女商人「やっと私の出番ね」ルイーダ「あ、登録しただけよ」女商人「えっ?」 11/21

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ダーマ神殿 宿屋

勇者「みんな~お疲れ~。とりあえず今日はこのくらいにしておこうか。」

戦士「なかなかハードだったわね。ふう。」

武闘家「もうすっかり暗くなっちゃいましたからね~。商人さんはどうでしたか?」

商人「かなり疲れちゃったな~。本格的な戦闘って初めてだったし。でもみんなが一生懸命教えてくれたからよかった。」

勇者「スリリングでしょ?かなりね。」

商人「うん、こんな世界もあるんだな、って思ったよ~。」

戦士「今日だけで商人のレベルはどれくらい上がったかしらね?」

武闘家「見ていた感じだと、あと2日くらいで転職可能なレベルになると思うな。」

商人「そっか、じゃあ私明日も頑張るよ!」グッ

武闘家「無理せずやっていきましょうね、商人さん。」ニコ

勇者「明日はね、短剣じゃなくて剣やムチの使い方を教えながらやるからね。」

商人「剣か、なんか怖そうだよね、私扱えるようになるかな。」

戦士「大丈夫よ。私も剣はちょっと前までは握ったこともなかったけど、勇者が上手く教えてくれたから今ではこの通りよ」シャン

商人「おお~、かっこいい!元魔法使いと元僧侶の人とは思えないなぁ。」パチパチ

戦士「う。露骨に褒められると照れるわね...」カァ

勇者「う~ん、それにしても...」

武闘家「どうしたんですか、勇者さま?」

勇者「いや、寒そうだな~と思ってさ。」

商人「寒そう?なんのこと?」

勇者「戦士の格好がさ。」

戦士「は?あ、ああこの格好ね。私も最初なんでこんなに露出が多いのかと思ったけどね。慣れれば寒くないわよ。」

勇者「あ、そうなんだ。寒くなきゃいいんだ~。うんうん。」

商人「(ていうか、寒そうというか、目のやり場に困るなぁ)」ドキドキ

武闘家「それより……お腹少し出てるわよ。」ボソッ

戦士「なっ!仕方ないでしょ!戦士になるまで魔法使いも僧侶もずっと衣服で覆ってたからよ。そんなに激しく動く職業じゃないし。」

武闘家「だからって油断してたんでしょ?みっともない。」

戦士「言ったわねー!だったらあんただって賢者の時はあんなミニスカートみたいなの履いても肝心な出してる足はふっといから見られたもんじゃなかったわよ!」

武闘家「そっ、それは。しょうがないじゃないの!私だってあんな短いの履くなんて思わなかったんだから~。私のはこれから細くキレイになるのよ。」

戦士「ふん、負け惜しみね。あんたみたいなお子様にはムリムリ、私の方がぜんぜんこれからスリムになっていくのよー!」

商人「ふ、2人とも?ケンカはやめようよ、ね?ね?」オロオロ

武闘家「商人さんは口を挟まないでください。」

戦士「私達のことは放っておいて。この子と決着つけないと腹の虫がおさまらないわ。」

商人「は!はい!(こわいよぉ~)」

勇者「おーい、商人。」チョイチョイ

商人「あれ?勇者?」キョロキョロ

勇者「こっちこっち。あの2人はしばらく放っておきなよ。」

商人「だ、だけど。」

勇者「今までもたま~にああなっちゃうんだよねぇ。」

商人「そうなんだ。大丈夫なの?すっごい剣幕なんだけど...」

勇者「まあ、しばらくすれば嘘みたいに仲良し姉妹みたいに元に戻っちゃうよ。幼馴染みだから仕方ないね。」

商人「あんなに普段穏やかで優しい2人なのに、いきなり勃発してびっくりしちゃったよ。」

勇者「だって武闘家(現旅人)が仲裁に入ろうとしてもあっさり弾かれちゃってたし、ははは。」

