少女「魔王さんなら、ママを生き返せるのかな…」 1/17

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――――バァン!

勇者「魔王ッ!

懺悔の時間は終わりだッ!」

少女「!」ビクッ

魔王「おっと?

全く無粋な奴だなお前はいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつも」

勇者「な、……なんだ、その女の子は?

人質にでもするつもりかッ」

魔王「おいおいおいおい」

勇者「残念だったな!

今更女の子1人でこの俺を止められるとでも思ったか?

ここまで……一体何人の仲間を犠牲に……踏み越えて……ッ!!」

魔王「いいからちょっと落ち着けよ。な?

まぁ落ち着けよ、ちょっと。

人質じゃあねぇーよ。なー?」

少女「は……はい……」

魔王「私にお願いがあって、ここに来たんだよなー?」

少女「そうです……」

魔王「そーゆーわけなのよ。だからちょっと待っててねー」

勇者「ふ、ふざけるなッ! そんなこと……」

魔王「じゃあお前、代わりに叶えてやれば?

な。お願いしてみなよあいつに。

泣く子も黙る勇者さまだぜ?」

少女「……」フルフル

魔王「そっかー嫌かー。

まぁそうだよなー、そうだよ。そりゃそうだ。

嫌われてんなー、勇者。はっはっはっはっはっは」

勇者「一体何の話を……」

魔王「この子さぁ、お母さん生き返らせたいんだってさ。

それで私の所まではるばる来たんだって。

お前が船の権利書貰った鉱山の村からだぜ?

半年歩き詰めってすごいよ、すごいすごい。

私感動しちゃってさー、叶えてあげちゃったりしよっかなーって」

少女「……」

勇者「鉱山……?」

魔王「思い出したかなー?

お前ら鉱山の魔物倒すのに、村人囮にしただろう?

賢者さまのすっげークールでナイスな発案で、囮は村の女になったよな?

あのとき、お前ら……やらかしたろう?」

勇者「……あれは……魔物がいきなり後ろから現れて……賢者の集中が途切れて……」

魔王「で、何人かの防御呪文が切れちゃったと。

その時に、お前らの魔導師が焦って乱射した魔導弾が当たっちゃったのが……ってわけさ」

少女「……」

魔王「だから、勇者さまには頼みたくないんだってさ。

いやー、しょうがないね。戦争だもんね。何人も犠牲にしないといけないんだもんね。ね?」

勇者「……ぐっ……

俺達だって……助けようとした……!」

魔王「でも、勇者さま御一行の蘇生呪文って、教会で特別な洗礼を受けた人間にしか使えないんだよな?

不便なんだよなー、人間の力って。いやー、残念無念」

勇者「……そもそも、お前らがッ!!」

魔王「はいはいはいはい私が悪い私が悪い。

でも私、蘇生出来るよ? この子のママさん。ちちんぷいぷいーってさ。

私が勇者に倒されちゃったら、もちろんもう無理だけどね」

少女「……」

勇者「なッ……この……卑怯者!!」

魔王「じゃあほら、その剣で切りかかってきてみなよ。

ほらほら、今ならまだ防御呪文も反射呪文も掛かってないぜ。

チャンスですよーチャンス。ねー勇者さんってばー」

勇者「ッ!」ジャキッ

少女「……!」バッ

魔王「あらあらあらあらあらあらあらあらあらー。

キミ、守ってくれるの? 私を? 勇者から?」

少女「ママを……生き返らせてください……」

魔王「うんうん、いいよいいよ、ますます感動しちゃったよ。

約束するよ約束。ママのことは任せなよ。

でもまぁ……どうなるかは勇者さま次第かなー?」

少女「……」キッ

勇者「そ……そんな目で俺を見ないでくれ……!」

魔王「で、どーすんの?

やるの? やらないの?」

勇者「俺は……お前を倒すためにここまで来たんだッ」

魔王「あっそ。

でもさぁ――――」

……パキッ……ビキッ……

バチバチッ……バキンッ

魔王「――――本気出したらめちゃめちゃ強いからね、私。

一応言っとくけどさー」バリッ……バチチッ……!

