少女「魔王さんなら、ママを生き返せるのかな…」 9/17

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コォオォォ……

少女「ちなみに地獄のどこに出るんですか?」

魔女「一応いきなり溶岩にドボンは避けたいから、

氷獄エリアに出るようにはしたつもりだけどよ」

侍女「……微かに冷気がしますので、おそらくは氷獄のいずれかの地点かと」

魔女「さすが僕。

てめぇーらも気を引き締めて――――」

ビュオォォオオォオオッ

少女「うわっ! 寒っ!」

妖精「ーっ!」ブルブル

侍女「わたくしの後ろへ」

魔女「魔導人形は便利だな」

ビュゴォオオオォオォッ……

魔女「吹雪吹雪、氷の世界だな。ドンピシャだぜ」

少女「寒い……雪で前が見えませんよ」

侍女「わたくしも駆動系が少し鈍っていますね」

魔女「贅沢言うなよ。生身だったら一瞬で氷漬けだ」

少女「さすが地獄……あれ、魔女さんのローブの裾が光ってますよ」

魔女「ん? なんだこりゃ?」

侍女「……魔力が熱と光に変換されて放出されています」

魔女「こりゃあの水晶だな。

蓄えた魔力を勝手に出すようになってるのか」

少女「わたしのも光ってます。

……すごい、ここだけ雪が避けて行きますよ」ポゥ…

魔女「よし、これをランプ代わりにして、とりあえず例の壁を探すか」

少女「よく見たら、ここ森の中なんですね」

侍女「地図には『樹氷の森』とあったと記憶しています。

あの地図が正しいなら、壁はそう遠くないはずです」

魔女「朗報だな。

凍りつく前にさっさと行こう。

風向きがむちゃくちゃで、木の後ろに隠れても意味がねぇー」

……ズゥウン……

侍女「……?」

……ズゥウンゥン……

侍女「お待ちを」

魔女「おい、どうした?」

侍女「何か聞こえます。

吹雪の音ではありません」

少女「え?」

……ズゥウウゥウンン……

侍女「……何か近付いて来ているようです」

少女「足音……?」

魔女「さっそくヤバそーな気配がプンプンするぜ」

……ズゥウンゥウウゥウンッ……

魔女「さぁどうする?

この感じは多分逃げられないやつだぞ」

少女「とりあえず視界を確保したいですね。

この水晶を上に投げて、魔力を一瞬だけ高出力で放出してみます」

魔女「照明弾ってわけだな。やってみろ」

少女「はい」ポゥ…

…ズゥウゥウウゥウウゥウンッ

少女「えいっ」ブンッ

――――ピカッ!

魔女「……見たか?」

少女「……はい。

めちゃくちゃでっかかったです。お城ぐらいありました」

魔女「水晶拾ったら、よーいドンで走るぞ」

少女「逃げられるとか逃げられないとかの問題じゃ無さそうですね」

侍女「走りながら打開策を考えましょう」

ズゥウゥウウゥウウゥウンッ

氷竜「フシュウゥヴ……フシュウヴゥウヴ……」

少女「……拾いま――――」

魔女「よーいドンッ!!」ザッザッザッ

少女「ちょっ」

侍女「急ぎましょう」スッ

少女「あ、ありがとうございます」ザッ、ザッザッザッ

侍女「滅相もございません」ザッザッザッ

氷竜「ヴォオォォオォオオォォッ!!」メキメキメキッ!

魔女「なんだありゃあ!

何食ったらあんなんになるんだ?!」

侍女「罪を犯した者でしょう。

食料には困らなさそうです」

魔女「冷静に答えてんじゃねぇーよアンポンタンッ!

何か撃ってくるぞアイツッ!」

少女「結界張ります!」バリバリバリッ

魔女「ついでに僕もオマケだッ」ビリビリビリッ

氷竜「ヴヴォアッ!!」ドーンッ

バキィィイイインッ!!

魔女「うっわギリギリだなありゃ!