商人「あの子でも止められなかったんだ...まあそりゃ私じゃムリね。」

勇者「ストレス発散みたいなものなのかなぁ。私は慣れたから遠くでケンカ見てるのも面白いけど、へへへ。」

商人「ふうん。勇者もストレスは溜まったりするの?」

勇者「私は特にないなぁ、まあ見ての通りこんな性格だし、男の子っぽいとも言われるけど。」

商人「勇者はやんちゃな感じだもんね。(基本、あの子と勇者は似てるし。)」

勇者「やんちゃともよく言われるなぁ。まあ私はたまに独りでボーっとしてることが気持ちいいんだよね。」

商人「…………」

勇者「そうだ!まだ時間も浅いし、一緒に散歩にでも行こうよ!」

商人「散歩?いいけど、どこへ?ここには町ないし。」

勇者「空だよ!お・そ・ら!」

商人「へっ?」

勇者「ラーミア~!我が元へ来たれり!」

勇者「ピィーーー!」

勇者は口笛を吹いた

商人「え?ほんとに来るの?ラーミアって伝説の鳥なんでしょ?」

勇者「まあまあ。すぐに来てくれるよ~。あ、ほら来たよ!」

勇者が指差す方から、白く大きい鳥が羽を羽ばたかせながら近づいてくるのが見えた。あっという間に勇者と商人の目の前に舞い降りた。

勇者「ごめんね~ラーミア。急に呼び出しちゃって。私の新しい仲間を紹介したくてさ。」

ラーミア「クケェーーー!!」

勇者「おーよしよし、いい子だね。ラーミア、この人が商人さんだよ。」

ラーミア「クゥーーーン!!」

商人「お、おっきいね~!この鳥が伝説の鳥。あ、よろしくねラーミア。」ペコリ

勇者「よし!じゃあラーミア。悪いんだけど私達を背中に乗せて飛んでくれない?」

ラーミア「クケッー!」コクリ

勇者「ありがとう!じゃあ商人、ラーミアの背中に乗って。さあさあ。」

商人「う、うん。落ちないかなぁ?」

勇者「大丈夫だよ、ラーミアは優しいからしっかり守ってくれるよ。」

商人「わかった。じゃあ失礼しまーす。」ガサッ

勇者「オーケー!そんじゃ夜の空中散歩といきますかー!ラーミアお願い!」

ラーミア「ククゥーーーー!!」バサバサァ

ラーミアは勇者と商人を背中に乗せて暗い空高く舞い上がった

上空 ラーミアの背中

商人「うわぁ~たかーい!気持ちいい~!」

勇者「えへへー、どうでございますかお客様。ラーミアの乗り心地と眺めのほどは?」

商人「もう、『すご~い!』しか言葉にできませーん!感激だよ!」

勇者「それはなによりだね~!あ、あそこの光は多分、ホープバークじゃない、商人?」

商人「あ!ほんとだっ!(私の愛する町ホープバーク...)上から見るとこういう風に見えるのねー。町の灯りがほんとにキレイね。」

勇者「また少し大きくなったんじゃないのかな?おじいさんとか青年くん元気かなぁ?」

商人「みんな元気でやってるよ、きっと。」

勇者「そうだね。よーしじゃあ次はロマリアあたりに行ってみようかー。ラーミア、お願いね。」

ラーミア「クケッー!」コクリ

ノアニール村 村の入口

旅人「ふう~やっとノアニールに着いた。すっかり夜だよ~、まあ今日は野宿は回避できたからよしとしよ。」

旅人「さて、と。宿屋に行こ行こ。………んー首がこったな。?なんだろあれ?」

旅人は上空になにかがいるのを察知した。よく目を凝らしてみると見覚えのある影であることを認めた。

旅人「(あれって、ラーミア?こんな夜になんで?)」

旅人「(そっか、きっと勇者が商人をラーミアに紹介するとかって口実で散歩してんだな~。)」

旅人「(商人は賢者になるため頑張ってるかな。)」

旅人「(勇者はみんなを引っ張ってくれてるかな。)」

旅人「(武闘家と戦士はまた宿でケンカしたりしてないかな。)」

