魔竜「なにかな……」キュッ…
――――バシュッ!
少女「っ!?」バッ
魔竜「?」
王子「みぃーつっけた!
確かにあいつの魔力だ!
なるほど、お前が魔王代理…………か…………?」
少女「……あなたは?」
王子「お、……俺? 俺はその、一応次期魔王なんだけど……その、アレだ。
あの……えーと」
少女「……?」
王子「ちょちょちょ、えっと、
ちょ、ちょっとたんま」クルッ
…パキンッ
王子「……あの、これを」スッ
少女「は、はぁ。お花ですか?」
王子「それじゃっ!」バシュッ!
少女「な……なに?」
少女「今の誰だろう?
魔王代理とか聞こえたような……」
……バシュッ!
王子「や、やぁ!」
少女「あれ、また来た」
王子「と言うか、一目惚れしました!
俺と! 結婚! してくださいっ!」ギュッ
少女「……はっ?
いや、いや、えっ、何を言って――――」
――――ズォアッ!!
魔竜「お姉ちゃんから手を離せ」ガシッ
王子「あ? なにこの目つきの悪い餓鬼。
人のプロポーズ邪魔すんなよ」
王子「子供は暗くなる前にさっさと帰って――――」
魔竜「手を、離せ」バギギギリギギギシギシッ
少女「っ!」ゾクッ
王子「お前……なんなんだ?」パッ
魔竜「お姉ちゃんに触るな」ギンッ…
王子「竜族の眼……魔力は魔族……?」
魔竜「……」ザッ
少女「え、……」
王子「人の婚約者の前に立ちふさがるたぁ、いい度胸じゃねーか。
大人の魅力と怖さを教えてやるぜ」バキッ、バギギッ
魔竜「お前なんか、怖くない」メキッ……バキッ……
……メキメキメキメキッ
王子「お、……おおお?」
メキメキメキメキメキメキメキメキッ……
……バサァッ!!
魔竜「グヴヴゥ……」ギロッ
少女「りゅ、竜に……?!」
王子「や、やっべ、ちょっとおっかねぇ!
こいつ全盛期の魔王どころじゃねーぞ!」
魔竜「グァ……」パカァ
……ゴゴゴゴゴゴ
王子「受け切れる気がしねぇー!
なにこいつ、チートじゃん!」
魔竜「グヴルル……」バサッ…
少女「つ、翼で……守ってくれるの?」
魔竜「ヴヴ……」コクン
王子「ずっ、ずるいぞー!」
魔竜「ヴヴゥ……ヴグォアアアアア゙ア゙ア゙ア゙ッ!!!」ドォッ
ゴバァアアアアッ!
王子「うおあっ! マジやっべぇー!」バシュッ
――――ズォォォオオオオオオォォオォオォンッ!!
ゴゴゴゴゴ……
少女「見渡す限り灰に……ここが無人の平原でよかった……」
魔竜「……ヴグゥッ……」メキッ、メキメキメキッ……
少女「だ、大丈夫?!」
魔竜「グ……」ズシィイィィイイイン……
シュウウゥ……
メキッ……バキッ……
少女「人型に戻った……?」
魔竜「うぅ……ん……」
少女「……と、とにかく研究室まで急いで連れて行かなきゃ!」
……ガチャ、
少女「どうですかっ?」ガタンッ
室長「落ち着きたまえ。
他の人型竜族の例に漏れず、あの子に取っても竜化は著しく魔力を消耗する。
特に幼体には、かなりの負担になる。
……しかし、おそらく一時的に衰弱しただけだろう」
少女「そうですか……よかった……」
室長「『極北限界領域の魔竜』、か……
確かに、この魔力は驚異的だ。
世界を跨いだ冥界や妖精界でさえ、史上稀にみる魔力爆発を観測したそうだぞ」
少女「……」
室長「あらためて、あの力が軍事利用されなかったことを幸運に思わねばなるまい」
少女「……あの子は、わたしを守ろうとしてくれました」
室長「次期魔王、からか?
それにしてもいきなり求婚して来るとはね」
少女「ええ……もう色々ありすぎて何がなにやら……」
室長「君もゆっくり休みたまえ。
今日はここに泊まって行くといい」
少女「ありがとうございます……」
魔竜「……くぅ……くぅ……」
少女「魔力の制御と、竜化の制御も勉強しないとね……」ナデナデ
魔竜「……お……姉ちゃ……」
少女「わたしはここにいるから」ギュッ…
魔竜「ね……ちゃん……くぅ……くぅ……」
少女「守ってくれてありがとう。かっこよかったよ」
魔竜「……くぅ……んん……くぅ……」
少女「……竜王さんなら、あなたのことや、竜化の制御の方法も知ってるかもしれない。
身体が良くなったら、一緒に竜界に行ってみようね。
でも、今はゆっくりおやすみ……」ナデナデ
魔竜「お姉……ちゃん……」ギュッ…
――――バシュッ!
王子「っぷはぁー! びびったぁ!
でもあきらめねーからな俺はっ!
また会いに行くからなーっ!」ズビシッ
――――魔竜の力を制御する術を知るため、
また魔竜の出生の謎を解き明かすため、次なる舞台は竜界。
少女と魔竜、そして侍女と魔女(しぶしぶだが)の四人が、
竜界最深部、竜王の宮殿を目指して再び旅立った。
次期魔王の王子のちょっかいも予想される中、
魔王と魔女の間に微妙な変化が……?
それを間近で見ている侍女の心境とは……?
少女と魔竜も心身共に成長しつつあるが、果たしてどんな冒険道中となるのか……
その物語は、また次の機会に。
駆け足になったが第四部終わり。