結界に沿って氷の壁が出来てるぞ!」

侍女「あれは冷気ではなく、魔力その物ですね。

魔力が冷気の性質を有しているようでございます」

少女「結界が浸食されてますよ!」

ビシッ……ビキッ……

魔女「まじぃなこれ、畜生!」

侍女「誰かが囮になってる間に何か術式を組むか、

結界をどんどん重ねて行くしかなさそうですね」

魔女「いくら結界張ってもあれ以上距離縮められたら終いだぞッ」

侍女「では、わたしめが囮役を勤めさせて頂きます」

少女「そんな……!

何か方法が他にっ」

魔女「考える暇はねぇーぞッ!

やっこさんはこっちの話がまとまるのを待つつもりはこれっぽっちもないみたいだ!」

侍女「大丈夫です。

きっと上手くいきます」

少女「でも侍女さん……!」

妖精「!」ツンツン

少女「え……?」

侍女「自分に任せてほしい、と言っています」

少女「で、でも……」

妖精「!」ブンブン

侍女「……あいつをやっつけるからみてて、と」

魔女「なんかしらねぇーが、やるなら早くしてくれッ!

次のが来るぞッ!」

妖精「っ!」ビュンッ!

少女「あっ!」

氷竜「ヴヴゥヴ……ゴァアアウゥヴッ」ゴォオオォ

妖精「ーッ!」ビュッ!

氷竜「ヴッ……グゥウゥウウヴ……」

魔女「お? なんだ、動きが止まったぞ?」

少女「一体何を……?」

侍女「……」

氷竜「……グヴゥヴウッ! ヴォオォォオォオッ!!」

魔女「あいつ、腹が光ってるぞ!」

侍女「どうやらあの人工妖精が、水晶を氷竜の口に投げ入れたようです」

魔女「水晶の中の魔力が一気に解放されて、氷竜の体内で暴走してるのか!」

氷竜「ヴッ……ヴヴゥヴ……ヴォ――――」

――――ジュッ

……ドッグォォオオオォォオォオオォォオオオンッ!!!

少女「い、一瞬で蒸発した……」

侍女「数千年か数万年か、溜め込み続けた地獄の業火ですので、

あれほどの威力になったのかと」

魔女「えらいもんを土産にしてきたなぁオイ」

妖精「♪」パタパタ

侍女「どんなもんだ、と言っています」

魔女「はぁ。なかなか大したもんだよ、お前」

少女「人工妖精ってみんなこんなすごいのかな……」

魔女「何はともあれ、おかげで随分明るくなったし、吹雪も弱まったな」

少女「何より驚きなのは、普通に水晶が健在だったことですね……」

侍女「少し火力を落とす魔導式を書き込んだので、また帰りにでも回収致しましょう」

魔女「しかし……これが例の壁か」

少女「壁と言うか垂直に立った大地ですね、これ」

ゴゴゴゴ……

魔女「さぁ、どうやって上まで登る?」

侍女「恐らく生身では不可能でしょうし、

通常の魔導や召還獣でも時間が掛かり過ぎると思われます。

飛行中はこの付近の魔物の恰好の餌食です」

魔女「だな。

もうあんなのは御免だ」

少女「……さっきの氷竜を召還してみましょう」

魔女「おおッ? 出来んのか?」

少女「術師さんの理論に従うなら、人工妖精の召還よりは簡単なはずです」

侍女「確かにあの氷竜なら、安全に上まで辿り着けるでしょう」

少女「準備しますんで、ちょっと待ってください」

侍女「わたくしも魔法陣の書き込みを手伝います」

魔女「なるべく早くな。

一応結界張っとくけど、気休めにしかならんだろうし」パキッ

妖精「ーっ、ーっ」フリフリ

侍女「自分は応援している、だそうです」

少女「ふふ、ありがとう」ガリガリ、ガリガリガリ

氷竜「ヴグルルル……」バサッバサッ

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