旅人「(私ももっと成長しなきゃーね。)」

旅人は頭をかしげながら宿屋に向かって歩いていった。

ダーマ神殿 入口

勇者「ラーミア、長いこと飛び回らせちゃってごめんね。ありがとう!またね。」

ラーミア「クカァーーー!」バサァ

商人「私も背中に乗せてくれて楽しかったよ~!今夜はほんとにありがとね、ラーミア。」

ラーミアは空高く舞い上がり、自分の住み処に帰っていった。ふとラーミアの飛び立ったあとの空からなにかが落ちてきて商人の手のひらに乗った。

商人「これってラーミアの羽よね。すごくキレイだな~。」

勇者「ラーミアからの贈り物だね、それは。商人のこと友達だよ。って意味じゃないかな。」

商人「そっか~、嬉しいな。意外と恥ずかしがり屋さんなんだね。」ニコッ

勇者「さ~てと、眠くなってきたし、宿に戻って寝ようか。」

商人「あ、そういえば、戦士と武闘家は大丈夫かな....」

勇者「………すっかり忘れてた」

ダーマ神殿 宿屋

ガチャ

勇者・商人「ただいま~。」

武闘家「あ、勇者さま商人さんお帰りなさい!....あのう、ごめんなさい。」シュン

戦士「私も...ごめんなさい。つい熱くなっちゃって。」シュン

勇者「ああ~別に今にはじまったことじゃないじゃない。気にしない気にしない。」

武闘家「しょ、商人さんもびっくりしちゃいましたよね?止めてくれようとしたのに、私ったらひどいことを。」

商人「勇者から聞いたよ。2人は幼馴染みなんだからそのくらいはいいんじゃないのかな。私も気にしてないもの。」ニコ

戦士「商人、ありがとう。そういえば2人こそどこに行ってたのよ?」

勇者「えっ、あ、あの外をね散歩してきたんだ。ねえ商人?」

商人「あ。そうそう、夜のダーマって素敵だったよね~。なんて、ははは。」アセアセ

戦士「?」

勇者「まあ、もう遅いし、寝よう寝よう。明日も頑張るぞー!」

武闘家「(ヘンな勇者さま。ふふ。)」

勇者達は翌日、翌々日と、商人のレベル上げをダーマ周辺で行った。

商人は慣れない剣やムチを使っての攻撃や盾での防御の仕方も次第に慣れてゆき、パーティーメンバーとしても戦えるほどに成長した。

約3日間で商人のレベルは転職可能のところまで上がっていたのだった。

明日はいよいよ商人の賢者への転職を控えているため、4人は少し早めに眠りについた。

ダーマ神殿 宿屋

商人「(明日に備えて早めに寝ようってなったけど...私が眠れないよ~)」ゴソゴソ

商人「(みんなすっかり寝ちゃってるもんなぁ。勇者はずっと付きっきりで教えてくれたし疲れたよね。)」

商人「(私も最初はどうなるかと思ったけど、剣や盾の扱いも体が覚えてくれたし。)」

商人「(魔物に対する恐怖もだいぶ消えたのもよかったかな。かなりな回数戦ったし。)」

商人「(あとは明日。………私、賢者になるんだな。小さい頃から憧れてた賢者さまに。)」

商人「(大丈夫。やれる。私はもう絶対に道を外すことはしない。それに...)」

商人「(信頼できる仲間がいる。影から支えてくれる人もいる。あとは私次第だ。)」グッ

商人「(...なーんて気合い入れたら、眠くなっちゃった。おやすみ~みんな.....)」

商人は眠りについた

翌日

ダーマ神殿 転職の間 入口

商人「じゃあ私行ってきます!賢者になって戻ってくるよ。」

戦士「うん、緊張しないでリラックスしてね。悟りの書は持った?」

商人「大丈夫。持ったよ。」

武闘家「いよいよですね。以前、旅人さんから聞きました、商人さんは賢者に憧れていた、と。その夢が叶うんですね。」

商人「たしかに賢者さまも夢だったけど、その次の夢がもっと大事だよ。」