勇者「……!!」ゾクッ

魔王「私としては回れ右をオススメするよ。面倒臭いしね。負けないけど。

まぁこの子のママさんの敵討ちってのもいいけどね」

少女「……」ジッ…

勇者「……ッ」

少女「……」

勇者「……ぐ……ッ」ギリッ…

少女「……」

勇者「……、……糞ッ……」ガシャン……

魔王「なーんだ、やめちゃうのか。

じゃ、お帰りはあちらですよー」

勇者「――――必ず、俺はお前を倒しに戻って来る!」ダッ

魔王「ひひひ。なるべくサボってから来てくれよなー」

魔王「さーて、じゃあ張り切って蘇生術式の準備しちゃおっかなー」

少女「!」

魔王「ちょっと時間掛かるからのんびりやるかね。

あ、その間に色々手伝ってもらわないといけないことがあるんだけどさ」

少女「何ですか……?」

魔王「いやー、蘇生術式使ってる間、私って超無防備なんだよねー。

蚊に刺されても死んじゃうんだ。

もちろんそうなったら術式失敗! 大爆発! 私、消し炭!」

少女「……」

魔王「で、だ。

そこでキミの出番なんだけどさー……」

勇者「魔王ォ……絶対に……貴様の首を落とす……ッ!!」ザッザッザッ…

ガチャッ

魔王「ってなわけで、とりあえずここで寝泊まりするといい。

ご飯やら何やらは……よっと」バギンッ!

侍女「……」

魔王「こいつに任せたらよくしてくれるよ。多分ね。きっと。……だよな?」

侍女「……」コクコク

魔王「大丈夫そうだな。よかったよかった。

仲良くしろよー」

侍女「……」ペコリ

少女「よ、よろしくお願いします」ペコリ

魔王「じゃあ、私はちょっと出掛けたりしてるから。

あとよろしくー」

……バタン

侍女「……」

少女「……」

侍女「……」

少女「……」

魔王「おい、あの番犬ちゃんとしつけとけって何回も何回も何回も何回も言っただろうが」

冥王「あ、魔王だ。いらっしゃい」

魔王「手っ取り早く要件だけ済ますぞ。

ここは辛気臭くてかなわん」

冥王「失礼な。何の用?」

魔王「これからちょっと上ででっかいことやるから、魔力の前借りに来たわけ。

250年分ぐらいありゃいいや」

冥王「そう。じゃあ、これ持ってって」ヒョイ

魔王「どーも」パシッ

冥王「魔王」

魔王「ん?」

冥王「バイバイ。また来てね」ヒラヒラ

魔王「もう来ねぇーよ」

魔王「じゃあな、三つ首。

餌の取り合いもほどほどにしろよな」

番犬「「「ヴルルル……」」」

魔王「あばよー」

番犬「「「……」」」

――――ォォオオオオオオン……

魔王「遠吠えしてらぁ。

さて、次は、と」

少女「い、いただきます」

侍女「……」ペコリ

少女「……」

侍女「……」

少女「……一緒に食べませんか……?」

侍女「……」フルフル

少女「そうですか……」

侍女「……」ペコリ

少女「……」

侍女「……」

少女「……あ、美味しい……」

魔王「よう、相変わらず蒸し暑いとこに引きこもってんのな」

竜王「うわっ、魔王じゃん。珍しー」

魔王「鱗にカビが生えるぞ、そのうち」

竜王「ちゃんと清潔にしてますよーだ。

それで? 何でいきなり来たわけ?」

魔王「お前にアレ貸してただろ。

ほら、あの水晶のいいやつ」

竜王「あーあー、アレね」

魔王「アレ返してくれ。ちょっと使うんだよ」

竜王「それがこないださぁ、うっかり炉に落としちゃって」

魔王「何だと」

竜王「お陰で炉の調子は最高にいいんだけどさー」

魔王「このうっかりドラゴンめ……じゃあお前の目玉寄越せ」

竜王「えー、やだよー」

魔王「炉に不純魔力ぶち込んでやろうか」バリバリ

竜王「やめてぇー」

魔王「ほら寄越せ、さぁ寄越せ」

竜王「もう……仕方ないなー」グチュグチュ……グチュリ

魔王「うぇえ」

竜王「いたたた……はい、これでチャラね」ベチャッ

魔王「色々言いたいことはあるが、まぁいいや。

じゃあな」

竜王「またねー」

魔王「まさか本当に目玉くれるとは……儲け儲け。ひひひ。

さーて、あとは細かいものの準備だな。

ちゃっちゃかやるぞー」

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