんなじことやんのかてめぇーは!」

少女「前回……?」

魔王「……」

魔女「おいそこのガキぃ!

お前、この術式の発動手順、ちゃんと知ってんだろうなー!」

少女「手順……」

魔女「やっぱり! ほらみろやっぱりそーだ!

やっぱり全然反省してねぇーじゃねぇーか馬鹿魔王!」

魔王「だから馬鹿って言うなっての」

魔女「魔導はなぁ、『選ぶ』か『選ばない』か!

『拾う』か『捨てる』か!

『生きる』か『殺す』か!

蘇生術式を使ったら、その馬鹿魔王が代わりに死ぬんだぞーッ!!」

少女「……えっ……?!」バッ

魔王「あーあ、ホント間の悪いやつ」

――――数百年前

皇女『これでいいのです……

お母様も……あなたの死を望んではいません』

魔王『……』

皇女『……そんな顔をしないでくださいな。

わたしはなにも怖くありません……お母様ともうすぐ……もうすぐ会えるのですから……』

魔王『私は、私は何もしてやれなかった』

皇女『あなたはわたしと、わたしのお母様に、多くのものをくれました……

……今ならそれがわかります』

魔王『私は……』

皇女『それから……どうか、魔女さんを責めないでください……

あの方の気持ちも……よくわかります……』

魔王『……』

皇女『お身体に気を付けて……

……いつか……誰もが幸せな世界で……会い……た……』

魔王『……』ギュッ…

魔女『なぁオイ……その、なんつーか……悪かったよ、うん』

魔王『……いや、いい』

魔女『そりゃ、僕だっていっつもてめぇーのことぶっ殺すために色々やってたけどよー……』

魔王『だからいいって』

魔女『ぶっ殺したいほど気に入ってるやつが自殺なんかしようとしてたら……

……何やってでも止めるだろ?』

魔王『……』

魔女『……じゃあ、僕は帰るからな。

また来る。てめぇーをぶっ殺しに』

魔王『……あぁ……待ってる』

……――――

魔女「――――とにかくッ!

てめぇーが勝手に死ぬぐらいだったら僕が百回ぶっ殺す!

スイッチオーンッ! 行けッ、新生・極悪魔装勇者御一行ッ!!」ガチャーン!

勇者『ぅヴッ……ま・ォヴ……魔王ォォオオオッ!』ギリギリギリギリ

少女「えっ、うわっ、け、結界っ!」

バチバチバチバチッ

勇者『魔王ォォオオオォォオオォォァァアアアアァアォオオォオオォッ!!』

バチバチバチバチ……バリッ……バギンッ!

少女「破ら……?!

ぐッ……九式九重結界ッ!」

魔女「オラッ!

破城鎚出せお前らッ!

突き破れッ!!」

勇者『通ッッッ……ッッッせェエエェエエッ』バリィィィイン!

少女「十分時間は稼げた!

『止まれ』ッ!!」

勇者『ォアアッ?!』ガグンッ

魔女「装甲に直接魔導式を書き込んで……っつーかお前邪魔すんじゃねぇーよッ!

魔王が死んでもいーのかよッ!!」

少女「そっ……それは……」

勇者『ガァ……ァアアァアアッ!』ギ…ギギッ…バギンッ!

少女「しまっ――――」

魔王「『止まれ』。」

勇者『――――』ビタッ

魔女「魔王……てめぇー、いい加減にしろよ……

てめぇーの糞ったれた感傷で僕以外のやつを巻き込むんじゃねぇーよッ!」

魔王「……」

少女「ま、魔王さん……」

魔王「なぁ、糞魔女」

魔女「……なんだよ大馬鹿魔王」

魔王「実はもう術式発動してるんだわ」

少女「なっ」

魔女「……え?」

魔王「この子がだいぶ時間稼いでくれたから、加速術式も追加できたしな。

要するに、もうあとしばらくしたら俺は死ぬ」

魔女「……ついに馬鹿が高じて死ぬことになったか……」

魔王「お前に殺されるのもいいかと思ったけどさ、

ちょっと落ち着いて喋らないか? 久しぶりに。せっかくだしさ」

魔女「……」

少女「……」

魔王「こっち来いって、いいから」

魔女「……魔王……」

魔王「よし、もっとこっちだ。

ちゃんと近くで顔見せろ」

魔女「まお、う……ぅ……うっ……」ポロポロ

魔王「とここで鉄拳制裁ッ!」ゴッチーン!

魔女「いってぇッ! なにすんだ馬鹿ーッ」グシグシ

魔王「それは侍女の分だ。マジで腹立ったからな」

少女「……えいッ」ゴッチーン!

魔女「なっ、なっ、このクソガキッ!」

少女「私も腹立ったんで」

魔王「ひひひ。正当な権利だよな?」

少女「当然です」

魔女「お前あとで絶対ぶっ殺す!」

少女「やれるものならどうぞ」

魔王「後任者ができて安心だわ」

魔女「こんなクソガキじゃ8秒も保たねぇーよ」

魔王「いやいや、少なくとも200年は保つな。

俺が死んだら俺の魔力200年分、キミに譲渡することになってるから」

少女「は、……はい?」

魔王「いきなりだけど、まぁ魔王代理ってことでよろしく。

じきに魔界で次の魔王がちゃんと決まるからさ。

それまで、キミはキミのやりたいことをやればいい。

ママさんとのんびり暮らすもよし、冒険に出るもよし、

魔導魔術を極めるもよし、魔王やるのももちろんよし」

魔女「むちゃくちゃだ……」

少女「……」

魔王「まぁ大概のことは出来るぜ。

キミ、じきに下手な魔王より強くなるだろうし」

少女「……わたしは……世界を変えたいです」

魔王「ほほう」

少女「もっと魔導を勉強して、もっと世界のことを勉強して、

それから魔王さんも妖精のお姫さまも笑って暮らせるような、

そんな世界をつくりたいです」

魔王「そりゃいいや。期待してるよ。

キミなら世界でも変えられるだろう」

少女「はい!」

魔王「で、お前はどうすんの?」

魔女「……まずこのクソガキをぶっ殺す。

そん次に地獄に居るお前らをもっかいぶっ殺す。

邪魔するやつは全員――――ってもう居ねぇ?!」

少女「!」

魔女「あいつ最後まで人を舐め腐った態度しやがって絶対許さねぇーからなーッ!」

少女「……」

魔女「ちくしょおおおッ! 絶対勝ち逃げなんかさせてやるもんかッ!

今に見てろーッ!!」ポロポロ…

少女「魔女さん」

魔女「はぁッ?!

な、なんだよッ! 泣いてねぇーよッ! こっち見んなよッ!」グシグシグシグシ

少女「わたしに魔導を教えてください」

魔女「ふざけんなこのやろーッ!!」

――――魔装勇者御一行を引き連れた史上最悪のキチガイ魔女と、

魔王の魔力たっぷり200年分を受け継いだ史上最強の幼い魔女は、

たまに殺し合いをしながら魔界・冥界・竜界・妖精界それぞれの辺境で、

文字通り人知を超えたとんでもない冒険をすることになる。

しかし、それはまた別のお話――――

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