武闘家「と、いうと?」

商人「みんなで大魔王ゾーマを倒して世界を平和にしなくちゃね。……まだ私は新米だけど。」

武闘家「!」

勇者「そうだね。賢者は通過点、ここからがまたスタートだよね、みんな!」

武闘家「そうですね。」

商人「みんな。新米賢者になってくるから待っててね!」スタスタ

戦士「行ってらっしゃい。」

商人が扉を開けて、転職の間に入っていく姿を勇者達3人は目に焼きつけた。

ダーマ神殿 転職の間

商人は外で待つ勇者達と別れ、祭壇で待つ、大神官の元にゆっくりと歩み出た。

大神官「ふむ、そなたは転職を希望される者か?名を。」

商人「はい。商人と申します。」

大神官「では、商人はどの職業に就きたいと申すか?」

商人は悟りの書を大神官に差し出した。

商人「私は賢者になりたいと願いここに来ました、その願いをお叶えください。」

大神官「悟りの書とな...また再び目にしようとはな。もしや先日、賢者から武闘家に転職した者の仲間か?」

商人「その通りです。彼女はすでに立派な武闘家になりました。」

大神官「ふむ。よほどの理由がありそうじゃの。そなたのその目にとてつもない強く固い意志を感じる。」大神官「あいわかった。転職すると再びレベル1からの厳しい修行となるが承知の上か?」

商人「はい。すべて。」

大神官「そなたの意志受け取った。おお神よ!この者が新しい職業に就くことをお許しください!!」スッ

パアッーーー

大神官が杖を天に掲げると光が降りてきた。

商人をその光が包み込んでゆく。

商人「(商人の私、今までありがとう。)」

商人は賢者に転職した。

ダーマ神殿 転職の間 入口

勇者「商人まだかなぁ~。」

武闘家「私の時も時間はかかりましたからね。」

戦士「ええ、とにかく待ってましょう。」

ズズズズズ

ドーン

勇者「あっ。お、終わったみたいだよ。」ドキドキ

勇者達の前に賢者が姿をあらわした。

賢者「みんな、ただいま!」

戦士「おかえりなさい。しょうに、じゃなかった、賢者。」

武闘家「わあ~!かっこいいです!賢者さま!見違えました。」キラキラ

賢者「あ、そ、そうかなぁ?なんかまだ全然実感がわかないんだけどね。ヘンじゃないかな?」

勇者「ヘンなんかじゃないよ~!うん、すんごくかっこいい。さっきまでの商人じゃないみたい。」

戦士「そりゃそうでしょ、勇者。もう商人じゃなくて賢者になったんだから。」

勇者「あ、それもそうだね。へっへっへっ。」ニヤニヤ

武闘家「おめでとうございます、賢者さま。」

賢者「ありがとう。無事に賢者になれました。みんな、これからもよろしくお願いします。」ペコリ

商人が転職し賢者となり、勇者達は再びダーマ周辺及びガルナの塔にて新米賢者のレベル上げを行っていた。

賢者になったことで、魔法も覚えるため、勇者ではなく魔法のエキスパート、武闘家(元僧侶)と戦士(元魔法使い)が付きっきりでサポートをした。

急なレベルアップと沢山の魔法を一気に覚えるために、賢者の疲れ方は尋常ではなく、まだ魔力も微量なのも影響してか、体力的にも精神的にも辛かった。

しかし心配する3人をよそに賢者は泣き言ひとつ漏らさずに修行をこなしていった。

元々の賢さの高さもあり、コツを掴むと魔法も次々に使いこなしていき、戦士と武闘家を驚かせた。

約1週間、修行の日と休養の日とを上手く分けた。

修行の日はひたすら戦闘。休養の日は体を休めながら魔法の書物で勉強をし、武器防具の手入れなどをした。

結果、賢者はぐんぐん強くなっていったのだった。

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